ぼすのできごと 2005年2月上旬
   2005年 1月上 1月下 2月上 2月下 3月上

   2004年 9月上 9月下 10月上 10月下 11月上 11月下 12月


1日 日本最強のキャラクター
  2日 人生一度は万博だ 2
  3日 若き日のペ  4日 現金がいるテレビ
6日 ソニースタイル  7日 異邦人
  8日 大学は建てたけれど  9日 お台場に恋して  10日 百年構想
11日 等価交換の原則 
 12日 復活の日  13日 朝日が見えない  14日 クローンネコヤマトの宅急便  
15日 モットヒカリヲ


2月15日 モットヒカリヲ

 

「「団子っ鼻」0系ひかり復活へ 3月、新大阪―博多間で」(朝日) 
http://www.asahi.com/national/update/0214/016.html 

「新幹線博多開業30年にあたる3月10日、JR西日本は、初代0系の「ひかり」を新大阪―博多で復活させる。」 

 削りすぎた鉛筆みたいな今のトンガリ新幹線に慣れている目には、この0系ひかりが萌えキャラに見えてきます。とはいっても、僕は鉄道マニアではないので、わざわざ遅い新幹線に乗るこのイベントが、「初日10日の指定席はほぼ売り切れる人気」なのはちょっと理解できません。おそらく当日の車内は鉄分の濃い人で埋まるのでしょう。 

JR西日本: 
山陽新幹線博多開業30周年記念「0系ひかり」運転」 

詳細のPDFファイル 

 JR西日本のイベント情報を見てみると、乗車すれば博多総合車両所の見学が付いているそうで、こちらが目当ての鉄っちゃんも多いのかもしれません。競馬でいえば栗東トレセン見学ツアーみたいなものでしょう。わざわざ「博多〜博多総合車両所間の料金・運賃は不要です」と書かれていますが、この区間は車両所付近の住民へのサービスでわずか190円で新幹線に乗れる区間としてメディアでもたびたびとりあげられる有名な路線です。むしろ、料金を取ってあげたほうがイベントに参加する乗客は喜ぶのではないでしょうか。 

 190円といえば、大阪環状線でも一駅分です。あのオレンジの通勤電車と新幹線がおなじ運賃なのは違和感がありますが、頻繁にダイヤが乱れて歩けば10分の天王寺-新今宮間が30分かかったこともあり、所要時間あたりの料金ならある意味似たようなものかもしれません。 

 先ほども競馬のたとえを挙げましたが、どうも鉄道と競馬のファンサービスは似ているように感じます。この新幹線のイベントでも、記念乗車券はG1の記念入場券、車両の特別展示は種牡馬の展示、ミニ新幹線乗車会は体験乗馬、鉄道部品販売はゼッケン・馬具のオークションとほとんど競馬場でよくあるイベントに変換できます。車内では開業当時の制服を着用したパーサー(販売員)が復刻駅弁を販売し、初日の3月10日には母娘二代で新幹線のパーサーをしている親子が特別に登場するというのも、エアグルーヴとアドマイヤグルーヴの母娘G1制覇のようです。 

 鉄道も競馬も日本の高度成長とともに発展した産業で、戦前は軍事用途が優先されたことも共通しています。1949(昭和24)年に日本国有鉄道(国鉄)が設立され、その5年後の1954年(昭和29)年に日本中央競馬会が発足します。東京オリンピック開催に合わせて東海道新幹線が開業した1964(昭和39)年、シンザンが戦後初の三冠を達成。国鉄が分割民営化でJRになった1987(昭和62)年には、日本中央競馬会も略称JRAを使い出しました。 

 ふり返ってみれば、鉄道も競馬も現在の制度やシステムはたった50年前にできたものなのです。スイカやイコカで切符がいらなくなったり、馬券がネットで買えたりなんて、IC(集積回路)もインターネットもなかった50年前には想像できるわけがありません。ということは、次の50年に何が起こるかの予測は不可能なのでしょう。新幹線も馬もこの世から消えているかもしれませんし、あるいは新幹線も馬も空を飛んでるかもしれません。50年後もこの日記があれば、「月面ダービー観戦に地球−月間の銀河鉄道ツアーが人気」という記事を取り上げているのでしょうか。


きょうの一本:『電車でGO!新幹線 山陽新幹線編』(PlayStation2)

電車でGO!新幹線 山陽新幹線編 PlayStation2 the Best

 


2月14日 クローンネコヤマトの宅急便

 

「クローンネコ:米企業、顧客拡大へ340万円に値下げ」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20050214k0000m040024000c.html 

 タイトルを見て、ヤマト運輸の料金値下げのニュースかと一瞬間違えました。 

「1匹当たり5万ドル(約530万円)でペットのネコのクローンづくりを請け負ってきた米ベンチャー企業が12日、今後は代金を大幅に値下げし3万2000ドル(約340万円)で販売すると発表した。」 

 200万円ほど安くなってますが、超良血の血統書付き猫でも数十万円といったところでしょうから、それでもかなり割高です。値下げ前は1か月に1匹ペースでしか売れていなかったそうで、それでは経営が成り立たないのでしょうが、こういうサービスを申し込むのは、私の可愛い猫ちゃんが生き返るならいくらでも払うと倒錯した愛に悶える金持ちですから、安くなったから1匹頼もうかとはならなさそうですが。 

 あるいは、生きているうちにもう一匹クローンをつくっておこうという需要なら値下げによって喚起されるかもしれませんが、『Dr.スランプ』でガッちゃんが途中から二匹になったことに何の意義も感じられなかった僕には理解できない話です。 

 クローン技術はまだまだ未完成な部分が多く、クローン羊ドリーも羊の平均寿命よりはるかに短い6歳で死んでいますから、せっかく高い金を払ってクローン猫をつくっても病弱で一緒にいられる時間は限られているかもしれません。しかも、飼い主は元の猫とまったく同じ猫ができることを期待しているでしょうから、育っていくうちに外見や性格に少しでも違うところがあると返品するなどと言い出しかねません。 

 それでも、猫のような愛玩動物なら、外見が似ていさえすればある程度は顧客に納得してもらえるわけで、値下げしたのも完全なクローン技術を追求するよりも、そっくりさん程度でいいから量産して数を売りたいという経営戦略なのかもしれません。明石家さんまを呼ぶには予算がないから原口あきまさで、あるいは武豊は乗ってくれないから武幸四郎でというところでしょう。 

 羊や猫のクローンができているなら、競馬ファンとしてはクローン馬に関心がいきます。すでにイタリアでクローン馬の出産は成功しているそうで(参考:日経http://www.nikkei.co.jp/keiba/news/20030808e3m0800608.html)、競走馬として認知されることはしばらくなさそうですが、これからは名馬や名種牡馬のDNAを未来のために保存しておくことが一般化するかもしれません。 

 テンポイントやサイレンススズカのような、不慮の事故で子孫を残せずに死んでしまった名馬の血が受け継がれていればという思いは、血統ロマンを追い求めるなかで断ち切れない夢ですから、それを実現できる技術があれば、おのずとルールの方がかわっていかざるを得ないでしょう。サラブレッドの生産そのものが自然の摂理を人間が制御しようという試みの近代的な発現の象徴なのですから。 

 しかしまあ、そんなクローン馬が続々と現れても、ここ10年の日本競馬界におけるサンデーサイレンス産駒ほどの席巻ぶりを見せるかは疑問が残ります。POGでG1馬の全兄弟をとったところが、鳴かず飛ばずだったというのはよくある話で、いくら血統が同じでも個体の競走能力にはかなりばらつきがでるのです。それはDNAが100%一致するクローン馬でもおなじことでしょう。おそらくは、虚弱体質なテイエムオペラオーや足が遅いナリタブライアンが競馬場を走り回ることになるはずです。


きょうの一冊:『クローン羊のつくりかた』 著/ヘイゼル・リチャードスン

クローン羊のつくりかた

 


2月13日 朝日が見えない

 

「ラグビー「トヨタ―早大戦」は生中継 NHKが方針転換」(朝日) 
http://www.asahi.com/culture/update/0212/003.html 
「NHKのラグビー生中継、準決勝以降も「協議継続」」(朝日) 
http://www.asahi.com/culture/update/0213/001.html 

 今週はサッカーの日本対北朝鮮、プロレスの小川直也対インリン・オブ・ジョイトイなど話題性のあるスポーツイベントが目白押しでしたが、僕がもっとも注目したのはラグビー日本選手権のトヨタ対早稲田大です。 

 といっても、注目したのはルールもろくに知らないラグビーそのものではなく、この試合の中継をめぐってくり広げられたNHK対朝日のメディア対決の方です。NHKと朝日といえば、NHKの番組改編問題での朝日新聞の報道をめぐるいざこざが泥沼化しています。11日にもNHKは昨年末の『紅白歌合戦』の再放送を行ないましたが、この影響で同日に放送を予定していたテレビ朝日『ミュージックステーション』の特番は出演者がかぶるために放送を延期せざるをえなくなりました。『Mステ』の方が『紅白』よりもさきに予定を組んでいたため、編成に融通のきくNHKがわざぶつけてきたのではと憶測されています。 

 当初、NHKは日本ラグビー協会と共催する大会で、社会人と大学の強豪が対決して注目されているこのトヨタ対早稲田の試合を12日の午後二時から生中継する予定でした。しかし、審判が着るジャージーの胸に大会スポンサーである「朝日新聞」のロゴが入ることが分かり、前日になって急遽生中継を中止、録画放送に切り替えました。 

 この決定にラグビーファンをはじめとした視聴者から批判が続出しました。なにせ早稲田大学OBやトヨタ自動車の関係者となると、首相経験者から金メダリストまで日本のエスタブリッシュメントの巨大山脈にぶちあたるわけですから、質・量ともにとんでもない抗議が殺到したのでしょう。これに焦ったNHKは試合開始の4時間前になって一転して生中継を復活させました。 

 極力審判の胸にある「朝日新聞」のロゴが見えない映像で中継するということで、天下のNHKですから、生中継でも審判の胸にボカシを入れたり、審判そのものを画面から消してしまうなど驚異の映像処理を期待したのですが、「この日の中継には、テレビカメラ8台が使われた。NHKによると、審判の胸のロゴが極力、画面に映り込まないよう、切り替えて放送したという」 と、 引きの絵を多くしたり、審判が写りそうになると別のカメラに切り替えるなどのごく普通の処理だったようです。 

 それでも、現場のカメラマンやスイッチャーは大変だったでしょうが。胸を映してはいけないというプレッシャーから、審判員がジャネット・ジャクソンに見えたカメラマンがいたかもしれません。もし生中継がなければ関西地区で放送するはずだった「ふるさとあったか湯けむり紀行 路地裏の共同浴場」よりもよほどポロリに気を使わなければならない番組になってしまいました。 

 この一件は、「朝日新聞」のロゴが入ることを共催するNHKに事前に知らせなかった日本ラグビー協会側に非があるようですが、NHKも相手が因縁の朝日でなければここまで対応が大掛かりにはならなかったでしょう。さらに、二転三転した対応のまずさでNHKはまたも視聴者の不信感を高めてしまいました。今回のようななかば場外乱闘の事態をも生んでいるNHK対朝日ですが、放送と新聞の雄が激突しているとあって、落としどころが難しそうです。このままずるずると双方がいがみ合いを続けるのは互いに不利益をもたらすばかりですが、NHKも朝日新聞もプライドの高さは六本木ヒルズ級ですから、どちらかが折れるようにも思えません。 

 場合によっては、夏には朝日新聞が主催し、NHKとテレビ朝日がともに生中継する高校野球が決戦の舞台になるやもしれません。NHKが甲子園に設置するカメラをデジタル制御して、朝日新聞の看板やロゴはすべて抹消できる体制をとれば、朝日は観客に社名入りのうちわを配布して対抗、NHKがスタンドを写さなくなれば朝日はボールボーイのユニフォームにロゴを付け、NHKがフィールド内しか写さなくなれば朝日はベースにロゴを付け、NHKがホームベースのタッチプレーがアウトかセーフか分からなくなくなるのも顧みずベースにモザイクをつけてと、どんどんエスカレートし、ついには朝日新聞を服のかわりにまとった選手が朝日新聞を丸めたボールを朝日新聞を束にしたバットで打つことになると、「モノのない時代を思い出しておもわず涙」という投書が朝日新聞に載る以外は世間から見向きもされなくなるでしょう。 

 そのうち、NHKでは「朝日」という単語そのものが不適切な用語になって、ついには朝日が昇る映像まで規制されてしまうかもしれません。NHK朝の番組、『おはよう日本』は太陽が写らないことが最優先事項となり、NHKでは朝日が見られなくなるが、初日の出だけは視聴者の強い要望にお応えして放送することになり、一年ぶりにNHKで朝日の写る初日の出の生中継が前の晩の『紅白』を越える視聴率を獲るようになる。しかし、その初日の出が実は海老沢前会長の頭部をCG処理した画像だったことが発覚して大問題に、こうして歴史は繰り返すのです。


きょうの一冊:『審判』 著/カフカ

審判

 



2月12日 復活の日

 

「第一の復活にあずかる者は、幸いな者、聖なる者である。」 
(ヨハネの黙示録 20:6) 


「私たちは2004年2月11日という日を、忘れません。牛丼鍋の火を、絶やしてしまったその日のことを。せっかく足を運んでくださったお客さまに、牛丼をお出しできなかった悲しさを。」 
吉野家D&Cキャンペーン情報) 


「悲しむ人々は、幸いである、/その人たちは慰められる。」 
(マタイの福音書 5:4) 


「あれから1年。ふたたび、私たちの牛丼を味わっていただける日を迎えることができました。」 
(吉野家D&Cキャンペーン情報:同上) 


「彼らが喜びのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは、「ここに何か食べ物があるか」と言われた。」 
(ルカの福音書 24:41) 


「準備した牛肉は約150トン。約8割は輸入再開後の価格高騰に備え確保していた米国産で、残りはオーストラリアとメキシコ産。ブレンドして各店舗に振り分けた。」 
(朝日:http://www.asahi.com/national/update/0211/020.html) 


「それから、肥えた子牛を連れて来て屠りなさい。食べて祝おう。」 
(ルカの福音書 15:23) 


「有楽町店(東京都千代田区)では、午前11時の販売開始時に約80人が行列。店長が「長らくお待たせしました」とあいさつすると、「待ってました」の声。」 
(毎日:http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050212k0000m040025000c.html) 


「神の日の来るのを待ち望み、また、それが来るのを早めるようにすべきです。その日、天は焼け崩れ、自然界の諸要素は燃え尽き、熔け去ることでしょう。」 
(ペテロの手紙第ニ 3:12) 


「牛丼「復活の日」、吉野家に車突っ込み7人けが 大阪」 
(朝日:http://www.asahi.com/national/update/0211/011.html) 


「その口から吐く火と煙と硫黄、この三つの災いで人間の三分の一が殺された。」 
(ヨハネの黙示録 9:18) 


「店のガラスは大破。縦、横3メートルほどの穴が開いた。しかし「牛丼が復活する特別な日。たくさんの客が待っている」(吉野家社員)と、約40分間中断しただけで、穴に青いシートをかけたまま営業を続けた。」 
(産経:http://www.sankei.co.jp/news/050211/sha045.htm) 


「そこで、一同も元気づいて食事をした。」 
(使徒の働き 27:36) 


「客は久しぶりの牛丼を食べることに集中し「店内は静かで、不思議な雰囲気だった」という。」 
(産経:同上) 


「食事を共にしていた客の一人は、これを聞いてイエスに、「神の国で食事をする人は、なんと幸いなことでしょう」と言った。」 
(ルカの福音書 14:15) 


「ご提供できる数に限りがあるのは、とても残念なことですが、牛丼を愛してくださる皆さまのために、精いっぱいの腕をふるわせていただきます。どうぞ、もう一度「吉野家の牛丼」をご賞味ください。」 
(吉野家D&Cキャンペーン情報:同上) 


「わたしは言いました。『主よ、とんでもないことです。清くない物、汚れた物は口にしたことがありません。』」 
(使徒の働き 11:8) 


「一番乗りの東京都国分寺市の大学生、渡辺真由子さん(24)は「この日を待ちわびていた。以前と同じ懐かしい味でおいしかった。本当の復活を待っています」と話した。」 
(産経:同上) 


「善を行った者は復活して命を受けるために、悪を行った者は復活して裁きを受けるために出て来るのだ。」 
(ヨハネの福音書 5:29) 


「ベーカー駐日米大使は「今日の吉野家のサービスは、米国産牛肉を待ち望んでいる日本消費者の期待の表れ。近い将来、安全で高品質の米国産牛肉が安定供給されるよう希望する」とのコメントを発表した。」 
(産経:同上) 


「わたしたちを神のもとに導くのは、食物ではありません。食べないからといって、何かを失うわけではなく、食べたからといって、何かを得るわけではありません。」 
(コリント人への手紙一 8:8) 


「食べ終わった客には「真の牛丼ファン」を証明するカードが手渡された。」 
(朝日:同上)


きょうの一冊:『新約聖書を知っていますか』 著/阿刀田 高

新約聖書を知っていますか

 


2月11日 等価交換の原則

 

「USJに日本発キャラクター続々、ファンは賛否両論」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050210i106.htm

 USJに来月、人気アニメ『鋼の錬金術師』のアトラクションがお目見えするそうです。
この読売の記事では、昨年夏にキティちゃんが導入されたのと絡めて、「日本発のキャラクターが相次いで登場し、ファンの間に波紋を広げている」とまとめていますが、キティちゃんと『鋼の錬金術師』はだいぶ違うような気がしますが。記事中で西宮の女性会社員(28)が言っている「キティちゃんはいいけど、アニメキャラというのは雰囲気が違うのでは」に僕も賛成です。

 『鋼の錬金術師』といえば、僕もスカパーのANIMAXで再放送しているのをちょこちょこと見たことがあります。原作は僕も中学生のときに愛読していた月刊『少年ガンガン』に連載しています。ガンガンに載っているマンガが世界進出(とはいっても国内)を果たすとは、感慨深いものがあります。アニメはUSJにもスタジオがある在阪の毎日放送制作で、そのつながりもあるのでしょうか。『鋼の錬金術師』がOKなら、『ありがとう浜村淳です』のテーマパークも作ってもらいたいものです。すでに土曜日の朝にUSJへ行けば、浜村淳の公開生放送に参加できますが、映画の結末を人に教える話術や愛国主義的な言動を身に着けられる、ちょっと形が変わった靴を履いた背の低いロマンスグレーのおじさんによるガイドツアーは人気が出そうです。

 ところで『鋼の錬金術師』、主人公の兄弟が死んだ母を蘇らせようと禁断の錬金術に手を出すが失敗、その代償で兄は左足を、弟は身体全体を失って鋼鉄の鎧に魂を宿らせるというかなりダークな設定のアニメです。イメージ的にはキティちゃんとはかなり異なりますから、いっしょくたにしてはサンリオからクレームが来そうです。まあ、キティちゃんも猫なのに馬の背に乗って鞭で使役したり(参考:いちご新聞)してますから、案外裏の顔を持っているのかもしれませんが。

 『鋼の錬金術師』の導入は表向きには家族連れの集客を見込んでということですが、その一方でこれまでテーマパークには縁のなかったオタク層の需要も見据えているのではないでしょうか。アキバ系(大阪では日本橋系)のむさ苦しい男たちが群がると一気に環境を悪化させるのでテーマパークとしては敬遠するところですが、『鋼の錬金術師』は女子層に人気のあるコンテンツですから、まだ安心です。オタク系女子は一部、ビジュアル系アーティストファンともかぶるので、昨年夏にはGLAYのコンサートで駐車場を会場に提供したUSJにしてもそれほど違和感はないでしょう。『鋼の錬金術師』とおなじく毎日放送制作の『ガンダムSEED』なんかを誘致すれば、ニュータイプのガンダムファン腐女子たちが群がりそうです。

 和製アニメ導入第一弾に『鋼の錬金術師』を持ってきたあたり、USJがこうした戦略を念頭に入れている可能性はかなり高く、USJ社内ではリアルライフを描いたアニメ『げんしけん』のDVDなんかが資料として配られ、本場から海外赴任しているアメリカ人や大阪市から出向したおじさんたちが熱心に鑑賞しているのかもしれません。日本のポストモダンは行き着くところまで来たようです。オリヴィエ・アサイヤス監督のフランス映画『デーモンラヴァー』(参考:日本公式サイト)に描かれる、日本のアダルトアニメ制作会社への出資をめぐるサスペンスドラマが現実に起きるやもしれません。

 こうしたUSJのオタク化計画に、USJが一方的にライバル視してる東京ディズニーランドはというと、広報部が「お客様に非日常の空気を提供することを大切に考えており、それにそぐわないものは、ちょっと……」とコメントしています。一見、無難なコメントですが、よく考えるとこのオリエンタルランドの広報の人は、『鋼の錬金術師』は日常だからダメと言っていることになります。この人、仕事ではミッキーの宣伝をしながら、家に帰ると和製アニメに浸っているのでしょうか? 方や、USJの広報の人は「『鋼の錬金術師』は今や、世界的なキャラクター」と言い切っていますし、日本のキャラクタービジネスは迷走しています。

 「人は何かの犠牲なしに何も得ることはできない。何かを得るためには同等の代価が必要になる。それが錬金術における等価交換の原則だ」。

 『鋼の錬金術師』で何度も語られ、この作品の世界観を体現しているセリフですが、赤字のテーマパークも犠牲なしに収益を得ることはできないわけです。このセリフ、僕はうろ覚えだったのでGoogle検索したのですが、大和総研のサイトにある社員のコラムでも話のマクラに使われていていました(「経済再生は錬金術に学べ!」)。僕のなかにある日本の未来に対するぼんやりとした不安が、だんだんと増幅していきます。 


きょうの一冊:『錬金術』 著/セルジュ・ユタン

 

 


 2月10日 百年構想

 

「ウマ?レンジャー 笠松競馬に参上!/増収狙い11日お目見え」(岐阜新聞) 
http://www.jic-gifu.or.jp/np/g_news/200502/0209.htm#5 

「笠松競馬の盛況を目指す企画「笠松戦隊」が十一日、羽島郡笠松町の同競馬にお目見えする。同競馬の存続に向けた話題づくりと増収策の一つで、親子連れを競馬場に呼び込む目玉として注目を集めそうだ。笠松戦隊は、子どもに人気があるキャラクターをヒントにしたチーム。五人がメンバーで、「不況と戦う」という。イベントに登場し、同日は午後三時四十分から約十五分間、家族席前で子どもらにお菓子を配る。「笠松戦隊○○」が正式名称で、○○の部分を同日に公募し、十四日に決定する。発案した笠松競馬青年部の小松祥治代表(26)は「楽しい企画で、競馬場のイメージを変えたい」と期待している。 
《岐阜新聞2月9日付朝刊社会面》」 



 廃止が検討されつつも、つい先ごろ試験的に一年間の存続が決まった笠松競馬(参考:朝日http://www.asahi.com/national/update/0203/038.html)ですが、こんなことで経営が立て直せると本気で思っているのでしょうか。話題づくりにはなっても増収にはまったくつながらないと思いますが。 

 以前、経営再建に向けて頑張る地方のテーマパークを取材したドキュメンタリーで、普段は接客や事務をしている従業員たちが、まったくの素人にもかかわらずダンスを練習して手作りのショーをする光景を見ましたが、この笠松戦隊もそれとおなじにおいがします。立ち直ろうと必死なものの、必死になる方向がまったく見当違いなのです。寂れつつあるところというのは、こうも正常な感覚を見失ってしまうものなのでしょうか。 

 ゴレンジャーのわりには赤レンジャー、青レンジャー、黄レンジャー、桃レンジャーときて、リーダー格だけなにか間違えた衣装を着ています。実は純粋な戦隊モノではなく、戦隊モノのパロディーで一人だけ間違えたメンバーがいるダウンタウンの「ごっつええ感じ」のコントみたいなことをやるのでしょうか。「不況と戦う」という設定もウケ狙いに思えるのですが。もし真面目に言っているのだとしたら、地方競馬が衰退しているのは不況が直接の原因と思っている時点で根本的な誤りがあります。 

 笠松戦隊のメンバーがお菓子を配った子どもたちが馬券を買えるまで笠松競馬が存続している可能性は非常に低いですが、次の一年が勝負という時になってそんな十年先を見据えたファン拡大計画を提案する笠松競馬青年部の小松さんは、JRAのブランドコマーシャルで一青窈が歌っている「君と好きな人が100年続きますように」を実践する深謀遠慮の人なのでしょう。今年、笠松競馬に奇跡が起きて、彼の夢が実を結ぶことを祈っています。


追記:
 川崎競馬には狩人が来ます(参考:netkeiba.com)。狩人といっても、馬を狩りにハンターがやってくるわけではなく、「あずさ2号」の狩人です。

 「地方競馬応援ソング「夢をのせて」などを披露する予定」だそうですが、地方競馬よりも狩人への応援が足りてない気もします。かつては一発屋あつかいながら三宅裕司の「THE夜もヒッパレ」なんかで見たのですが。ただ、地方競馬の客層にはマッチしていそうで、笠松戦隊よりは盛り上がるイベントになりそうです。

 当日は「「川崎競馬バレンタインデー来場者プレゼント」として、先着3000名にスピードくじを配布。抽選で300名にワインの紙パックとチョコレートの詰め合わせを、小学生以下のお子様には、先着200名にお菓子をプレゼントする」企画もあるそうで、子どもを取り込む地方競馬百年構想は全国規模のようです。2月11日なのにバレンタインデー来場者プレゼントなのは見逃しておくことにします。

 川崎競馬場といえば、映画『レディジョーカー』のロケ地になって映画とタイアップしたレースを組んだりしています(参考:スポニチhttp://www.sponichi.co.jp/entertainment/kiji/2004/11/26/08.html)。原作ファンとしては登場人物の設定上、舞台は東京競馬場でないとしっくりいかなくて映画を見ていないのですが、DVDが出れば『北の零年』とともに馬映画二本立てでレンタルしようかと思っています。


さらに追記:
「狩人 所有競走馬で義援金!のはずが…」(サンスポ)
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/kiji/2005/02/12/03.html

 営業に来たタレントは偽りの姿で、実は馬主でした。「皆の衆、この馬主バッジが目に入らぬか」とやったのでしょうか?
 所有するアズサドリーム号は、1番人気に支持されながらも7着に惨敗(参考:地方競馬公式サイト)。さすがに狙ったネーミングだと思ったら、馬主の登録名が「(有)あずさ2号」でもっと狙っていました。さすが狩人です。

もっと追記:
笠松戦隊の名前は、公募の結果「マックル X(ファイブ)」になったそうです。
(参考:笠松競馬公式サイト


きょうの一曲:『ハナミズキ』 一青窈

ハナミズキ [MAXI]

 



2月9日  お台場に恋して

 

「ライブドア、ニッポン放送株35%取得 フジテレビ照準」(朝日) 
http://www.asahi.com/business/update/0208/079.html 

 日曜日、堀江社長がフジテレビの番組『平成教育予備校』に出演しているのを見て、これからはタレント・ホリエモンとして売り出すのかなと思ったら、実はフジテレビそのものを狙っていたようです。番組に出るのも、現場を味方につけてスムーズに経営参加しようという「将を射んと欲すればまず馬から」式のアプローチなのでしょう。フジテレビの社員といえば、若手敏腕ディレクターが局の財産である女子アナと出来ちゃった婚してしまう(参考:日刊スポーツhttp://www.nikkansports.com/ns/entertainment/p-et-tp0-050205-0006.html)ような、あまり後先を考えないでその場の雰囲気に流される人材が多いので、取り込むのは比較的容易そうです。ただ、堀江社長の『平成教育予備校』での成績はとても東大中退の高学歴に思えない散々なもので、視聴者には普段大口を叩いているわりに中身がともなっていないことをさらしていましたが。 

 朝日の記事でも説明されているとおり、実態ではフジテレビ参加のラジオ局でしかないニッポン放送が出資関係ではフジテレビの筆頭株主で経営を左右できるねじれ構造があり、それを是正すべくフジテレビがニッポン放送株の公開買い付けを実施している最中にライブドアが割り込んできたという構図です。ライブドアは株の取得に700億円を要したらしいですが、700億円といえば有馬記念の総売上げをも上まわり、地方競馬の累積赤字すべてを足しても届くかどうかという大金です。ライブドアの地方競馬支援計画なんてほんの余技でしかないことがよくわかります。 

 ライブドアがニッポン放送やフジテレビを手に入れてどうするのかについては、ネットと既存メディアとの融合による相乗効果を狙ってというのが大方の見方ですが、実は堀江社長がオールナイトニッポンに出たてみたかったからくらいの方が話題としては面白いです。首尾よくフジテレビをも参加にできれば、『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングをライブドア社員だけでまわしたり、『サザエさん』で波平さんの勤める海山商事を買収したり、そのうち参入するプロ野球の新球団にガチャピンをスカウトしたりもできるわけです。 

 もちろん、経営戦略や個々の番組のスポンサーを考慮すればとてもそんなことはできないのですが、『クイズミリオネア』で7000回優勝しないと元が取れないくらいの大金をつぎ込んだからにはそれくらいの見返りを期待するのが人間というものです。とりあえずは4月からの新ドラマ『ヒルズに恋して』(参考:サンスポhttp://www.sanspo.com/geino/top/gt200502/gt2005020702.html)で草なぎ剛が演じるIT企業社長の成功物語がどこまで堀江社長の自伝的ドラマになっているかに注目です。


追記:
「フジテレビがバラエティー番組休止・ライブドア社長が出演」(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20050209STXKD094509022005.html

「フジテレビは9日、ニッポン放送株を取得したライブドアの堀江貴文社長がレギュラー出演しているバラエティー番組「平成教育2005予備校」の13日分の放送を休止することを決めた。同局は理由を「編成上の問題」としている。〔共同〕」

 なにも放送を休止することもないと思うのですが、それほどフジテレビ上層部の衝撃と不信感は大きいということでしょうか。島田紳助は肉体的暴力で番組を休止にさせてしまいましたが、ライブドアは経済的暴力で番組を休止させたようです。


きょうの一冊:『品川台場史考―幕末から現代まで』 著/佐藤正夫

品川台場史考―幕末から現代まで

 



2月8日 大学は建てたけれど

 

「幼稚園から大学院まで30階建てビルに 関西大学が構想」(朝日)
http://www.asahi.com/national/update/0208/001.html 

 いちおうOBなので、けっこうなビッグニュースです。 

 JR高槻駅北側に高層ビルを建設するそうです。防災や環境がテーマの学部を新設するほか、おなじビルに幼稚園、小学校、中学校、高校が入り、エスカレータ式ならぬエレベータ式に幼稚園から大学までそろった私学になるようです。朝の始業時間前はエレベータがとてつもなく混雑するはずで、エレベータを待つ間に遅刻する学生・生徒が多発しそうです。 

 これまで関大には幼稚園と中学・高校があるのに小学校がなかったため、いつかはつくるのだろうと思っていましたが、まさかこんな大プロジェクトを打ち立てるとは。幼稚園と小学校は60人、中学校と高校が80人と学習塾みたいな少人数制ですが、吹田の方と住み分けを計るためでしょう。仮に幼稚園から大学院までこの学校に通い続けると、20年以上もおなじ建物で生活するわけで、人格形成に少なからず影響が出そうですが、 

 しかし、これで高槻の山の上にある総合情報学部の行く末がいよいよ不安になってきます。これまでも吹田の本校に通うものには合宿施設としか思われてなかったのですが、最寄り駅に別校舎があるのにわざわざさらに山の上までバスで行くことになっては学生の通学意欲が如実に低下しそうです。おそらく一般教養科目などは新校舎の教室で新学部と合同になるのでしょうが、学部の専任教授は山の上の現校舎に研究室を持っているわけで、専門科目やゼミは山の上までいかなくてはなりません。遠足で訪れた付属幼稚園の園児に猿と間違われる可能性もあります。 

 すでに吹田でも校舎を建てまくっていたうえにこの新キャンパス構想で、これからの少子化社会に経営が成り立つのでしょうか。拡張できるだけの土地を確保できているのは都会のど真ん中で身動きの取れないよりもいいとは思いますが、需要と供給のバランスを考えると今攻勢に出るのが得策でないのも確かです。残念ながら僕には寄附できるほどの財力がないので、あくまで心配するだけなのですが。僕が死ぬより先に母校がなくなるようなことだけは避けてもらいたいです。


きょうのいっぽん:『大学は出たけれど』 監督/小津安二郎

 

 

 

2月7日 異邦人

 

「余録:大阪人気質」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050207k0000m070097000c.html 

「大阪は日本の「異国」とよくいわれる」 

 たしかに。昨日、東京から観光に来たおばさんに通天閣へ行く道を聞かれ、僕がひと通り説明し終えたあと、おばさんは「実はね」と語りだした。 

 「さっきエレベーターに乗っていたら、妖怪みたいなお面をかぶった屈強な男の人が乗ってきてね、少し前に東京でパンダの帽子かぶった人に刺された事件あったでしょ、あれを思い出してね、わたしぞっとしてね、殺されるかと思ったのよ、震え上がって生きた心地がしなかったわ」 

 どうやらこの人は大阪プロレスのえべっさんと「あいのり」したようだ。たしかに、プロレスの人は試合会場と控え室が別のフロアなんでエレベーターを利用する。一般の人と乗り合わせることがあるから、人前で素顔を見せられない覆面レスラーはエレベーターに乗るときも当然、覆面のまま。僕もたまに遭遇する。えべっさんは大阪ではそれなりに知名度があり、大阪人ならテレビに出てる人やくらいにしか思わないから、「エレベーターでえべっさんに会う」を恐怖体験ととる人はまずいないのだが。大阪文化に慣れていない東京人にはカルチャーショックだったようだ。 

 ちなみにえべっさん、美少女ゲームの広報をしたり、アニメの声優をこなしたりする肉体派オタクなのだが、そんなムダ知識を教えてあげたところでさらに混乱するだけだろうからやめておいた。 

 秋葉原を追って日本橋でもメイド喫茶が続々とオープンする今日この頃、東京と大阪の差なんてそんなにないと思っていたのだが、まだまだ未知なるものは残されているのだった。


きょうの一枚:『大阪プロレス飯店』(DVD)

大阪プロレス飯店

 



2月6日 ソニースタイル

 

「ソニー:海外で日本の放送視聴 持ち運べる7型テレビ」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kigyou/news/20050207k0000m020006000c.html 

 ソニーの持ち運べるテレビ、これまでは「エアボード」という名称だったのですが、今回の新製品から北米で使っている「ロケーションフリーテレビ」に変えるそうです。エアボードだとエアの冠号をつけた競走馬と間違われるから、馬かテレビか紛らわしくて売れないわよ、と細木数子に言われたのでしょうか。 

 今回の特徴は海外で見られるということらしいですが、毎日に記事では「ブロードバンド環境や無線LAN(域内情報通信網)に対応しているため」とあっさり説明されていてよく分からなかったのでソニーのプレスリリースを見てみます。 

「自宅に設置したベースステーションに、テレビアンテナ、DVDやビデオ機器、「スカイパーフェクTV!」チューナーなどとインターネットを接続し、付属のモニターを出張先や旅行先に持って行けば、モニターをインターネットに接続することにより、自宅のベースステーションに接続したテレビ放送や接続機器の映像を、外出先から手軽に、リアルタイムで楽しめます。(“NetAV”機能) 
テレビのチャンネルや接続機器は、モニターの画面上でリモートコントロールできます」 

 つまり、世界中どこにいようとも自宅のテレビを思うがままに操れるわけです。ただ、ソニーが想定しているシーンのひとつ、「出張先で自宅のテレビを見る」だと、自宅のテレビを家族が見ている場合、出張に行っているはずのお父さんが突如チャンネル争いに参戦して、娘の見ていた「Mステ」を巨人戦に替えてしまうというような事態が起こりうるわけです。出張先でさえ堀内采配が気になるG党お父さんは満足かもしれませんが、帰国後は間違いなく家庭に居場所がなくなります。 

 主要な購買者はベースステーション専用のテレビが買える高所得者かもしくは、チャンネルを争える家族のいないデジタル・オタク層になるでしょうから問題はないと思いますが。 

 とにかく、この製品があれば、世界中どこにいても日本のテレビが見られるのですから、サンパウロで深夜に『ひるどき日本列島』を見ようが、ロンドンで自称英国出身者の出演する『マシューズベストヒットTV』を見ようが、ピョンヤンで『北の国から』の再放送を見ようが自由なわけです。自宅のテレビを遠隔操作しているだけなのでNHKの受信料も問題ありません。支払いを拒否していたとしても、集金人は海外にまで取り立てに来ません。 

 しかし、郷に入っては郷に従えというように、現地のルールではNGになる場合があると思われるのですが、そのあたりはどうなのでしょうか。例えば、オリンピックのような各国で放映権が限定されているコンテンツを見たり、宗教的・倫理的な理由からその国では放送に不適当な内容の含まれるコンテンツ(例えば、イスラム教国で豚丼のCM、性風俗に厳格な国でグラビアアイドルの水着映像、トルコで江頭2:50)を見たりしたときに、現地の人に不利益や不快感を与え、極端な場合にはなんらかの犯罪とみなされることもあるかもしれません。 

 そんなとき、ソニーはユーザーに対してなんらかの便宜を図ってくれるのでしょうか? ソニーといえば、PSPでボタンを押しても画面が動かない不具合が出るなかで、久多良木SCE社長が「それがPSPの仕様だ」(参考:日経http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/biz/354840)と言い放ったくらいですから、そんな細かいことは、「これが、私が考えたデザインだ。使い勝手についていろいろ言う人もいるかもしれない。それは対応する国や購入者が、この仕様に合わせてもらうしかない」ということなのでしょうか。 

 天下のソニー様の製品に、しかもVAIOを使って苦言のようなことを書いていますが、僕はこの製品にかなり魅力を感じています。なにせスカパーに対応しているためグリーンチャンネルを外出先で視聴できるのですから。かつては、「WINSを自宅に」が理想だったのですが、いまやグリーンチャンネルとJRA-VANとIPATの三種の神器で自宅の環境がとてつもなく進化し、競馬場にいても自宅の環境があったらいいのにと逆の発想をしてしまうくらいです。特に全場発売や三連単導入後はWINS・競馬場のモニターでは情報が追いつかなくなっていますから、このソニーの「ロケーションフリーテレビ」とノートパソコンと携帯電話があれば、持ち運び可能な私設WINSができるわけです。 

 この製品、当面の問題は付属バッテリーでは80分(別売りでは3時間)しかもたないことですが、現在僕の携帯電話は通話で30秒、Webにつなげても5分以内に電源が落ちてしまうので、それくらいなら結構長持ちと思えてしまいます。やはり、久多良木SCE社長の言うように人間の適応能力はかなりのものなのかもしれません。


きょうの一台:『VAIO Type U』 (ソニー)

SONY Vaio U (C-M 900"G"Hz, 256MB, 20GB, 802.11b/g, 5"TFT) [VGN-U50]

 



2月4日 現金がいるテレビ

 

「NHK受信料:病院テレビ納入団体が拒否 年40億円に」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050204k0000m040057000c.html 

 「病室内に貸しテレビを納入している全国の業者36社でつくる「テレビシステム運営協会」(事務局・名古屋市)は3日、NHKの受信料の支払いを今月から停止することを決めた」 

 これまでにない大口の受信料支払い拒否で、NHKは大打撃です。年間40億円の減収となると、それこそ大河ドラマの制作費分くらいがなくなるわけで、番組の質の低下は避けられません。病院のテレビ料金が高いというのはよく聞く話ですが、残念ながら僕はこれまでの人生で一度も入院したことがないのでその実態はよく知りませんでした。 

 納入団体の「テレビシステム運営協会」はサイトを持っていない(というか、Googleではこのニュース以外に一件もヒットしない)ので、協会事務局長が経営しているメディウムジャパン社のサイトをのぞいてみたのですが、主力商品の病院向けセーフティボックスに関する情報ばかりで、テレビについては、会社概要の項に「患者さんがプリペイドカードを購入し、テレビを有料で視聴する(通称)テレビシステムの普及が全国で進んでいますが、当社も全国の優良病院に設置、運営をしています」と書いてあるだけでした。業界の主力企業がこの程度のあつかいですから、病院用テレビの市場規模はそれほどでもないようです。 

 こんどは病院の側からさぐってみます。病院のサイトの案内をつらつら見てみると、テレビは病室の備品で使用料が入院費に組み込まれているところと、売店や自販機などでテレビカードを購入するところに大別されるようです。これまたGoogleで「病院&テレビカード」「病院&テレビ&料金」などを検索すると、テレビカード式を導入している病院では、1000円のカードを購入して度数に応じた時間分視聴できるシステムが主流のようです。時間の設定は病院によってまちまちで、短いところは10時間、多いところでは40時間(福岡県・高山病院)も見ることができます。入院する際にはテレビを見るのにいくら掛かるかも調べておかないと余計な出費がかさみそうです。 

 テレビカードを導入している病院にしたら、テレビは手堅い副収入をもたらす自販機のような役割なのでしょう。納入業者にしてもカードシステムの保守・運営さえすれば、テレビ本体はかなり長い間おなじものを使い続けられます。ちなみに、減価償却の耐用年数で「ラジオ、テレビ他音響機器」は5年に設定されています。「電子計算機(PC)」で4年ですから、パソコンより1年は長持ちする計算になります。僕の場合はパソコンは4年おきくらいに買い換えていますが、テレビは10年前のものをまだ使用しています。リモコンが効かなくなった以外はどこといって悪いところはなく、今日も『ロードオブザリング・王の帰還』を小画面ながら迫力満点に鑑賞できました。むしろ5年前に購入したスカパーのチューナーが限界にきているくらいです。 

 結局のところ、納入業者も病院もテレビは患者からお金を吸いとるオプションサービス程度の認識だと思われます。設備投資、保守点検費、電気代など細かなコストから厳密な採算を設定していないだろうことは、病院ごとに大きく異なる料金設定が物語っています。そこにNHKものっかって、受信料を年間40億円も上乗せさせてきたのでしょう。業界団体の人の「まじめに支払うのがばからしくなった」というコメントは、むしろ入院患者からこそ発されるべき言葉です。 

 ただ、僕はこうした病院のテレビシステムが悪であるとは思いません。使用料によって間接的な時間制限をもうけることには、テレビをつけっぱなしにする患者が減り、病室内の静かな環境が保たれる副次的な効果もあります。本質的には、日本のテレビ放送がもつ矛盾が根源にあり、今回のような問題はその枝葉のひとつにすぎません。 

 スポンサーのコマーシャルによってテレビはタダであるという認識ことを広く国民に行き渡らせた民間放送と、受信料によってテレビは公共財であると建て前づけたNHKの共存は、金銭的なことばかりでなくテレビは誰のものなのか?というメディアそのものの存在理由をあいまいにしてきました。テレビがあまりに強い影響力を持つメディアになってしまったために、他のメディアもその引力に揺り動かされることになりました。スカパーの視聴料が高いのも、映画の入場料が高いのも、本の価格が高いのも、携帯電話の使用料が高いのもすべてテレビが悪いのかもしれません。日本人の著作権や知的財産権に対する認識が欧米とずれているのもテレビが悪いのでしょう。いいすぎかもしれませんが、すべてNHKが悪いことになる今の風潮なら言えます。 

 そういえば、京阪電車にはテレビカーという、先頭にテレビが付いている車両がありますが、あれも受信料は払っているのでしょうか?「鉄分」の多いサイト等で調べてみると、なんと1950年代から走っているテレビカー。特急料金もいらずにテレビを見ながら電車に乗れるとはすごいサービスです。大阪ー京都を電車で移動しようとすれば、京阪で淀屋橋−出町柳間460円、阪急の梅田−河原町間390円よりは高いが、JRの大阪−京都間540円よりは安い微妙な料金設定で頑張っています。もし京阪がテレビカーの受信料(実は衛星放送にも対応しているので年額2万5,520円)をきっちり払っているとしても、運賃に与えている影響はほとんどないようなものでしょうが。今度、臨時特急ギャロップ号で淀の京都競馬場へ行くときには、テレビカーの車両に乗って受信料を気にせずにテレビを見ようと思います。


きょうの一本:『トレインシミュレータ京阪電気鉄道』(PCゲーム)

トレインシミュレータ京阪電気鉄道(淀屋橋〜出町柳)

 



2月3日 若き日のペ

 

「上映中止:ヨンさま幻のデビュー映画、権利関係で」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050203k0000m040067000c.html 

「今月11日から東京都内で上映されるはずだった韓国の人気俳優、ペ・ヨンジュンの幻のデビュー作「初恋白書」の上映が急きょ中止される」 ことになったそうです。楽しみにしていたヨン様ファンは残念で仕方がないでしょうが、対応に追われる劇場は大変そうです。配給サイドの問題ですから、劇場は寝耳に水のはずです。前売券の返金や代替番組の手配に加えて、ヨン様ファンという日本屈指のクレーマーへのお詫びがあるのですから、しばらく地獄の日々になるでしょう。 

 そう思って、公開が予定されていたシネスイッチ銀座のサイト(http://www.cineswitch.com/)を覗いてみたのですが、掲示板には苦情の嵐が。しかも、今回のヨン様映画ではなく過去のさまざまな苦情・批判が延々と掲載されていました。おもに接客と入場方法について、「以前から言っているのに、一向に改善されません」というようなかなりお怒りレベルの高いものです。行ったこともない東京の映画館ですが、これだけを見るとかなり悪印象を抱いてしまいます。明らかなイメージダウンで、これではサイトをわざわざ開設して観客を減らしているようで、いっそ掲示板を廃止するなり、苦情はメールで受け付けるなりすればいいと思うのですが、そこまで知恵が回らないのでしょうか。銀座という一等地に居を構えていれば、何もしなくても一定の集客が見込めるわけで、サービスを向上させようというモチベーションが出てこないのかもしれません。立地のいい飲食店でなかなか美味い店がないのと同じようなものでしょう。 

 それはともかく、「「初恋白書」は1995年の作品で、大学進学を断念したヨンさまが主人公の不良仲間という役柄で出演する事実上の銀幕デビュー」 とふつうに「ヨンさま」と呼ばれるペさんの人気は行き着くところまで来てしまったようです。皇族を除けば、新聞記事で「さま」付けされるのは、このペさんと阪神タイガースの八木選手くらいでしょう。しかも、八木選手が決勝打を打った翌日のスポーツ欄に踊る「神様、仏様、八木様」の見出しは、八木選手の現役引退で見られなくなるので、これからはヨンさまの独壇場です。 

 ところで、この毎日の記事の「デビュー当時から光っていた若き日のヨンさま(中央)」 のキャプションが付いている劇中のワンシーンと思われる写真は権利関係がはっきりしているのでしょうか? このデビュ当時のペさんは光っているどころか、あきらかに「隠したい過去」っぽい冴えないルックスなのですが。これでもファンにすれば、後光が射しているありがたいお姿に見えるのでしょうか。鰯の頭も信心からと言いますが、僕には崇拝するほどの偶像とは思えないのですが。 

 ぺさん自身の出演作はともかく、ヨンさま人気のおかげで良質の韓国映画が日本で多く上映されるようになったのは良いことです。僕の好きな別のペさん、ペ・ドゥナの出演作である『ほえる犬は噛まない』や『子猫をお願い』や『復讐者に憐れみを』も韓流ブームがなければせいぜい東京のミニシアターで単館ロードショーされるくらいだったでしょうから。いうなれば、武豊騎手が人気で負けたおかげで武幸四郎騎手の穴馬券がとれたようなものです。違いますか、違いますね。


きょうの一枚:『子猫をお願い』 (DVD)

子猫をお願い

 


2月2日 人生一度は万博だ 2

 

「江崎グリコ、大阪万博の小型模型付き菓子を発売」(産経) 
http://www.sankei.co.jp/news/050201/kei090.htm 

参考:江崎グリコHP内「ニュースリリース」 
http://www.ezaki-glico.com/release/20050120/index.html 

 タイムスリップグリコシリーズの新作は大阪万博がテーマだそうです。メインはやはり「太陽の塔」でしょうが、インパクトでは三波春夫です。グリコの想定する対象層は30代〜50代男女とのことですが、大阪万博をリアルタイムで体験していない僕でも欲しくなります。 

 注目すべきは封入される解説書の執筆者陣の豪華さというか多様さというかバラバラさです。五十音順に青島幸男、泉麻人、岡田斗司夫、岡本敏子(岡本太郎記念館館長)、嘉門達夫、唐沢なをき、小松左京、西原理恵子、堺屋太一、丹下都市建築設計、みうらじゅん、宮沢喜一、宮脇修(海洋堂館長)、山田五郎ですから。「みうらじゅん」のあとに「宮沢喜一」がくる人名リストなんてなかなかないです。盆と正月が一緒に来たならぬ、『サンデープロジェクト』と『BSマンガ夜話』が一緒に来た状態です。 

 ところで、三波春夫が歌う『世界の国からこんにちは』ですが、これは公式ソングではなく毎日新聞社が一般公募した大阪万博テーマソングでした。しかも、レコード会社がそれぞれ別の歌手で発売し、三波春夫以外にも坂本九、吉永小百合、山本リンダ、西郷輝彦などが歌っています。今で言うなら、宇多田ヒカルと浜崎あゆみと平井堅とSMAPがおなじ曲を歌っているようなものでしょうか。なかでも純和風の三波春夫が受けたのは面白いところです。 

 今度の愛知万博の公式ソングはというと、元X-JAPANのYOSHIKIプロデュースで、ハワイ出身の新人女性歌手DAHLIAが歌う『I'LL BE YOUR LOVE』という曲だそうです。YOSHIKIは99年に「天皇陛下御即位十年をお祝いする国民祝典」のためにピアノ曲を作曲していて、お国のために働くのが好きな人のようですから適任ですね。そういえば、globeのメンバーにもなったはずですが、そちらの活動は順調なんでしょうか? 

 愛知万博もPRに懸命なようで、この間、通天閣の下を歩いていたら、テレビのロケでキャイ〜ンが来ていて、取りまく野次馬に「愛知万博知ってる?」とインタビューしていました。どうやら、東海テレビの「万博キャイ〜ン!」という番組で、土曜の午前という微妙な放送時間帯には名古屋の方で万博気分が盛り上がっているようです。この番組のサイト(http://www.tokai-tv.com/expo/)を見て気づいたのですが、東海テレビを含めた中日新聞グループが出展するパビリオンの総合プロデューサーが押井守だそうです。なんでも、「世界最大級の床面映像などを駆使する体感型映像空間で、壁面や頭上も含めて映像が広がり、音響とのくみあわせで人間の感覚に訴えかけます。大自然の光景や動植物の数百に及ぶシーンが万博全期間中(185日間)の毎日毎回、異なる組み合わせのプログラムで登場するのも特徴で、万博史上初の試みです」ということで、どれだけ凄いのかは見ないと分かりませんが、とりあえず犬が出てくるのだけは間違いないでしょう。 

 YOSHIKIや押井守が頑張っていても、僕はいまのところ愛知万博に行く気にはならないのですが、万博をPRするために日本にやってきた飛行船ツェッペリンNT号は見てみたいです(参考:朝日http://www.asahi.com/national/update/0107/002.html)。76年前に世界一周を成し遂げた飛行船「ツェッペリン号」の後継機ですが、テロを警戒して海上輸送で日本に来ました。76年前の1929年というと、第一次・第二次大戦の戦間期にあたる不安な時代ですが、世界の空はその当時よりも安全ではないようです。その8年後、1937年には有名なヒンデンブルグ号炎上事件がおきて飛行船時代は終焉をむかえます。ヒンデンブルグ号はナチスドイツがスポンサーについており、その尾翼には巨大なカギ十字が刻印されていました。21世紀になって飛行船はクリーンエネルギーの観点から再び注目を浴びるようになりましたが、当時の戦争の恐怖がともに呼び覚まされていないことを願いたいです。


2月10日追記:

 コンビニでさっそく一つ買いました。「月の石」でした。フィギュアの出来は海洋堂にすれば可もなく不可もなくといったところでしょうか。解説の冊子はもう少し中身が濃いものを期待してたのですが、薄くてちょっとあっさりしてました。キャラメルは大阪万博のころのデザインの包装紙や箱を再現しているようで、いい感じです。五粒も入っているのはおまけだけじゃなくお菓子にもちゃんと力を入れているぞというグリコの意地を感じます。
 とりあえず、「太陽の塔」と「三波春夫」が出るまでは一日一個ペースで買ってみます。


きょうの一冊:『2005年日本国際博覧会 愛・地球博 公式ハンディブック

2005年日本国際博覧会 愛・地球博 公式ハンディブック (日本語版) 2005年日本国際博覧会MOOK

 



2月1日 日本最強のキャラクター

 

「雑記帳:全国対抗キャラクターに「ゆうまちゃん」」(毎日) 
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050202k0000m040041000c.html 

 毎日新聞のサイトで開催された「全国対抗キャラクターコンテスト」の優勝が、群馬県の「ゆうまちゃん」に決まったそうです。コンテストのページhttp://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/etc/character/をみると、候補キャラクターのなかでは「ゆうまちゃん」が抜けて出来がよく、「1次選抜から断トツの人気で、2次選抜でも5123票中2716票と2位の鳥取県を大きく引き離し、「先行逃げ切り」した」のもうなずけます。 

 群「馬」だからウマをベースにしたキャラクターのようで、「今年で10歳。つぶらな瞳とおちょぼ口が魅力かな」ということです。ウマにおちょぼ口というのはどうかとも思いますが、三遊亭円楽だっておちょぼ口でウマ面といわれているのですから問題ないのかもしれません。ウマの10歳というと人間でいえば中年くらいで、ちょっと高めの年齢設定なのではと思ったら、「ゆうまちゃん」は平成6年の第3回全国知的障害者スポーツ大会「ゆうあいピック群馬大会」のマスコットとして誕生したそうで、リアルに10歳分年をとっているのでした。しかも、その10年の間には群馬県のキャラクターをめぐる隠された過去がありました。 

 実は群馬県のキャラクターは「ゆうまちゃん」がはじめてではありません。昭和58年の「あかぎ国体」開催にあわせて「ぐんまちゃん」というこれもウマのキャラクターがつくられています。全国知事会のサイトなどでは今も二頭が併せて紹介されているのですが、群馬県のサイトは二代目の「ゆうまちゃん」一色です。かわいい顔をした「ゆうまちゃん」も水面下では激しい代替わり抗争を戦って前任者の「ぐんまちゃん」からキャラクターの座をうばいとっていたのです。まあ、四本足でウマそのものの「ぐんまちゃん」よりも、二頭身にディフォルメされてサンリオっぽい「ゆうまちゃん」のほうが人気が出るのは必然ではありますが。 


 ウマキャラでのPRに懸命な群馬県ですが、一方では赤字の運営をいつまでも続けられないと県内の地方競馬・高崎競馬を昨年末で廃止しています(参考:日経http://www.nikkei.co.jp/keiba/news/20041208dxkd027308.html)。廃止路線が決まってからも地方競馬参入を表明したライブドアと県知事が直接交渉するなど一定の努力はみせましたが、競馬関係者の廃止反対運動もむなしく81年の歴史に幕を下ろしました。高崎は競走馬のレベルでは全国の地方競馬のなかでも下のほうで、オグリキャップを出した笠松やメイセイオペラの岩手ですら存亡の瀬戸際にある現状ではいたしかたないともいえますが、上越新幹線の高崎駅に近い好立地で、赤字体質が決定的になる前に経営努力がなされていれば何とかなった可能性もなきにしもあらずです。 

 キャラクターとしてひとり立ちしている「ゆうまちゃん」は競馬がなくなっても特には困らないのですが、高崎競馬の廃止で予定を変更せざるをえなくなったものがひとつあります。NHKの朝の連続テレビ小説です。最近なにかと評判の悪いNHKですが、伝統の朝ドラは根強い人気を誇ります。NHKの朝ドラは東京と大阪が半年ずつ持ち回りで製作されていて、現在放送されている神戸が舞台の『わかば』にかわってこの春から放送される東京版『ファイト』の舞台が群馬県なのです。 

 昨年の秋に『ファイト』の製作が発表された際には、ヒロインが「高崎競馬で一頭の牝馬と出会い、牧場経営を志す」と紹介されているのですが、その後に肝心の競馬が廃止されてしまったため、最近の紹介文では「若くして様々な職業体験を重ねながら、最後は自分の好きな馬を育てる「牧場経営」の道を志していく」物語と微妙に変更されています(参考:NHK「ファイト」最新情報http://www3.nhk.or.jp/drama/html_news_fight.html)。ハルウララブームの真っ最中にドラマの企画が進行していたため、廃止の危機に瀕する高崎競馬を高知競馬とダブらせて取りあげることにしたのでしょうが、ちょっと現実のほうが先走ってしまいました。それでも高崎でロケが行なわれ、競馬場も登場するようですから、まったくなかったことになるわけではないようですが。 

 ともあれ、映画『スウィングガールズ』にも出演している本仮屋ユイカ演じるヒロインが体験する様々な職業には、NHKの受信料集金スタッフも含めて欲しいものです。精神的な辛さでは今の日本で屈指の仕事でしょうから。受信料を払ってくださいと一軒一軒家庭をまわっては視聴者にいじめられるヒロイン。あの「おしん」をしのぐお涙頂戴ドラマになりそうです。会長を辞任した海老沢さんも顧問に横すべりなどしようとせずに、新たにNHKと契約して受信料スタッフになったりすれば世間の同情を買えたでしょうに。


きょうの一枚:『スウィングガールズ』(DVD)

スウィングガールズ スタンダード・エディション