4コンプリート 6│ゼフェルPM01:08


「そう、わかったわ…じゃあご迷惑をかけないようにしてね」

カチャ

「アンジェ、セイランの家についたって。明日の夕方戻る時に、また連絡をするって」
「そ、か……」

うひゃうひゃうひゃ!

〜と、文字通り「夢の構図」を描いていると、
そんなオレを蔑むように見下ろす愛しい二つの物体(アンジェリーク(妻)の目ン玉)があった。

まっ!何よ?
その、グリンピース瞳に、細切りカレー煮込み(金髪だから)大根眉毛を弁当箱に描いたような顔は!

あれはアンジェ(娘)にもウケた一作だったが…
(ちなみにプチトマト+大根で作った娘版もある)

「何かまたエッチな事考えて、遠くに行ってるみたいだけど、今日は、もう、させないんだからね」
「なにいっ!」
>こういう時はある意味大変素直な男

「アンジェはね、自分の事するの。ゼフェルは元々、結構好きなオタク(機械いじり等)時間過ごして、退任してからは存分に、自分の好きな仕事して、好きな時に…××てるかもしんないけど、私は自分の時間って全然持てなかったんだもん。
だから今日は、ダラダラしてジョシコーセイ気分で過ごすの。決めたの(…パリッ)」
という片手には既にポテトチップス「固揚げ胡椒味」

「物食いながら、しゃべんなよ」
「だから!今日明日は『こういう事しちゃだめよ』って母の仮面は捨てるのよ。
ベットのスプリング壊すくらい跳ねて遊んで、そこでお菓子食べながら雑誌とビデオ見て、部屋中散らかして、お風呂入って、ふっくり乙女モードに入って、明日の昼近くまで寝て、街に出てパフェとケーキ食べて、ショッピングする。夕方まで」
「その、散らかした部屋掃除と壊したスプリング直しと夕飯は誰が作るんだよ」
「ゼフェル」

…………あのなあ…………

てめっこの!
アンジェの分際でそんな勝手が通ると思ってんのか!

大体なんでぃ、それじゃオレが普段なんにもしてねーみたいじゃ……
ランディ達には恥ずかしくて口が裂けてもいえねーが、仕事が詰まってる時以外、アンジェ(娘)の送り迎えとお弁当持参日週2回のうち1回と、土曜の昼飯と、ゴミ捨てはオレの係だし!
肉体労働、家電全般修理…調整も、一寸賞味期限が切れかかった危険かも?特売品処理も、そこまでじゃなくても残飯の始末も。
…………風呂だって最後だしっ!
だって風呂掃除もオレの係なんだもん!
終わったら、さっさとやっちゃいたいの!

って我ながらすんげー情けねー!!!!
こんな体にした、オメーらっちゃー、娘は生意気だわ、妻はヤらせねーわ、どいつもこいつも女ってやつはあ!!!クソ!!
くやし涙を浮かべた(これも情けない)オレの心中を見透かしたのだろうか。
幾分トーンを柔らかくし(でもポテチは離さず)アンジェは続けた。

「…ってゼフェルはよくやってると思うんだ。
…でも、なんか…ゼフェルだから言うけど…私、女王になってから本当の意味で「一人」になる事も「アンジェリークとして考える」事も無かったんだよね。
だから、この機会に自分というものを見つめてみたいのよ。静かに」

基本的に五月蠅い石膏型みたいなくせに、ぬわあにが「静かに」だ!
(それにさっきの予定の何処に静かな部分があったんだよ?エエ?)

ふざけんじゃねー!ガシャーン!ドガバッ!

…なんてやれた若き日が懐かしい……


わかるぜ

見てくれこそ若いままだが、オレだって、それがわかるくらいは歳くったんだ。


でも……な。
その分、もっともっとわかった事がある。
オレはなんでかわからんが、っとにオメーが好きなんだ。

運良く旦那になれたから、いーよーなもんだが、一歩間違うとストーカーレベル並(笑)に、自分勝手にな。
本当に欲しいと思ったら、プライドなんざ捨てなくちゃ、手に排卵(…嫌な誤変換だな)
否、入らんっつー事を教えてくれたのも。
よって最大級の奥の手を使わせて貰う。
勿論奥の手っつーだけあって、オレのリスクも高い。
だから許せ。


……………………………………(深呼吸)


落ち着け落ち着け、ゆうっくり、確実に己の内にあるジュリアス(プライド)を妨害し、ルヴァ(知恵)を総動員し、その他各守護聖、女王様、力を貸して!ハート8つ体制を整え、森の泉に5つ!ただただ、個人的目的の為に捨てちゃう女王候補のように、残忍狡猾に………


「アンジェリーク……」

「はい?」

「アンジェ………オレ」

「……………?」


「(一呼吸)………オレ淋しい」
「………!!!」

ボサ
>ポテチが落ちた音


貰った!!

名付けて(名付ける意味は特にない)「いじっぱりなあの人が私にだけ素直になる一瞬」作戦。
普段ひねきってる奴だけが効果が狙える時間差攻撃だ。
>勿論、相手に好意を持たれている場合にのみに使える戦法だけに、相当卑劣技である
昔のオレだったら、プライドが邪魔をして、死んでも取れなかった戦法だ。
守護聖になりたての反抗期に、逃亡しようと時間軸を越えようとした事は何度かあったけど、その時のオレが今の自分を見たら、即、号泣を通り越して自殺もんだ。


「アンジェ」

「うう………」

たり……
>アンジェの汗

よしよし。
追いつめられてきたな。
あと一歩。
あえて、引く!(笑)

「…って無理いってもな…わりィ。わかった。じゃ、今日は別行動しよーぜ」
「…う、うん。アリガト」

それじゃ、とアイツは居間を去ろうとし…しかしピタ、と止まった
>計算通り(笑)
更にポテポテと戻ってきて、オレの隣に肩一つ分くらいの距離を保ちつつ、座る
>こいつも計算通り(笑)
お、なんだ?どうした?とワザとらしさを装うオレ。
ホレホレ、もっと近くにこい!

「あの…1回くらいなら…ようか?」

ここで焦って雪崩れ込むと計画がバレる(笑)
如何にも驚いた風を装い、ゆっくりその距離を縮め………
今、正に唇が〜の瞬間、自分たち以外のまっ赤な視線……

じー………………

ん?まっ赤?
アンジェ(娘)はお泊まりの筈…


「ご、ごめん、裏のおじーちゃんが、いれば庭から回れるって…その」


〜やっぱり、なんだよ、家族計画ってホントに綿密に計画しねーと、後々まで響くんだな。


チクショー!