ガーウェインの独白

1天国へ行き損ねた 2誓言
3友人達 4アーサー
5湖の淑女達 6ランスロット
7魔女達 8トリストラム
9聖杯 10パーシヴァル
11ギャラハッド 12アーサーの死


「過去と未来の王」アーサー王物語:各登場人物と物語による性格の違い
さて、わたし
マーリンが振り付け師としてこのコーナーを担当します。円卓の騎士たちの面子について詳しく知っている人も知らない人も、割り振られた役割や物語での演技力についての分析、作家にどうしても必要な直感、そして時勢への適応力などについて限定的な知識しか持たざるを得ないことは、キリストと私の父である夢魔にかけて明らかでしょう。この前提で話を進めます。


魔術師マーリン:自己紹介になりますが、わたしは騎士ではありません。それなのにここで挙げられる理由について考えて見てください。私が「ドルイド僧」であるとか、洗礼を受けるまで地獄の血族であったとかいろいろ言われるにしても、アーサーを認める上では、ディートリッヒに対するヒルデブランドを、またシャルルマーニュに対するテュルバンの影響と同様にわたしをも認めねばなりますまい。私はキリスト教以前の騎士物語に落とされた陰を体現した存在であり、私がタリエシンやフィン・マックールと似た生い立ちをしていることからもそれは暗示されています。モンマスのジェフリーが私の物語を書いて以来、私のこの役目はいわば必然でした。

アーサー王:彼が悲劇的な「理想の君主(オプティムス・プリンケプス)」であるという大前提と世界観のあり方を棄却すると上のような物語になります。実にアーサーは連合王国の統一において象徴的に重要な意味を持ってきましたし、彼の伝説に批判的だったエリザベス朝やヴィクトリア朝の時代にも、常に理想の君主のあり方と、人間がどこまで権力と自らを同一視する試みが続けられるかを問い掛けています。

宮宰ケイ:ケイ卿はマビノーギオンなど昔の物語ではアーサーの側近かつウェールズ・ケルト的な魔力を持つ人物として描かれています。しかし時代が下るにつれて、彼の役目はアーサーの侍従かつ乳兄弟としての存在へと減じ、アーサーが「捨て子」の属性を伴うようになるにつれて、その存在の修飾を施す役割を帯びるようになりました。

王甥ガーウェイン:上の物語の主人公であるグワルフマイは、あまりにも割り当てられる役割が競争し合う作家たちによって異なるところから、「複雑な」、「気難しいが礼儀正しい」などといった性格が結果として与えられることになりました。彼を理想的な騎士と考える一方で、(主人公に対して)因習的なあるいは厳格過ぎて狭量な騎士の役目を演じることを強制されるのは、よほど(今や存在しない)「原本」としての「アーサー王物語」で彼の役割が大きかったことを示しているように思われます。彼が常にアーサーの甥として現れるのもその重要性を確認しているかのようです。ケルトの太陽神ベレニスよろしく正午に最大の力を発揮します。

ユーウェイン:比較的古典的な文献に出てくる円卓の騎士としての初めての存在(と言って良いと思えます。)「エレック」や「キルフッフ」など「マビノギオン」に出てくるあまりにもケルト的な物語の中で、ガーウェインとの絡みなどで初めて円卓の騎士同士の関わりが導き出されているように思われる。但し後のほうのテキストでは重要な役割を奪われ、重要な騎士として騎士たちのリストに名を挙げられる存在のみと化しています。他のクレティアンの書いた物語も、後続する作家達の下書きとなる運命に大方遭いました。(「君の勝ちだ。」「いや、私の負けだ。」)

湖水の騎士ランスロット:たいていの場合フランス人とされる、マロリー第一の騎士、すなわち円卓第一の騎士は、同様にフランスで書かれた「ランスロ」や「荷車の騎士」で最大の英雄としてクレチアンに描かれています。彼とグィネヴィアの恋が円卓の騎士たちに破滅をもたらす筋がモンマスのジェフリー以来、同じクレチアンの路線ではじめられたことは暗示的です。(彼が未完で「荷車の騎士」を投げ出したことも。)先ケルト的な存在としては、彼はガーウェインと同じく、太陽神フリュウ(アイルランドのルー)の顕現であった可能性が高い。水の妖精によって育てられたことも興味深いところがあります。

純粋なるパーシヴァル:「無垢の騎士」の概念は民話などに見られる類型的なトリックスター、「まぬけ」、「怠け者」などの無意識的な存在。しかし騎士物語では、やはり独特の発展もしくは変形を免れません。クレチアンの仕事をヴォルフラムが完成させたことについて、伝承がケルト的世界から吟遊詩人の栄えたフランス、そして封建諸侯の国ドイツへとアーサーの物語が伝播していく過程も興味深いものがあります。聖杯は西欧の紋章および神学、宗教、歴史、錬金術などにあまりにも関わっているのでここでは敢えて述べることをしません。マロリーの作品の意義はある意味(薄められていると非難するのは簡単ですが)再びこれらの諸国伝承物語を総括したことです。

武装した聖者ギャラハッド:パーシヴァルに代わってマロリーが完成させた「ランスロットとキリストの息子。」マロリーの良い点と悪い点が集約された存在といって差し支えないかもしれません。伝承との決別と物語への移行は、黄金時代が常に衰退の始まりであることを示唆しているのかもしれません。啓蒙思想の時代など、騎士物語を愚劣なものとして排除する時代(反比例的にグレコ・ローマンの古典復興が行われました。)は周期的に訪れていたのでしょうが、この時代にもすぐそこに迫っていたのでしょう。このような象徴はテニスンの詩のような形態のほうが登場人物としては適切かもしれません。

異邦人トリストラム:コーンウォールとブルターニュを舞台としたトリストラム(トリスタン)の物語群はもっともアーサー宮廷の枠に収めることが困難で、マロリーの作業を失敗と見なす者は多いらしいです。中心となる王と家臣の輪は、ここではアーサー王と高貴な円卓の騎士たちに代わってマルク王(一説によるとケルトの馬の神)と下劣な側近たちなのですが、マロリーはマルクも下劣な存在にしてしまうことで完全にトリストラムの葛藤を共感を呼べないものにしてしまっています。ジョーゼフ・キャンベルによるとゴッドフリードの妙はイゾルデとトリスタンの愛が薬によるものか自然のいたずらによるものかわからないように描いていることです。

裏切り者モードレッド:モンマスのジェフリー以来の「アーサー宮廷のユダ」。彼がアーサーの近親相姦の所産であること、ガーウェイン一族によるペリノア及びラモラックの暗殺など、マロリーはこれでもかというくらい彼の役目をアーサーの影としての役割に徹させています。近世、現代の小説家達は彼のあくまでも騎士としての美徳に反する存在としての復権を図っているようです。

魔女モーガン・ル・フェイ:アーサーの姉にして魔女。ケルトの戦争の女神の復活。ワースの「ブリュ物語」で彼女はアーサーをアヴァロンで癒しを与えるべく舟で彼をケルト的な「林檎の島」へ運びます。このテーマに深いケルト的伝統とキリスト教伝説の関係を読み取ることができると考えるのは間違いありません。

湖の淑女:マロリーでのアーサーにエクスカリバー(カレィドウルフ)を与える場面はあまりにも有名です。「アーサー王の死」によるとベイリンに首を刎ねられることになっていますが。ヴィヴィアン(ニミュエ)が私を妖精の輪の中に閉じ込める場面は、物語作家にとってアーサーがエクスカリバーの魔法のかかった鞘を紛失するのと同じく、彼の王国瓦解の前兆とも言えます。

隠者ブレイズ:

そのほかの登場人物:

水星の晩餐会Banquet of Mercuriusに戻る
魔術師の研究室Laboratory of Wizardに戻る
螺旋回廊Spiral Corridor:(Links)へ