アーサー王と円卓の騎士伝説の資料と参考文献:
(日本語で読めるもののみ

Referential Texts of King Arthur &Knights of the Round Table:
(Only Japanese Translated Books)



英語で読めるアーサー王の物語は膨大な量にのぼるため、ここでは触れない(と言うべきか・・・)

ここで挙げる騎士物語の定義は:
1:意識的にせよ、無意識的にせよ、キリスト教徒である(ゆえに古代の作品は該当しない。逆に現代の作はそれがあえて異世界の幻想であってさえ、キリスト教の影響から免れることは難しい。)
2:「騎士道」が世界に存在する(ヨーロッパ限定、またファンタジーであっても、ゴーメンガーストや指輪物語などは背景状況からして該当しない。)
3:異教的世界の独特な歪曲(これにはディートリッヒの古伝説などははまらない)

聖杯伝説
非ブリテン人の多くの騎士物語がアーサー王物語を原点として多くの物語体系を築いているのは、
一時期ヨーロッパの文化をアイルランドやウェールズの宣教師達が担っていた時代があったかららしい。

聖杯探索はフランス人のクレティアン・ド・トロワが着想し、ドイツ人のヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハが完成させた。彼の難解な文章は個人的には極めて興趣に溢れたものであり、文学的には玄人好みのものと言える。

主役はマロリーの流布本を原点としたランスロットやギャラハッドを主役としているのと対照的に
パルジファルとガーヴァーン(ドイツ読み)を主人公に位置づけている点で、紋切り型の騎士道に飽き足らない
人にはお勧めといえるかも知れない。ある意味でこれが聖杯探索物語の頂点であり、これ以上のものは以前も以後も
現れていないのだから。(宮廷恋愛についてはまた別の話となる)


王の怪我を土地と神の恩恵が去ることと連関させて、ケルトの小道具である盃が傷を癒すという構想は
ジョーゼフ・キャンベルがその議論の中で述べている通りらしい。
中世
「マビノーギオン」Mabinogion:ウェールズの伝説集成。アーサーはケルトの神々を従臣とする武勇の優れた王として登場する。「神の敵」?
ジョフリー・オブ・モンマスGeoffrey of Monmouth「ブリテイン列王記」The Historia Regum Britanniae:偽典。アルビオンを古典世界に結びつけるアイデアと、アーサーとマーリンの事績について事実であるかのように語る。アーサー伝説の骨組み。
クレティアン・デ・トロワChretien de Troyes:(フランス語版)クレティアンは「エレック」、「ランスロ」などでほぼ円卓騎士団のイメージを完成させた。
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハWolfram von Eschenbach:(ドイツ語版)「パルジファルParsival」キリスト教の元に神秘主義と聖杯伝説を統合。中世騎士物語の最高峰と言える。
ゴットフリート・フォン・シュトラスブルクGottfried von Strassburg:(ドイツ語版)「トリスタンとイゾルデ」宮廷恋愛と「魂の燃焼」についての洞察力、理想化。
トーマス・マロリーThomas Mallory:英語版「アーサーの死」Le Morte d'Arthurにより、騎士道についての完成形を示す。(パーシヴァルやトリストラムの完成を犠牲にして)

近世と現代
アルフレッド・テニスンAlfred Tennyson:桂冠詩人、もっとも象徴化された?円卓の騎士を主題とした詩を書いた。「国王牧歌集」Idylls of the King
リヒャルト・ワグナーRichard Wagner:「パルジファル」、「トリスタンとイゾルド」、「ローエングリーン」等、彼のオペラは多くのアーサー王伝説を取り入れているが、もちろんその作者の気質に応じて改変を受けている。
チャールズ・ウィリアムズCharles Williams「ログレスを行くタリエシン」Taliessin through Logres&「夏の夜の国」The Region of the Summer Star(韻文):現代象徴主義と記号論、(通俗?)心理主義の融合
T・H・ホワイトTerrence Hanbury White「永遠の王The Once and Future King」創元推理文庫:第一部は時間を遡るマーリンと「人間的な」アーサー王を主人公に、第二部は醜い騎士と年老いた王妃の恋愛(きわめて色気に欠ける・・・)を描く。
マリオン・ジマー・ブラッドリーMarion Zimmer Bradley「アヴァロンの霧The Mists of Avalon」早川SF文庫:キリスト教とドルイド教の対立。(女性原理とその否定?)肯定的なものであるはずの「人間知性」が登場人物をかえって不幸にする。
バーナード・コーンウェルBernard Cornwell「アーサー三部作Arthur Trilogy」原書房:リアリスティック?な時代描写(暗黒時代への突入)キリスト教とドルイドの対立。本国ではテレビドラマ化されたらしい・・・「全ては涙のうちに終わるのだ・・・」
夏目漱石小品「幻影の盾」、「韮露行」
「居ながらにして世の成り行きを知るマーリンは、首を棹りて慶事を肯んぜず。この女後に思はぬ人を慕ふ事あり、娶る君に悔いあらん。と只管に諌めしとぞ。」

その他の騎士道物語
ローランの歌Song of Roland:ロンデスヴァリス峠で凄絶な最期を遂げる王甥と親友

ボイアルド「恋するオルランド」&ルドヴィコ・アリオストLudovico Ariosto「狂えるオルランド」Orlando Furioso:ルネサンス時代のシャルルマーニュ伝説叙事詩
E.R.エディスンErich R Eddison「ウロボロスWyrm Ouroboros」:「ヨーロッパ中世」に似た環境に住む水星人達の物語。マンティコアやヒポグリフなど、幻想的でありながら、キリスト教騎士物語にむしろ近い要素を外皮の下に保っている。
エドマンド・スペンサーEdmand Spensor「神仙女王Faerie Queen」:完成して十二徳を誉める寓意詩となるはずだったが未完。グロリアーナはエリザベス女王の顕現。登場人物の一人はアーサーだが、彼は「寛容」の徳を体現している。
エレン・カシュナーEllen Kushner「剣の輪舞Swordpoint」:早川FT現代ファンタジーだが、秀逸な構成力と表現力に一見の価値あり。「吟遊詩人トーマス」も良。(「トーマスの章」登場人物の一人にアーサーらしき人物あり)


いわゆる通俗文学:
スプレイク・D・キャンプ「ハロルド・シェイ」:コメディであり文学的価値については?しかし主題は北欧神話エッダEdda、神仙女王Faerie Queen、狂えるオルランドOrlando Furioso、カレワラKalevara、トィン・ボ・クールニエThin Bo Cuailgne(クーリーの牛争い)と古典ファンタジーの導入としてはかなりのもの。
ロジャー・ゼラズニイRoger Zelazny「キャメロット最後の守護者Last Defender of Camelot」、「真世界アンバーThe Chronicle of Amber」:神話を題材に取り入れることを得意とする作家としても、ミルトンと同じように、アーサー王物語の主題は非常に魅力的であったらしく思われる。

ソロゲーム(Game Bookとも言う)
J.H.ブレナンBrennan「グレイルクエストシリーズ」:これはユーモアファンタジーであり、世界の雰囲気にそれなりに関わってはいるが・・・詳細はこちらのサイトで詳しく知るべし。
(ヴォルフラムの乾いたユーモアはグレイルクエストに通じるものがある?グレイルクエスト最後の巻の聖杯についての要素はクレティアン及びヴォルフラム神秘主義のパロディである)
林友彦「ティルトシリーズ」:著者はアーサー王伝説に造詣が深いらしく、ネバーランド、ニフルハイムの続き物が未完のままで終わったのは残念だった。準続編については「ウルフヘッド」、「カボチャ男」があるらしい(笑)原著者とコンタクトをとるのはこちらから可能である。

関連サイト
The Online Medieval & Classical Library:
http://sunsite.berkeley.edu/OMACL
Arthurian Archive:
http://www.io.com/~tittle/books/arthurian.html
King Arthur Dictionary(Japanese): 
http://www.minic.com/arthurdic/main.html
Bulfinch Mythology &Legend:
http://www.bulfinch.org/

アーサー王伝説資料室(Japanese):
http://www.chitanet.or.jp/users/10010382/htm01/p00140.html

宴会場に戻る
螺旋回廊へ