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原因追求を否定するカウンセラー
たまに新聞の相談蘭などで臨床心理士が、子供の不登校に悩む親御さんから相談を受けていることがあります。
そして、その回答の大半は判で押したように『あれこれ原因を探ろうとするよりも、子供を安心させるよう、学校などと連携しながら、サポートしてあげましょう』といった内容になっています。
これは、子供のひきこもりなどで悩む親御さんが臨床心理士の資格を持つカウンセラーのもとに相談に行っても、ほとんどの場合、同様のアドバイスをされているようです。
つまり、臨床心理士の共通した対処法というのは『不用意に刺激しないように、何もせず、心を乱させないようにして、自力で立ち直るのを待ちましょう』というものなのです。
しかし実際は、そんな悠長なことを言っていると登校拒否から五月雨登校、そして本格的な不登校になり、その延長から引きこもりになり、5年が10年になりと、どんどん悪化してしまうのが普通です。
にもかかわらず、なぜ、専門の大学院まで出た立派な資格を持つ臨床心理士が、そのような最悪の対処法を勧めるのでしょうか。
一言で言えば、臨床心理士は不登校や引きこもりについての専門知識を持たない素人だからです。
信じられないかもしれませんが、実は、臨床心理士の教育システムに根本的な問題があるのです。
一般のの心理カウンセラーや心理療法士もそうですが、臨床心理士というのは、特に不登校や引きこもりの人を対象とした心理カウンセラーではありません。
失恋して落ちこんだとか、会社の対人関係で悩んでいるといったような軽い悩みから、重いものではうつや対人恐怖症、強迫神経症といった、心の病を対象としたいわば心の総合カウンセラーです。
そのような心の悩みや病気の一環として、スクールカウンセラーとして不登校や引きこもりの人たちのカウンセリングも行なっているのですが、これがまず大きな過ちなのです。
うつや対人恐怖症、摂食障害、自傷行為、強迫神経症などといった心の病と比べたら不登校や引きこもりのほうがはるかに程度が軽く治しやすいといった印象があるかもしれませんが、それは逆です。
なぜならば、不登校や引きこもりの人たちの大半はそれらの心の病、神経症も併発しているからです。
つまり、不登校や引きこもりを治すには、心の病への対処法と不登校や引きこもりという異常行動への対処法の、ふたつを知っていなければならないのです。
ですから当然、より高度な知識と技術が必要になってくるのです。
にもかかわらず、不登校や引きこもりに対する十分な知識と技術を持たないまま、カウンセリングにあたっている臨床心理士がほとんどなのです。
そして、対処を間違えると取り返しのつかないことになる、という緊張感のなままに、放置療法みたいなのんきな対処法を勧めるようになっているのです。
(軽い悩みなら放っておけば自然に治りますし、大半の心の病気でも、長引いても取り返しのつかないことになるようなケースは少ないため、通常の臨床心理士のカウンセリングは、のんびりとした傾聴カウンセリングが中心なのです)
ただし、これは臨床心理士自身が悪いとか無責任だとは、一概には言えません。
なぜなら彼らは、不登校や引きこもりには心の病に対する対処法に加えて、さらに専門的な知識と技術が必要であるという認識を、そもそももっていないだけなのですから。
それではなぜ、臨床心理士は不登校や引きこもりに対する、きちんとした知識を持っていないのでしょうか。
ここまでの話は、臨床心理士という肩書を持った先生を求めて様々なカウンセリングセンターをまわって来られた方には、ショックだったかも知れません。
実際に治してもらえなかった、という事実があったにせよ、そんな話は信じたくないという方が多いことと思います。
なぜならば、そのように肩書や権威を求める人というのは、自分自身も権威思考が強く、高学歴であったり、難関試験を突破した資格をもっていたり、、特殊な技能を持っていたりして自分と同じような優れた才能や肩書をもつ人間が過ちなど犯すはずがないと考えたがるものだからです。
しかし、そもそもこの臨床心理士という資格は、不登校や引きこもりの専門資格ではないのです。
そして、不登校や引きこもりを治すためには一般的な心理カウンセリングや心理療法の技能を持ったうえで、さらに、それらを克服させるための技術や知識が必要なのです。
ですから当然、臨床心理士という資格をとっただけでは、技術的に不足なのです。
それならばなぜ、心理学の最高権威であるはずの専門大学院まで行って、不登校や引きこもりに対する対処法を学べないのでしょうか。
実際は、不登校や引きこもりに対するカウンセリング方法は教えています。
ただ問題なのは、間違った対処法を学生たちに教えているということなのです。
もちろんこれは確かめたわけではありませんが、ここまで臨床心理士の人たちが揃いも揃って大間違いの対処法を平然と行なっているわけですから、容易に推測できることです。
それではなぜ、そんな間違いが大学院での教育で教えられているのでしょうか。
答えは簡単です。
教えている人、あるいは、教育内容を考えた人たち自身が、臨床研究をほとんどしていないからです。
にわかには信じられないかもしれませんが、それなら、あなたにお聞きしましょう。
大学院で教えるような偉い先生が、不登校や引きこもりの子の家庭を訪問してカウンセリングを行なっているという例をひとつでも聞いたことがありますか?
私は、臨床心理士の資格制度の発足とほぼおなじ時期から不登校、引きこもり専門のカウンセリングを行なってきましたが、大学の権威ある先生方が不登校や引きこもりの子の家庭を訪問してカウンセリングにあたっているという話を、一度たりとも聞いたことがありません。
そう。
偉い先生たちの臨床というのは、オフィスの一室にデーンと座ってカウンセリングを受けにやってくる人たちだけを対象としているのです。
つまり、家から出ることのできないような重度の不登校、引きこもりの臨床経験はゼロなのです。
親のすすめに素直に従ってカウンセリングにやってくるような子は、大半が放っておいても時期が来れば、自力で立ち直ります。
そんな放っておいても治るケースばかりを集めて臨床研究として、その結果を学生に教えているのですからオメデタイ話です。
当然、そのような教えを受けた臨床心理士たちが、重度の不登校や引きこもりを治す知識などもっているはずもありません。
失恋とおなじような一時の気の迷い程度の不登校や引きこもりにしか通用しない放置療法を、重度の不登校や引きこもりに対してもおこなって悪化させてしまうのです。
臨床心理士を養成している大学や大学院の先生自身が、深刻な不登校や引きこもりの臨床経験がない、ということはおわかりいただけたことと思います。
繰り返しになりますが、彼らが治したと思っているのは、親の言うことを素直に聞いてカウンセリングオフィスまでカウンセリングを受けにくる軽度の不登校や引きこもりだけなのです。
そして、そのような子は大半が放っておいても、そのうち自力で立ち直っていきます。
臨床心理士を始めとする多くのカウンセラーの『焦らず、長い目で見守ってあげましょう』というお決まりのセリフは、そんな教育制度の欠陥からきているのです。
もちろん、カウンセリングオフィスまで通えていた子が、段々悪化して家から出ることができなくなってしまう場合もあります。
しかし、出張カウンセリングをしていないカウンセラーにとっては、それでカウンセリングが終わりになるだけ。
ですから、本当に最後まで深刻な不登校や引きこもりの子に付き合うということがないのです。
それでは、なぜほとんどのカウンセラーは出張カウンセリングをしないのでしょうか。
ひとつは、今述べたような理由、つまり、やっかいなケースよりも易しいケースだけを扱いたいからです。
そしてもうひとつの理由は、経営的にはるかに楽だからです。
来院のみのカウンセリングであれば、1日8人〜10人ほど面談することができます。
それに対して、出張では1日に1、2人しか面談することができません。
もちろん、だからといって5倍、10倍の料金をもらうわけにもいきません。
このように出張カウンセリングというのは、技術的にも、労力的にも、経営的にも負担の大きいものになります。
単なる商売でやるなら、来所者のみのカウンセリングがいいに決まっています。
最近、不登校や引きこもり人口が増えてきたことから、絶好の商機だとばかりに心理学の技術も知識もない人間が続々と参入してきています。
なぜか、そういう人間たちは業界の裏のことをよく知っていて、来所できるような不登校や引きこもりの大半は放っておいても治る、ということまでちゃんと知っているのです。
ですから、あたかも自分たちは豊富な経験があって、たちどころに不登校や引きこもりを治してしまうかのような宣伝を堂々としています。
そんな素人でも開業できるのが、来所カウンセリングであると言えます。
それならば、なぜ一部のカウンセラーは逆に、そのような厳しい出張カウンセリングという道を選んでいるのでしょうか。
やはり、一番大きいのは使命感でしょう。
また、技術の向上を目指して、より深刻なケースを求めているという人もいるかもしれません。
今回は、カウンセリング業界の実情についてお話しましたが、結論としては、出張カウンセリングをを行わないカウンセラーは、深刻な不登校や引きこもりを扱った経験がないということです。
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