"スパークNo220" (2001.9)



「毎日深夜の帰宅、会話不能、過労死・・・・・・ どうか助けて下さい」
西尾工場の仲間の奥さんからの悲痛な手紙
 さる六月上旬、スパーク発行責任者宛の左記のような手紙が日本共産党西三河地区委員会に届けられました。
手紙@
労働組合 御中
労働時間管理担当者様
 突然の手紙で恐縮です。
 我家の家人ですが、帰宅時間があまりに遅く、御社の労働時間の管理を徹底して戴きたくペンをとりました。
 家人はディーゼル噴射製造部製品管理に居ます。現在の職場に移籍になった2年前より、帰社時刻が極端に遅くなりました。班長という役割に留まっているのかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 社内では省人化という方針のようで、「人を増やして」と申請を出しても認めて戴けなかったそうです。必要な業務のためならと二交代制を試した時期もあったようですが、人手が足らなくてできないようです。
 また、時間外勤務も制限されているようで、毎月40時間程度(5月は22.3H)となっていますが実際は・・・。5月連休明けからの帰宅時刻を調査してみました。
(会社から30〜40分かかります)
定時1回(本社へ出張)、21:00 1回、22:30 3回、その他は23:30以降です。帰宅した家人はそれから夕食を済ませ、就寝はいつになることか解らない状態です。深夜に食事をし、睡眠時間を削られて、朝はまた7時に起きて、食事して出勤という毎日です。
 このような生活を強いられているため、平日は家族との会話もできず、土曜日も私服で出勤(ボランティア活動?)、日曜日はほぼ寝たままです。もちろん有給休暇なんていつ取ったことでしょう?(3月にスキーのため1日だけ戴けましたが)
 先に書いた社内方針などの件は周囲の状況から判断したもので、確認したわけではありません。本人とはなしをしようとすると「帰りが遅い」と言ってしまうことになり、お互いイヤな気持ちになるため、最低限の会話しかできません。この「タダ残業」状態は、残業時間に記されていないため、会社には認められていないと思われます。このままでは改善される見込みがないでしょう。現状を知って欲しい。このまま倒れても「過労死(?)」「労災」と認めてもらえないのではないでしょうか?タイムカードが全てと言われそうです。
 西尾製作所から自宅までは寄り道するところもなく、家人が「帰宅したくない病」にかかっている可能性もないとは言えませんが、なにしろ会話不能状態ですので。
どうか助けて下さい。お願いします。
2001.6.5    ●●●●●● ●●●の妻●●●
☆調査はできれば匿名でお願いします。
☆この手紙はデンソー労組と赤旗岡崎事務所に送らせて頂きます。

手紙A
 日本共産党西三河地区委員会 金田様
前略
  先日は突然の郵便で失礼しました。
  早速対応して戴き、ありがとうございました。
  会社労組も早急に対応して戴けましたが、その結果、夫の心得違いによるものと判明しました。
  家人は、移籍直後より一年程は、仕事に慣れないなど会社にある程度遅くまで居る必要があったそうです。その後、更なる昇進試験や、その他個人的な学習研修、レポート 作成などのため自主的に居残りをしていたようです。元々、会社内でのことは自宅に持ち帰らない主義で話もなるべくしない人でしたが、それらの事情を一切知らされていな かったため誤解していたようです。
  会社の上司の方が自宅を訪問して下さり、職場内の組織や、勤務の様子などを聞くことができました。職場では定期的に部下の人一人ずつと面接なども行われているそうで 、色々配慮はされているようです。
  今回のことで、貴事務所の方々達にも多大なご迷惑やご心配をおかけして、申し訳なく思っています。本日の新聞にトヨタの過労自殺の件が載っていますが、今後とも色々 な問題への対応よろしくお願いします。たいへんお世話になり、ありがとうございました。                                  草々
                      潟fンソー ●●●●の妻●●●● 


 早速、この手紙を持ってスパーク発行責任者は刈谷労基署を訪れ、調査指導を要請しました。この直後に同じ奥さんから左記のような二通目の手紙がスパーク発行責任者宛に届けられましたので紹介します。
 八月初め、手紙の主である奥さんに電話したところ、「はじめの一週間ぐらいは帰宅が早かったのですが、今ではまったく元に戻り、やはり毎日深夜です」というお話でした。

「研修」「自己修正」「十一時以降の退社」もあった
・・・・・・刈谷労基署調査結果
 八月初め、スパーク発行責任者は、刈谷労基署から次のような調査結果を受け取りました。「ディーゼルの製品管理部門について勤務状況を調査したところ、月に十回以上九時以降退社の人は少なく、多くの人は月に数回であった。手紙にあった本人はやはり一番遅い部類であった。月に一ケタの回数で十一時以降の日があった。また退社時刻が遅いのに関しては、『研修』『自己修正』で残業時間が少なくなっていることが月に数回ずつ程度あった」

新通達無視、時代遅れの会社
 この四月に厚生労働省は「時間管理をしっかりするのは会社の責任」とする画期的通達を出しました。しかし、今回の会社の対応で、わかったことは、従業員の時間管理、健康管理については旧態依然として、外向けのポーズだけは抜かりがないものの、実質的対応としては、まったく違法行為の放任、見て見ぬふりであることがわかりました。


あまりにも悪質な職場内のイジメ池田工場の仲間からの手紙

 最近、左記の手紙がスパーク発行責任者に届けられましたので紹介します。




トヨタでタダ働き、83人に1000万円支払われる
労基署がサービス残業是正勧告
 七月四日、トヨタ自動車は、名古屋ビルに勤務する社員八十三人に対して、六ヵ月分の不払い賃金として、総額一千万円を支払ったことが明らかになりました。これは労基署の労基法違反の是正勧告に従ったものです。これに対して、トヨタ自動車の社長は「事態を真摯に受け止めている。今後こうしたことが起こらぬよう、いろいろ改善している」と述べました。また管理職は深夜に社内を巡回して再発防止に取り組み、労組執行部も社内巡回を続けているそうです。口先だけの対応でないことを期待したいものです。

904号法廷傍聴記
――前デンソー労組幹部の郵便局員贈賄事件の真相―― 連載B

  安部被告に有罪判決、
その後一ヵ月以上たっても組合から、何の説明も無いとは、おかしな話

事件のあらまし
 去る二月十五日、前全トヨタ労連副会長(デンソー労組出身)の安部修容疑者が、直嶋正行参院議員の選挙用郵便料金を不正に割引いてもらう代償に郵便局員にワイロを送ったとして逮捕されました。労働組合は、判決が出るまで、公式の態度表明は何もしないということですので、本紙上で裁判の内容を傍聴記の形でお伝えします。
 第一回目の公判で、安部被告は、その動機について、直嶋参院議員の所属政党がコロコロ変わって余分な出費がかさんだこと、六十万通以上の選挙用郵便物を期限内に郵送するために個人的に郵便局員に迷惑をかけたので、そのお礼の意味もあったと述べました。そして郵便代金とワイロ金を郵便局員の個人口座に振り込んだのは自分自身で決めたと述べました。
 そして第二回公判の審議で明らかになった主要点は次の通りです。   平成四年以来、被告の郵便局員は自分の銀行の個人口座に郵便料金を振り込むことを全ト労連の人と約束していた。この時から不正な割引をしていた。
 また全ト労連への不正な割引について、被告の郵便局員は事前に上司である課長の了解を得ていた。

 七月六日、開かれた第三回目の公判では安部修被告に対する判決が言い渡されました。 山本哲一裁判長は、「公務員の職務の公平さに対する社会の信頼を損ねた刑事責任は軽くない」などとして、同被告に懲役八月、執行猶予三年、罰金十五万円(求刑懲役十月、罰金十五万円)を言い渡しました。
 安部被告は同労連が推薦していた直嶋議員の支援団体代表を務め、一九九八年三月から八月にかけて、同議員の選挙関係の郵便物など計約八十七万通の送付を元東海郵政局営業課職員、柴原清浩被告(三八)=公判中=に依頼。その際、柴原被告が正規料金計約四千六百万円から約千四百万円を不正に割り引いた見返りに、現金約六十五万円を同被告名義の口座に振り込みました。
 安部被告は検察とまったく争う意志はないので、この判決は、まったく検察の主張に沿った内容でした。そして判決主文朗読前に、裁判長に「何か最後に付け加えることはないか」と促された安部被告は「何もありません」とあっさり答えました。裁判全体を通しての安部被告の態度は、いくつかデンソーマンや世間の常識に反する矛盾した事実を述べながらも、極めて、気軽で、ビジネスライクに徹したものでした。あまり世間や組合員に対する責任感は感じられませんでした。そしてとても自分の良心に従って真実を述べたとは思えませんでした。その一方で判決で情状酌量を求めるための戦術は姑息で、会社から懲戒免職になった直後に求職のためハローワークを訪れたと述べ、また、事件にまったく関係ない奥さんを証人にして出廷させています。本当に証人として出てくるべき人間は同じ全ト労連の幹部でしょう。
 そこでスパーク編集部は判決直後、法廷の外の廊下で安部被告にインタビューを申し込んだところ、あっさり拒否されました。一方検察官に対して、全ト組合員として、こういう点をもっと追求してほしいと要望と感想を伝えました。彼は聞くだけは聞いてくれました。
 今回の公判から郵便局員の方は、弁護士が交替して、この日は判決がなく、審議が今後も続けられることになりました。もっと主張したいことがあるようです。ですから、この傍聴記の連載は安部被告の判決は出ましたが、まだ重要な点ですっきりしないことがあるので、継続します。そして何よりも、社会的にこんなに新聞、テレビで騒がれているのに判決後、一ヵ月たっても労組は何の説明も組合員にしないのはおかしな話です。全ト幹部は今回の判決法廷を傍聴していましたし、全ト有志の真相解明の申し入れ時も「判決が出たら声明を出す」と約束していたのです。経過を見守りたいと思います。



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