アーサー
アーサーがコーンウォールのティンタジェルで生まれた時、大熊座の星が一際強く輝いたと言う。彼はすぐにユーサーの許可によってマーリンの手で攫われ、下級豪族の家庭に預けられた。
「石の剣」はペンドラゴン一族の重代の宝剣であったが、祖先の英雄の一人が金床に凄まじい力で突き刺して以来、野心家が多く試み、岩と刀身をぼろぼろにしたが誰にも抜けなかった。予言者達が王家直系の者にして最良の君主にのみ引き抜けると予言し、マーリンに連れられた一人の男の子が易々と果たした事で、全てが始まった。彼の名はラテン語でアルトリウス、「勝利の王」と言う称号を土着のローマ人から与えられた。
ウォートと呼ばれる子供のアーサーは師であるマーリンを利用し、その魔術を盗み取り、用がなくなったので幽閉した。すでにその頃は魔術的な力は水面下に隠れ、剣の力に取って代わられていた。これがアーサーの望んでいたことである。
次にアーサーは盟友である「咆える獣を追う騎士」ペリノアを利用した。ペリノアに私の父を殺させたのは彼である。そして御しやすいランスロットを手に入れ、ペリノアが自由を求めるようになると刺客、私である、を送り死に至らしめた。彼の息子である豪勇ラモラックも、私と私の弟達に殺害された。
ランスロットと互角に戦い、アーサーの理想を最後まで信じなかったトリストラムは毒の傷を受けて亡くなったが、私はアーサーの手によるものだという疑惑を捨て切れない。アーサーの王国は後のシャルルマーニュの帝国と同じく、古のローマの威権を借り、外交上「ログレス・ローマ帝国」と呼ばれた。そして、アーサーは更なる十字架の力を求め、ここから彼の失敗と転落が始まる。
そして最後まで事情を知りつつ、従い続けた私もアーサーの理想を信じ、利用されることを拒否しなかった者である。彼の統治は続くはずであった。彼が利用し続けた古の神々の力と、白いキリストの力が反抗を起こし始めるまでは。
前者の代表がモードレッドであり、王と王の姉の子、キリスト教以前の近親婚の所産である彼は王国の民を多く離反させ、アーサーを表舞台に引きずり出した。後者の代表が神聖な少年ギャラハッドで、アーサーの騎士の半分を失わせ、父親を王から引き離した。もし全てが神聖な摂理を原因とする物ならばアーサーは邪悪そのものであり、二人の鬼子は神の両手である。
二人ともアーサーの作り出した文明により洗練されていながら熱狂しており、アーサーの現実を否定したのだ。
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