ぼすのできごと 2005年1月下旬
   2005年 1月上 1月下 2月上 2月下 3月上

   2004年 9月上 9月下 10月上 10月下 11月上 11月下 12月


16日 鳩が出ますよ
  17日 土星人の運命  19日 はぐれ刑事は逃げ出した  20日 別れても好きな人
21日 5ちゃんねる  23日 ニセ札に気をつけろ  24日 ありえない映像  25日 人は死にますか
27日 「まちのこえ」を聞け  28日 読み書き能力の効用  29日 世界進出  30日 格付け
31日 ハウルの数字が動く城  

 

1月31日 ハウルの数字が動く城

 

「「ハウル」など好調、04年映画興行収入が過去最高に」(朝日)
http://www.asahi.com/culture/update/0131/009.html 

 『ハウルの動く城』など邦画が好調で、昨年の映画興行収入が過去最高になりました。前年比で104.8%ですが、スクリーン数も前年比105.4%と同じくらい増加してますから、まあ順当な数字といえます。ただ、邦画といっても、1位の『ハウル』をはじめ、4位『ポケモン』、5位『ドラえもん』、6位『名探偵コナン』と邦画部門ベスト10のうち4作品、ベスト20だと半数の10作品をアニメが占めています。実写でも、『忍者ハットリくん』や『CASSHERN』は原作がマンガやアニメですから、日本映画界はアニメに支えられているといっても過言ではないでしょう。 

 実写では2位の『世界の中心で愛をさけぶ』と3位の『いま、会いにゆきます』が純愛ブームをつくるヒットになりましたから、日本映画製作者連盟の松岡功会長が「若者が日本映画の良さを再認識しているのではないかと感じている」と話している(NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/2005/01/31/d20050131000095.html)のもたしかにそのとおりなのですが、1位『ハウル』200億円、2位『世界の中心で』85億円、3位『いま、会いにゆきます』48億円と2位と3位をあわせても『ハウル』の足元にもおよばないのですから、いかにスタジオジブリ、宮崎駿のブランドがすごいからうかがえます。「お婆さんが元気!」ならぬ「お婆さんが現金」です。 

 ただ、『ハウル』のこの200億円という数字はキリがよすぎるうえに、ちょっと他のデータとつじつまが合わないところがあります。昨年11月末の公開当初、配給元の東宝は『ハウル』の公開直後2日間の成績が『千と千尋の神隠し』の約1.4倍にのぼったと発表し、あわせて、『千と千尋』の日本記録更新に挑戦すると宣言するなど絶好調をアピールしました。 

 とはいえ、『ハウル』は史上最大の448スクリーンでの公開で、比較対象の『千と千尋』336スクリーンの1.3倍にあたります。成績が1.4倍ですから、その時点ではほぼ同レベルの成績ではあるものの、『ハウル』がそれだけのスクリーン数を確保できたのは正月興行前の谷間を狙ったためでもあり、ディズニーの『Mr.インクレディブル』など強敵が控えるこの先はどうなんだろうという気もしました。 

 その後、東宝は年明けになって『ハウル』観客動員が1000万人を突破http://www.asahi.com/culture/update/0104/008.htmlと発表しました。これも一見、順調そうに思えますが、この時点でなぜか興行収入は明らかにしていません。この1000万人突破は今年の1月4日まででということでますから、年末までなら1000万人には届いていないということでしょう。だとすると、公開直後の2日間の成績が、観客動員110万人で興行収入14億8000万円ですから、1000万人弱では興行収入150億円ちょっとになると推測できるのですが、今回発表の昨年末までの興行収入は200億円です。日本記録を持つ『千と千尋』と比較しても、『千と千尋』が観客数2350万人、興行収入304億円で、『ハウル』は観客数がその半分に満たないながら興行収入だけが2/3もあるというのは不可解です。まあ、151億円を越えていれば、10億円単位で四捨五入すると200億円になりますが、昨年度では上位6作品を独占して、邦画配給では相変わらずの一人勝ちをつづける東宝にしてもそれはちょっとやりすぎではないでしょうか。 
  
 城が動くだけでなく、数字も動く『ハウルの動く城』。もしかすると荒地の魔女の仕業で観客が払った千円札が二千円札に変わって興行収入をつり上げているのかもしれませんが。だとすると、映画館でスクリーンを隠し撮りして海賊版DVDを売る輩http://www.asahi.com/culture/update/0108/002.htmlも魔法でおばあさんに変えて欲しいものです。


きょうの一冊:『「宮崎アニメ」秘められたメッセージ』 著/佐々木隆

「宮崎アニメ」秘められたメッセージ―『風の谷のナウシカ』から『ハウルの動く城』まで

 

 

1月30日 格付け

 

「ミシュラン:開店前のレストランに格付け 初の回収騒ぎに」(毎日)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050130k0000m030106000c.html 

「有名なレストランなどのガイドブック「ミシュラン」の2005年ベネルクス版が、編集時点では開店していなかったレストランの格付けをしていたことが分かり、ミシュランは29日までに、5万部の回収を始めた。回収はミシュラン105年の歴史の中でも初めて」 

 「ミシュランの広報担当者は、コックやメニューの内容などから判断したようだと話している」そうですが、プロの調査員ならば開店前でも評価できるんじゃないかと思うのですが。競馬でいうなれば、騎手や調教の内容などから判断したわけですが、レストランは競馬のように客観的な順位がつくわけでもないですから、馬を見る目ならぬ店を見る目があればおおよその見当はつきそうなものです。 
  
 僕だって一度も食べたことがないにもかかわらず、ジャンジャン横丁に林立するくしかつ屋でどこが美味いかは知っています。メニューも価格もほとんど横並びですが、看板の大きさと照明の明るさ、そしてなにより前で並んでいる人の数が判断材料です。席待ちで長蛇の列がつづいている店の横にがら空きの店があっても誰一人入ろうとしないのですから、残酷なものです。タレの二度付けは禁止ですが店の格付けまでは禁止できないようです。 

 レストランを評価することを生業とする調査員ならば、営業中の店を見ずとも紙上のプロフィールでだいたいのことは分かるでしょう。逆に一軒ずつ足を運んで実食したとしても、その店のその日のそのメニューを評価するにすぎず、他の日や他のメニューはまた違った味がするはずです。 

 調査員のその日の体調も評価に影響を与えそうですし、そもそも毎日外食三昧だと栄養のバランスが偏って糖尿病などになったり、同じような食事が続いて味覚が常人とかけ離れてしまったりで、監督自らファストフードを食べ続けるドキュメンタリー映画『スーパーサイズミー』のようなことになりそうです。 

 詳細な評価マニュアルがあるから客観性が保たれると反論されそうですが、それならば熟練の調査員でなくとも素人アルバイトでも評価できないとおかしいです。ガイドブックを参考にして食事にいく人は素人なんですから。 

 ただ、だからといって評価することに意味がないとは思いません。完璧に客観的な評価など存在しないとしても、他人がどのように評価しているかを知ることは自分で判断する際の手がかりになるからです。それは料理も競馬も同じでしょう。『競馬ブック』誌のような保守的な競馬雑誌で、予想家のほとんどが横並びの印を打っているのを見ると無個性で辟易してしまいますが、その印があることによってその馬のだいたいの評価が分かります。自分ひとりで競走成績だけを参考に予想しているとすっぽり見落としてしまう実力馬がたまに出てしまうのですが、印が付いているのを見れば注目せずにはいられなくなります。とはいえ、週刊誌に600円、競馬新聞に410円を払うのは高いと思ってしまうのですが。 

 料理の話にもどりますが、ガイドブックに載っている店のすべてが美味しい料理を出すわけではないとしても、ガイドブックで美味しいと紹介されて評判の店に行って、ガイドブックに載っていたのに美味しくないと思ったり、逆にガイドブックには載っていないけれど美味しいと思ったりすることが、ちょっと食通な自分を演出するための要素のひとつになるのでしょう。無国籍料理とか創作料理とかの看板を掲げておきながら、人気メニューが枝豆となんこつの唐揚げだったりする居酒屋チェーンにばかり行っている僕にはあまり縁がないですが。 

 僕に縁のあることでは、映画賞や文学賞もどれほど権威ある賞だとしてもその栄誉に値するほどの作品だろうかと疑問に思うことが多々あるものの、その賞を獲得した作品であるということを前提として鑑賞するからこそ見えてくるものがあると思うのです。『華氏911』がパルムドールを獲るほど優れたドキュメンタリーかどうかは別にして、カンヌでタランティーノがムーアのブッシュを批判した映画を褒めたことに意味がありますし、阿部和重が芥川賞を受賞したことは、今回ノミネート対象となったロリコン男を主人公にした話が良かったというよりも、綿矢りさと金原ひとみのあとになって阿部和重を選んだ審査員とデビューから10年たって芥川賞作家になった阿部和重の両方が芥川賞を再定義したことに意味があるのです。 

 AがBを評価するということは、AとBの関係性を規定する行為であり、それはA→BばかりでなくA←Bでもあり、A⇔Bの双方向コミュニケーションなわけです。コミュニケーションということは贈与がからんでくるわけで、贈与するのはこの場合、富とか名誉でしょう。「翼をください」は富とか名誉はいらないと歌いますが、翼こそが富と名誉を手に入れる手段であり、翼がなければ富も名誉も手に入らないのですから、翼は自由とともに富と名誉の象徴でもあります。僕がいま行なっている、日記を書くという行為もある意味では評価してもらう、もしくは評価することのひとつです。だから昨日は『キャプテン翼』とか書いてたのかもしれません。


きょうの一冊:『ミシュラン2005・ベネルクス版

 

 

 

1月29日 世界進出

 

「日本のアニメ、外務省が途上国へ無償提供」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050129i104.htm


 外務省が独立行政法人を通して日本製アニメの権利を買い取り、放映権を買う余裕のない発展途上国に無償で提供するそうです。人類総オタク化計画がいよいよ動き出しました。

 「昨年12月からアフリカや中東、アジアの在外公館を通じ、〈1〉日本製アニメの放映実績〈2〉現地で人気が高いアニメの分野――などの実態調査を進めている」そうです。日本のエリート外交官たちは日々、タイでは『北斗の拳』が人気とか、エジプトで人気のセーラー戦士はセーラー・マーズとか、トルコ人は魔女っ子ものが好みとか、ケニアでは『ジャングルの王者ターちゃん』がありふれた日常生活を描いたアニメとして受容されているとか、アフガニスタンで『忍者ハットリくん』はブルカをかぶっているから女性と解釈されている(いずれも勝手な妄想)といった情報収集に駆けずり回っているのでしょうか。この国の未来が心配になってきます。

 「手始めに、世界的に人気の高いサッカーアニメなど30分番組で20話程度の作品を数本、購入することを検討している」

 日本の外交官が調べた世界でもっとも流行っている日本アニメは『キャプテン翼』というトリビアが新たに生まれたようです。ということは、税金で放映権を買い取られた『キャプテン翼』がサッカー強豪国のひしめくアフリカや南米で放送されるのですね。日本人はジャンプして空中で止まることができるとか、日本の双子は人間ロケットのような驚異的アクロバットができるほどコンビネーションがいいとか、モリサキという名前の日本人は冴えないとかの間違った日本イメージが世界中を駆けまわることになりそうです。

 しかし、わざわざ国を挙げて『キャプ翼』を布教しなくとも、すでに世界のかなりの国で『キャプ翼』は受け入れられているようです。なにせ、自衛隊が駐屯しているイラクのサマーワでも『キャプ翼』は大人気らしいですから。次に引用するのは外務省のサイトにある「在サマーワ連絡事務所より」というコーナーhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412a.htmlに掲載されているエピソードです。

「イラク人スタッフと雑談していた時でした。いつものようにサッカーの話で盛り上がっていると、アラブのキャプテン・マージドが話題になりました。よくよく聞いてみると、それは何と日本の『キャプテン翼』のことではありませんか。しかも、イラク人の大多数は翼君が日本人であることを知らない!アラブのマージド君だと思っている!これには驚きました」

 それほどの認知度があるということは、フセイン政権のころから『キャプ翼』が放送されていたと思われます。ブッシュに悪の枢軸呼ばわりされ、専制君主の圧政に苦しめられていたはずの国の人々は、実は「ボールは友だち」思想に感化されていたようです。

 そして、外務省もこのイラクの『キャプ翼』ブームを日本のイメージアップ戦略に利用しています。昨年10月にサマーワで「わが国の草の根・人間の安全保障無償資金協力により供与された資金」をもとに給水車を地元の人たちに贈呈したのですが、その給水車の車体には『キャプ翼』のイラストが大きく描かれたのです。

「供与される給水車には、ムサンナー県の子供たちを励まし、元気づけたいとの願いを込め、イラクで人気が高く広く親しまれている「キャプテン翼(現地名:キャプテン・マジッド)」の塗装ステッカー(1.2m×1.8m)が貼付されている」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/16/rls_1022f.html

画像:http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/16/rls_1022f_2.html
 
 『キャプ翼』は日本とイラクの友好のシンボルであり、イラク復興の立役者なのです。しかし、翼くんはどう見てもアラブ系には見えないのですが、イラク版では肌の色を変えたり、髭を生やしたりと加工されているのでしょうか。給水車のイラストは日本のままなのでそのままのようにも思えますが。だとしたら、どちらかというと日向くんのほうがアラブ人に人気がありそうな気がします。
 
 イラクをはじめ世界中で放送される『キャプ翼』ですが、当然、各国で自国語に吹替える作業が行なわれているはずです。そして、なかにはオープニングテーマまで日本のものを訳して自国の歌手に歌わせている国もあるはずです。とすると、歌詞にある「あいつの噂でチャンバも走る」をどういう意味に解釈しているのかが気になります。発祥の地である日本でさえ謎となっているあの歌詞の意味を理解できる国の人がいるのだとすれば、人類は分かりあえると信じることができそうです。


きょうの一冊:『進化するアニメ・ビジネス』 日経BP社技術編集部/編

進化するアニメ・ビジネス―世界に羽ばたく日本のアニメとキャラクター

 

1月28日 読み書き能力の効用

 

「赤十字は「あかじゅうじ」 小学生の漢字読み書き調査」(産経)
http://www.sankei.co.jp/news/050127/sha091.htm


 文部科学省所管の財団法人・総合初等教育研究所による小学生の漢字の読み書き習得状況調査の結果です。25年前の調査と比較すると、良くなった点も悪くなった点もあって、一概にどうこう言えないのですが、間違っている例が強調されているあたり、減点方式の日本の教育をものがたっています。

 この調査結果をみていると、小学6年生の2%しか読めなかった漢字に「読本(とくほん)で勉強」というのがありますが、僕も今の今まで「どくほん」だとばかり思ってました。「文章読本」とか「人生読本」というときには「どくほん」ですが、単独で「読本」だと「とくほん」になるのですね。

 goo辞書(三省堂提供「大辞林 第二版」)によれば、「読本」は「明治期から第二次大戦直後まで、小学校の国語教科書として使われた本。また、広く教科書一般をもいう」という意味ですが、現在では日常的に教科書のことを読本と言うことなんてほとんどないでしょう。サブテキストを副読本と言うのが名残であるくらいで、しかもこれも「ふくどくほん」と読むのですから、「読本(とくほん)」を読めというのは悪問ではないでしょうか。「研究所は「漢字を習得するには家庭生活の中でも意識して使うことが必要」としている」 とのことですが、家庭で読本を使うのは無理がありますし、左の人に曲解されて戦前の思想教育の復活だと思われかねません。

 ところでこのニュース、共同通信配信のものがYahoo!ニュースに出ているのですが、その記事http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050127-00000175-kyodo-sociの出だしが、「小学2年生の4人に1人は「犬」を「☆」と書き、「赤十字」は5年生の半数近くが「あかじゅうじ」と読む」 となっています。小2の4人に1人が「犬」を「☆」と書くとは、そういう当て字が流行しているのか、日本の教育が完全に崩壊したのかどちらかだと思って、将来に対する深刻な不安を抱いてしまいました。

 これが小学生を越えて一般に広まると、負け犬は負け☆で相撲の勝敗みたいになり、赤犬は赤☆でなんだか足の速い野球選手みたいで、アイボは☆型ロボットになって見た目がかなりかわってしまいます。また、逆に「☆」は「犬」になるのだとしたら、「つのだ☆ひろ」は「つのだ犬ひろ」で、まだ漢字をちょっとしか書けない小学生っぽくなります。

 そんな想像をしつつ、記事を読みすすむと文章の最後の最後に「(注)☆は犬の「、」を大の横棒の右下」とありました。人名などでコンピュータに表示できない漢字を■で記して扁と旁を書くことはありますが、この記事の場合は漢字そのものが重要な要素になっているのにもかかわらず、このような表記をしていては多くの人が誤解してしまいます。記事を書いた共同通信の人はパソコンをあまり使わないのでしょうか? 犬の「、」の位置が違う文字なんて印刷するにしても特別につくらないといけないわけで、このニュースでまっさきに取りあげる例としては無理がありすぎるように思います。小学生の漢字教育よりも共同通信社の社員教育を心配してしまいます。


きょうの一冊:『読み書き能力の効用』 著/リチャード・ホガート


 

 

1月27日 「まちのこえ」を聞け

 

「NHK会長辞任:退職金1億2千万円! 町から怒りの声」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/geinou/tv/news/20050126spn00m200003000c.html 

 海老沢会長辞任について思うところがあるからというわけではなく、「町から怒りの声」という表現に引っ掛かりを感じたので注目しました。「まちの声」という意味合いのときは「街」を使うのが一般的だと思うのですが、毎日新聞社の社内規定では「町」になるのでしょうか。町から怒りの声だと、市とか村に住んでいる人は怒ってないように思ってしまいます。 

 それはおいておくとして、記事によれば「視聴者からも「そんなにもらうなら、もう受信料を払いたくない」という怒りの声も上がっている」とのことですが、これとおなじことを言った人が実際にいるかどうかは別にして、この論理はかなりおかしいのではないでしょうか。 

 なかば公的機関のNHKだからこうした言い分がまかりとおりそうに思えるものの、これを民間企業に当てはめれば、不祥事でトップが辞任した企業の製品は買っても金を払わないと言っていることとおなじです。それだと、払わない側が不法な行為をとっているように思うのですが。 

 これも記事に出ていた「ずっと受信料を払っていたが、もう払いたくない。視聴者から集めたお金が退職金に充てられるのかと思うと頭にくる。もうNHKは見ません」という意見ならば、見ないから払わないで筋が通っているのですが、作っている奴らが気に食わないからタダで見てやるという態度には賛同しかねます。 

 他にも、「受信料不払いの元凶の会長にそんな多額の退職金は必要ない。一般企業ならありえない話。非常識だ」というような「お役所」批判も、なんだか紋切り型です。一般企業のひとつであるソニーは名誉会長に手取りで16億円の退職金を払って話題になりました。NHKの事業規模を考慮すれば、トップの退職金が一億を超えるくらいの額というのはそれほど破格とは思えません。 

 こうした「お役所」批判の切り口は、最近では大阪市の職員への過剰な福利厚生に対する報道でも見られます。たしかに、批判されてしかるべきところはありますが、かといって一般企業は清廉潔白かというと層でもないのではと思うのです。一般企業は一般企業で変なところがたくさんあるものの、一般企業と大雑把にまとめてしまうことで一つ一つが隠れてしまうだけなのではないでしょうか。競争意識や経費削減への努力が欠如しているのはなにも「お役所」だけではないはずです。 

 だからといって「公」を敬おうと言いたいわけではなく、受信料支払いを拒否することで間違った正義感に浸っている人たちのために、『NHKアーカイブス』の登録作業が滞ったり、『NHKスペシャル』の宇宙モノシリーズの予算が削られたりすると僕が個人的に不利益をこうむるのです。NHKに不信感を抱く人たちは、受信料を払わないのではなく、NHKを見続けて払っている受信料以上にNHKから恩恵を受けつつ、NHKを監視する戦術に転換することを推奨します。


きょうの一冊:『NHKアーカイブス1 夢と若者たちの群像

NHKアーカイブス〈1〉夢と若者たちの群像

 

 

1月25日 人は死にますか 

 

「15・4%が「死人は生き返る」 長崎で小中学生調査」(産経)
http://www.sankei.co.jp/news/050124/sha111.htm 

「長崎県佐世保市の小6女児事件を受け、長崎県教育委員会は県内の小中学生を対象に「生と死のイメージ」に関する意識調査を実施。「死んだ人は生き返る」と思っている子供は15・4%に上り、小学生よりも中学生の方がその割合が高かった」 

 小中学生の15%くらいが死んでも生き返ると思っているといったって、まあそんなもんじゃないのとしか思わないのですが、教育界の人にとっては「最近の子どもはおかしい」ということの補強材料になるようです。 

「その理由についてたずねると、約半数が「テレビや本で生き返る話を聞いたことがあるから」と答え、全体の29・2%が「テレビや映画で生き返るところを見たことがあるから」、7・2%が「ゲームでリセットできるから」と回答した」 

 ということで、いつもどおりの「メディアが悪い」論につながります。読売の記事http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050124it16.htmの記述からは、これが用意された選択肢を選ぶ回答方式だったことがうかがえます。おそらく、「キリストは復活したから」とか「仏教は輪廻転生を説いているから」とかの選択肢はなかったのでしょう。これで、『ドラゴンボール』や『ドラゴンクエスト』や『黄泉がえり』やらは批判できそうですが、長崎の事件で影響を与えたことにされている『バトルロワイヤル』では、死んでも生き返っていなかったと思うのですが。 

 「サンタクロースを信じますか?」という質問をしたら、15%以上が肯定するのではと推測するのですが、もしそうだとするとそれもテレビや映画の影響ですね。僕も小学生の頃、NHKのニュースで「世界中の子どもたちにプレゼントを届けるべく、トナカイのソリに乗って出発するサンタクロース」のニュースを見て、サンタ信じる派に属していました。天下のNHKがニュースで報道するのだから、いるに決まっているというのが論拠でしたが、それが現在ではすっかり変わってしまいました。もちろん僕ではなくNHKの方です。 

「県教委は「子供らは経験ではなく、周囲の情報で死を認識しているようだ」と分析。「生や死にじかに接して他者の気持ちに共感することは成長過程で欠かせない」として、学校や家庭で生死の意味を教える必要性を訴えている」 

 身近に死を経験する機会が少ないのはいいことだし、実体験がない分を周囲の情報から埋めようとするのは高度な生物の行動だと思うのですが、原子爆弾の災厄を幼少期に体験したかもしれない教育委員会の人たちにすれば世代間ギャップが大きすぎて、そんなことにも問題があるかのように思えてしまうのでしょうか。死生観が社会状況や文化から影響を受けるのは当然のことで、そうした背景が異なれば死生観が微妙に食い違うのは仕方のないことです。 

 それでも心配だというのなら、教育委員界は『防人の歌』で「海は死にますか 山は死にますか」と歌っているご当地の歌手さだまさしにキャンペーンソングで「人は死にますか?」と問いかける曲をつくってくれるように依頼してみるというのはどうでしょうか。 

 結局、この話題で問題になるとすれば、むしろ子どもたちが死んでも生き返ると思っていることが問題だと思ってしまう大人の側でしょう。最近の教育の荒廃のなかでは、死をじかに教えたくて本当に人を殺してしまう先生が出かねませんし。


きょうの一冊:『輝け!いのちの授業―末期がんの校長が実践した感動の記録

 

 

 

1月24日 ありえない映像

 

「雑記帳:福岡市上空の西の空にオレンジ色の物体目撃」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050124k0000m040079000c.html 

 Yahoo!のトップページにリンクがあったもんで、しかも福岡でオレンジですから、すわソフトバンクに球団を盗られたダイエーの怨霊がロゴマークになって飛んでいるのか、と思いきやただの夕焼けに照らされた飛行機雲だそうです。数年前まで競走馬として走っていたヒコーキグモがまだ現役だったら、7枠(オレンジ)のヒコーキグモは買いというサインにもとれたのですが。 
 そういえば、数日前の日記で話題にしたサンテレビは、サイトに「「火球」の撮影に成功しました!」と紹介していますhttp://www.sun-tv.co.jp/hd/kakyu/index.html。その解説によると、「「火球」とは、流れ星が地球の大気圏に落下する際、空気との摩擦で発火する現象」だそうで、超常現象の人魂でも大槻教授のプラズマでもないようです。まあ、ほんとうに人魂やプラズマだったとしても、よりによってサンテレビのカメラにおさまるとはずいぶん迂闊なことだと人魂友達やプラズマ仲間に言われてしまいそうです。ただ、最近だとNHKのカメラに写っても、政治家の圧力とかで世に出ないかもしれないから、逆にサンテレビで正解なのかもしれません。なにが正解なのかは謎ですが。 

 こういうありえないものの写っている映像というのはホラー映画の宣伝なんかでもよくつかわれて、公開前のスポーツ新聞なんかで、「今度公開されるホラー映画のワンシーンで、スタッフも気づかなかったありえないものがうつっていると試写会で話題に」というような記事が出ていることがあります。おそらく、それらは配給会社の人が宣伝目的で流布させているのだと思いますが、フィクションにリアリティを出させる効果がうまく発揮されれば「ついても許される嘘」になるでしょう。あまりに過激なものだと、『カンフーハッスル』級の「ありえねー」映像としてギャグになってしまうので、さじ加減が難しそうですが。 

 最近僕が見た衝撃映像というと、ディープインパクトの勝った若駒Sのレースです。他の馬が止まって見えるどころか、他の馬はバックしているかのような桁違いの末脚で圧勝したディープインパクトはPOG指名馬だという贔屓をこえて、日本競馬史上に名を残す名馬となる可能性を十分に備えた馬です。ディープインパクトが競走生活を終えるころには、この馬がこれから順調にレースに出て行けたとしても、すべてあわせて30分に満たない程度にしかならないであろう短い映像のなかに競馬の素晴らしさが凝縮されることになります。現在、その完成途上の短編映画の最初の4分を見たところですが、すでにこの馬は僕をはじめとした多くの競馬ファンを魅了しています。願わくば、この映画が少しでも長くそして劇的な展開を見せつつもハッピーエンドであってほしいという贅沢な希望が今の僕の生きる糧になっています。


きょうの一箱:『NHK DVDーBOX 「映像の世紀」全11集

NHK DVDーBOX 「映像の世紀」全11集

 

 

1月23日 ニセ札に気をつけろ 

 

「偽1万円札、対策などで経済的損失1兆円超にも」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050123i112.htm 

「第一生命経済研究所は、偽1万円札などが急増していることで、日本企業の業績が最大1兆円超落ち込む可能性があるとの試算結果をまとめた」 

 小売店などがニセ札鑑別機を導入するコストや通貨の信頼性低下によるインフレが経済に悪影響を与えるらしいです。たしかに、ニセ札によってさまざまな不利益が発生するだろうことは細かく分析せずとも容易に想像できます。僕もいちおうは小売店のひとつで働いていますから、最近のニセ札騒動には敏感になっています。旧一万円札の受け渡しの際には一応、透かしを確認するようにとの通達が出ていますし、旧札を出す際に自ら透かしを確認して渡してくれるお客さんもいたりして、世の中のニセ札に対する警戒感は増しているように感じます。そういえば、今日も昼飯を食べた松屋で食券機が故障して、冗談交じりにニセ札でも入ったんとちゃうか?と言っているのを聞いたりしました。 

 そんなことでニセ札が社会現象になりつつあるのは実感できるのですが、それが経済的な損失に結びつくかとういうと、そこまでのことなのかなとも思います。記事にあるようなマイナス要因については分かりますが、逆にニセ札鑑別機を販売して利益を上げるメーカーだってあるわけです。また、日本経済は現在デフレのまっただなかにあり、インフレ・ターゲット(政府や日銀がインフレに指向した金融政策をとって、意図的に物価を上昇させる経済戦略)を導入すべきなんていうあやしげなことまでいわれるくらいですから、少々のインフレならばプラス要因と考えることもできます。 

 しかも、1兆円という額がちょっと大きすぎるのではと、第一生命経済研究所にあるPDFファイルで詳しく見てみると、「対策費用が1兆631億円に上る」場合の試算は、日本全国の「小売業、飲食店、旅館・その他の宿泊所」のすべてでニセ札鑑別機を導入したケースでのことだそうです。ということは、全国のコンビニチェーン全店はもちろんのこと、ひなびた商店街にあるおばあちゃんがそろばん弾いて計算しているような雑貨屋や、平日は観客よりスタッフの方が多いときもある映画館なんかにもニセ札鑑別機なるハイテクメカが置かれると仮定するわけですね。 

 東京のど真ん中で仕事している研究所の人は、旧札しか交換できない両替機や新五百円硬貨が使えない自販機があったり、いまだに聖徳太子の一万円札が流通してたり、旧五千円札はマギー司郎だと思ってたりする「新世界」という名の旧世界に生きる人々のことは念頭にないようです。それでなくとも、一般的な小売店でもニセ札を受け入れることを防止するよりも優先したい設備投資はたくさんあるはずです。 
  
 また、インフレ云々の話も、ニセ札が100万枚以上流通したらという仮定のうえであって、2004年1月〜11月末で見つかったニセ一万円札が5000枚ほどですから、この年末年始にいくら大量に出回ったとはいえ、現実とはだいぶかけ離れた夢物語として聞いておいたほうがよさそうです。 

 第一生命研究所のニセ札に関するこの試算は、現状からすると過剰に不安を煽るだけで、実際に経済に影響を与えるとは思えないのですが、ニセ札を二千円札に代えてみるとどうでしょうか? 

 財布の中でババ抜きのジョーカーのごとく居座っている二千円札、お店で出すのは気恥ずかしく、かといって対応している自販機なんてほとんどなくて、しかたなくタンスにそっとしまっている人も多いはずです。そうなると、お金を使わなくなることで消費を抑制する作用をもっているかもしれません。なにせすでに数十億枚流通している二千円札ですから、その影響力はニセ札の比ではないでしょう。しかも、新札切り替えのドサクサにまぎれて、日銀の倉庫に出戻っていた二千円札が市井に放出されているという噂も聞きます。二千円札に対応するために企業はコスト増、使いづらい二千円札で通貨の信頼性が損なわれてインフレになんてことになれば、日本は金融政策で世界の笑いものになってしまいます。日銀に目を付けられかねないそんな研究は、さすがにどこの研究所でもNGでしょうが、経済学部の卒論なんかで書いてみると面白がられるのではないでしょうか。 

 個人的には二千円札といえば、初お目見えした2000年の沖縄サミットで当時の森首相が各国の首脳に一枚ずつ配って、「2000という額面の紙幣は世界初ですぞ!」と自慢し、そのときにいつも無表情なロシアのプーチン大統領の顔からさらに表情が消えていたイメージと結びつきます。あのプレゼントした二千円札は今どうなっているのでしょうか。場の演出では森首相から友人である(と一方的に思っていた)各国首脳へのおみやげというようになっていたと思うのですが、一応お金なので、帳簿上で表現しないといけないはずです。名目は政治献金で、内閣官房機密費から支出したことになったりしているのでしょうか。森喜朗元首相のキャラクター的には、こっそりODA(政府開発援助)として計上して、先進主要国へ援助してやったぜと自尊心を満足させてたりしてそうです。ならば、これも援助交際の一種といえそうですが。 
 それはともかく、新札に切り替わっても二千円札が流通するとすれば、発行された時期が古いために最新技術のホログラムなんかがなくて、もっとも偽造しやすい紙幣になるわけで、ニセ二千円札がつくられる可能性もあるわけです。しかも、普段見慣れてない分、受け取ったときにすぐに偽造と分かりづらいので、発見されずにそのまま流通し続けるかもしれません。それ自体偽者くさい二千円札のさらにニセ札となると、明石家さんまのモノマネをする原口あきまさのモノマネのようなものでしょうか。 

 原口あきまさといえば、今度近所の文化ホールにはなわと一緒に営業で来るそうで、毎朝最寄り駅のポスターで目にします。それが、今日の朝見ると、「安田大サーカス急遽出演決定!」という文字と写真で原口あきまさの顔が半分隠れてしまっていました。若手芸人界も生存競争が激しいようです。


追記:
 ついでに、そのお笑いイベントを調べるのに文化ホールの今後の予定を見ていたら、3月に「國府田マリ子アコースティック コンサート〜みんなでうた。〜」というのを見つけました。僕がお金を払って見に行ったコンサートは10年ほど前の厚生年金会館でのこの人のものだけなので、なんだか甘酸っぱい気分になりました。しかも、市の文化振興事業団設立15周年記念だそうです。たぶん事業団の若手には10年前に僕とおなじ空気を吸った人がいるのでしょう。


きょうの一冊:『超芸術トマソン』 著/赤瀬川原平

超芸術トマソン

 

 

1月21日 5ちゃんねる 

 

「「共用録画は著作権侵害」 民放5社が販売会社を提訴」(産経) 
http://www.sankei.co.jp/news/050121/sha088.htm 

「マンションに居住者共用のテレビ番組録画用サーバーを設置し、居住者が予約した番組を一括録画して自由に視聴できるシステムは著作権を侵害する」 ということで、販売と使用差し止めを求めて在阪の民放五社がシステム販売会社を提訴しました。 

「録画システムは集合住宅用に開発され、サーバー一式で約50戸に対応。民放5チャンネルをまとめて録画予約することが可能で、番組のデータは1週間、共有のサーバーに保存され、入居者は予約した番組を各戸の端末で自由に再生できる」 そうです。 

 クロムサイズという会社が売っている「選撮見録(よりどりみどり)」という名前のこのシステム、共有サーバーで複数の入居者が利用すること以外は、ソニーのVAIO typeXに付いている、最高6チャンネルを約1週間録りためる「タイムマシン」機能にそっくりですが、在阪民放は天下のソニーには何か言っているのでしょうか? 著作権法に詳しくない僕には共有サーバーを利用する点がどの程度影響しているのか判断しかねるのですが、まあ、大スポンサーのソニーと名もない新興企業とであつかいが違ってくるのは当然ですし、弱いところから叩くのがケンカの常道でもあります。 

 NHKは国民に受信料を払ってもらえないこと危機感を持っていますが、それとおなじくらい、民放は視聴者にCMを見てもらえないことに危機感をもっています。そして、なぜ視聴者がCMを見てくれないかというと、それは世の中にCMを飛ばしてくれる余計な装置があるからだと民放は思っていて(「CMカット機能「著作権法違反も」 日枝・民放連会長」(朝日)http://www.asahi.com/tech/asahinews/TKY200411120350.html)、ゆくゆくは大手電機メーカーにも物申したいのかもしれません。そこで、まずは目立たないように関西で東京の小さなメーカーを相手取って、放送局側に有利な判例をつくっておこうという戦略なのかもしれません。  

 それにしても、訴訟を起こしたのが毎日放送、朝日放送、関西テレビ、読売テレビ、テレビ大阪の在阪民放5社。NHKが入っていないのは、このシステムがおそらく受信料の関係で真っ先にもめる可能性のあるNHKは録画できないことにしているためだと思われますが、設置される予定のマンションのある大阪市内でも、頑張れば見ることのできるサンテレビが入っていないのはどうしてなのでしょうか? 

 民放5チャンネルしか録画できないとすれば、この5社で決まりということなのでしょうか。しかし、テレビ大阪とサンテレビは結構きわどいと思うのですが。たしかにテレビ大阪の『おはスタ』や『ポケモン』、『ハム太郎』は小さな子どもに人気ですし、『まほらば』や『月詠』は大きなおたくちゃんのお楽しみですが、サンテレビには関西のスーパーキラーコンテンツ、阪神タイガースのナイター中継があります。そのうえ、オール阪神の『ビッグフィッシング』や青芝フックの『競馬中継』まで付いてきます。横浜スタジアムでの横浜−阪神戦や京都競馬場の最終レースや淡路島沖のイカ釣りポイントは地上波ならサンテレビでしか見ることができません。 

 神戸のUHF局で、新聞のテレビ欄でも隅のほうで、チャンネル権争いで弱い立場のオヤジ御用達のサンテレビですが、もう少し見直されてもいいように思えます。阪神大震災時の報道では高い評価を受けましたし、昨年には三大都市圏以外に本社を置く放送局では初の地上はデジタル免許を取得しています。冬の時代をむかえつつある地方テレビ局のなかでは意外に安定感があるのです。 

 そんなことを言いながら、僕も阪神の吉田義男監督が退任して応援熱が引き、グリーンチャンネルを入れてからはサンテレビをほとんど見ていないですし、過去一週間分で好きな番組を見られるとしても、正直なところ見たい番組はありませんが。 

 ただし、もし未来の一週間分を見られるとしたら、未来の競馬の結果が分かるサンテレビは是非とも見ておきたいチャンネルになります。関西テレビでは「ドリーム競馬」のある日曜日のレースだけですが、サンテレビなら土曜日も分かりますから、欲張りな僕にぴったりです。 

 しかし、ここまで書いて、テレビ大阪の経済番組で未来の株価をチェックしたほうが儲けは大きいんじゃないかと気づいてしまいました。やはりテレビ大阪には勝てないのでしょうか、サンテレビ。


きょうの一冊:『萌える法律読本 ディジタル時代の法律篇

萌える法律読本 ディジタル時代の法律篇―著作権法,不正アクセス禁止法,児童買春・児童ポルノ処罰法など時事の法律解説

 

 

1月20日 別れても好きな人 

 

別れた人に会った、別れたネットで会った。 

「別れ話の腹いせ…オンラインゲームで“仕返し”」(産経)
http://www.sankei.co.jp/news/050120/sha044.htm 

「別れ話の腹いせに、インターネットのオンラインゲーム「リネージュ」に不正アクセスし、元交際相手のゲーム内のアイテムを捨てるなどしたとして、福島署は20日までに、不正アクセス禁止法違反の疑いで、富山県の30代の女を書類送検した」 

 すごい世の中になったものです。他人のIDを使用したことが法に触れるからといって、たかがゲームのアイテムを捨てる行為が犯罪になるとは。中学生のころ、『ロマンシング・サガ』のセーブデータを消した消さないで妹と喧嘩したことがありますが、そのころにオンラインゲームがなくてよかったです。兄弟げんかがもとであやうく前科者になるところでした。 

「2人はゲーム内のチャットで2年ほど前に知り合い、交際するようになったが、別れ話が出ていたという」 

 福島と富山の遠距離恋愛だったようですが、実際に会ったことはあったのでしょうか? もし、ネット上だけで付き合っていたとすれば、復讐もネット上というのは納得いきます。それで終わってればいいものを、「昨年5月ごろ、男性が「アイテムがなくなった」として、同署に届け出ていた」ことで現実の警察沙汰に発展してしまいました。捨てられたアイテムがどれだけ貴重なものなのか知りませんし、興味もないですが、男性の届出に対応した警官のリアクションにはとても興味があります。 

 不正アクセス禁止法に引っかかる仮想空間での犯罪はこれからもたくさん出てきそうです。他人のゲーム内キャラクターを勝手に殺したり、他人のゲーム内キャラクターの娘を誘拐したり、他人のゲーム内所持金をゲーム内カジノで使い込んだり、他人のゲーム内キャラクターの息子になりすまして「オレオレ詐欺」をはたらいたり、他人のゲーム内キャラクターのスカートの中をゲーム内手鏡で盗撮したりと現実の犯罪がネットゲーム上でも展開されるでしょう。その分、現実世界の犯罪が減ればいいのですが。 

 また、ネット犯罪が増えればそれを専門に扱う電脳刑事が活躍することになり、それにあわせて刑事ドラマも様変わりしそうです。でも、捜査といっても一日中パソコンに向かっているだけなので、あまり動きがなくて面白くなさそうですが。「事件は会議室で起きてるんじゃない、ネット上で起きてるんだ!」と叫んだところで、さっぱり迫力がありません。


きょうの一本:『リネージュ 2 ビギナーズキット

リネージュ 2 ビギナーズキット クロニクル 2 Age of Splendor

 

 

1月19日 はぐれ刑事は逃げ出した 

 

「設定に限界…「はぐれ刑事」が終了」(スポニチ)
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/kiji/2005/01/19/02.html 

 シリーズ平均視聴率が15%を越え、特に関西のおばちゃんに絶大な人気を誇るあの番組がついに終焉をむかえるようです。 

「小川範子、松岡由美演じる2人の娘はスタート当時は19歳と14歳。18年で設定的にも30歳を超えているが、藤田演じる父親と同居。70歳を超える藤田の現役刑事役も含め、シチュエーションに無理が出てきたようだ」

 昨今の晩婚化で、30歳を越える子どもが親と同居していても無理はないようにも思えるのですが、70歳を越えての現役刑事はやはり厳しいのかもしれません。この年ではさすがに裏番組の『トリビアの泉』に立ち向かえるだけの元気がないのでしょう。 

 番組サイト(http://www.tv-asahi.co.jp/hagure/index_2004.html)の人物紹介によると、藤田まこと演じる安浦刑事は、「山手中央署の一ヒラ刑事にして名物刑事。普段は競馬と酒と美人が大好きな中年オジサン」と紹介されており、71歳にしてまだ中年オジサンらしいです。 

 他のキャストの実年齢も、署長役の梅宮辰夫と刑事課長役の島田順司がともに66歳、ベテラン刑事役の若林哲行が58歳。52歳の大場順で、「体力勝負の肉体派と思われていた高木刑事も、そろそろ中年の域」と紹介されています。50を越えてようやくそろそろ中年の域ですから、実はこのドラマは平均寿命が140歳くらいに延びて超高齢化社会となった架空の日本が舞台のSFファンタジードラマだったのでしょう。 

 その証拠に、藤田まことは「2人の娘はこの番組で成長し、大人になっていきました。“はぐれ刑事純情派18”で私は、彼女たちの“成人式”をやってあげたい」と言っています。30歳を過ぎてようやく成人を迎える設定なら、71歳が現役バリバリで活躍していてもなんらおかしくありません。 

 なにせ、「ルールがなんだ、法律がなんだ、そんなものに構っていられるか。あの人の無念を晴らせないで、なにが刑事だッ!」がモットーのはぐれ刑事が主人公ですから、定年なんてルールは存在しません。もしかすると、舞台となる「山手中央署」そのものが犯罪被害者の情念によって生み出された幻の警察署なのかもしれません。 

 設定の限界などといわず、さらにこの設定を推し進めて異色の刑事ドラマとしての新展開を期待したいのですが、藤田まことの体力の限界は如何ともしがたいのでしょう。いくら養命酒を飲んでいても、若いころに「当たり前田のクラッカー」ばかり食していたために栄養が偏ってしまったのかもしれません。 

 ドラえもんの声が変わったり、『ガラスの仮面』に携帯電話が登場したり、えなりかずき君が新成人になったりと映画『カンフーハッスル』級の「ありえねー」が続出する世の中ですから、日本のドラマももっと韓流ドラマ並みの怒涛の展開を考えないと、視聴者をつなぎとめておけないでしょう。その点では筒井康隆原作、深田恭子主演の『富豪刑事』は期待できそうなのですが、深田恭子では出オチだけに終わりそうでシリーズ化まではどうでしょうか。


きょうの一箱:『はぐれ刑事 DVD-BOX

はぐれ刑事 DVD-BOX

 

 

1月17日 土星人の運命 

 

「衛星タイタンに峡谷や湖のような地形 探査機が撮影成功」(朝日)
http://www.asahi.com/special/space/TKY200501150194.html 

 人間がのみ込まれている津波の衝撃映像を、いつ起こるやら知れない次の機会の教訓にするからという理屈でお茶の間の娯楽に供する夕方のニュースとは異質な興奮をもたらす映像が宇宙からやってきました。 

 1997年に地球から打ち上げられた土星探査機カッシーニが7年の歳月をかけて土星に接近、土星の衛星タイタンに小型探査機ホイヘンスを放出し、ホイヘンスに登載されたカメラが分厚い大気に隠されたタイタンの地表の撮影に成功しました。衛星ながら大気を持ち、原始地球の姿に近いといわれるタイタンの中がどうなっているのか。白黒の荒い画像ではありますが、それゆえに想像力をかきたてる興味深い写真です。 

 ホイヘンスがタイタンの大気圏に突入した日本時間1月14日深夜は、CNNがもうすぐホイヘンスから最初の画像が送られてくるよと煽るので、ついつい夜更かししてしまいました。スカートのなかが気になって気になって仕方がなかったエコノミストの執着がわずかに理解できた気がします。 

 飛び込んできたのは、ゴツゴツとした岩肌がつづく荒涼とした大地でもなければ、マイナス180℃の極寒に存在するメタンの海でもない、地球上のどこかの海岸かと思えるような河やら谷やらと起伏に跳んだ地形でした。ピューリツァー賞の写真部門は探査機ホイヘンスに授与されてもいいのではないかと思えるほどの偉業です。 

 見た目が似ているからといって、太陽から遠く離れたほとんどが窒素の大気中ではとても生命が存在することはできないのですが、太陽系内のしかも衛星でこれほど地球に似た部分のある星があるならば、宇宙には生命の存在する条件をそなえた地球のような星はかなりありふれたものかも知れないという希望を抱かせてくれる写真です。 

 火星人や金星人がいるという主張が極論なら、宇宙中探しても地球のような星はないという意見も極論で、極論対極論なら今回のホイヘンスのデータはわずかでも火星人・金星人側に針を振らせることになるでしょう。 

 土星といえば土星人、土星人といえばセガサターンのCMに出てきたコーンヘッドのおっさんを連想してしまいます。発売当時、セガサターンとプレイステーションではどう考えてもセガサターンのほうがいいと僕に思わせた彼らは、猿のセガールやせがた三四郎湯川専務と同様に僕にとっての「負けた戦争の記憶」を象徴するもので、彼らがいるからこそ日経ビジネス誌の「敗軍の将、兵を語る」のコーナーに出ることが人生の目標の一つとなった今の僕があるわけです。 

 二択でハズレを選ぶ確率8割(当社調べ)ならば、自分を信頼しないことこそが最善の道であると気づかせてくれた土星人に敬意を表しつつ、カッシーニの土星探査を今後も見守っていくつもりです。


きょうの一冊:『土星の輪』 著/榊原広之

土星の輪

 

 

1月16日 鳩が出ますよ 

 

「日本伝書バト品評会、茨城の原田さんに最高賞」(読売) 
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050116ic22.htm 

「伝書バトの美しさ日本一を競う第51回日本伝書鳩品評会(読売新聞社など後援)」が開催されたそうです。プロ野球で選手の大人買いをする読売新聞社が伝書バトなんていう地味なジャンルにも手を出しているのをはじめて知りました。 

 伝書バトといえば帰巣本能によって遠くからでも棲家に戻ってこられることを利用して通信手段に使われるハトのことですが、飛んで帰ってくる速さを競うのではなく美しさを競うというのがまた一風かわっています。 

 競走馬でいうなら、パドックで一番よく見える馬が勝ちというようなルールで、なんだか審査基準が難しそうです。競馬でも香港の国際競走ではレースの前にそういう見た目のいい馬を表彰する審査があるのですが、世界中から馬が出てきている割にだいたい地元・香港の馬と厩務員が受賞していて、なんとなく腑に落ちないものを感じます。 

 伝書バトも速さを競うレースのような大会があるのをどこかで聞きかじった気がしていて、そういえば少し前に見たテレビのドキュメンタリーで、ヨーロッパの伝書バトレースに参加している人を紹介していたのを見たからだと思い出しました。 

 たしか、その番組で取材していたヨーロッパのレースは、スペインのどこかでいっせいにハトを放して、それぞれの飼い主の家に帰ってきたら大会本部に報告、直線距離とかかった日にちから時速を割り出して、もっとも速く飛んだハトが優勝というルールでした。取材対象の飼い主はベルギーかそのあたりの人で、伝書バトは地球儀であらわせるくらいの長い距離でも帰ってこれるんだと感心したことを覚えています。 

 日本でもそういうレースがないのかと調べてみると、日本伝書鳩協会という社団法人にもなっている団体があって、毎年、距離や開催地の決まったレースが行なわれていました。日本選手権なんていうのもあって、かなり大系化されているようです。 

 競馬のようにハトにも血統があるようで、記事のチャリティーオークションに出品されるハトについても父母のレース成績や血統が紹介されています。英数字で血統コードみたいなものもあるようですが、コードの形式がいろいろあるので、どこまで系統化されているのかはよくわかりませんが、ヤンセン系とかコムリッチ系とかの表記があるので、ある程度は祖先をたどれるようです。内国産か外国産かは特に記されていませんので、その点はあまり重要でないのかもしれません。 

 レースに伝書バトを出す人はみんな家に鳩小屋をもっているのかと思ったら、協会の鳩舎(つくば国際鳩舎というらしい)に委託することもできるようで、その場合は伝書鳩協会に入会して、入会金五百円、年会費六千円、一羽につき一万二千円を払うだけでいいようですから、年間二万円ほどでレースに参加できるようです。 
  
 馬主になって競走馬を持つことを考えると破格の低価格です。中央競馬の馬主ともなると毎月の預託料だけで五十万円以上はかかるそうですから(そういえば、タレントのやしきたかじん氏は自身が司会をつとめる関西ローカルのテレビ番組『たかじんの胸いっぱい』で所有馬二頭に月百二十万の預託料を払っていると言っていました)。 

 ちょっとしたオンライン・ゲームにかかる費用くらいで伝書バトをもてるなら、やってみようかなという気になったのですが、伝書鳩協会のサイトがちょっと素人っぽさにあふれているのと会員の人たちの年齢層が高めなのに少しためらいを感じてしまいます。 

 とはいえ、「つくば国際鳩舎入舎状況 今年は1,782羽の委託があった。鳩の状態は水便の気配はなく、糞の状態も良好、片目カゼも大体治ってきている。鳩舎の方も、さわやかな湿気のない状態であり、鳩、鳩舎とも非常に良い状態といっても、過言ではないと思う」 なんていう表現は競馬者としてはちょっとそそられるものがあります。レース結果が携帯電話で分かるなど、着々と情報化社会にあわせたサービスも整えられているようです。伝書バトの飛行状況を電話やインターネットで確認するというのは本末転倒のように思えますが、車に乗って乗馬クラブに通うのだって同じようなものですし。 

 これでもう少しエンターテイメントの要素が増えれば、伝書バトブーム到来も可能性としてはありそうに思えます。例えば、複数の調教師がいて成績の良し悪しによってどの鳩舎に委託するかを決められたり、鳩に小型カメラやGPSを登載して現在地と移動風景を把握できたり、一羽一羽に鳩名をつけて個性を出したりすると結構はまる人が出てきそうです。 
  
 鳩は愛くるしいルックスをしているので人気も出そうで、鳩のぬいぐるみや抜けた羽でつくった羽ペン、鳴き声の着ボイス、果てはレース鳩を育てる少年を主人公にしたマンガが少年誌に連載され、アニメ化・ゲーム化されるなんていうキャラクタービジネスも考えられます。社名から製菓メーカーの東ハトなんかがスポンサーについてくれればレースの賞金も高額化できます。東ハト執行役員の中田英寿氏も賛同してくれるのではないでしょうか。 
  
 社会現象となれば伝書バトはアイドル並みの人気を獲得し、鳩舎にはハト様をひと目見ようとファンが押し寄せ大混乱になり、丸刈りでクチバシをつけるハト様ルックが流行、伝書バトで連絡を取り合うために携帯電話の加入件数が減少、「鳩胸」ギャグのオール阪神が再ブレイクし、『伝書バト。をプロデュース』なんて小説が出版される騒ぎになりそうです。 

 人気を得るのにはやはりどの鳩が優勝するかを賭ける勝鳩投票券を発売することが必要でしょう。農林水産省の管轄なので、廃止された地方競馬場を鳩舎に転用して跡地利用としてどうでしょうか。決着までに時間がかかり、いつゴールするかが予測しづらいのは問題がありますが、鳩は群れで飛んで同時に帰巣する場合が多く、どの鳩が一着かがぎりぎりまで分からないのはスリリングです。レースの予想は天候やコースとなる地域の地理的条件など複雑な要素が満載で面白そうですし。『週刊伝書鳩』や『週刊ピジョン』といった専門誌が登場し、気象予報士や飛行士が鳩レースの予想家に転身、スポーツ紙の一面を鳩が飾るなんていう日が来るかもしれません。


きょうの一冊:『レース鳩0777 (1) 』  著/飯森広一 少年チャンピオン・コミックス