試合レポート

 
第8節10月13日 横浜マリノス対浦和 埼玉スタジアム

 Jリーグ新記録の観客60533人中、マリノスサポは約1000人とされていた。来年W杯の舞台となる埼玉スタジアムである。当然まわりはレッズサポ。まず最初から座席に赤いビニールが置いてあって、私などはさっさと荷物敷きにしてしまったが、実は人文字を作るための小道具であった。しかしよく見ると、ゴール裏の片隅に隔離されたゾーンの他に、私の座っていたバックスタンドにも青い人が居る。もちろんそれでもスタジアムは真っ赤に染まっているのだが。

 開始早々冷や汗もののシーンがあった。FKからの流れでエメルソンがフリーのままシュート、クロスバーを叩く。そのあとはDFのクリアで事なきを得るが。ただし、危なかったのはこのシーンのみ。この後5分にオフサイドラインから抜け出したブリットが簡単にゴールを決めると、マリノスが余裕でボールを回し始める。攻撃はカウンターねらい、中でも印象に残ったのは34分遠藤のミドルシュート。糸を引くように美しい弾道でゴールに向かい、しかしおしくもクロスバーをたたきはずれていった。

 マスコミが事前に設定したこの日の主人公は、新しいスタジアムとラスト3試合になった川口能活である。翌日のスポーツ紙の見出しには「川口完封」の文字が踊っていたが、その表現はふさわしくない。能活のパフォーマンスが良くなかったという意味ではなく、本人の言うように「こぼれ玉を拾うだけ」という状態であったからだ。彼の前ではDFのクリアがあり、ボランチのプレッシングがあり、FWの献身的なチェイシングがある。水曜日に大雨の中試合をしたばかりで体調が心配されたが、勝っているため問題は無さそうだ。前半は1−0で終了。

 この日の能活の行動で印象に残ったのは、ハーフタイムに引き上げていくときめくれ上がった芝を一生懸命踏んでいたことだ。横浜国際がオープンしたときもそうだったが、芝が根付いていなくてすぐめくれる。立ち足がずれてキックの距離が狂うし、めくれた芝に足を取られて怪我でもしないかと心配である。この後30人ほどの係が出てきて、直していた。後半に向けて入場してきた能活は、引き上げていくレッズのサブの選手と握手をしていた。後に見たビデオでは、試合前にも審判に挨拶をしているシーンが映っていた。別れの時が近づいているからだろう。

 後半開始6分、このひ2度目のヒヤリ。路木の打ったミドルシュートを能活がはたき落してから取ろうとしたが、それが自分の足に当たり後ろに転がったのだ。何食わぬかおで拾い上げていたものの、本人も焦ったことだろう。 この後永山が怪我をする。耳のあたりを切ったらしく、ぐるりと包帯をして戻るのだが、そのおかげで私のような素人では気づくことのない、しかしこの日評論家に絶賛されていた彼の動きがよくわかるようになった。不思議なのは、今までも堅実な選手として使われてはいたものの、このような評価を受けることは少なかったと思う。それが金子と共に(この日は遠藤とだったが)ボランチに起用されたのがピタッとはまったのだ。

 選手起用でもう一つ思うのは、若手に対するそれだ。この日リーグ戦初先発をはたした小原、先に挙げた金子、いずれもレギュラーの欠場により起用され、そのまま定着するべく頑張っている。それが若手起用の在るべき姿だろう。1stステージのように、他に誰も居ないという理由で 常時起用されることは本人にとっても良くはない。ましてやそんな若手が何人もピッチ上に居るという状態では。本来力のある若者達なのだから、ベテランの中で大事に育てればきっと良い戦力になるはずだ。小原も日本代表のDFとG Kに囲まれ助けられながら、好パフォーマンスを見せた。このまま順調に伸びていって欲しいものだ。

 44分、待望の追加点が入る。ラインを見ながら注意深く出された俊輔のパスを、ドゥトラが一人で持ち込みあっさり決めてしまう。レッズの攻撃に怖さは無かったが、セットプレイ時における一瞬の気のゆるみで1点などすぐ入ってしまう。相手の守備の甘さの割に、チャンスを物に出来ず安心できない状況だったので、この追加点にはほっとした。同時にレッズファンはこれでもう諦めたらしく帰り始める人たちも。6万人とはいえ、熱心なサポータ−は駒場のキャパ分くらいで、後はせっかくのこけら落としだからと来た人たちのようだ。遅れてくる、途中で物を買いに行く、早めに引き上げる。おかげでこちらも怖い思いをせず赤い中でマリノスを応援できたのだが。

 遠目からのシュートを能活がキャッチしたところで、タイムアップの笛が鳴った。そのまま松田とハイタッチ、実に嬉しそうだ。自分が大活躍をすることのない完封、ある意味でGKの理想かも知れない。私はすぐに席を立ってしまったが、インタビューを終えた能活がサポーターの前に一人挨拶に来たとき、レッズサポからも拍手が湧いていたという。チームメイトも彼の移籍を前に結束し、楽しいサッカーを思い出してくれたようだ。ただし今は、何よりも勝ち点を。J1残留のためにも、能活のこころおきない旅立ちの為にも。
          
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