聖杯
ベイリンがヴィヴィアンを殺害し、ペリノアの弟ぺラム・アンフォルタスにロンギウスの槍で「危難の一撃」を犯して聖杯城の周辺を荒野と化し、兄弟で殺し合ったのも、おそらくアーサーとマーリンの計画の一部であった。聖杯は湖の淑女達、ヨセフの一族、聖杯城の城主一族等、多くの党派によって監視と相互警戒の中にあった。

聖杯は古の神々とキリストの正餐式を一つに結び付けるものだった。白い神はドルイド達と教会の協力により、聖杯を地上で奇跡を発現させるための器といつしかみなすようになったのだろう。それともそれは始源からの摂理だったのだろうか?

大きく見て二つの党派が在った。一つは聖杯をキャメロット等、地上の都に持って行き、白い神の王国を地上に現出する事を理想とする理想主義者の党派、そしてもう一つは間違いなく天上に神の国が存在するための象徴として、キリスト降臨のもう一度の現出を目的とする現実主義者の党派である。前者の選んだ騎士がパーシヴァルであり、後者の選んだ騎士がギャラハッドであった。アーサーと私、そしてカーボネックに在る聖杯城とペリノア家の残党は前者が成功する事を望み、ランスロット、エレイン、ボーズなどロンギヌスの槍の一族はアーサーより密かに離反して後者が成功する事を望んだ。そして後者の成功はアーサーの功績の抹消を意味した!ぺラムとペレスの対立は、聖杯探索以前から、頻々とキャメロットに伝わっていた。

アーサーと私はギャラハッドを阻止するためあらゆる手立てを用いた。だが、予想に反して「勝利の王」キリストの力はあまりにも凄まじく、そして雌の特性を持つ杯は否応無しに雄の特性を持つ槍に引き付けられた。すぐに円卓の崩壊は取り返しがつかなくなった。

「ガーウェイン卿の物語」に戻る