Jリーグ最終節、国立競技場では柏と鹿島が優勝を争っている。チャンピオンシップに照準を合わせているマリノスは、何人かの選手を休ませてきた。ここのところスタメンで良い働きをしていた木島、マリノスでは数少ないFW外池など。そして誰より大切な役目を背負っている俊輔はベンチスタート。代わって入ったのは、このところご無沙汰だった永井、まだ高校生の金子。遠藤は警告累積で出場停止だ。試合前、ゴールを交換するための移動の途中で、能活は以前マリノスにいた野田やピスコンティーと抱き合っていた。
この日は全会場、3時にキックオフ。選手整列の時には、松田と野田が子供を抱いていて、なかなほのぼのとした雰囲気だった。しかし、開始から福岡のチェックが厳しい。マリノスは前線にボールが入らない。城がボールに触れられないのだ。といって攻められているわけでもない。シュートらしいシュートは、まず11分の上野のミドルシュートだろうか。
17分、波戸が相手選手にぶつかられて倒れる。これを始めとしてこの後何度も選手が倒れ試合がぷつぶつと途切れた。このときに気がつけば良かったのだ。今日のこの試合は荒れると。前節Vゴール負けをしたものだから、ついサポーターも「とにかく勝ちを」と願ってしまったが、チャンピオンシップを目の前にしてまだ、波戸も松田も怪我を引きずっている今(12月1日)思えば、何よりも怪我をしないことを優先すべきだったのかもしれない。
26分、波戸が岡山と交代。そのすぐ後、三浦からのスルーパスに飛び出した柳がドリブルで持ちこんでなんなく点を決める。なかなかシュートが入らなかった柳が簡単に流し込んだことは嬉しく、これで調子を上げてくれるだろうとこのときは思った。事実この後のシュートはDFに当たったけれど思い切りが良かった。もう一人のFW城は、相変わらずいまいちだ。そして41分、福岡のCKからこちらも簡単に決められてしまう。そのまま前半終了。能活はDF小村と話しながら引き上げていった。
後半、俊輔登場。1分、早くもサイドチェンジの長いパスが繰り出される。3分、ゴール前にいいクロスが上がるも、シュートは打てず。上野のボレーは枠の外、城のシュートはDFに当たり、俊輔のループも大きく外れ。なかなかこれといった攻撃が出来ない。一番惜しかったのは俊輔のクロスを柳がヘディング、クロスバーをたたいたシーンだろうか。吹っ切れたと思ったが、まだゴールの女神はよそを向いているらしい。その証拠に金子がもらったPKを、得点王の可能性が残っている柳が蹴ったのだが、見事にポストにはじかれた。
一方守りのほうは、ミスから危ないシーンを迎えることが多かった。32分、松田が足をさらわれて抜かれ、能活がゴールの右から左へとステップを踏みながらシュートに備える。戻ってきた俊輔も対応し、事無きを得る。しかしこの後も俊輔がひじ打ちをされたとマリノスの選手から抗議が出て険悪なムードに。その後は福岡の選手がFKの際の守りで倒れ、またもや場内騒然。サポーターからは「審判ヘタクソ」のコールが。能活はシュートをとめるよりも倒れた選手の様子を見たり、もみ合いになる両チームの選手の中に割ってはいったり、サポーターを静めたりと他の仕事で忙しい。結局試合はこのまま1−1で延長戦に入る。その休憩時間に他の選手に声をかけるのも能活だ。
延長戦に入ると、マリノスのほうがやや優勢になる。7分、ビスコンティーのシュートは、まず小村が防ぎ次は能活がコースを消してサイドネットへ。そして11分、福岡にやられたのとほとんど同じ形で、三浦のCKを柳がヘディング、Vゴールが決まった。勝ち点は関係無いような最終戦、とにもかくにも勝ったのだとサポーターは喜んだし、能活も嬉しそう。終了後はビスコンティーや小島と楽しそうに話をしていた。
この後試合に出ていなかった選手もグラウンドに出て、監督の挨拶を一緒に聞く。場内一周がなかったのは、まだチャンピオンシップがあるからだろう。横浜国際で行われるのは第1戦、目の前で優勝は決まらないがたくさんの人に来てもらいたいと思う。DFの二人の怪我の回復が遅れ気味で、“助っ人”のはずの城の調子が上がらないとなれば、なおさらに。どうしても、どうしても勝って世界クラブ選手権への第一歩を踏み出してほしい。代表でなくとも世界と戦えるチャンスを、皆でつかんで欲しい。そうしたら、どんな国にでも応援に行くから。
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