Ex-diary 予感5

Extra diary

小ネタ置場。

破壊王子。輪っかベジたん。ちょっとした連載小説から日記での小ネタログ、その他分類不能な文章置き場です。連載小説はカカベジ/くだらないギャグ系中心。飽きたorくだらなすぎて耐えられなくなったらさっさと辞めてしまうであろう、極めていい加減企画です、ご了承ください(゚Д゚;)ハアハア

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予感 [5]

2009/10/01

魔人ブウ編にて、ベジータ自爆~復活の幕間を勝手に脳内妄想。当然カカベジ



叫んだ直後に、体に激痛が走って思わずベッドの上にうつ伏せる。
「うぐっ…ううっ、くそっ!体が痛え!!」
「おい、あまり興奮すんなよベジータ。おめえの体、相当傷ついてるみてえだから興奮すると傷に障るぞ」
「うるせえくそったれ、誰のせいで興奮してると思ってやがる!!」
まったく、こいつと一緒にいたら治る傷も治りゃしねえ!…ついでに、何のためについた傷なのかはあまり深く考えないようにする。そうだ、これは魔人ブウとの戦いでついた傷だ、そうだそうに違いない!!その時、俺の剣幕に驚いたのか隣のベッドでミニサイズの人間がぐずり始めた。
「ヒッ……ヒック、ヒッ…ビエエェッ…」
「ベジータ。あんまり大きな声だすなよ。赤ん坊がびっくりするじゃねえか」
カカロットが苦笑いしながらこちらを見る。
「うるせえって言ってるだろ!誰のせいで怒鳴ってると思って…」
…カカロットの野郎にいさめられると、なぜか100倍腹が立つぜ!!そう思って俺がまた怒鳴ると、今度こそミニサイズの人間は激しい声を上げて泣き出した。
「ビエエエェンビエエエエッビイエエエエン!!」
「あ~、ほら言わんこっちゃねえ。よしよし、泣くんじゃねえぞ、おめえ男だろ?」
そう言ってカカロットはベッドからミニサイズの人間をすくい上げると、腕に乗せるようにすっぽりと抱きとめた。それは実に慣れた手つきだった。
「おめえの母ちゃんは怒りっぽいからなぁ」
「誰が母ちゃんだ!!!」
「ビィエエエエエエエッ!!」
…俺が怒鳴ると、ミニサイズの人間は一層激しく泣き出した。



カカロットは腕に抱いたミニサイズの人間を、慣れた様子であやしている。そういえばこいつは二人の息子を持つ父親だったなということを思い出す(もっとも、悟天が生まれた頃はこいつはこの世にいなかったわけだが)。カカロットの太い腕に包まれて納まりが良かったのか、激しく泣いていたはずの赤ん坊は次第に落ち着きを取り戻し、泣き止んだ。カカロットの方に顔を向けて、ふえふえと再び手足を動かし始めている。


ふと自分の事を省みると、俺は息子であるトランクスを赤ん坊の時から抱いてやった事など一度も無い。ブルマはそんな俺をなじったりはせず、ごく自然に受け入れていた様子だったが…いや、そういえば一度だけ抱いてやったんだったな。俺が魔人ブウとの戦いに臨んだ時、最後に一度トランクスを腕に抱きしめた。それっきりだ。あいつは、トランクスは今頃どうしているだろうか?無事に生き延びる事ができたんだろうか?赤ん坊をあやすカカロットを見ながら、ふいに胸の中に隙間風がふいたような寂しさがこみ上げる。するとその時、唐突に顔を上げたカカロットと目が合った。
「ベジータ、おめえも赤ん坊だっこしてやれよ」
俺の目を見てカカロットがにこりと笑う。
「…!だ、誰がやるかそんな真似…!!」
「いいからいいから。おめえ、こいつの母ちゃんなんだろ?」
「だから誰が母ちゃんだ!!」
わめく俺の言葉をきれいに無視して、カカロットは強引に赤ん坊を俺に押し付けてきた。それは手慣れている、というよりはいささか荒っぽい手つきで。
「…!おいカカロット気をつけろ!!こいつが落っこちたらどうするんだ!」
俺が慌てて赤ん坊をすくい取ると、カカロットは、してやったりといった表情で笑った。
「ベジータ、気になるんか?さすが母ちゃんだよなぁ」
「……!!」
これは『策に嵌った』というやつなんだろうか…?そんな事を思いながら、仕方なく俺は生まれて初めて腕に抱いた赤ん坊をこわごわ抱え直した。すると赤ん坊が手足をぱたぱたと動かしながら、じっと俺を見ている事に気がつく。…こいつ、もしかして俺が見えてるのか…?腕の中のひどく頼りない重さを抱え直すと、胸に不思議な感情が湧いてくるのを感じた。俺はしばらく黙って赤ん坊を抱いていた。そんな俺と赤ん坊を見比べながら、カカロットも満足げに黙っていた。


ああそういえば、と再びカカロットが口を開いた時は、結構な時間が経っていた気がする。
「こいつに名前つけてやらなきゃな」
「フン、そんなものキサマが勝手につければいい」
「そっか?じゃあ遠慮無くオラが考えるとするか。…うーん、悟空とベジータの子、だから『ゴジータ』ってのはどうだ?」
カカロットがそう言った途端、赤ん坊が再び激しい声で泣き始めた。
「ビェェェェッビェェェェンッ 」
「おい!何だか知らんがこいつは気に入らんらしいぞ!」
「そうなんか?良い名前だと思ったんだけどなー。じゃあ、『ベクウ』ってのはどうだ?」
「ビィェェェェェェェェェェェェッ!!」
赤ん坊はますます激しい声で泣き始める。ものすごい音量だ。
「おいカカロット!!さっさとこいつを黙らせろ!!キサマが下らん事を言うからこいつが泣くんだろうが!!」
「ンな事言ったってよぉ…これも気に入らねえのか。おめえ、母ちゃんに似て気難しい奴だな」
「だから『母ちゃん』と呼ぶなとさっきから言ってるだろうが!!」
もういくらカカロットがあやりしても、赤ん坊はぎゃーぎゃー泣き喚いたままだ。…ふと俺の中で、もしかしてという仮説が思い浮かぶ。ひょっとしてコイツ、俺のように…。


「…カカロットとベジータで、『ベジット』ってとこじゃねえか?」
俺がそう口にした途端、赤ん坊はぴたりと泣き止んだ。…どうやら俺の予想は当たったらしい。
「お、こいつ気に入ったみてえだぞ?何だおめえ、オラの名前、『悟空』じゃなくて『カカロット』が良いんか?ホントに母ちゃんそっくりだよなー」
「だから『母ちゃん』と呼ぶなクソッタレ!!」
「そっか、こいつの名前はベジットか!」
ははは、とカカロットが笑う。俺の怒鳴り声は相変わらずさっぱりと無視してやがる。どんな状況でもすんなり受け止めてしまうこいつの図太さの1000分の1でも俺にあれば、こんなに悩まなくても良いんだろうな。


「なあベジータ、こいつってものすげえ強い戦士になるんだろうな」
すっかり上機嫌になった赤ん坊の手を摘まんだりしながら、カカロットはまっすぐ俺の目を見る。
「だってオラとおめえが合体したんだから、とんでもねえ力をもった戦士が生まれるはずだもんな」










………………。











…こいつは今、聞き様によってはものすごく下品な事を言わなかったか…?





「が…合体だと?!ふざけるな、なぜオレがキサマなんかと!!!」





けれど俺は口では怒鳴りながら、どういうわけか心底腹が立ったわけではなかった。





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