天国に行き損ねた
私の名前を知る者は多くいる。私と私の友人達の争いが古代の大王国に死を齎したことも。しかし、伝承に伝えられることで最も大きなものは人の心であり、そこでは私の動機と挫折は悪行に取って代わられている。行為だけを採ってみれば悪行には違いないだろう。それでも、私の弁解を伝えることは、沈黙の国の詩人たちにどんな影響を齎すのか?
私は生前には、伝承の大家として知られていた。しかし私自身が伝承の源になっていくに従い、その事は忘却された。ともあれ、伝承を挙げてみれば、ウェールズのマビノーギオンや、ゲルマンの文筆家ヴォルフラムの著作では、私は準主役の格が与えられている。そして北イングランドの「緑の騎士」では、ガーウェインの名は円卓の中で最も高名なものである。それに対してアーサーが治める円卓の時代の変遷を描いたフランスの流布本物語、ひいては後代のマロリーの文では、私は強情で残酷な人格を与えられている。伝承を良く知らない方も、この事を記憶に留めて頂きたい。