試合レポート

 
第9節10月17日 横浜マリノス対名古屋 横浜国際競技場

 またしても、雨。先週のナビスコ杯に比べれば可愛いものだし、横浜国際は屋根があるから観客はいいが、選手達の消耗を考えるとため息が出る。代表選手にとっては連戦につぐ連戦。疲れはピークだろう。事前の練習で、能活は2球ほどボールを後ろに取りこぼしていた。ただし、後に本人が言うように最近雨男と化しているものの、雨であるが故のミスを見たことはない。それはこの日も、そうだった。

 開始早々、俊輔が遠目から積極的にシュートを打ってきた。そこからCK。キーパーがパンチングしたボールを、平間がシュート。DFに当たるが、これはその前にファウルがあって笛。俊輔の大きなサイドチェンジから平間の折り返し、バーに当たったブリットのシュートなど、悪くない立ち上がりだ。この後も左のドゥトラ右の平間からクロスやシュートが放たれる。一方守備機会は、10分過ぎまでほとんど無し。能活が「最悪の人」と賞賛(?)する森山の飛び込みにもDFがしっかり付いていた。

 最初のピンチは19分、ウェズレイのFK。正面少し遠目からワクに飛んだそれは、しかし能活がこともなげにはじき出す。その後のCKも最終的にDFがクリア。前節の浦和戦もそうだったが、中盤で簡単にボールを奪える。そして相手ゴール付近までボールを運べるし、この日はシュートも多かったが、なかなか決まらない。ブリットはトラップが大きいし城も打ちきれない。30分を過ぎ、少し攻守の切り替えが早くなってきた。32分にはウェズレイに打たれたシュートを、能活がセーブ、ナザがかき出す。それでもマリノスの攻勢に変わりはない。そのわりにイエローカードが多いのはいただけないのだが、それはマリノスだけではなく名古屋にとっても同じで、後半への伏線にもなるのだ。前半は0−0で終了、能活は納得できないらしく、首をひねりながら引き上げていった。

 後半に向けて入場してきた能活は、遠藤の方を抱き何やら話していた。開始してしばらくは名古屋ペース。ウェズレイの突破はDFが止め、CKからふわりと上がったヘディングは能活が左手1本でさりげなくキャッチ。キーパーグローブに接着剤でも付いているようだ。攻撃では、俊輔のスルーパスなどもあるにはあったが、今ひとつこれという形にならない。攻めあぐんで能活までボールが戻ってしまったりする。そうこうしているうちに、ナザが怪我で交代となった。まだ54分という早い時間。ただ、交代で入った小原がこのところ落ち着いたプレイを見せているので、それほどの不安はない。怪我をしている選手が無理をして戻ってくるのは困るが、「休んでいてはレギュラーを奪い取られる」そう焦るくらいに控えの選手が充実しているというのが理想で、ほんの少しずつそれに近づいているようだ。

 60分、城が倒れ込みながら出したパスに俊輔が抜け出す。これが相手のファウルを誘いイエロー、この日2枚目のカードだったことから退場となった。俊輔のFKは惜しくもバーの上だったが、少しずつワクをとらえ始めているようで、次に同じような場所からFKがあれば決まるのではと、期待されるものだった。64分、前節の怪我をヘッドギアでカバーしながら、この日も攻守に奮闘していた永山がパスカット。城が上手くトラップをするがシュートはバーの遙か上。能活は遠く反対サイドでコケていた。このすぐ後、城がアウト安永が入る。清水に移籍していた彼は久しぶりのトリコロールであり、久しぶりのリーグ戦、何かやってくれそうだ。入ってすぐペナルティーエリアからクロスを入れるが、これは俊輔の足元過ぎてそのまま外へ出てしまう。

 11対10で優勢になったマリノス、ボールのキープ率は高いのに相変わらず攻めきれない。マイボールになってからのスピードが極端に遅く、 スペースがあるのに誰も走り込まない。時間は刻々と過ぎていく。先制点どころか、76分にはウェズレイに強烈なシュートを打たれてしまう。能活が当たり前のようにはじき出すが、危険なシーンだった。83分にもシュートを打たれ、見ている方は次第に焦り始める。冗談ではない、10人相手に延長戦だなんて。どうしても90分で勝ち点3を取らなければ降格の恐怖からは逃れられないのだ。

 やっと点が入ったのは残り5分という時間だった。俊輔が出したパスを安永が上手くゴール前に流し、相手GKの鼻先で走り込んだ俊輔がスルー、最後はブリットが足を伸ばしそれをゴールに押し込んだ。84分までのプレイには色々文句があるのに、結局決めるのはブリット。FWは点を取ってなんぼ、結果を出している以上彼はいいFWなのだ。待ちこがれた先取点に、能活はピッチに転がり喜んでいた。そしてここで平間に替え木島。「走り回って引っかき回して、後はキープ!」思わず声を出してしまう。何と言われてもいい、相手は10人、守り倒せ。そういう意味で、相手ペナルティー近くで粘った安永には、思わず「エライ」と言いたくなった。

 そしてこの試合のクライマックスは89分、遠藤のミドル。浦和戦で惜しくもバーをかすめたあれを、やり直したかのようなシュートは、今度はバーを叩きながらもゴールラインの中に落ちたのだった。能活はハーフウェイラインまで走ってきて、遠藤の頭を抱きかかえる。同じ日にマリノスに入団し、共にアトランタ五輪を戦った仲だ。後のコメントを読んでも、遠藤には「旅立つ能活のために」という思いが強かったようだ。この後ブリットが1対1を決められなかったのは、得失点差のことを考えてももったいなかったが、 とにもかくにもこのまま無失点で試合終了。松田としっかり抱き合ったシーンが印象的だった。

 客席への挨拶に行こうとする能活を、インタビューへと案内する人が声をかけたとき、拒否したように私には見えた。仲間達と一緒に挨拶がしたかったのではないだろうか。しかし結局はメインスタンド前へ。その割には、ブリットの受け答えの間待たされていたのだから、みんなと一緒に居させてあげれば良かったのにと思う。インタビューの後、大勢のマスコミに囲まれて一人で挨拶に来た能活は、深々と頭を下げていた。どんな思いが胸をよぎっているのか。 今はただこの完封勝利の喜びに浸っていよう。
最後の試合も、いつもと変わらぬパフォーマンスで勝利を呼び寄せてくれるはず。どんな試合も大切な1試合に変わりはないと、誰よりも知っているのは能活なのだから。
          
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