螺旋回廊
「驚異の発見Sense of Wonderをとるか。あるいは慰めの野Elysiumをとるかは個人の自由です。魔術は常に貪欲に前者をむさぼり、後者の土壌を生み出そうと試みています。混沌に秩序を、感性の世界に理性を持ちこみ、新たな予期し得ない怪物が我々の見えないところで我々の残していくものを食べて成長していきます。」
メルギゼルは肩をすくめると、
「ついてきてください。わたしが案内しますよ。」
松明のみが赤々とした光で二人の影を切りだし、螺旋状に緩やかに下層へと向う地下道に時折ひらめく小さく素早い何かを警戒しながら降りて行く。十分深いところ、俗人たちがもはや聞き耳を立てないところまで来て、はじめてスネカザルは偽装を取り、鋭く彼を見つめた。
「さて、師匠として弟子に聞いてみよう。技芸(アート)について君は何を知っている?」
あたりの様子に奇妙な視線を向けながらも好奇心にまさるメルギゼルは訝しげな顔をしたが、肩をすくめると、
「何を知っているとおっしゃると?それは・・・力を意味することもありますし、美を意味することもあります。努力と困難の打破を意味する時も・・」
「しかし君の言った言葉は技芸そのものを指してはいないし、そう望んでもいないね、君は。魔法について言うならば、それはアートの一つだ。伝統と訓練、洞察力と理解力、ひらめきと才能。君は力について考えたことだろう。運命というものについて、技芸が幸福や正義に結びついたものだとは、期待はしても信じないだろうね」
「あなたのいう旧世界の科学がこれらの事象、魔術師の社会や触媒、環境操作、神通力にどのように結びつくのですか?」
メルギゼルと別れて地下道を戻って行くと、スネカザルが待っていて
「他の場所に行きたいのか?こまったな、まだ準備は整っていない。」
「とりあえずできている道はこれぐらいだ。気をつけて一人で行ってくれ。」
異教の汎神殿Pantheon:
「これはまたなんという恣意的な区分けだ?主に破壊された神話や伝説を扱っているが、その他の怪しい雑学やあやふやな薀蓄を傾けてつくられたページ群だ。信用して馬鹿を見ても責任は取らない」
その他
「魔術というものを神秘主義的な目で把握することは、別段目新しい考えではないし、人間の啓悟や幸福の観念に意味を認めるのは悪いことではないよ、大抵の場合はね。旧世界の科学は客観的な真実なるものを顔のない人間というものを前提とした上で理解のもとにしていた。このことは前に話さなかったかな?」
「魔術というものは神々のエゴ分子に反発する形で生成されたのだという話を聞いたことがあるのですが・・・そうすると魔術師は力を行使するたびに損失をこうむるかその他の弱点を得るという事になりますね。」
ミトラ教団(バアル信仰・バビロニア占星術・マニ教の混成)
「彼らを薄明のものと呼ぶはなぜか。とかく物質を見捨て虚無に走ろうとする光を物質に結びつけ、暗闇に忍耐と機知を教えようとする者たちはゆえに天の御使いたちを退け、悪しき者たちを離間させ、光と闇の仲介者とならんとする危険な任に当たろうとする者たちである。」
ミトラ教団支部へ
「話はそれほど簡単ではないけどね。常に消耗と言う問題があり、事態の変化という問題もある。どんなに強力な武器でも、それを振るう人を選ばない限り、良い武器とはいえない。しかし逆に赤ん坊でも人を殺すことができるし、君の言っていることはこの限りでは間違いではない」
「するとどういう事なのですか。法則は否定し、自我を否定し、そのあとに何が残ると言うのですか?」
ついに螺旋が終わり、深みの黒々とした穴にアリスのように飛び込む。魔法を使って怪我のないように落ちて行く。
龍王Septanguesの「マーリンの呼び声」
魔王ENT陛下の混沌宮殿
サイロス民芸資料館
「君は真実というものがどれほど人を傷つけてきたことか考えたことがあるか?それなのに盲目な者達は自分をあぶるかもしれない焔に恋焦がれてめくら滅法に歩いてゆく。境界を越えること、限界を定めること。これが魔術の役割と言って良いかもしれないね。それが良いか悪いかは別として、人の判断力というやつを尊重しない文化について考えてごらん。わたしたちがどれほど愚かな存在か、それなのに理解すること、理解されることを求めてやまないことを。」
「では魔術によって地獄に行くか天国に行くか定めることができるわけではないと?つまり判断の留保、あるいは停止ですか?」
「こういえば良いかな。魔術師が自殺を望むのはそれが誤っているからだし、正しいことをするのは、自分が悪しき存在ではないからだ。そうでない場合は別にしてね。」
「魔法使いが王や戦士として働くことに害があるというのもそれが関係しているのですか?」
「王というものはね、神籍に入っていようといまいと変化に適応していかなければならない。魔術師は神界の支配を否定し、ある時は天の来迎を無視して寿命を延ばしたり縮めたりする。しかし人間はね、ある程度多くの因子を考慮した上で自分の人生における枠組みを形作るものだという考えを否定することは、冥王の極端な意見を我々に対する単なる反作用として片付けられない問題を提起するのさ。」
「魔術師が参謀や軍師として名を留める上では王の功績の方が尊重されるべきだと?魔術師の徒弟制度が銀の塔に由来しているものではないと?あなたがたが言う「真の名前」と「力の言葉」、偉大なる構造については?」
「人間が約束に束縛される事態のことも考慮に入れる必要があるね。前日「悪しきもの」であったものが次の日には「善きもの」になる。あるいは逆に裏切り者が昔の自分自身を振り返る時、人間が自分のみを信じることが、他のことを信じることと同じくらい害毒をもたらすかもしれない。抽象化された位階と、拡大された魔法的な視野には、恐怖や近視眼からのつけなどがごっそりと蓄積されているかもしれない。神々や先達からの支配のしがらみ、こういったものを解決するのは理解力だ。そう信じるのさ。しかし現実において賢人の王というのは夢物語に過ぎない。」
「そして神々の力は戦士の肉体の力として開発されたというわけですか。つまり境界は曖昧なままだというわけで・・・」
天界と地界の境界:
輪と舞踏の世界
「退屈な天国にも猥雑な地獄にも行きたくない?よろしい、こっそりどちらでもない灰色の区域に(内緒で)連れていってあげます。妖精たちの国へ行くのならいろいろな注意点がありますが・・・何?そんなのはもう知っている?それならどうぞ、引き止めませんよ。」
ドラゴンの飼育場
「龍たちほど気まぐれで危険な存在は滅多にいません。何事にも力ある存在というのは無頓着なものですから。もしかしたら我々が弱者を守る力を得たいと欲する時、すでに貴方は自らの弱さを受け入れて強さを失っているのかもしれない・・・彼らを見ているとそういった悲観的な見方が出てきます。しかし彼らは善悪を超越しており、自らと同じくらい強大な存在には礼儀正しく振舞います。」
ABSOLUTE DRAGON WEBRING:
http://www.webring.ne.jp
ENCYCLOPEDIA DRAGON:
http://village.infoweb.ne.jp/~draco/mokuji.htm
MANY AND ASSUNDRY DRAGON:
http://fim.informatik.uni-mannheim.de/~draconia/WHATIS/
「問題が分かってきたみたいだね。我々が「悪魔」と契約したり、呪いをかけられたりするのは魂の尊厳を守るためだと言う説があるけどね。しかし禁じられているものというのは君達が思っているような意味では別にない。」
「しかし神々は貴方がたが人間性を否定し、誘惑に対峙する勇気、力の統御の可能性を否定していると批判する者もいるのですが、これは均衡の問題ですか?あるいは単なる折衷主義の問題でしょうか?」
「このことに関して客観的な意見を求めるのかい?それはないものねだりだよ。個人的な意見というのは幻想的な概念だし、個人が育った環境が極端な霊肉二分論やあるいは反対に循環論の温床だったとしたら、それらの影響を無視することはできないんじゃないかな。」
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