1stレグで3−0とリードしているマリノス、普通なら何の心配もなく競技場に向かうのだが、この日は違った。ここ2・3日能活の移籍問題が取りざたされているからだ。「もしかして今日がマリノスで最後では」「移籍後のことを考えて榎本かも」そんな不安を抱いて席に着く。練習に出てきたのは、能活。取りあえずほっとするが、何だか足首を気にしている様子で今度はそれが心配。開始前に流れる悲しげな音楽が、それを増幅させる。マリノスの先発はリーグ戦と同じ、現在のベストメンバー。
7時4分、キックオフ。最初に動きの良さが目に付いたのは、遠藤だった。本来はボランチであるナザの加入が刺激になっているのだろうか。その、ナザのクロスから点が入ったのは、開始6分。ブリットのたたきつけるような素晴らしいボレーシュートだった。これで通算4−0、勝負は付いたも同然。それで気がゆるんだとは思いたくないが、もともと早くはない試合のスピードがペースダウン。そのくせDFは何となくバタバタした感じがする。センターバック3人はしきりにポジションを代えていた。新監督になってから、マンツーマンを取り入れるようになったからかもしれないが、すでにリーグ戦で警告累積出場停止にリーチがかかっている2人がいるからなのではと、勝手に解釈。
攻撃は相変わらず左に偏り、波戸が生かされていない。たまに中を伺ってゴール前に顔を出したり、クロスを上げたりするが、精度はイマイチ。本人もその自覚はあるようで、試合後のコメントでは「もっと練習しなければ」とあったから、これからを期待しよう。俊輔のプレースキックもまだまだ本調子ではない。攻撃で惜しかったのは、29分の城。なんとボールがバーの上を伝わるように転がっていったのだ。あと何センチが決まらないのは、運なのか感覚のずれなのか。前半は1−0のまま、終了。ハーフタイム能活は、引き上げるときは小村と、戻ってくるときは上野と、熱心に話をしていた。
後半も6分に点がはいる。またしてもブリット、俊輔からのFKだ。これには能活も嬉しそう。そしてここからようやく目が覚めたようにエンジンがかかり始める。大きなサイドチェンジ、ボランチの飛び出し、DFの上がりと、ピッチをワイドに使って。一番のシーンは、小村とのワンツーから俊輔のドリブル。DFをつぎ次に交わしシュートを打てばいいものを、城にパス。が、これをふかしてしまう。何とか他の選手が城に点を取らせようとしている風に見えたのだが、上野からのスルーパスも、シュートまで持っていけず。それでも最後まで必死にボールを追っていたが。個人的には、左サイドを駆け上がる松田や、中でボールをさばく小村などは見てい楽しかった。可笑しかったのは後ろに座っていた子供が「マツ、行っちゃだめだよ」とつぶやいていたこと。小さいながら、自分の視点をもっているようで頼もしい。
全体にこの試合はミスが多かった。中途半端なパスをさらわれシュートに持ち込まれたり。これは能活がフィスティングで逃れたが、 その彼もきっちりキャッチすべきボールをはたき落したり、DFを後ろに走らせるパスを出してしまったり。特に25分を過ぎて立て続けに選手を交代してからは、バランスが崩れたのかあちこちでミスが。チャレンジしてのそれならば良いのだが、木島などはようやくチャンスを与えられたのだから、もっと積極的にいけばいいのにと思ってしまう。1stステージには居なかったブラジル人3人が“これぞ助っ人”という働きでレギュラーに定着したのだ。はじき出された選手達はよっぽど頑張らなければベンチ入りもままならない。それで全体の層が厚くなってくれれば一番なのだが。
なにはともあれ、これでナビスコ杯準決勝に進出。次はグランパスとの対戦だ。その試合に能活が出るのかどうか、私にはわからないが、帰宅して見たニュースでは「今は出せない」というチーム側の話だった。ただ、私達ファンに残された時間は、そう長くはないだろう。もちろん、どんな国のどんなリーグに彼が移籍したとしても、私は見に行くだろうけれど、思い立ってでかければ試合や練習が見られるという幸福は、今のうちに味わっておかねばなるまい。
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