ぼすのできごと 2005年1月上旬
   2005年 1月上 1月下 2月上 2月下 3月上

   2004年 9月上 9月下 10月上 10月下 11月上 11月下 12月


3日 笑って許して  6日 お正月テレビ  7日 ゲーム研究の恐怖2  11日 みんなのつぼ
12日 助けてホリえもーん2  13日 詐欺師入門  14日 なに待ってるの?
15日 ヘビースモーカーズフォレストだ!2

 

1月15日 ヘビースモーカーズフォレストだ!2

 

「少年漫画誌の喫煙場面、平均8.7カ所 厚労省調査」(朝日)
http://www.asahi.com/national/update/0114/026.html


「少年漫画雑誌には喫煙場面が1冊当たり8.7カ所もあるが、たばこの害についてのメッセージがほとんどないことが、厚生労働省の研究班による調査でわかった」

 この厚生労働省の研究班、838冊の計42万6350ページを国会図書館で調べたそうで、膨大な時間、国会図書館で漫画を読み続けたのでしょう。かなり少年漫画に詳しくなってそうです。いまからでもマンガ研究者に鞍替えすれば、いい研究をしそうです。

 肝心の研究成果ですが、「主任研究者の鳥取大医学部の尾崎米厚助教授(環境予防医学)は「漫画雑誌が未成年者の喫煙に影響を及ぼしている可能性がある」と指摘している」 そうですが、この1冊あたり8.7カ所というのが多いのか少ないのかをはっきりさせないとなんとも言えないと思うのですが。たとえば青年向け漫画誌や少女漫画誌と比較したり、喫煙以外のシーン、たとえば飲み物を飲んでいるシーンやガムをかんでいるシーンと比較したりして、少年誌の喫煙シーンはこんなに多いぞということを言わないと資料分析の意味がないです。

 喫煙の描写は「囲碁、将棋、マージャンなどを扱ったゲーム競技もので最も多かった」 ということで、マージャンは容易に想像できますが、囲碁、将棋は盲点でした。少年漫画誌で囲碁、将棋というと『ヒカルの碁』が思い浮かびますが、そんなに喫煙シーンが多いのでしょうか? 「登場人物の中では男性の脇役が吸うケースが全体の約3分の2強(ページ換算)を占めた」 そうすから、たぶん囲碁の対局場面などの背景描写で煙草を吸っている人が登場するようなものがカウントされているのでしょう。囲碁、将棋といえば成人男性の娯楽で、喫煙のイメージと重なるのも当然といえば当然で、そういう描写が多いのも納得がいきますが、そんな登場の仕方では未成年の喫煙になんの影響もないと思いますが。

 例えば、道路を歩くコマに車が描かれているからといって、車が欲しくなるわけではないわけで、もし車への欲求を高める効果を出したいとすれば車の魅力をメインテーマにした『頭文字D』のような走り屋マンガでないとダメです。だから、たばこを吸いたくさせる効果を出すには、たばこの吸い方でバトルするような喫煙マンガでないと厳しいでしょう。もしそういうマンガがあったとすれば、それはそれでマンガの新しいジャンルとしての可能性を感じますが。

 調べたわけではないので印象でしかないですが、少年誌でたばこが出てきそうなマンガというと、『週刊少年ジャンプ』の『ろくでなしBLUES』や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が思い浮かびます。両者とも主人公がたばこを吸っているシーンがあると思うので、そのあたりを指摘したほうが未成年への喫煙の影響としてわかりやすそうですが、この朝日の記事では紹介されていません。こち亀については警視庁への配慮でしょうか?

 「たばこが体に悪いというメッセージは、喫煙場面のうち0.2%しかなかった」って、もしそんなメッセージがあったらそれこそたばこの広告でしょう。その0.2%がどういうシーンかとても興味があります。そのメッセージ自体がギャグになっていたという落ちもありそうですが。

 マンガ以外でも例えば、教科書にも載っている夏目漱石の小説には登場人物がたばをを吸うシーンが多数出てきますが、そういうのはほっておいていいのでしょうか? どうも、厚生労働省の研究班はマンガ=子どもに影響力という単純なイメージで調査をしてしまったように思えます。それでも、「禁煙車隣の喫煙車デッキ、灰皿撤去 東海道・山陽新幹線」http://www.asahi.com/national/update/0114/025.htmlとつづけて記事を載せてくれる朝日新聞社のようなメディアがあるのでそれなりに禁煙を広める効果はあるのでしょうが。

 たいそう禁煙に熱心な厚生労働省と朝日新聞社ですが、厚生労働省の庁舎内が全面禁煙になったのは昨年の4月1日からだそうです。囲碁や将棋の対局場以上にマンガに描かれるとたばこの煙が充満していそうな新聞社が全面禁煙になったという話は、朝日もそれ以外の社も聞きません。副流煙の充満するなかで書かれたかもしれないこの記事が世の中の禁煙に少しでも貢献することを願ってやみません。 


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1月14日 なに待ってるの? 

 

 最近、グウェン・ステファニーの「What You Waiting For?」が耳について離れないが、そのことではなくて、さきごろ観た映画「ターミナル」の感想。 

 東欧の小国からアメリカのジョン・F・ケネディ空港にやってきた男(トム・ハンクス)は、飛行機に乗っているあいだに母国でクーデターが勃発してアメリカへの入国ビザが停止してしまう。英語をわずかにしか理解できないために空港警備員の説明もほとんど理解できないまま、彼はターミナルに一人とり残される。法の隙間に落ち込んだ彼はひたすら「待つ」ことを選ぶ。はじめ、空港の人々は彼を厄介者あつかいするが、しだいに彼の純朴な性格が共感を呼びはじめる。 

 スピルバーグが監督し、空港で足止めをくらった可哀想な男がそこでの偶然の出会いをとおして心の交流をはかるヒューマンストーリーとなれば、魅力的ながら単純なお涙頂戴ものや強引なハッピーエンドになっていないかといぶかってしまうが、それはまったくの杞憂にすぎない。グランドホテル形式の映画にしては登場人物をしぼって凝縮したドラマに仕上がっており、ストーリーラインもまとまっている。 

 賞賛されつくしたこの俳優をいまさら褒めるのもなんだがトム・ハンクスの名演はさすがの一言。それに加えて単なるきれいどころを越えた深みのある女性を演じたキャサリン・ゼタ=ジョーンズがいい。 

 空港ターミナルというのは、アメリカという国が外部と接触する場所の象徴としてもっとも適している。カナダやメキシコとの国境はだだっ広いうえに、相手国と友好関係にあるためあまりくっきりとした境界線のイメージがないが、世界中のさまざまな国から人間が押し寄せる空港は外部性を持った内部であるがゆえにアメリカそのものの縮図となる。さらに空港は同時多発テロ後のアメリカ人が抱いている危機感や不安感をあらわす要素も含んでいて、この設定だけでこの映画の成功は半分以上約束されている。 

 この映画の主人公ほどではないものの、空港ターミナルは人々が出発を待つための施設である。この「待つ」という行為に人生そのものを重ね合わせることで、この映画の空港ターミナルは人々が人生をおくる舞台である「都市」の役割をもつ。世界中の街角で目にするレストランやコーヒーショップ、書店、ファッションブランド店が立ち並ぶターミナル内のショッピングモールが主要な場所となるのも、その効果を高めている。ターミナルは都市そのものであり、そこでの人々のドラマは都市生活者の悲哀を凝縮している。 

 人生はやがてくる死を待つためだけの時間ではあるが、この映画はその待つことがなんと幸福な行為なのかを再認識させてくれる。


きょうの一冊:『アメリカン拘置所ライフ―不法入国者にされたけど…』 著/森一樹

アメリカン拘置所ライフ―不法入国者にされたけど…

 

 

1月13日 詐欺師入門 

 

「おれおれ、私私etc…振り込め詐欺手口巧妙化で被害高止まり」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050112it13.htm 

 これだけ知れ渡るともはや「俺、俺」と切り出すおれおれ詐欺は皆無でしょう。詐欺のマニュアルがあったとしたら、まずおれおれと言わないことが注意として書かれているはずです。 

 少し前に実態とかけ離れているからと「振り込め詐欺」に改名しましたが、被害は一向に減らないようです。やはり、改名するなら細木数子に相談しとかないと。 

 ところで、この読売の見出しには「おれおれ、私私etc…」とありますが、私私詐欺というのははじめて聞きました。ということは、他のレパートリーもあるんじゃないかと少し考えてみます。 

○とれとれ詐欺 
 まず電話口で「とれとれ、ぴちぴち」と囁く。これに「カニ料理」と返してくれば、キダ・タロー作曲のCMソングを知っている大阪人と分かる。大阪は振り込め詐欺に引っかかりにくいことで有名なので、相手がカモかどうかを瞬時に判別できる合言葉として重宝される。 

○サヨナラサヨナラ詐欺 
 映画業界関係者をよそおい、マッチョなハリウッドスターに会えるから金を振り込めともちかける詐欺。近い手口には、映画のあらすじを最後まで話されるのが嫌なら金を振り込めという「ありがとう詐欺」や、鉄道で閣下が事件を解決する映画の制作費が足りないから振り込めという「いやー映画ってホントにいいもんですね詐欺」などがある。 

○オジサンオジサン詐欺 
 少し前に珍馬名で話題になったオジサンオジサン号が病気だから治療費を振り込めと競馬ファンにせまる詐欺。類例にイヤダイヤダ詐欺、コワイコワイ詐欺、アッパレアッパレ詐欺もある。 

○ハッスルハッスル詐欺 
 電話帳に載っているプロレス団体の番号に片っ端から電話し、試合会場に小川直也を連れて行ってハッスルパフォーマンスをされたくなければ金を振り込めという詐欺。小川を嫌い、ハッスルを「下品なポーズ」という団体に被害が予想される。 

○オーレオーレ詐欺 
 時代劇ファッションの大集団が自宅に押しかけて「オーレ オーレ マツケンサンバ オレ!」と「マツケンサンバ2」の大パフォーマンスをくり広げてご近所迷惑されたくなければ金を振り込めと脅す詐欺。 

○へぇ〜へぇ〜詐欺 
 電話でムダ知識を話し、関心しているうちに空き巣に入ってノートパソコンを盗む詐欺というか盗難。しゃべり方に特徴のあるメガネの男とヘアスタイルに特徴のある中年男の二人組みが犯人で、「こんばんみ」と挨拶する蝶ネクタイが被害者。 

○ニョロニョロ詐欺 
 白いキノコのような生物が大群で押しよせて、さわると感電するぞと脅してくる。ムーミン谷で多発し、夏至の日や雷が鳴る日は特に被害が多い。


きょうの一冊:『詐欺師入門』 著/デヴィッド・W.モラー

詐欺師入門―騙しの天才たち その華麗なる手口

 

 

1月12日 助けてホリえもーん2

 

「「馬券売れる仕組みを」堀江社長が橋本知事を訪問」(産経)
http://www.sankei.co.jp/news/050112/spo074.htm 

 ライブドアと高知競馬が馬券販売の業務提携に合意したそうです。プロ野球の参入争いに敗れてから地方競馬にご執心のホリえもんですが、まず声をかけた高崎競馬では群馬県知事と会談したものの、知事に「提示されたプランはこれならやっていけるという内容ではない、結局プランは出すが責任を取らないと受け止めた」と勢いだけで実がともなっていないところを見破られてしまいました。 

 そもそも、地方競馬の業務が民間委託できるようになったからといってすぐに赤字が解消されるわけではないです。民間の手法によって業務の効率化やサービスの向上がはかられ、それによって経営状況が改善できたとしても、赤字を垂れ流して自治体のお荷物になっている地方競馬の経営が奇跡的なV字回復をとげるとは考えにくいです。 

 インターネットでの馬券販売はたしかに新たな販路として期待できますが、行ったこともない地方の聞いたこともない馬の馬券を買えるといわれても、すでにはるかに魅力のあるJRAの馬券は電話投票に加入すればインターネット投票が可能になっているのにあえて地方競馬を買おうという気にはなりにくいです。 

 山口瞳が紀行文『草競馬流浪記』を書いた20年前にはすでに地方競馬は斜陽の時期をむかえており、首都圏にくらべて人口の少ない立地で、施設は老朽化し、客層は地元の年金暮らしの老人ばかりといった状況が続いてきました。80年代後半のバブル経済で一時的に延命したものの、現在の不況下で次々と廃止されています。その上にいまさらネットバブルに踊らされることもないと思うのですが。 

「高知競馬場を視察した堀江社長は「きれいだし施設も思ったより新しい」と述べ」たそうで、仙台の球場でも同じようなことを言っていた気もしますが、野球で名を売ったホリえもんが関わるとなるとメディアの注目が集まるのも確かです。内実を知らなければライブドアは困っている人を助ける慈善事業をするかのように受け取られかねないところは、うまいPR作戦のようですが、おなじく業務提携を交渉中の笠松競馬には、「ライブドア「赤字補てんしない」笠松競馬、存続一層厳しく」(中日新聞)http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20050112/mng_____sya_____001.shtmlと裏の顔を見せはじめています。 

 ハルウララのブームも馬主が調教師に無断で馬を連れ去るなど関係する人間のトラブルによってすっかり沈静化し、いよいよ存続の危機がせまっている高知競馬ですが、ホリえもんの言うことは話半分で聞いておいたほうがよさそうです。ホリえもんの言っていることで唯一現実味があるのは、「自ら所有する馬も「将来的に高知競馬に移籍させる」と宣言」していることくらいでしょう。なにせ、所有しているホリエモン号、中央でデビューから3連続二桁着順をつづけており、日本でもっとも所属馬のレベルが低い高知競馬でないと勝負になりそうもないですから。このまま連敗をつづけて第二のハルウララに育てれば、交渉に失敗しても懸命に頑張るライブドア社員を勇気づける会社のマスコットにはなりそうです。


きょうの一冊:『草競馬流浪記』 著/山口瞳

 

 

 

1月11日 みんなのつぼ

 

「はり・灸のツボ、日中韓でズレ 92カ所を統一へ」(朝日)
http://www.asahi.com/national/update/0110/011.html 

 マッサージなどで押されるツボの位置が各国で微妙に違ってるので、それを日本・中国・韓国で相談して統一しようとしているそうです。 

 WHOに認定してもらって世界基準になれば、東洋医学に西洋的合理性がそなわって万々歳ということらしいですが、そのまえに、いままでそんなあいまいなことで効果があったのか?という当然の疑問が浮かびます。 

 朝日の記事では「しかし、「これまでの治療はツボを得ていなかったのか」との反発も予想され、関係者は気をもんでいる」と洒落っ気をこめてわりと軽くあつかっていますが、毎日熱心に鍼灸に通ってきたジイさんバアさんのなかには今まで信じてきたものに裏切られたと感じる人もいそうです。 

 しかも、記事に紹介されている例を見るに、どうやら国ごとに違う場合は中国式をベースにすりあわせられるようです。発祥の地だから歴史があるというと納得してしまいそうですが、その中国式というのもあくまで中国共産党政権の中華人民共和国の意見であって、広い中国大陸のなかでも各地方ごとにツボはずれているのでしょう。たぶん台湾や香港でも独自のツボの位置があるはずで、とくに台湾版なんて黙殺されているはずです。そのほかにも東南アジアや世界中に散らばっている華僑たちも含めればツボのパターンはそれこそ無数にあるはずです。それを日本・中国・韓国で相談して統一してしまおうというのですから、きわめて政治権力的な話です。 

 ところでこの話題ですが、ちょうど昨日スカパーの日本映画専門チャンネル・「日本邦画劇場」枠で放送された三谷幸喜監督の映画『みんなのいえ』のストーリーラインに似ているなと感じました。 

 『みんなのいえ』は若夫婦が家を新築するにあたって友人の若手インテリアデザイナー(唐沢寿明)に設計を、妻の父であるベテラン大工(田中邦衛)に施工を依頼するのですが、この二人の意見がことあるごとに対立して、間にはさまれた夫婦(ココリコ・田中直樹と八木亜希子)が右往左往するさまをコメディタッチで描いている作品で、建築中に声の大きい者の意見をその時々で取り入れていくと、和室が二十畳になり、庭にハート型の池ができ、玄関ドアを内開きにするか外開きにするかが二転三転したりと、全体としてとてもいびつな家が出来上がってしまう様が面白おかしく展開していきます。 

 作り手がそれぞれに理に適ったことを言っても、すり合わせるとなかなかうまくいかない「みんなのいえ」の新居のように、世界標準のツボも妥協の産物となってしまわないかと余計な心配をしてしまいます。 

 しかし、実はもっと心配なのは経絡秘孔もかわるんじゃないかとやきもきしているかもしれないケンシロウではないでしょうか。なにせ、かっこよく秘孔を突いても「お前は中国式だともう死んでいる」と中途半端なことしか言えないようでは格好がつきませんから。


きょうの一本:『つぼコミュニケーション[VHS版]

つぼコミュニケーション[VHS版]

 

 

1月7日 ゲーム研究の恐怖2

 

「ヒーローものゲーム、子供の攻撃性増加の可能性」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050107i101.htm 

「悪者が暴れまわるテレビゲームより、かっこいいヒーローが敵を倒すゲームの方が、むしろ子どもの攻撃性を高める可能性があることが、お茶の水女子大の坂元章教授らのグループ研究で明らかになった」

 この調査は「2001年11月から12月にかけて、神奈川県や新潟県などの小学5年生を対象に、よく遊ぶテレビゲームと攻撃性に関するアンケートを実施、1年後に同じ児童に追跡調査を行い、周囲の人への敵対心を表す「敵意」など、攻撃性に関する5つの指標について、その変化を調べた」 もので、「知的だったり、見た目がかっこよかったり、魅力的な特徴を持つ主人公が登場し、攻撃するゲームでよく遊んでいた児童は、1年後に「敵意」が上昇していた。「ひどいことをした悪者に報復する」という、暴力を正当化するゲームでよく遊んでいた児童も同様に「敵意」が高くなっていた。これに対して、攻撃回数が多い、たくさんの人を攻撃するなど、暴力描写の程度が高いゲームで遊んでいる児童の場合は、研究チームの予想とは反対に、むしろ攻撃性が低下していた」 そうです。 

 敵意をどう定義しているのかやゲームの分類をどういう基準で行なっているのかが不明なのですが、この調査で小学生の攻撃性が「低下した」という主人公が知的でなかったり、かっこ悪かったり、魅力がなかったりして、暴力描写の程度の高いゲームっていうのは具体的には何なのかとても気になります。だいぶ考えたのですが、『超兄貴』くらいしか思い浮かびませんでした。 

 そんなゲームは売れないクソゲーか一部マニアだけに話題のバカゲーにちがいないですが、だとすればあまりにゲームがつまらないのでやる気がうせて攻撃性が低下したのではないでしょうか。 

 研究グループの坂元教授は「かっこいい正義の味方だと、プレーヤーが自己同一視しやすいため」と分析しているそうで、記事のトーンもそれにそって健全そうなヒーローものでも危険だよと警鐘を鳴らすものになっていますが、お茶大の坂元センセイといえば、昨年10月21日付けの日記「ゲーム研究の恐怖」で紹介した、9人にメールでアンケートして「テレビゲームは社会的問題解決能力の育成に有効だ」という仮説を提唱した研究者です。相変わらずゲーム研究に励まれているようですが、「小学生はかっこいい正義の味方に自己同一視しやすい」という仮説は児童心理学的にちょっと単純すぎるようにも思えます。そもそも、2001年に実施されて2003年には研究雑誌に報告が出ている調査がどうして2005年にもなった今になって読売の記事になっているのかが謎なのですが。 
  
 研究チームの1人は「この調査で、保護者が気付いていない問題があることが分かった。やみくもにゲームを敵視するのではなく、安全に遊ぶにはどうすればよいのかを考える助けにしてほしい」 と話しているそうですが、この調査をどういうふうに助けにしたらいいのかこちらが助けて欲しいです。 

 ファミコン時代の昔なら、かっこよさげなヒーローがパッケージに出ているゲームでも、実際のゲーム画面にはイラストと似ても似つかぬ出来の悪いドット絵だから注意しろ!というふうにも解釈できるのですが、鳥山明のイラストよりもリアルにしかも3Dで動く『ドラクエ8』をプレイできる現在のゲームキッズにはあまり効果がないような。


きょうの一冊:『ノーライフキング』 著/いとうせいこう

 

 

 

1月6日 お正月テレビ

 

 TBS系列 新春ドラマ特別企画『夏目家の食卓』をみる。夏目漱石といえば鬱屈した明治の文豪としてその苦悩に焦点があてられがちだが、このドラマは病と格闘する漱石をコミカルにえがいて面白かった。 ドラマにしては頻繁にCMが入るが、短いシーンにドラマが凝縮されてテンポをつくっていて小気味いい。久世光彦の演出は見事。 

 ところでこのドラマ、主人公の夏目漱石を本木雅弘、妻の鏡子を宮沢りえが演じている。和装の二人が縁側で並んでいる画はサントリーの緑茶飲料・伊右衛門のコマーシャルそのまま。やはりというか、このドラマの提供にはサントリーもはいっていて、伊右衛門のCMも流れた。伊右衛門CM明けですぐにドラマがはじまれば番組かCMかわからないくらいだが、さすがにそれはテレビ局も気にしたのか、間におなじサントリーの缶コーヒーブランドBOSSのCMをはさんでいた。 他にも樹木希林はフジカラーの、岸部一徳は富士通FMVのともにインパクトあるCMキャラクターを連想させる人物設定で、視聴者に一瞬にしてキャラクターを理解させている。CMのパロディというわけでもないが、こういう演出は心憎い。

 夏目家に千客万来で役者が画面にあふれる中盤は引き込まれた。勝村政信が裸踊りをするシーンではゴールデンタイムの地上波なのにぼかしが入るが、下品とまではいかず逆に勢いがあって良い。豊原功補の芥川龍之介はあまり似ていなかったが。 終盤は漱石の人生クライマックスの修善寺の大患を描いておらずもの足りなさが残ったが、本木雅弘と宮沢りえの伊右衛門コンビがいい味を出していた。 タイトルにあるとおり食がテーマのひとつながら、消えモノがそれほど美味しそうに見えなかったのと、本木雅弘の食べかたがあまり上手でないのが引っかかったが、全体としては正月のテレビ番組でもっとも光るものがあった。 

 『夏目家の食卓』をみたあと、しばらくしてテレビをまたつけたら、画面にいとうせいこうと安めぐみが映っている。スカパー・スペースシャワーTVの番組『熱血スペシャ中学』の特番でもやっているのかと思ってしばらく見ていたが、やたらセットが豪華なのと横にいるおばさんがNHKアーカイブスの加賀美キャスターに似ているので、NHKじゃないかと気付いた。 生放送中に出されるお題に視聴者が携帯メールで返答し、良作を取り上げる『ケータイ大喜利』という番組らしい。 取りあげられたネタが笑点にも劣るものばかりでいとうせいこうの困り果てた姿と、被災地からのお便りを紹介するかのような落ち着いた調子でネタを読む加賀美キャスターと、視聴者からのメールをチェックする別ブースにいる板尾創路のなげっぷりとがあいまって、生放送ならではのものすごい雰囲気をつくっていた。

  NHKはBSや教育ではとち狂ったのかと思うような変な企画をときどきやるのだが、総合でこういうのがでてくるとは。不祥事の影響が番組制作にも及んでいるのかと勘ぐってしまう。紅白のようなマンネリ化した演出ばかりでは困るが、ここまで突っ走られても無理しているのが目に見えている。ゲストがなぎら健壱なのは「悲惨な戦い」を事前に予測してのことなら、さすがNHKというところだが。


きょうの一冊:『夏目家の糠みそ』 著/半藤末利子

夏目家の糠みそ

 

 

1月3日 笑って許して

 

「「よく笑っている」62% おやじギャグには76%寛容」(朝日)

 朝日新聞社が実施した「日本人と笑い」の世論調査の結果です。 

 「「日ごろ、不快に感じる笑い」(複数回答)については、「人の失敗や欠点を笑う」(52%)、「お年寄りや弱者を笑う」(40%)など差別的な笑いが上位に挙がった」 

 どうやら朝日は正月番組に出たおしている波田陽区のような他人の悪口で売っている芸人を斬りたいようです。流行語大賞ノミネートで一気に知名度が上ったところに、着物スタイルだからお正月イメージにぴったりの縁起物ということでもてはやされるのか、テレビをつけるとだいたいどこかにいてる波田陽区。出てきたときは長井秀和の二番煎じと見ていたら、あっという間に長井秀和を抜き去ってしまいました。 


 ちょうどこれを書いている今も「芸能人格付けチェック」に出ています。それも格付けされるほうではなく、本物の波田陽区のネタはどちらかという格付け基準として。波田陽区を理解できるかどうかが、高いワインや真の芸術と同列なのはちょっと理解しがたいですが、それも勢いなのでしょうか。細木数子でさえ、大晦日特番でようやく和田アキ子斬りを達成できたのに、正月気分も息切れの1月3日に小林幸子を斬れる波田陽区、乗りにのっています。 


 ところで、関西人の僕は波田陽区や長井秀和のネタで声を出して笑ったことが一度もないのですが、関東人はああいう芸風で笑えるのでしょうか?面白いとは思うのですが、どうも笑いにつがなる面白さではないように感じます。朝日のアンケートで「「大阪の笑いが好き」が64%で東京の26%を圧倒」しているように、東京の笑いだから大阪の僕にはレベルが低いのでしょうか? でも、爆笑問題やおぎやはぎやアンタッチャブルは好きですし、笑えます。一人芸だからでしょうか? 昨今のピン芸人ブームで頭角をあらわした陣内智則やケンドーコバヤシは良いです。毒舌が売りだからでしょうか? たしかにそれはあります。綾小路きみまろや毒蝮三太夫は面白いと思いませんし、ちょっとした嫌悪感すら抱きます。それでは、朝日のアンケートで日本人が嫌う笑いのパターンとおなじじゃないかと思い至りました。結局、僕は笑いに対しては標準的な日本人ということなのでしょうか。 


 そんな僕でも、「紅組が勝とうが白組が勝とうが興味ありませんから!残念!その時、格闘技の結果に夢中。斬り!」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050101-00000025-nks-entと紅白歌合戦でやった勇気と芸人魂は買いたいです。ふところに飛び込んでもひるまずに強いものに噛み付く姿勢は好感が持てます。まあ、いまのNHKはだいぶ弱ってはいますが。 

 再び朝日のアンケート、 

 「だじゃれに代表される「おやじギャグ」については、76%が「別に構わない」と寛容的だった」 

 これは寛容というよりは冷淡なのでは。あとの24%は「許せない」や「ありえない」や「堪えられない」だとすれば、かなりの扱いです。うがった見方をすれば、「人の欠点を笑う」ことを日本人は嫌っているようですから、おやじのギャグセンスのなさを露呈するおやじギャグには笑えないのかもしれませんが。


きょうの一冊:『笑い』 著/アンリ・ベルクソン    岩波文庫 青 645-3

きょうの一曲:「笑って許して」 『ベスト・ヒット』 和田アキ子

ベスト・ヒット