ギリシア神話覚書

記録された「死んだ」神話について理解をしようと試みるのは本質的に誤謬をはらんでいるし、しかも物語を神話的な意味で不完全な構成要素として作り上げている登場人物たちを体系化した「正統的」神話の骨格でとらえようとするのは滑稽なだけでなくグロテスクなものの見方であるかもしれない。ここで行っているのは、合理主義的な考え方が矛盾というものを消すだけでなく精気すら奪うことを明らかにしようと無意識的にでも望んでいるのかもしれない(笑)これはいかなる意味でも学問の名前がつく代物ではない。

ギリシアの神話は古典文化期以前に(「盲目の」ホメロスの作品が完成する以前のことを定義する)分化した不毛な山がちの地に住む牧民の神話の漠然としたデルフイやオリンポスを中心とした産物であると捉えるのなら、アテネに花開いた劇作家たちの作品や、それに下るアレクサンドリア・プトレマイオス朝のヘレニズム文化、ローマのギリシア文化などの「固定された」神話と、完成されているがゆえに神通力を失ったオリンポスの神々の神話は骸骨に過ぎない。

神話が人々の余興として親しまれ、信仰の対象とならなくなっても、自分たちの写し身としての愛情と人間性の信仰の絡み合いから神話が詩人たちや物語作家の手で記録の上では発展を続けるというギリシア特有と言ってもよい背景を捉えるのにふさわしいのはトロイア戦争である。たとえばアキレウスやヘクトル、オデュッセウスのことを考察すれば、彼らにホメロスが与えた肉付けが、トロイア戦役の叙事詩のいくつもの(数多くの作者の手になる)断片の元になっていることを銘記せねばならない。そして詩人たちが各地方の伝説や英雄達を実際の歴史上のサイクルに合わせた形で発展させ、あるいは時を遡ってまで整合性を求めている事をも考えるべきだ。

最大の英雄であるヘラクレスの物語は、彼の性格があまりにも原型的なものであり、かつ他の文化の神話世界でどのような役割を果たしているかを考慮に入れれば、彼らが費やした凄まじい労力が分かる。


劇作家バーナード・エヴスリンが挙げるギリシア七英雄とは、
メデューサ殺しペルセウス、ペガサスの主人ベレロポンテース、猪狩りのメレアグロス、
アテネの王テセウス、竪琴弾きオルフェウス、最大の英雄ヘラクレス、航海者イアソン
であろう。トロイア戦役の英雄は(ヘクトル、アキレウス、オデュッセウス、アイネイアスをも除いて)これに入らない。

世界神話中で最も複雑な様相を呈するギリシア神話は、彼等の記録好きと、芸術に対する姿勢を示している。全ての伝説物語と同じく、詩人によって新しく創作された物語が、より古い時代の物として導入される事は共通している。


神話の時代と伝説の時代の境目に置かれる事になる、四つの物語は、恐らく真の歴史の記憶に起因する事実からなる物であろう。創作に関わった年月は最も古く、複雑である。順に挙げれば、(ヘラクレスに纏わる出来事を重視し、最も「相応しい」順番で並べれば、)

1・カリュドンの猪狩り/オンパレ女王に召し使われるヘラクレス・ヘラクレスの結婚
ヘラクレスは、母に殺されたメレアグロスの幽霊に妹デイアネイラを託される

2・アルゴー船の航海/ヘラクレスは途中で下船
ヘラクレスは寵童を追って姿を消す・この冒険には十数年を要した

3・テーバイ攻防戦(1&2)/オイディプスの子等・後継者達
最初の攻城で、攻め手はヘラクレスの馬の戦車を持ったアルゴス王を除いて全滅した

4・十年のトロイア戦争/後継者達(内一人がディオメデス)の参加・ヘラクレスの弓
ピロクテテスは自ら焼死しようとする英雄から、パリスを倒す弓を与えられた
である。


1・カリュドンの猪狩り・アルテミスの呪いとメレアグロスの宿命

メレアグロス、アタランテ、メレアグロスの伯父プレクシッポスとトクセウス、カストル&ポリュデウケース、千里眼のリュンケウス&翼ある戦車のイーダース、性転換したカイネウス、ペルセウスの孫レウキッポス、アキレウスの教師ポイニクス、ペレウス&テラモン、ペレウスの義父エウリュティオン、アポロンの友アドメートス王、ヘラクレスの甥にして従士イオラーオス、若き(後、トロイア戦役の)ネストール、千里眼の鳥占い師モプソス、後のテーバイ攻め七将の予言者アンピラーオス
詩人達の付け加えた英雄達・ペリアスの息子にして誠実なるアカストース、テセウスと親友ペイリトオス、イアソン、ペネロペイアの父イカリオス、オデュッセウスの父ラエルテース,リュクルゴスの子アルカディアのアンカイオス、テーバイの貴族エキオン、エリス王アウゲイアスの息子ピュレウス

2・アルゴー船の航海・金羊毛を求めて

乗組員名簿(最初は50名)
主要人物・船長イアソン、竪琴弾きオルフェウス、有翼のゼテス&カライス、カストル&ポリュデウケース、千里眼のリュンケウス&翼ある戦車のイーダース(この二兄弟は後に決闘をした。)、,ヘラクレスと寵童ヒュラス(途中下船)、ペリアスの息子にして誠実なるアカストース
技術者・船大工アルゴス、舵手兼水先案内ティピュス、航海士ナウプリモス、楽人ピラモン、伝令アイタリデス、ポセイドンの息子にして変身術師ペリクリュメノス、タイナロンの鳩飼いエウぺモス、鳥占い師モプソス、予言者イドモンとアカイオス、養蜂家ブテス
詩人達の付け加えた英雄達・テセウスと親友ペイリトオス、テーバイの貴族エキオン、オイカリア王エウリュトオス、ヘラクレスの敵エリス王アウゲイアス,アポロンの友アドメートス王、メレアグロスの父オイネウス、性転換したカイネウス、リュクルゴスの子アルカディアのアンカイオス、メレアグロスの姫アタランテ(射手ピロクテテス、メレアグロス・彼等については必然性が無く、年代も合わないと思う。)
コルキス人・魔女メディアと、その弟アプシュルトス
3・テーバイ攻城戦・三大悲劇作家の叙述による

オイディプスは忘恩な息子達に呪いを掛けた。しかしテーバイの呪いは、アレスの飼っていた龍を殺した、カドメイアのカドモスがハルモニアーと結婚した時の結納品、アレスとエリスの首飾りの内に既に篭められていたのであり。彼の呪いは不幸を更に未来に波及させる役割を担うに過ぎなかったのである。
描写によると、テーバイには七つの城門があり、それぞれを攻め手が手勢を分けて攻めかかり、守り手もそれに応じた。

第一回・オイディプスとイオカステーの近親相姦から生まれた、ポリュネイケースとエテオクレースの玉座争いに始まり、アンピラーオスはこの戦が敗北に終わる事を知っていたが、誓いに縛られて従軍する事になり、不実な妻へ罰を与えるよう留守居に頼んだ。テュデウスとポリュネイケースの舅、アルゴス王アドラーストスはヘラクレスに贈られた名馬アリオンを戦車に繋いでおり、彼が命を長らえたのはこの事による。
テーバイとギリシア最大の予言者、盲目のティレシアスの予言に従い、クレオンの息子メノイケウスは都の為進んで自分を生け贄にした。

テーバイ側 攻撃側
摂政クレオン、メノイケウスの自害 アルゴスのアドラーストス王
一の門 ヒュペルビオス ヒッポメドン
二の門 メガレウス メーキステウス
三の門 メラニッポス 狂暴なるテュデウス
四の門 ラステネス 予言者アンピラーオス
五の門 アクトール パルテノパイオス
六の門 ポリュフォンテス 神を畏れぬカパネウス
七の門 エテオクレス王 ポリュネイケース前テーバイ王
守り手はエテオクレスを除いて全て生き長らえた。アドラーストスはアテネ王テセウスに保護を求め、テーバイの玉座はエテオクレスの息子ラオダマスが継いだ。アンティゴネーはポリュネイケースの埋葬を巡ってクレオーンと争い、再び悲劇が齎された。

第二回・ポリュネイケースの息子、テルサンドロスが従弟の玉座を望んで、最初の包囲で亡くなった英雄達の復讐心を煽った。今度は都を守る為に自分の命を捧げようとする者は現れず、テーバイの劫掠の運命は定まった。
死の淵に臨んだティレシアスは、今度は確実に守り手側が敗北する事を予見し、自分の愛する都が陥落するのを見ないで済むと思って喜んだ。ティレシアスの予言で浮き足立つ守り手の名前は知られず、攻め手の名前のみ知られている。各々が復讐心に駆られ、自分の親族の亡くなった門に挑んだ。
攻撃側
一の門 アイギアレウス
二の門 エウリュアロス
三の門 オデュッセウスの友ディオメデス
四の門 アルクマイオンもしくはアンピロコス
五の門 プロマコス
六の門 ステネロス
七の門 玉座要求者テルサンドロス
今回はアイギアレウスを除いて、攻め手側の全てが生き残った。彼等の多くがトロイア戦役にも参加する事になる。

4・トロイア戦役

ギリシアの将帥達は、「ヘレネへの求婚」が行われた際に出征する運命が定まった。しかしトロイアの富への羨望と、勢力争いが背景として、「歴史的な」戦争の原因として挙げられるのは当然の事である。オデュッセウスとアキレウスの従軍拒否は、予言による物であったが、予測は正しく、勝者の側も、戦いの後、自分達を歓迎しない故郷で幾多の辛酸を舐めねばならず、手に入れられた物は無に等しかった。

ギリシア側
偉大なるアキレウス、狡猾なイタケのオデュッセウス、大アイアス、ロクリスのアイアス、射手テウクロス、長老ネストル、予言者カルカス、クレタ王イドメネウス、総大将にしてミケナイ王アガメムノン、アガメムノンの参謀タルテュピオス、スパルタ王メネラオス、アポロン神官クリュセウス、先陣プロテシラーオス、アルゴスのディオメデス、オデュッセウスの仇敵パラメデス、アキレウスの親友パトロクロス、道化役にしてディオメデスの親族?テルシテス、イドメネウスの従士メリオネス、ネストルの息子アンティロコス&トラシュメデスそしてペイシストラトス、アスクレピオスの息子マカオン&ポダレイオス、パラメデスの弟オイアクス、木馬作りのエペイオス、木馬の先触れシノン、テーバイ攻めのステネロス
後から参戦・アキレウスの息子ピュロス・ネオプトレモス、ヘラクレスの弓の所有者ピロクテーテス、パリスとニンフオイノネーの息子コリュトス
娘達・生け贄にされたイピゲネイア、ブリュセイス

トロイア側
ヘカベは夫の言い付けを守らず、パリスを逃がしてしまい、アレクサンドロス・パリスの悪運が全ての悲惨を招いたが、ヘレネの美しさは彼等が死を恐れない心持ちにしたといわれている。
プリアモス王、ヘカベ王妃、
王子王女達・高貴なるヘクトル、凶運を齎す者パリス、勇敢なデイポポス、先見の力有るヘレノス、悲惨なるカサンドラ、アイネイアスの后クレウーサ、末弟?トロイロス(シェークスピアでは成人である)、ポリュクセネ、義父に殺されたポリュドロス、ヘクトルの息子アステュアナクス
女性達・ヘレネ、ヘクトルの后アンドロマケ、クリュセイスの娘クリュセス
王族と家臣・アイネイアス、アイネイアスの親友にして家臣アカーテース,知将ポリュダマス、参謀アンテノルとその息子アゲノール、神官ラオコーン、間諜ドロン、
同盟軍・白鳥の戦士キュクノス、ヘラクレスの孫エウリュピュロス、射手パンダロス、参戦した日に暗殺されたトラキア王レソス、メレアグロスに討たれたリュキアのサルペドン、リュキアのグラウコス、アマゾン女王ペンテシレイア、エティオピア王メムノン

トロイア落城の条件を満たすには、幾多の予言を実現させなければならず、パラメデスとオデュッセウスがこの為に奮闘した。カサンドラはトロイア側で最も実力のある予見者だったので、彼女の悲惨さは目を覆うばかりであった。

トロイアに先陣する者は命を失う(プロテシラオスは運命を恐れなかった)
オデュッセウスの知恵がトロイアを打ち壊すには必要。彼は故郷に二十年戻れない(パラメデスとオデュッセウスの知恵比べ)
半神達を殺す為には、アキレウスの参戦が必要。彼は討死にする定めにある(テティスは彼に女装させたが、商人に扮したオデュッセウスが彼に剣を渡してしまった)
トロイロスが生きている限りトロイアは落ちない(彼の死については諸説あるが、アキレウスに討たれたという説が有力)
レソスの馬がスカマンドロスの水を飲めば陥落しない(ディオメデスとオデュッセウスの最初の潜入)
アテナの彫像、パラディオンがトロイアにある限り陥落しない(ディオメデスとオデュッセウスの二度目の潜入)
アフロディテに護られたパリスを殺すには、ヘラクレスの弓が必要(ピロクテーテスが機嫌を直して参戦)
アキレウスの鎧を着たアキレウスの息子がプリアモス王を殺す(ピュロス・ネオプトレモスが島から連れてこられる)
スカイア門の石の梁が立つ限り都は落ちない(梁を壊さないと、木馬が入れられなかった)
十年の歳月と木馬の計略

殺人名簿
アキレウス:キュクノス、ヘクトル、ペンテシレイア、メムノン、
トロイロス、テルシテス
パトロクロス:サルペドン
メムノン:アンティロコス
ヘクトル:プロテシラオス、パトロクロス
ペンテシレイア:マカオン
オデュッセウス:パラメデス
ピロクテテス:パリス
パリス:アキレウス
ネオプトレモス:エウリュピュロス

女性達及び、アキレウスの鎧は宝物の内に入る。

後日談
落城の際、総大将デイポポスはメネラオスに殺され、老王プリアモスは残虐なピュロスに猶予も与えられず殺された。パリスを助けた罰として、ヘカベは唯一無事だと思っていたポリュドロスの死体の漂着を見て発狂し、神々の憐れみを受けて犬に変じたと言われる。

テウクロスは腹違いの兄弟、アイアスが非業の死を遂げた事を阻止出来なかった事、彼の家族が帰路で難船した事を父テラモンに責められて追放され、シリアに向かい、更にキプロスのサラミスに向かった。

ディオメデス、イドメネウス、ピロクテテスはいずれも故郷では歓迎されず、南イタリアに国を新しく建てた。

傲慢なロクリスのアイアスは、アテナの聖所でのカサンドラの強姦を神々に責められて難船して死んだ。

半ば狂ったカサンドラは、アガメムノンに連れられて故郷に帰り、主人共々アイギストスに殺された。アンドロマケの運命は彼女よりは幸運だった。

ヘレネの運命については説があり過ぎて考えたくもない。しかし個人的にはオデュッセイアにある通り、「なにもなかったように」最後まで幸福に暮らしたというのが、最も皮肉に満ちていて良いと思う。


三人の航海者・イアソン・オデュッセウス・アイネイアス
御者座エリクトニオス、乙女座アストライア

以下の神話は呉茂一の収集から洩れているが、一応ここで補足しておく

カドモスとテューボーン
プルタルコスにエジプトの嵐の神、セトと同視されたテューボーンはゼウスの敵の内で恐らく最強の存在であり、頭として百の蛇の頭部を持った巨人である。彼はエキドナを妻として後の世における、諸々の怪物の始祖となった。この事件は、彼がエウロペを追ってフェニキアを離れる以前の出来事かも知れない。カドモスはカドメイア・テーバイの創始者であるが、テューボーンにやられて足の腱を外されたゼウスを助けた伝説がある。(他の伝説によると、この役割はヘルメスが引き受けている。)

ディオニュソス対ペルセウス
この事件はティリンスの王、ペルセウスの治世晩年に起きたらしい。インドの征服者である異母兄弟を、ペルセウスは悲劇「バッカスの女達」の主人公、ペンテウスと同じく認めなかった。彼と酒の神は相討ちになり、ペルセウスはそのまま返って来なかったが、ディオニュソスは神の力を発揮して黄泉路より戻り、母親、セメレーを連れ帰ってきた。

イーダースとリュンケウス対、カストールとポリュデウケース
カストール達がイーダース達の女を奪ったのが原因と言われている。カストールがリュンケウスを討てば、イダスに殺された。イダスを殺害した「鉄の拳の」ポリュデウケースは父親ゼウスに懇願して双子の兄弟と共に星座になった。

アトレウス家の悲劇
アトレウス家の凶運が、ペロプスの義父の殺害によるのか、その御者ミュルティロスの死に際の呪いによるものか、アトレウスとテュエステス兄弟の醜い争いによる物なのかは不明である。殊に拠ると、更に溯ってゼウスの息子にしてペロプスの父、タンタロスの神々への侮辱が、この子孫達に累を及ぼしたのかもしれない。彼は神々に自分の息子の肉を食べさせようとしたのだ。

エウリュステウスが討たれた後、ミュケナイの玉座が開いたので、以前からこの地に亡命していた二人の王子のいずれかが継承する事に決まった。ちょうどその頃、アトレウスとテュエステスはミノスの孫娘であるアエロペを奪い合って争っていた。アトレウスが彼女と結婚したが、テュエステスは姦通して二人の息子を彼女に産ませてしまったのである。アトレウスはゼウスの寵を恃み、太陽を西から昇らせてギリシアの大王の資格を弟から奪った。しかしその後、彼が採った酸鼻極まる弟への仕打ちは、ゼウスに背を向けさせるに充分であった。アイギストスはペロピアに産ませた息子達の肉を食べさせられ、追放され、復讐に燃えるテュエステスとその娘ペロピアの近親相姦の所産といわれている。ペロピアは身篭ったまま伯父アトレウスの後妻となり、アイギストスをアトレウスの息子と偽った。

アイギストスは「名目上の」父親アトレウスを殺して実の父にして祖父であるテュエステスをミュケナイ王にしたが、アガメムノンがこの伯父にして義理の祖父を殺し、「名目上の」弟にして従兄弟アイギストスを追放した。

クリュタイメネストラはヘレネとディオスクロイの姉妹だったが、少なくとも彼女だけはゼウスの血を引いていなかった。彼女がアトレウス家の呪いの影響を受け始めたのは、アガメムノンが最愛の娘、イピゲネイアを生け贄に捧げた恨みからだと推測される。(彼女は結局生け贄にはならなかったが、母親はその事を知らない。)彼女はアイギストスを寝床に引き込み、残りのアガメムノンの子らを疎んじ始めた。

「琥珀」エレクトラは戻ってきた弟を唆し、憎む母親を殺させた。「不幸を一身に背負った」オレステスは、母親の死の呪いを払う為に、復讐の女神達の手で狂いつつ、アテナイで父権と母権の裁判を受け、更に黒海北岸に旅して、失踪した姉にして巫女イピゲネイアに会わなければならなかった。幼馴染の娘を手に入れる為にプティアに向かった時は、英雄の息子を殺さざるを得なかった。オレステスとヘルミオネ、彼等は最後にはミケナイと小アジアの王と女王として君臨し、長年にわたる呪いを終結させたと言われる。

ヘレノスとアンドロマケ
エウリピデス劇に用いられ、フランス古典劇の素材にも使われた「不運なる」アンドロマケは夫と息子を奪われた後、好色な少年ピュロスに連れられて、プティアに行った。そこでヘルミオネーと正妻の座を争い、オレステースが幼馴染の娘を手に入れる為、ピュロスを暗殺した。アンドロマケは最後に昔の義弟、ヘレノスに娶られ、エペイロスで平和に暮らしたという伝説がある。アイネイアスは彼等に迎えられて、暫く平穏を楽しんだ。

出典:


ギリシア神話:神々と英雄たち カール・ケレーニイ著

ギリシア神話 トマス・ブルフィンチ著

ギリシア神話 呉 茂一著

ギリシア神話 神々と英雄辞典 バーナード・エヴスリン著
関連リンク

Ancient Sites (Now Deadlink):
http://www.ancientsites.com/index.rage

Encyclopedia Mythica:
http://www.pantheon.org/mythica/

The Prehistoric Archeology of Aegean:
http://devlab.dartmouth.edu/history/bronze_age/

The Classic & Mediterranian Archeology:
http://rome.classics.lsa.umich.edu/welcome.html



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