ぼすのできごと 2004年9月上旬
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   2004年 9月上 9月下 10月上 10月下 11月上 11月下 12月


1日 新世界の中心で愛を叫ぶ
  3日 世紀を越えて越えて  4日 ヘビースモーカーズフォレストだ!
5日 デイアフタートゥモロー君  6日 TUBEなのにサザン  7日 カゼニフカレテ  9日 真実の愛を!
11日 三点セット

 

9月11日 三点セット

 

 セットメニューというのは、客にしたら低価格で複数の食材を食べられるし、店にしたら客単価を高くできるということで双方に歓迎されるため、様々な飲食店で導入されている。 

 大手外食チェーンでも、ハンバーガー系ファストフードならマクドナルドのバリューセットに代表されるメインメニュー+サイドメニュー+ドリンクが定番である。単品が主軸の丼チェーンでも、松屋の丼物+サラダ+味噌汁があるし、なか卯のうどん+丼のセットもやや高めではあるがボリューム感がある。 

 そんなセットメニューであるが、当然ながらあわせて食べるのに適した食材で構成されていることが普通である。と、昨日までは思っていた。たしかに思っていた。しかし、昨日たまたま入った店でセットメニューを見たとき、そうした私の認識は間違っていたんだと気づかされた。そこはうどんの店なのであるが、複数あるセットメニューのすべてに共通しているのが、うどん+ライス+コーヒーの三点。さらに一品付くとあるが、そんなものはどうでもいい。うどんとライスとコーヒー。この三品をどうやって食べればいいんだ。私の頭の中はこの三つの食材が混ざり合って混乱した。あまり食べたことはないけれど、大阪には「お好み焼き定食」という炭水化物に特化したメニューがある。しかし、それもごはんとお好み焼きはたがいに邪魔にはならない。しかし、うどんとライスとコーヒーである。うどんとライスを同時に食べることなど滅多にないため違和感がある所、さらに追い討ちをかけるかごとく胃袋に流し込まれる黒い液体。想像するだけで襲ってくる嘔吐感に、その場は単品のうどんを頼むことで逃げを打ったが、やはり気になる。果たしてそんなセットを頼む人がいるのか、いるとしたら、どんな順序で食べるのか? そうこう考えていると、給仕係が厨房から品を運んできた。そのとき僕は見てしまったのだ。つい先程まで美味そうに天麩羅うどんを啜っていた真後ろのテーブルの客に運ばれていくコーヒーを。その後、後方の客がどんな表情でコーヒーを味わうのか、それを確認するために振り向く勇気が私にはなかった。


きょうの一冊:『セットメニュー    新・儲かるメニュー

 

 

 

9月9日 真実の愛を!

 

 試写会に。映画の内容はともかくとして(ともかくとするくらいの映画だったので)、映画の最中にズーン、ズーンと地鳴りのような音がして、映画に集中できないくらいに気になった。軽い振動もともなっているので、また地震なのか、もしくはついにゴジラが上陸したのかとひそかに心躍らせていたら、他の観客が試写会場と同じ建物で藤井フミヤのコンサートをやっていると話しているのが漏れ聞えてきた。そういえば、よく耳をすませば、女性の歓声や音楽もほんの少し耳に入る。やはりアップテンポのノリのいい曲になるほど振動が大きいようで、映画に集中したいから、はやく定番の『True Love』でしっとりとさせてくれ!と願いながらの映画鑑賞になった。 

 帰りにコンサート客と遭遇したら、想像していた藤井フミヤファン像よりもだいぶ若めで驚いた。藤井フミヤは若作りにしてももう42歳のいいオヤジなんだけれど、ジャニーズのファンのような10代の女の子も混じっている。彼女らはチェッカーズの最盛期なんてまだ生まれてないんじゃないだろうか。残念ながら、先ごろメンバーの一人が鬼籍に入られたようだが、藤井フミヤにはTHE ALFEEのごとくデビュー50周年めざして頑張って欲しいもの。


きょうの一枚:『FUMIYA FUJII TOUR 2004 JAILHOUSE PARTY

きょうの一曲:『TRUE LOVE』 藤井フミヤ

 

 

 

9月7日 カゼニフカレテ

 

 入り口の前をとおるたびに、期間が終るまでに行かねばと思っていた大阪市立美術館「祈りの道〜吉野・熊野・高野の名宝〜」展に向かうと、門が閉ざされている。あれっ、休館日かなと思ったら、暴風警報発令のため閉館時間くり上げのアナウンスが。しかたなく、映画館へ入って韓国映画『Yesterday』をみる。 

 SFサスペンス・アクションと銘うっており、『ブレードランナー』と『ブラックレイン』をあわせたような世界観。携帯・ネット先進国の韓国映画らしく、携帯型の情報端末が大活躍。『攻殻機動隊』や『マトリックス』みたいに身体にまで入り込んでないのが、逆に5年10年のちにはこういう社会になっていそうな現実味を感じる。昨日みた『TUBE』は、地下鉄車両に監禁された乗客が携帯で通話するシーンが多用され、暴走する地下鉄を止めるために乗客の携帯で映像を管制室にリアルタイムで送って指示を受ける場面もあった。韓国の地下鉄は走行中の車内でも携帯の電波が入ることを知らない日本人なら近未来の設定でつくっていると思えるくらいで、携帯・ネット先進国という自負は韓国人のナショナル・アイデンティティになりつつあるのだろう。 

 映画が終わって、出て行くとまだ夕方なのに閉館準備がはじまっていた。台風で臨時休館になったらしい。で、一番風がきついときに追い風参考記録で歩いて天王寺まで。騎手がレース後に敗因を聞かれて「風が強くて」と言った気持ちが今なら分かる。


きょうの一冊:『風が吹くとき』 著/レイモンド・ブリッグズ

風が吹くとき

 

 

9月6日 TUBEなのにサザン

 

 韓国映画『TUBE』をみる。暴走する地下鉄でテロリストと一匹狼の刑事が戦うアクションもの。韓国では興行的に失敗したそうだが、制作費約5億円とは思えないほど派手なシーンが目白押しで、こうした映画につきものの荒っぽさや強引さは目につくものの概ね楽しめた。なにより、『ほえる犬は噛まない』や『子猫をお願い』で注目していた女優、ぺ・ドゥナがいい。というか、この女優さんを目当てにみにいったわけで。 

 ペ・ドゥナは、25歳にしては幼い容姿に真ん丸い目が特徴的な美人というより可愛い感じの人。これまでに見た映画では迷子の犬を探す管理人や友達に子猫をあげる女の子というようなルックスに似合った役柄で、自然にうつる演技のなかにもこの役はこの人にしか演じられないという存在感があった。今回は一転して女スリという硬派な役柄に挑戦していたが、厚めの化粧以外はこれまでの作品のペ・ドゥナのイメージを引き継いでいた。アクションには似合わないかなと思われたが、逆に男くさい画面のなかで一層魅力的にうつった。日本映画への出演も決っていて、なんでもブルーハーツのコピーバンドでヴォーカルをやる韓国人留学生の役だそう。ペ・ドゥナの歌う「リンダリンダ」は見ものだ。 

 それはそうと、この『TUBE』でテロリストを演じていたパク・サンミンがサザンオールスターズの桑田佳佑に見えてしかたがなかった。まんまそっくりというわけでもないが、若いころの桑田佳佑にサッカーの三浦和を混ぜた感じで、TUBEなのにサザンかいなと心のなかでツッコミつつ、ライフル片手に『勝手にシンドバッド』や『いとしのエリー』を歌いだすんじゃないかと勝手な想像をめぐらしてしまった。おかげで、この人のアクションシーンは半分もおぼえていない。


きょうの一曲:『エリー・マイ・ラブ~いとしのエリー』 レイ・チャールズ

エリー・マイ・ラブ~いとしのエリー [MAXI]

 

 

9月5日 デイアフタートゥモロー君

 

9月5日23時59分:
 地震があった。ようやく手に入れて飾っていたボイジャー深宇宙探査機が落下、磁力計が破損する被害。浅間山は噴火するし、沖縄に本土復帰後最強の台風が来るし、フロリダにも超特大ハリケーンが接近中だそうで、自然災害づいています。このぶんだと、もうすぐゴジラもやってきそう。 

 とか書いてると、また余震ですよ。ちょっと、余震の方がでかいみたいだが・・・ 
  

9月6日0時43分追記: 
 いやいや、ようやく収まりました。修復したボイジャーが、今度は全壊したので、家では今回の方が強かったようです。このまま家が壊れたらこれが人生最後のメッセージになるかと思っていったんアップしたおかげで、9月5日分の日記になることができました。これは怪我の功名とは言わないか。


きょうの一冊:『怪獣はなぜ日本を襲うのか?』 著/長山靖生

怪獣はなぜ日本を襲うのか?

 

 

 

9月4日 ヘビースモーカーズフォレストだ!

 

 喫煙場所の範囲が広すぎると怒ってくる人がいた。禁煙のスペースをもっと広くとるべきだと言ってきて、これまで一本の煙草も吸ったことがない僕は大いに賛成したのだが、禁煙や分煙が広がる最近の流れをしらないのかと言っているのには、おかしな理屈だなと思った。自分が煙草の煙にあたるのが嫌だとか、煙草を吸わない人間もロビーの椅子に座る権利があるとかいうのなら分かるけど、それが時流だからということで人に押し付けるのはどうなんだろう。 

 知り合いがまわりで煙草を吸っても気にしないけれど、前を歩いている人の煙はうざったいし、飯屋でたまたま居合わせた赤の他人が僕の食事中に煙草を吸っていると席を遠ざけたくなる。そのくらいの非喫煙者である僕は極端な嫌煙家とまではいかないから、副流煙を吸い込むことで健康を害するのは嫌だけれど、煙草のせいでいざこざが起きるのはもっと嫌な気がする。だから、社会的に禁煙や分煙が広がるのは歓迎しても、それを他人に強要しようとは思わない。社会の多くがそうなりつつあるからあなたもそうすべきだという論理では、物事を正当化する理由にならない。そんな考えだとブッシュ大統領になっちゃうよ。 

 でも、JTのおかしな企業戦略をみていると、そんな考え方をする人が出てくるのもしかたないのかなと思えてくる。煙草に掛かる税金はどんどん上がりつつ、タールやニコチンや匂いが少ない新製品をアピールしつつ、健康被害を警告しつつ、女性の喫煙者増を見込みつつ、煙草とは無関係な事業に新規参入して多角化を進めつつ、煙草文化うんぬんといっている。こんな自己矛盾に満ちた活動には戦略性などない。そんなわけで、最近、電車の中吊りにかかっている新喫煙マナー広告(「煙草を持つ手は、子供の顔の高さだった」等のコピーをJTのイメージカラーである緑で統一したグラフィックでならべているやつ)にはかなり不快感を感じる。煙草を買ってるヤツが手前らで気づきやがれとは随分居丈高なことだ。 

 企業は永続することを前提にしている以上、主力商品の寿命がきたからといってだまって衰退していくわけにはいかないが、JTは国策で興された専売公社を前身にする煙草を唯一の事業としてきた組織なのだから、煙草が社会から消えるのならそれとともに消滅するのが自然なのではないのだろうか。

9月4日追記:
 東北高校のダルビッシュ投手、喫煙疑惑でNHKのドキュメンタリーが放送延期だそうで。
7の7倍の7倍の苦難を越えたというのに、煙草一本で窮地に立たされるとは。


きょうの一冊:『タバコの歴史』 著/上野堅実 

タバコの歴史

 

 

 

きょうの一枚:『ドラえもん のび太の大魔境』 (DVD)

映画ドラえもん のび太の大魔境

 

 

9月3日 世紀を越えて越えて

 

 3つの世紀を舞台にした3本の映画をみた。19世紀イギリス、20世紀日本、21世紀アメリカ。 

 『スチーム・ボーイ』は蒸気文明華やかなりしロンドンの上空でスチーム城をめぐる攻防がくりひろげられる冒険活劇。展開が速く、とっかえひっかえいろんな仕掛けが出てくるので、こういう作品をはじめてみる子どもや日本のアニメーションに慣れていない外国の人は楽しめると思う。しかし、ガイナックスやジブリの過去の作品を知っていると、既視感をおぼえるところがかなりある。19世紀ヨーロッパの市街地上空でのドンパチはナディアの終盤だし、父と子の葛藤はエヴァだし、ボーイミーツガール+レトロメカでの冒険はラピュタだし。天下の大友克洋だから、わざと真似しているわけではないのだろうが、アニメーターの想像力の範囲にそういった過去の名作の影響が入り込んでいるのかもしれない。それ以上に、動く城が出てくるというネタが『ハウルの動く城』とモロかぶりなのが。毎週新作が何本も公開されるなかでよく似た設定の映画がつづくことがあることはわかっているが、動く城モノでかぶるというのはなんとも。ジブリの大衆性を考えると、先に公開できたのはこの映画にとってはよかっただろう。声の出演に鈴木杏と小西真奈美をあてているのは、大友克洋の名前だけでは興行的にインパクトが足りないと見込んでのことかもしれないが、鈴木杏はよかった。『花とアリス』では蒼井優の巧みさに食われそうになっていたが、この作品では少年の声を違和感なく演じている。 

 『東京オリンピック』は市川昆による記録映画。レニ・リーフェンシュタールの『美の祭典』『民族の祭典』がオリンピック記録映画の白眉といわれるが、この映画もなかなかのもの。競技や競技者よりもそれをとりまく風景に主眼がおかれて、マラソンの給水所でランナーが飲み物を飲んだりスポンジを頭にあてたりする様を延々と捉えたシーンや八王子の農村で自転車レースを観戦する沿道の人々を映したところは非日常のオリンピックに日常を入り込ませるように描いている。その反面、昭和天皇の開会宣言、女子バレーの金メダル、円谷のマラソンなど日本現代史の瞬間をおもわせるシーンもあり、記録映画として過不足がない。現在よりも原色に近いカラー映像、競技を特徴づける音を強調した音声、スローモーションはおそらく当時の技術の粋をあつめたものだったろう。この夏のアテネと比べれば記録的にはかけ離れているのかもしれないが、当時の人間の極限を出し切っての速さ、高さ、強さであるがゆえの美しさをもっている。
 
 『華氏911』は主演ジョージ・W・ブッシュと銘打っているだけあって、ブッシュ大統領の「愛すべきバカ」っぽさにあふれている。ドキュメンタリーとしての検証性では疑問に思えるところがあるが、取材対象を徹底的にキャラクター付けするマイケル・ムーアの手法がブッシュという最高の素材を得て結実している。カンヌ映画祭で審査委員長のタランティーノはブッシュに主演男優賞をあげたかったが、それはさすがにマズイんで替わりにパルムドールにしたのでは。普段ニュースで目にする大統領らしさが前提にある通訳や日本語訳ではないブッシュの生の言葉が、英語に堪能でない僕にもよく分かる。これだけ主演男優の存在が際立っているからこそ、巨体で特徴あるムーア自身はナレーションのみで映像に姿を見せていないのでは。しかし、ここまでブッシュを色づけてしまってこの秋の大統領選挙でブッシュが負けることがあれば、歴史を変えた映画といわれることは間違いない。が、そうなればなったで今度はケリー新大統領とユダヤ資本のつながりを暴く作品を撮りそうなのがムーアでもある。 

 3つの作品、3つの世紀、3つの国。万博とオリンピックと戦争と。つくづく人間はお祭騒ぎが大好きで。


きょうの一枚:『NHKスペシャル : 世紀を越えて - オリジナルサウンドトラック

NHKスペシャル : 世紀を越えて - オリジナルサウンドトラック

 

 

9月1日 新世界の中心で愛を叫ぶ

 

 海洋堂のおまけフィギュアでもかなり地味な部類の「王立科学博物館」シリーズをあつめている。アポロの月面着陸船やソ連のロケット発射台など宇宙開発史上にのこる宇宙モノの造形物で、天下の海洋堂だけあって細部までいい仕事をしている。とはいえ、こういうのは集めだすとキリがないといままでは心を惹かれつつも買ったことがなかったのだが、ふとコンビニで手にとったら、今回のシリーズに「ボイジャー深宇宙探査機」が入っているのを見つけた。ボイジャーは欲しい。なんとしても欲しい。いてもたってもいられず、レジに箱を持っていった。 

 ボイジャーは1977年に打ち上げられた二機の無人探査機で、1992年に放送されたドキュメンタリー番組「宇宙からの贈りもの・ボイジャー航海者たち」の主人公。木星、土星、天王星、海王星と外宇宙に向けて太陽系の惑星を探査したボイジャーがその役目を終えて太陽系の外へと向かうころ、ボイジャーのいる位置から太陽系の全惑星が一同に会する景色が見られることがわかり、ボイジャーに登載されたカメラでその光景を写真におさめようという計画が持ち上がった。そのためには、太陽系の外へと進むボイジャーの向きを修正しなければならない。しかし、活動のほとんどを終えたボイジャーにのこされた力はごくわずか。その最後の力をふりしぼって、ボイジャーは振り向こうとする。「太陽系の家族写真」を撮るために。
 
 のちに映画も撮る龍村仁がディレクションし、当時はまださんまの嫁さんだった大竹しのぶのナレーションがいい仕事をしているこの番組を高校の地学の授業で見ていたく感動した記憶がよみがえり、ボイジャーが欲しい欲しいと買いはじめたものの、なかなかお目当てには当らない。僕の「引き」が弱いのは馬券でイヤというほど分かっているので、ソ連のロケットが二機発射され、宇宙ステーションが完成し、火星人が二回襲来しても懲りずに買いつづけている。今日もBOSS仕事中とともにレジへともっていったのだが、なかにはやはり違うやつが入っていた。 

 出てきたのはシリーズで唯一創造上の人工物であるスペースコロニー。このガンダムとかで描かれている筒みたいな宇宙の居住空間のフィギュアにつけられたタイトルが「新世界」。解説書の岡田斗司夫のエッセイを読むと味のあるネーミングに思えるのだけれど、それを買った場所が新世界のコンビニだったので店を出て通天閣を見上げながら中身を確かめたときはなんともおかしみがあった。新世界のコンビニでこの商品があるのは一軒だけで、箱の減り具合からどうやら買っているのは僕一人。つまり、たぶん世界でただ一人、新世界で新世界を買ったわけだ。家に帰って組み立てたところ、接続部分がポキっとおれてしまったのがさらに「新世界」ぽくって、接着剤で修復せず、壊れたままの状態で机に飾っている。


きょうの一冊:『すばらしい新世界』 著/ハックスリー

すばらしい新世界