パーシヴァル
ゲルマン語で言えばパルジファルは、ペリノア家、私とオークニー一党が父の敵を口実として滅ぼしたカーボネックなる聖杯城城主の一族の出である。城主のアンフォルタスはペリノアの弟で、ベイリンの一撃により男性の機能を失っていた。彼等の手でアーサーの家臣達に正義の罰が加わる事はなかったが、私は加えられて当然であると信じていた。
ペリノア家の者には祖先より伝わる聖杯を取り扱うための能力が備わっていた。そしてキリストの御心に適い、奇跡を現出するためには心が怒りや憎しみに染まらず、無垢のままでなければならない。パーシヴァルはアーサーによってその始まりから選ばれていた。
全ての事情を知っている訳では無いペリノア王妃は次々に一族の者が私とロト王家の者に討たれる悲劇に臨まなければならなかった。彼女は最後に残った子供までも失う事を望まず、山野に隠棲した。(僅かな事実でも知れば当然の事だが)憎悪が息子を蝕む事を恐れての行為であった。
アーサーは何も知らないパーシヴァルを利用したのか?それともそれまでのアーサーの功績をキリストは評価し、アーサーの罪をパーシヴァルの心から消し去ったのか?真実は分からない。しかし、聖杯は結局キャメロットには来ず、アーサーの失望は大きかった。これこそが天罰かもしれない。
事の顛末を書けば、パーシヴァルはアーサー一党のキリスト信徒達に試みられ、知らない内に聖者の階梯を上っていった。先に聖杯を手にしたのは彼である。ギャラハッドは出遅れ、「槍」しか手に出来なかった。しかし、神の声に促されたのか彼は槍を父親に渡していた。
私はすぐに聖杯をブリテインに運ぶ事を進めたが、断って聖杯城にパーシヴァルは向かった。また、かつてマーリンに封印の洞窟の中で教わった通り、私は槍を聖霊降臨節の日以外に「聖杯城」に持って行くと災いが起こると警告したのだが聞かれなかった。また、ボーズがやって来て儀式の参入を求めた時、私はパーシヴァルに城に入れないように言ったのに、彼は聖杯をボーズに触れさせないと誓う事で、入城を許してしまった。彼は叔父の不具の傷に同情の言葉をかける事で癒したが、ランスが持っていた「槍」によってボーズに傷つけられ、倒れてしまった。
私はボーズをユダと呼んで罵ったが、ユダは救世主を信じなかったと応酬された。口論している内に、ギャラハッドが天使の団体を伴って城に乗り込み、槍を右手で父親から受け取ると聖杯を左手に取り、振り上げるとたちまちの内にパーシヴァルの傷は癒された。そして杯を天使達の捧げ持つ台座に乗せると嵐のように出て行った。
青褪めたままのパーシヴァルはバビロニアの地まで追って行ったが、既にギャラハッドの血によって聖杯は染められ、北方の神々の力はほぼ完全に奪われてしまった。「パルジファルは妃ブランシュフルール及び息子のローエングリンと共に聖杯城に戻り、聖杯の血の染みを消すのに力を尽くす」と言っていたそうだ。
その時には、アーサーの宮廷は二つに分裂していた。
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