6/4コンプリート 5


パチン

  パチン
       パチッ--



パパが他の女に手を出したとして-
心境のパターンとしては以下のどれか-

1:完璧なる浮気
私とママは家族として健在しときたい

2:女に本気
私もママも捨てたい

3:女に本気
ママは捨てたい。
でも私は自分の娘だから欲しい

どれも許さないが、どれも微妙にこっちの気持ちも異なる。
一番許さないのは…3かな。
殺すかもしれん。

……でも、結果は決まっていても、揺れるのも、きっと3だろう。 一番、悲しいのも…3だ。

やっぱり私ははまだ子供で、小さくて、まだあんまり、自分じゃないんだな、と思う。

私という構成は大まかに三つ
「パパ」「ママ」「自分」
小さい故に世界はカオスで、まだまだパパ・ママ割合が高いのだ。
パパがママを否定する事は、私の3分の1を否定する事だ。
でもパパが自分の中の私部分や、私部分のパパ部分を否定しないなら……

私は、私のパパ部分を捨てられるんだろうか?


ママは…どれでも泣くだろうな……


……かな?


ママって、妙に「超越」した部分があるから…なぁ?
う〜ん?


「ねえ、ママ。おかしな質問かもしれないけど、応えて欲しい事があるの」

ママは手元を動かしたままで、微笑んだ。
これは「なあに?」の意味。
こうして見ると、ホント、ママって可愛い。
元気が先に立つけど、実は綺麗な人なんだな。


  パチン---


いけない、続けなくちゃ。


「ママはパパが好……ううん、ママにとってパパって何?」


  パチッ---


「神様みたいなものね」

へ?


  パチッ----


そ、そうかな?それは反対じゃあありません?
ポーズを装ってはいるが
『ああっ女神さま!天使さま!』
状態なのは、パパ、だよねえ?

実際は殉教者というより、聖なる天使様の翼に顔料系マーカーで落書するような
「ガンダーラ回り道的行為(フラチの事でございます)」
ばかりしてるとはいえ……


「アンジェ、どうして人間は悲しむと思う?」

「は、はい?」
「人間だからよ」

はあ……

「人間だけが他人を憐れんで、自分を悲しむ事ができるのよ…
自分を悲しまずに憐れむ事が出来る者は…
どんなに高尚でもね…それは人間ではないの」

やっぱり、どっか超越してるよね、ママ

「ママはそんな存在だったの。
その為に生まれてきたの。
ママが皆を愛せば、皆が幸福になるの。
だからママは悲しみを知らなかった」

………………?

「パパだけがそんなママを憐れんで、怒って…泣いたのだけれど、
何しろ知らないものだから、最初は、全然、訳が解らなかったわ」


  シャーシャー(刺取ってんです)


「……人を好きになるのは、恐いわね」

私も、こ、恐くなってきた(雰囲気が神々しくて)なあ……

「パパを好きになると、ママは色んな余計な事に気付いてしまったの。
自分を悲しむ事がないという事……」

このまま、この雰囲気が続くと、なんだなあ。
仕方ない、結論から行こう。

「ママ、あの、話題を急ぎたいんだけど」
「はい?」

「ごめんね…その、もし、もしもだよ?パパが……その……他の女の人を好きになったら、ママ悲しい?」


  バチッツツツゥツ-----


「キャー!ごめんなさい!!!例えば!単なるタトエだよ!」


プッ…………キャハハハハハ


わーん!泣いちゃった〜〜ってあれ?
笑ってる??

「ッップププ、ごめんなさ……ククク……
…ごめん……プ………ヒーヒー…
…やあね、やっぱり親子なのね、パパと同じ事聞くんだもの」

へ……?パパが?

ハッ!
まさか、自らの後ろめたさにママに探りを?

ひょっとして事を荒立ててしまったのか?
と冷汗ダラダラな私が恐る恐る見上げると、もうママは笑い止んで…
…再びうっすらと微笑んでいた。


「平気よ」


………………そうなの?



「平気よ。心が壊れてしまうから」





…………………………絶対………ママにはいえない…………………