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韓国詩のコーナー


オソオセヨ! 韓国詩へ

このページでは、韓国の詩について紹介します。

目次










ト・ジョンファン『満ち潮の時間』

第一回アジア文学祭

2017平昌韓中日詩人祭(2)

2017平昌韓中日詩人祭(1)

チョ・オヒョン




王秀英、時調、安ドヒョン、『生命の詩人・尹東柱』、
羅喜徳、丁章『在日詩集 詩碑』、文貞姫、宗秋月、金里博、高銀『無題詩篇』、
朴正大、上野都訳・尹東柱詩集、朴柱澤、『料理と詩のコラボレーション』、
許英子、 金達鎮、金后蘭、崔由地、金南祚、金基澤、イ・ソンボク、高炯烈、権千鶴、
金時鐘『猪飼野詩集』、金知栄、朴利道、崔泳美、崔スンホ、
シム・ウォンソプ『秘密にしていた話』、金里博『三島の悲歌』などこちらです。

金行淑、李英光、イ・ジョンロク、金南祚掌編集『美しい人びと』、
李御寧詩集『無神論者の祈り』、 蘭明著『李箱と昭和帝国』、
金一男著『韓国詩歌春秋』、金時鐘 編訳『尹東柱詩集 空と風と星と詩』、
『金恵英詩集 あなたという記号』、図書新聞書評 申庚林詩選集、
『韓国近現代文学事典』、キム・ソヨン、詩評・2012年夏号、ヨ・テチョン、
ハンサルリム、申庚林詩選集 こちらです。

「映画評、詩評2012年春号」、ペ・ハンボン、「東京新聞 祈りと脱原発の思い」
李英光、東アジア脱原発ネットワーク、韓国詩人への御礼・中央日報
エネルギー正義行動、高銀(3)、金南祚、金后蘭、権宅明、金ソヨン
李珍明(2)、陳恩英、「ASIA POEM 光と林」、文貞姫、鄭浩承
高銀メッセージ、金ギョンミ、シン・ヨンモク、張錫南(2)こちらです。

金南祚、朴羅燕、黄仁淑、ソン・ジェハク、高銀、李箱、崔グムジン、
金止女、映画「チョルラの詩」、金ミョンギ、李ミンハ、イスミョン、
朴正大、『地球は美しい』(4)、高炯烈(2)、朴ヒョンジョン、金オン、
『地球は美しい』(3)、『地球は美しい』(2)、『戦争は神を考えさせる』
(3)、朴ジンソン、馬鐘基、朴ジャンホ、アン・ミョンヒ、韓成禮、
金芝河、李珍明、崔泳美(4)、朴柱澤(2)は、ここをクリック。



ソンチャンホ、崔鐘天、鄭クッピョル、金勇範、文泰俊(2)、
『地球は美しい』、『戦争は神を考えさせる(2)』、金経株(2)、
呉世栄、鄭浩承、李起哲、『戦争は神を考えさせる』、孫澤秀、
金行淑、文寅沫、鄭百秀、金芝河(2)、羅喜徳は、こちらです。


金経株、李昇夏、105韓国詩人選、金思寅、黄炳承、高銀(2)、
崔正礼(2)、千良姫、呉世栄(2)、金恵順、朴柱澤、リュ・シファ
朴賞淳、文泰俊、金宣佑(2)、「詩と思想」2006・7月号、高炯烈(2)、
チョン・クッピョル、韓国女性小説家、金ミョンニ、羅喜徳(2)、
『今日の詩 韓国詩21人集』、崔泳美(3)は こちらです



ソン チェハク、任平模、朱耀翰、金龍済、李箱、鄭芝溶、
イ ジョンロク、金基澤、イ ソンヨン、朴ジョンデ、チェ ジョンレ、
キム ソヌ、チョン ホスン、チョン クッピョル、はこちらです

権大雄、崔勝子、王秀英、高炯烈、朴ノヘ、はこちらです

金基沢、安度呟、詩誌情報、金芝河、崔泳美、はこちらです

呉鎮賢、黄芝雨、将正一、姜恩喬、尹東柱、はこちらです

韓国現代詩小論集、張錫南、詞華集、金龍澤、崔華国、はこちらです

詩選集『新しい風』、河在鳳、高銀、呉世栄、崔泳美(2)、はこちらです

オ テファン、崔勝鎬、イ ジョンロク、鄭一根(2)、イ ムンジエ、
羅喜徳、チェジョンレ、李ソンヨン、『詩評』、『詩と思想』9月号、
朴チョンデ、金宣佑、崔勝鎬、『日韓『異文化交流』ウオッチング』
呉廷国、高在鐘、延王模、金光林、鄭一根、はこちらです


ト・ジョンファン『満ち潮の時間』

立葵の花のようなあなた

ユン・ヨンシュク・田島安江訳


とうもろこしの葉に雨粒が落ちます
今日もまた一日を生き永らえました
落ち葉が散り北風が吹くまでの
私たちに残された日々は
あまりにも短い
朝 枕もとにごっそり散らばった髪の毛のように
あなたのからだから命がするりと抜け落ちていきます
種子が実になるまで
まだずいぶん待たねばならず
あなたと私がいっしょに耕していかなければならないはずの
広く荒れはてた畑はそのまま残っているというのに
畦道を覆う姫女苑と雑草の傍ら
しばし呆然と屈んではまた立ち上がります
薬すら思うように買えない
貧しい所帯を共にやりくりしながら
あなたは虫一匹むやみに殺すことなく
意地悪な顔など一度も見せることなく生きてきました
それなのにあなたと私が受け入れなければならない
残された日々の空は
果てしなく黒い雲におおわれています
初めのころは立葵の花のようなあなたを想うと
崩れ落ちる壁を支えているような
どうしようもない絶望に身震いしました
だがこれは 私たちにこれからも精いっぱい生きるようにと
今まで生きてきた日々に恥じない生き方をしなさいという
最後の言葉として受け止めなければならないのだとわかります
私たちが捨てられずにいた
何ほどのものでもないプライドだの栄誉だの恥辱といったものまでも
今はためらいもなく捨て去りましょう
この心のすべてを もっと辛く悲しい人と分け合う日々が
こんなにも短くなったのが悔やまれ
残された日はあまりに短く
残された一日一日を最善に生きる方法を
膿み腐った傷に 私たちが
あらん限りの力をつくして立ち向かうことなのでしょう
より大きな痛みを抱えたまま死へと向かう人たちが
私たちの周りには いつでもたくさんいるというのに
私ひとり肉体の絶望と病に倒れてしまうなんて
悔しく悲しいばかり
オンドルの床に敷かれた油紙のように 黄ばみ衰えていく顔を見ていると
こんなこととても口には出せないけれど
もし最後に 体のどこかに まだ健康なところが残っているなら
それがないと生きていけない誰かに
そっくりさしあげてから逝くことにしましょう
肉体のどの部分でもよろこんで切り取ってあげられる人生を
私も生きたいと思います
とうもろこしの葉を打つ雨音が大きくなってきました
また夜がひとつの闇の中に消えるけれど
この闇が終わり 新しい夜明けが訪れるその瞬間まで
私はあなたの手を握りずっとそばにいます


※ト・ジョンファン詩人は詩集『立葵のようなあなた』がベストセラーになり
人気が高い詩人です。愛妻がガンに侵され、亡くなる前後を哀切につづり、
感動を呼びました。また、全国教職員労組が活動を始めたころ、
教育運動に献身し、そのために免職と投獄を経験し、
民主化運動を闘い続けたことでも尊敬されています。
文在寅政権で文化体育観光部長官に就任し活躍しています。
第一回アジア文学祭にも来賓し、祝辞を述べました。
「ノーモアフクシマ」も含む主要作品を網羅したアンソロジーです。

(ユン・ヨンシュク・田島安江編訳。書肆侃侃房2000円+税)














第一回アジア文学祭


2017年11月1日から四日まで、光州で第一回アジア
文学フェスティバルが、アジア文化院の主催で
詩人・高銀を 中心にして開催され、
私も参加しました。 光州は、民主化闘争の地として有名です。
今回のテーマは<アジアの朝>で、以下の趣旨文は日本人に
とって考えさせる内容です。

「韓国詩人がアジアに向けて詠った最初の詩は<アジ
アの夜>でした。国境の向こう側を真っ暗な闇と考え
る昔の韓国人の感情は、友も隣人も見えない植民地時
代を経験して習得されたものです。しかし、私たちは
戦争と分断と独裁の中で詩を学び、無限の競争に満ち
た文明と制度の中で愛を育てながら、抑圧と暴力に満
ちた現代理念の刑務所を出て世界中のすべての生きた
精神と手を取ろうと夢見てきました。

今も私たちは相変らず分断の苦しみの中でまさに人
間の犯した地球的な災難の最大の元凶である核と原発
の人質となった現実を直視し、詩は天上ではなく、地
獄に足を踏み入れているという考えから離れられませ
ん。そうして私たちは生命の別名であるこの詩が、世
の中の弱者たちの生きる道を捜して旅立って、結局は
足場がなく再び流浪民になってしまっても、胸を痛め
る大地の草と一緒に踊ろうと希望します。そして私
たちはこの詩を朗読する声が、今日も丘を超える蟻の
群れとともに、つらい生涯を渡っていく地上の全ての
苦痛を知る者たちの耳に届くことを願っています。

韓国現代史の抑圧と差別に抵抗してきた都市光州で、私
たちは新しい<アジアの朝>を夢見て文明の廃墟に咲い
た花のように人類の精神史的伝統と、希望を持った詩を
朗読される声を聞こうと思います。光州は韓
国語で光の町という意味を持っています。闇の中でも、
いつも目覚めている伝統を持つこの光の都市で
文学を祝祭します。
(翻訳・韓成禮)」


11月1日午後にまず「国立五・十八日民主墓地」を文学祭
参加者たちが訪れ、祈りを捧げました。広大な敷地、
整然と並ぶたくさんの民主化運動で犠牲になった人々の墓、
美しく立派なモニュメントに驚きました。民主化運動の
一般人犠牲者たちを「国立墓地」に埋葬することは日本の
歴史ではなかったでしょう。

高銀詩人は、墓石をなでたり花を供えたりしながら、
埋葬されている人について人生を味わい深く語りました。
一緒の墓に埋められた恋人たちもいます。戒厳令軍と闘
った人々がたてこもった建物も記念館として保存されて
高校生の写真もありました。映画で見たデモ隊と軍がぶ
つかる十字路は想像以上に幅広いです。映画のあれこれの
シーンと重ねて当時の銃声や怒号が聞こえてきそうでした。
死者を顕彰するだけでなく、幼子から老人まで一般庶民が闘
う民主化運動を文化として根付かせる意志を感じます。

4日には高銀の詩に登場する無等山にみんなで上りました。
高銀先生は一九三三年生まれで八四歳ですが、杖も使わず、
さっさか歩かれます。途中までバスで上りましたが、山頂付近や
竹山をひょうひょうと回り、皆に歴史を語る姿に圧倒されました。
無等山は文禄の役で日本軍が押し寄せたときや、近代の
植民地支配や解放後の独裁政権との闘いでも民衆を
守る山として有名な所です。元来、神の山です。
高銀先生は無等山は皆等しく、等しいという観念もなくなる所だと
説きました。

二日から四日までの講演やシンポジウムが行われました。
今回の通訳と翻訳に関しても韓成禮さんのお世話になりました。
特別招待作家の筆頭は、ウォーレ・ショインカ(ナイジェリア)。
一九八六年にアフリカの作家として最初のノーベル文学賞を
受賞した詩人・劇作家・小説家です。「黒い大陸を告発した
黒人文学の勝利」と言われます。4日の高銀詩人とのシンポジウムで
興味深かったのは、高銀がアジア文化の個別性を強調したのに対し、
ショインカが普遍性にこだわったことです。ショインカも
アフリカの根を大切にしていますが、普遍性も必要なのでしょう。
ここには文学の深い問題が存在します。

この文学祭で一番インパクトを受けたのはインドネシアの
女性作家、アユ・ウタミです。1968年生まれで、小説『サ
マン』(1998年)が広く知られています。ジャカルタで育ち、
一九九四年にスハルト政権が三つの雑誌を発売禁止にしてから
他の新世代ジャーナリストと共に独立ジャーナリスト連盟を結成し、
民主化活動家と連携して地下活動を行いました。生き生きした表情と
力強い口調、流暢な英語で社会現実とかかわる文学を語りました。
とても美しく意志的で新世代のアジアの表現者として輝いていました。
私も、日本と朝鮮半島の歴史と現実について話し、女性ふたりが
文学と現実社会の関係を重視したのはおもしろい一致でした。

韓国の詩人、李相国さん、李時英さん、申鉉林さん、金海子さん、
済州島の詩人、金セシリアさん、許栄善さんにもお会いできて
うれしかったです。
申さんは写真家でもあり、りんごがある風景をシリーズ化している。
私の「りんご人」という詩を「女性新聞」に紹介して下さるそうです。

光州の居酒屋で二十人位の詩人と一緒に飲んだのも楽しい思い出です。
このような飲み屋で民主化運動の希望を語り、弾圧を耐え、
激論を交わし、歌いながら進めたのだろうと思いました。






2017平昌韓中日詩人祭(2)

新羅の笑みをたたえた顔 
―古代韓国の首都慶州から出土した新羅時代の欠けた一つの面

北塔(中国詩人。韓国語訳からの佐川亜紀訳)

時が二千年かけて
古代の顔の面影をかすめ取ったが
しかし あなたの微笑みは
相変わらず人の心を揺り動かす

この微笑みが一艘の小舟のように
歴史の風浪を耐え
生死にかかわらずすべてのことを忘れさせ
死さえもそれをどうすることもできないようにした

一つの王朝の胴体が腐った後
我々に残されたのはただ一つの顔の面影
手を覆った土が掘り返される時
再び日光を見たその手腕もまた埋もれてしまうのだろうか

この微笑をたたえた面影は
もうこれ以上どの王朝にも属さないだろうから
人それぞれ皆顔に載せて
自分ひとりで人生の大海に向き合うのだ




北洋航路
呉世栄
李国寛訳

厳冬の寒さ、
暖炉に火をつけながら、ふと
極地を航行する
夜の海の船舶を思う。
燃料はもう底を尽き始めたが
私は
ボイラー室で石炭を燃やす
この船の一介の老いた火夫
古い蒸気船一隻を率いて
果てしない時間の波に逆らい
ここまで来た。
外は吹雪。
まだ室内はぬくもりを失ってはいないが
出航時のときめきが去ってからすでに久しい。
目的地は未定、
航路は離脱、
信じられるのはただ北極星、十字星、
壁に吊るされた十字架の下で
でたらめな海図一枚を手に取り
暖炉の光にかざして見ている目は暗いのだが
細長い白い煙を火筒へと吐き出しながら
北洋航路
凍り付いた夜の海を漂流する、
生は
一軒の揺れるあばら家。


*北塔さんの詩は、二〇一七年九月十六日に朝鮮半島の
軍事境界線近くの臨津閣展望台の中で「平和の詩朗
誦」として朗読された作品です。時と権力を超えた笑みが
心に染みます。
呉世栄さんの詩は、二〇一七年九月一五日の「詩が流れる
アリランコンサート」で朗読された作品です。凍り付く
夜の海を漂流する古い蒸気船の「老いた火夫」と自分を
捉える透徹した省察と詩人としての熱い矜持を感じます。
*下記は、「東京新聞」二〇一七年十月五日に掲載して頂いた
文章です。


平和をめざす詩の力を信じて
  ―韓中日詩人祭に参加して   佐川亜紀

九月十五日の朝は、北朝鮮のミサイルがまた通過し
たと日本では大騒ぎだったらしいが、韓国の平昌では
何事も無く静かに詩人祭の二日目を迎えた。翌日には
軍事境界線に近い臨津閣平和公園に行ったが、たくさ
んの人たちが散歩し、遊園地では子供たちがはしゃぐ
姿に驚いた。それだけに戦争をあおるような日本政府
の態勢が異様に感じられた。日本は朝鮮半島支配の歴史
と分断に責任があり、南北の和平にこそ力を尽くすべ
きなのに、いつの間にか被害国の立場に自らを置いて
いる考え方が、かつての自衛のための戦争を思わせ恐
ろしい。

詩人は今なにができるだろうか、と焦る気持ちを抱
きながら、十四日から十七日まで韓国で開催された「
2017平昌 韓中日詩人祭」に招かれて参加した。
平原五輪のメイン会場の一つのアルペンシアリゾート
で開かれた。

韓国詩人協会(会長・崔東鎬)が主催し、日本から
十九人、中国から十五人、韓国代表詩人百人以上が参
加して、開会式には約二百人の詩人たちが集まった。
日本の顔触れは若手詩人の石田瑞穂さん、杉本真維子
さん、韓国で翻訳詩集が出ている柴田三吉さん、細田
傳造さん、韓国詩を訳しているなべくらますみさん、
北海道出身の麻生直子さん、沖縄の大城貞俊さんら。日
本詩人の詩選集や通訳には翻訳家で詩人の韓成禮さん
らの尽力によった。

東日本大震災に対して祈りの詩を書いた韓国の長老
詩人、金南祚さんは「暗い時代に人間の価値を一緒に
回復しましょう」と挨拶。各国代表の講演では、韓国
の呉世榮さんが「今、東アジアでは国家間の利益の追
求による葛藤の波が高まっている。しかし詩人は国家
の利益よりも、民族の利益よりも、人間の利益を擁護
する先頭に立つのだ」と力説された。韓国詩人が強調
したのは、詩が国家や民族を超えて人間として共感し
、人類の問題を悩み、普遍的な価値を追求するものだ
という点である。

中国代表の呂進さんは「詩は親和力と社会性を増す。
根が一緒の同胞なのに争うのは愚かしい。二十一世紀
は世界詩の重点が西洋から東洋に移る転換点だ。私た
ちは人類を調和させる芸術的原動力になりましょう」
と協力を呼びかけた。

日本代表の石川逸子さんは「詩の力を信じて」と題
して、戦争を体験した世代として歴史を省みた。石川
さんは、日本人被爆者ばかりではなく韓国人・中国人
被爆者を記録し、詩集に編み、日本の加害の面に目を
開いた著作『日本軍「慰安婦」にされた少女たち』(
岩波ジュニア新書)は韓国でも翻訳出版されている。
長年の地道な仕事に基づく深い話に、韓国、中国の、
特に女性詩人から熱い共感を得た。アジアの声を聞き、
詩作し続けた誠実さと鋭い知性、柔らかい感性が詩の
力を生み出したのだ。

十五、十六日のシンポジウムでは詩人祭の三つのテ
ーマ「平和・環境・治癒」をそれぞれ討議した。
十六日の夕方には臨津閣展望台の中で「平和の詩朗
誦」として韓国の金炯榮さん、中国の北塔さん、日本
の天童大人さんが声を響かせた。北塔さんの詩「新羅
の笑みをたたえた顔―古代韓国の首都慶州から出土し
た新羅時代の欠けた一つの面」の終連「この笑みをた
たえた面影は/もうこれ以上どの王朝にも属さないか
ら/人それぞれ皆顔につけて/自分で人生の大海に向
き合うのだ」が心に残った。  
(「東京新聞」2017年10月5日夕刊掲載)








2017平昌韓中日詩人祭(1)


熱愛
慎達子

吉村優里訳

手を切ってしまった
赤い血が長く我慢したかのように
世界の青い動脈の中へとぽたぽた垂れ落ちた
よかった
何日かはこの傷と遊ぼう
使い捨ての絆創膏を貼ってはまた剥がして傷を舌で撫で
かさぶたを取ってはまた悪化させ
つまみ食いするように少しずつ傷を怒らせよう
そう、そうやって愛すれば十日は軽く過ぎるだろう
血を流す愛も何日かは順調に持ちそうだ
私の体にはそういう傷跡が多い
傷と遊ぶことで老いてしまい
慢性リウマチの指の痛みもひどく
今夜はその痛みとごろごろ転がりまわろう
恋人役をしよう
唇にぎゅっと噛みつき
私の愛の唇がぷちっと腫れて破れて
誰が見ても私、熱愛に落ちたと言うだろう
最高だ

※シンダルヂャ 1943年慶尚南道居昌生まれ。『奉献文学』
『白痴の悲しみ』。


二〇一七年九月十四日から十七日まで韓国で開催された「2017平昌
韓中日詩人祭」に招かれて参加しました。平昌は二〇一八年の冬季オリ
ンピックが行われる所で、詩祭はメイン会場の一つのアルペンシアリゾ
ートで開かれました。平昌は緑豊かで穏やかな地方で行きのバスから
赤牛がのんびり草を食べているのが見えました。韓国はソウルもふつう
通りで、北朝鮮ミサイル発射で騒ぐ様子は特にありませんでした。
とは言っても、韓国軍が米軍と合同軍事演習し、年数回、市民の避難訓
練が行われているのも現実です。しかし、日本は過剰に反応し、電車を
止めるまでしているのは異様です。これを機に憲法まで改悪しようと
誘導するのはかつての戦争と似ています。
歴史的には敗戦国のドイツが分断されたように日本が分断されるはず
だったのに、朝鮮半島が分断されて今日の事態が生まれているのです
から、日本は和平にこそ力を尽くすべきです。

さて、詩祭には、日本から十九人、麻生直子さん、石川逸子さん、
石田瑞穂さん、大城貞俊さん、大坪れみ子さん、柴田三吉さん、
杉本真維子さん、田島安江さん、天童大人さん、飛田圭吾さん、
中本道代さん、なべくらますみさん、萩原健次郎さん、細田傳造さん、
堀内統義さん、紫圭子さん、望月苑巳さん、谷内修三さん、私が参加。
大城貞俊は台風に遭いながら沖縄から駆けつけられました。
開会式の様子などは「東京新聞」に掲載予定です。

詩人祭の三大テーマは「平和・環境・治癒」で、15日のシンポジウムで、
私は「治癒」の部で、「詩は癒しになりうるのか?」と提起しました。
韓国の慎達子さんは「内なる子供を詩でなだめる成人自我」との題で内面の
傷と和解の可能性を話されました。上の詩のように「傷と遊ぶ」
「痛みの恋人役をする」という境地になるたくましさに圧倒されます。
中国の王家新さんは「書くこと、傷と治癒」との題で、アウシュビッツ
体験と書くことについて述べられました。王家新さんはパウル・ツエラン
についての著作があり、偶然にも私が第五回を受賞した昌原KC国際詩
文学賞の四回目の受賞者でした。詩が治癒になるかどうかは、非常に難しい
問題です。私は社会派なので、歴史の問題に触れましたが、純粋詩の
立場では芸術は何かのためではなく無償性や遊戯性の中にこそ治癒が
あると考える詩人もいます。また、若いネット世代では、生の希薄感や
ネットでの治癒を感じる人もいるでしょう。短時間の話し合いでしたが、
いろいろな観点を知ることができました。







チョ・オヒョン


枕木

韓成禮訳

どんなに暗い世の中に出会って押さえつけられて生きたとしても
用の無い時は捨てられるとわかっていても
私は長い歴史の軌道に身を投じた
一片の枕木であり、年代なのだ

永遠の故郷として最後まで残るべき
太白山のふもとで腐っていく切り株よ
生きていく日々に地軸の揺れる震動もあった

見るがいい、生きるためにだけただ生きるために
どれほど真実だったはずの骨が折られたか
どれほど多くの人々がひそかに埋もれて暮らしているか

それがまさに君臨による労役だとしても
ややもすれば崩壊してしまう沈みゆくこの地盤を
最後まで支えた者があり
天があり、歴史があるのだ



光りの波紋

韓成禮訳

天にもない天の話の出ばなをくじいて
碑石からふらりと彷徨い出て、今朝死んだ男
では女も、死んだあの女も碑石から彷徨い出てきたのか

あお〜い色だ きいろ〜い色だ
あか〜い色だ まっくろ〜な色だ
宝石も、千個の宝石でさえ持てない色だ

無数の死の中に色たちが向かっている
生がついていけば気絶してしまうそれ。
私の眠りを奪って生きる幽霊、そんな幽霊だちだ。



※チェ・オヒョン 1932年慶尚南道生まれ。僧侶詩人。
1968年「時調文学」でデビュー。彼の尽力で建設された
万海村は国内外を問わず大きな文学的行事が開催されている。
詩集に『山に住む日に』『寺の物語』など。現代時調文学賞、
鄭芝溶文学賞、DMZ平和賞大賞など受けた。
※戦後70年、日韓国交正常化50年記念アンソロジー
『隣人への挨拶状』(編訳・韓成禮。詩・田島安江など)から。




























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