久しぶりの生観戦、超久しぶりの観戦記である。天気は上々、風は少し強かったが観客も2万人入りまずはサッカー日和。チャンピオンシップに向けて調子を上げていきたいマリノスにとって、J1残留のかかっている市原はいい相手かもしれない。内容のある試合を期待していた。・・・が。
始まって1分とたたぬ間にCK、まだ能活はボールに触ってもいない。これはDFがクリアして事無きを得るが、どうもボールが支配できない。市原の寄せが早く、パスコースを消される。出場停止明けの柳とスペイン帰りの城が2トップを組んでいるというのに、そこまでボールが渡らないのだ。半端なボールは必ずカットされる。ただしそこからの攻撃は足元に飛び込んで能活がセーブしたり、DFが阻止したりで、点は許さない。
30分、その能活のセーブの後チャンスが生まれる。ようやく前線の城にボールが渡りキープしようとしたところにファウルを受けた。ちょっと近すぎる気もするがFKのチャンス。これをいとも簡単そうに俊輔が蹴る。誰も何も出来ない軌跡を描いてボールはゴールネットを揺らした。マリノス先制。能活はセンターサークルのあたりまで喜びに行こうとして途中で方向変換、ベンチ前で指示を受ける。
さあ、ここから修正してエンジン全開、・・・と思ったが相変わらずペースは上がらない。32分、俊輔が決めたのとほとんど同じ位置でお返しのようにFKを取られる。これは壁にあたるが、この後体調不良の城がアウト、変わって入ったエジミウソンから柳にいいクロスが入るもミートできず。俊輔からのスルーパスは今一歩で相手キーパーの手に。42分に得たCKがこの試合初めてのものだというのが、いかにゴール前での攻防が少ないかを物語っている。俊輔は五輪からの疲れがたまっているのか、ミスが多い。目に付いたのは、前節に続いていい動きをしている木島だろうか。1−0のまま前半終了、それでも能活には笑顔も見られた。
それにしてもマリノスバックパスが多い。それを悪いことと思わないのは、困ったから逃げるというパスではなく、キーパーからもう一度組み立てるためのパスだからだ。能活は11の中の1人として、当たり前のようにそれを危なげなくさばく。時にクリアのためぎりぎりのタイミングで来るが、それでも落ちついたものだ。出し手も受け手も信頼しあっているであろうことが、見て取れる。
さて後半も相変わらず。後にチームのオフィシャルページで見たら、シュートはこの試合たった4本だった。それでも何度か木島の上がりからセンタリングというシーンが見られる。ただDFにカットされたりオフサイドになったりで、シュートまで行かない。俊輔がスペースを指し欲しがっているのに、木島が自分で行って結局ボールをとられてしまうというのが2度ほどあった。チームとしてはそれではいけないのだろうけど、その積極的な姿勢は買える。なにしろマリノスの選手はシュートが嫌いなのかと思うくらい、ゴール前でパスを出すことが多いから。城がスペインで学んだ「ゴールが見えたらまずシュート」という気持ちを、植えつけていってもらいたいものだ。
守りのほうは、能活の好守、危うく外れたシュートなどあったが、とりあえずは破綻無く完封できた。後半終了間際には、俊輔がコーナー近くでDF二人を相手にして右にかわし左にかわし、最後はファウルを誘い時間を稼ぐというしたたかさも見せ、結局は1−0でタイムアップ。とにかく勝った事に意義のある試合であった。能活は笛が鳴るとまず松田・小村に声をかけ、90分走り回った木島の頭をぽんぽんとなでる。後半24分から出た小倉と抱き合っているのを見て、なんともいえない感慨が沸いてきた。あの日、アトランタ五輪予選前の合宿で、あんな大怪我をしなければ、オグと能活は日本代表で一緒にプレイしているかもしれないのに。そういえば・・・と思う。俊輔はさんざんフィジカルが弱いといわれているが、大怪我をしていない。腰痛以外に怪我で欠場したという記憶が無いのだ。当たりの激しいサッカーというスポーツでは、あるいは“うまくコケること”も必要なのかも知れない。柔道の受身のように。
その俊輔、ヒーローインタビューで口から出るのは反省ばかりだった。能活は「これからはトーナメント、チャンピオンシップが決勝戦のつもりで闘う」と、いつもながら前向きなコメント。そう、いくら照準はCSだからといって、リーグ戦で勝敗を無視した実験や調整をしてもらっては困る。プロならば、勝ちながら調子を上げていってほしい。私達は楽しむためにお金を払って見に行っているのだから。
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