うちのジムの選手が誰も出ないNJKF興行。最初は「行くの辞めようかな?」とも思ったが、行くことにした。噂の強豪・チャンプアック(クンデート)を見るためである。いや、正しくは、そんな強豪をわざわざ名指ししたという、HIROSHI選手の闘いぶりを観たかったのである。
チャンプアックが噂通りの選手なら、勝敗の行方は明らかだろう。でも、勝敗じゃなく、何か別なものを観たくて、後楽園へ赴くことにした。
東京武道館で一人練習をして、接骨院寄って、いざ後楽園へ。
後楽園で、ヒュラルド猿藤氏と合流した。NJKF公式ホームページの「制作/納得担当」のヒュラルド猿藤氏である。ヒュラルド氏は、おそらく人生で初めて、観客ではなくスタッフとして訪れた後楽園ホールだ。せっかくなので、控え室を案内することにした。一般観客時代には入ることができなかった(たまにずかずか入ってくる奴がいるが)「聖域」である。
とは言っても、「控え室」そのものに入るのは遠慮して、廊下でいろいろ話していた。某マスコミ関係者も合流して、三人で話していた。すると、なんとも文字にしがたいうめき声が、一定のリズムで聞こえてきた。わしと某マスコミ関係者は「始まりましたね」とにやりとした。一人、ヒュラルド氏は、きょとんとした顔で「何が?」。
そうだ。普通の人は知らないのだ。これがHIROSHI選手の儀式なのだ。控え室にいるときからコンセントレーションが始まる。声を上げながら身体を動かすのだが、だんだん激しくなってくると大変だ。ロッカーは殴りだすし、声は廊下まで響いてくる。控え室が一緒だと、もう大変(笑)。それだけ気持ちを入れて闘う選手だし、うまくテンションが噛み合ったときの強さは、みなさんご承知のとおり。絶望的な戦力差を気持ちで覆す、そんなシーンが観たかったから、この日足を運んだのだ。
それを迎え撃つチャンプアックにも遭遇。見るなり「なんじゃいこいつ?」と絶句した。金髪の上からさらに部分的に赤で着色。しかも、髭面。どう見ても、頭のいかれたヤクザ。怖い! 延藤広報は「でかい!」と言っていたが、身長はわしと一緒くらいじゃないか?173くらい? 「これでK−1中量級はちょっと辛いんじゃないか?」と、そのとき思った。
セミファイナルから、リングサイドに座って観た。川津選手の相手のタイ人、強かった。あれでもランカーじゃないんかい! そんな相手に気迫で真っ向勝負。延藤広報は「川津はあれで十分! この経験活かせばいい」と言っていた。場内は沸いた。十分沸いた。
メイン第一試合。中島選手が1R、左ボディーフックから右ハイキックでダウンを奪う。「よし! このまま行けば‥‥」と思ったが、そこはタイ人。反撃開始。ヒジでカットし、ミドルでダウンを奪い、ハイキックで倒し‥‥あっという間の逆転KO。んんんんんんん。
そして、メイン第二試合。「アルマゲドン」で入場するHIROSHI選手。この曲って、新田選手をKOしたとき使った曲じゃあ!? いやがうえにも期待が高まる。対するチャンプアック、軽快に登場。おまけに水で毒霧アピール! こいつ、客商売を知っている!
リングに上がり、ガウンを脱いだチャンプアック。場内からどよめきが起こる。すげえ筋肉。ヨーデーチャーはふくらはぎで場内をどよめかせたが、チャンプアックは大胸筋と後背筋。隣りに並んでたときは小さかったのに、リングの上では異様にでかい。K−1中量級? 全然遜色ないような気がしてきた・・・。
ゴングが鳴って試合開始。またまた驚いた。開始して、パンチを出してきたチャンプアック。
驚くほど下手である。
筋肉つきすぎてパンチがまっすぐ出ない、そんなパンチである。しかも、ムエタイ選手なのに、ミドル蹴らない。いや、たぶん蹴っても下手である。愚直にローを打つ。ローにもセンスは感じられない。武骨なローである。
ヒュラルド氏と「このタイ人、偽物?」と顔を見合わせる。
だが、あれれ? HIROSHI選手の顔が既に腫れ上がっている。このタイ人、ただ前に突っ込んで、センスの無い武骨ローと、センスの無い武骨パンチを打ってるだけなに、HIROSHI選手の顔面は崩壊している。なんなんだこのタイ人???
その後も、このタイ人、美しきムエタイの片鱗すら見せない。首相撲なんかしない。だが、センスのなさそうなヒジで切り裂き、センスのなさそうなヒザで、さらに追いつめる。1Rが終わってみると、あらら、HIROSHI選手はボロボロである。
偽者‥‥とんでもなかった。我々は、今、何か、とてつもなく恐ろしいものを観ている。
2R。後のないHIROSHI選手が勝負に出る。パンチで真っ向勝負に打って出る。このタイ人、打ち合いに真っ向から応じる。技術的には、きっと互角であろう。だが、前に出るのはタイ人。下がるのはHIROSHI選手。なんか知らないが、いつの間にロープ際に追いつめられ、気がついたら、タイ人が一方的に殴りまくっている。
「ダウン!!!!!!」
レフェリーがスタンディングダウ‥‥いや、違う。試合を止めてしまった。レフェリーストップだ。まだ、片膝さえ付いていないのに、試合を終わらせてしまった。呆然とするHIROSHI選手。
だが、だが、観客は皆納得していた。「殺人現場は観たくない」。
帰り際、某NJKF重量級戦士が言っていた。「こんなのとやりたくない。。。。」。そうだろう。それがみんなの感想だろう。それだけに、こんなのにわざわざ指名して挑んだHIROSHI選手は凄いと思わないか? わしは思う。
それにしても、またもNJKFは厄介なものを抱えてしまった。自分の団体の選手じゃどうにもならない、厄介なもの。ヨーデーチャーにチャンプアック。「いっそのことこの二人当てちゃえば?」と思うのだが、やはり観たいのは「日本人による打倒ムエタイ」か。
すると、やはり、NKBまで広げて考えれば。。。そっから先はボク言えない。
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