6/4コンプリート 10


「なに?オメー、オレが浮気したと思ったんだって〜?」


パジャマに着替えるべく、二階に上がろうとした矢先。
それはもうニタニタと「鬼の首を取りました顔」でパパが近づいてきた。

……はあ。やっぱり。
この好機をコイツが見逃す訳なかったか。

こういう時こそ、広い心で「ははは、アンジェは心配性だな」なーんて度量でも見せてくれりゃあ、父の株も上がるんだけどなぁ。

つんつく・つん

わかった。わかったから、髪ひっぱんないでよ。
このツーテールの微妙なバランスは、寝入る直前まで崩したくないんだから。

「ご・め・ん・な・さ・い、は?」
「…………ごめんなさい
「聞こえねぇ、な」

グッ
なんてイヤな男だ〜〜く、くやしい〜!


「ごめんなさい!!疑ったりした私が悪かったよ!
でもね、ちゃんと説明しないパパも悪いよ!
パパがママ以外の女と連れだってるなんて、『私のパパ』だったら絶対しない!
パパは…ぐっ……えっ…えぐっ……うわ〜〜〜〜〜〜ん」



ちゃんと謝ろうと思ったのに。
今日は、目一杯セイランのところで泣いちゃったのに、上位に立たれた悔しさの反動か、ホッとした気持ちが胸いっぱいになって涙が、溢れて………。

なんで今日は、こんなただの四歳児になっちゃうんだろう?
これも波の一つなのかなあ?

「お、おいアンジェ」
「えっっふ…私…今度の誕生日はママと二人になっちゃうのかって…すんごく…ぐぶ…悲しかっ……うう、ん。
パパがママを……嫌いになっちゃうのが悲しかったよ。
パパはママが一番じゃなくちゃだめ。
パパを嫌いにならなくちゃいけないの、ヤだよ。
私のパパは…ぎゃ〜〜〜〜〜

「あ〜わかった、わかった。オレも悪かった。泣くな。」
「…ひっく…いいよ、特別に…許す。
これで、おあいこなんだからね!」

「なんだよ、それ。
オレの方が、分が悪くねーか?チチの操を疑ったんだぜ?
この、泣きっつらのチビは、ああ?」
「オトメの心を傷つけたんだから、甘いくらいだよあいこ!」
「へーへー」

「あと、ピンクの生クリームね…誕生日のケーキ」
「……全然あいこじゃねえよ…」

あいこだよ。
だって私達、かっきり同じ日数分、
お互いスキドウシ、でしょ?


ああ、早く誕生日がこないかな。


パパのひねくれスポンジを
ママのピンククリームにふわふわ重ねて。
苺は私の歳の数。
今年はお姉ちゃんの苺も、もうひとつ。

ピンククリームの苺ケーキ。
私のダイスキのカタチ。



幸せって夢を見る度、私は一つ歳をとる。




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