ぼすのできごと a day on the boss      2005年3月上旬

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はじめました。最新の「ぼすのできごと」はこちらでどうぞ

競馬の予想とPOGもやってます。

   2005年 1月上 1月下 2月上 2月下 3月上

   2004年 9月上 9月下 10月上 10月下 11月上 11月下 12月

3日 名もなき衛星  4日 ポケモン月へ行く  6日 ギネスに挑戦  8日 見つけにくいもの
9日 馬は馬主に似る
  10日 アンティーク・ヒロポン  11日 引退  12日 広告漫画  13日 宇宙旅行
14日 トイレ哲学  15日 新すぃピーターパン

 

3月15日 新すぃピーターパン

 

「続「ピーターパン」誕生へ 公募で作者決定」(朝日)

「世界の子どもたちを魅了する童話劇「ピーターパン」の続編が近く、生まれることになった。書き手に選ばれたのは英国の児童文学作家ジェラルディン・マコリアンさん(53)。詳細は公表されていないが、英BBCなどによると、新作は航海に乗り出す少年を主人公にしたもので、「キャプテン・パン(パン船長)」と名付けられる見通しだ。」

 ピーターパンの続編といば、映画ではS.スピルバーグ監督、ロビン・ウィリアムス主演の『フック』、ディズニーのアニメーション『ピーターパン2』があります。また、作者のジェームズ・バリを主人公に『ピーターパン』を書くきっかけとなる出来事を描いたジョニー・デップ主演の『ネバーランド』も公開されたばかりです。昨年2004年は『ピーターパン』初演100周年にあたり、関連の映画や舞台の企画が世界中で展開されました。マイケル・ジャクソンが「ネバーランド」から追い出されたのもその一環だったのかもしれません。

 そもそも原作者のジェームズ・バリもピーターパンが登場する話を複数書いており、ディズニーアニメや演劇で有名なウェンディーと弟たちがネバーランドへ行くストーリーは小説では『ピーターパンとウェンディ』という題名です。バリは1902年に発表した私小説『小さな白い鳥』でピーターパンを登場させ、1906年には『ケンジントン公園のピーターパン』という題名でこのなかからピーターパンの登場する挿話だけを取り出して本にしました。それとは別にバリは1904年に演劇用の脚本としてピーターパンを主人公にした物語を書いており、その脚本をもとに小説化したのが1911年の『ピーターパンとウェンディ』です。こうした事情は映画『ネバーランド』でも扱われているはずです(未見なので確かなことはいえませんが)。

 『ケンジントン公園のピーターパン』は、新潮文庫版の『ピーターパン』で読めまし、青空文庫でも、『ケンジントン公園のピーターパン』と『ピーターパンとウェンディ』の邦訳が掲載されています。原作には「ピーターパンが成長した子供を殺している」という記述があることが『トリビアの泉』で紹介されましたが、そんなディズニーが毒抜きする前の本来の味わいを堪能できます。

 ピーターパンといえば、個人的には世界名作劇場の『ピーターパンの冒険』がもっとも印象に残っています。
1989年放映ですから僕は小学5年生で、すでにディズニーのピーターパン像が焼きついているところにタラコ唇のピーターパンは違和感があったのですが、後半の型破りなオリジナルストーリーには引込まれました。翌年にはNHKで『ふしぎの海のナディア』がはじまるわけで、これらのアニメが僕をダークサイドへと誘惑したのでした。

 『ふしぎの海のナディア』もいちおうはジュール・ベルヌの『海底二万マイル』が原作ですし、ミヒャエル・エンデの『果てしない物語』が原作の映画『ネバーエンディングストーリー』も1984年公開でテレビ放映はこれらと同時期のはずです。こうした古典的な幻想小説や冒険小説をもとにした映像作品に接したことが、後年テーブルトークRPGの世界に逝ってしまったことの元凶かもしれません。

 そういえば『ネバーエンディングストーリー』も続編がつくられました。一作目ではハゲていた主人公の父親が、出番の増えた二作目では若返ってかっこいい俳優に摩り替わっていたのが印象的です。原作者のミヒャエル・エンデは最後にファルコンに乗った主人公がいじめっ子に逆襲する第一作に激怒し、二作目のほうはそれよりも評価しているようですが、娯楽映画としては一作目のほうが格段に出来がいいです。そのあとの三作目も見たはずなのですが、残念ながらほとんど記憶に残っていませんから、シリーズを追うごとにスケールダウンする逆『ロードオブザリング』だったのでしょう。


きょうの一枚:『ピーターパンの冒険(1)』

ピーターパンの冒険(1)

 

 

3月14日 トイレ哲学

 

「トイレットペーパーの哲学書、東京の出版社が「出版」」(朝日) 
http://www.asahi.com/national/update/0311/TKY200503110138.html 

「トイレットペーパーで読書できます――。東京都千代田区の出版社がトイレットペーパーの本を売り出し中だ。「トイレットブック」といい、アーティストの荒川修作さんと、妻で詩人のマドリン・ギンズさんによる哲学書「建築する身体」の要約が繰り返し印刷されている。」 

 荒川修作といえば、斜面でできた土地に「極限で似るものの家」や「もののあわれ変容器」などの一風変わった建築物が建ち並ぶテーマパーク「養老天命反転地」を設計した人です。トイレットペーパーに印刷する奇抜なアイデアもこの人の多岐にわたる活動からするとそんなに突飛なことには思えないから不思議です。 

 春秋社といえば、人文書の老舗出版社です。とくに精神世界関係に良書が多く、ややもすれば安易なオカルティズムに堕してしまうこの分野を学術的な専門性と格調の高さで支えています。この出版社がトイレットペーパーに印刷した本を売り出すとは意外ですが、けっして色モノ企画には見えないところがさすがです。 

 このトイレブックに印刷されているのは、『建築する身体』のなかから要約した3000字だけということで、本と言うには少しもの足りない気もしますが、アートと考えればいいのでしょう。それにトイレットペーパーの最初から最後まで文章が続いているとしたら、読むまでは本来の用途に使えないので時間がかかって仕方がないですし。読んだ分しか使えないとなると紙の節約にはなりますが。 

 そういえば僕はトイレで本を読む習慣がないのですが、トイレで読書する人というのは、トイレでの本来の行為と同時進行で本も読んでいるのでしょうか? トイレを使用するだけなら数分ですから、その間だけなら一冊読み終えるまでにかなりの期間がかかると思うのですが。トイレに本を置いて1か月ほどで読了するというような人もいるようで、その場合は用を足してからしばらく読書に専念しているはずです。それならば、わざわざトイレに篭らずにいったん出てから別の場所で読書したほうがいいように思います。読書に集中するあまりトイレに行くのを我慢することはよくありますが、トイレを出るのを我慢するというのは気持ちが理解できません。トイレにずっと置いていた本を書棚に戻すのは抵抗がありますし。そう考えると、ブックオフで買った本の前の持ち主がトイレ読書派の可能性もあるわけで、想像するとなんとなく嫌な気になってしまいます。 

 それはそうと、このようなトイレットペーパーに絵柄や文字をプリントしたものは広告や販売促進グッズとして活用されており、また、商品としてもアニメのキャラクターをプリントしたものが市販されているようです。そういえば僕も一万円札をプリントしたものをみたことがあります。こうした技術が一般化してコストが下がれば、駅の中のトイレなんかに広告をプリントしたものが置かれたりするかもしれません。駅のトイレに駆け込んで紙がなくて絶望感に浸った経験が幾度もあるので、これは是非実現して欲しいものです。 

 静岡のツユキ紙工という会社では、オリジナルの文章やイラストをプリントしたトイレットペーパーを製作するサービスを行なっており、個人でも注文できるようです。価格は注文数によって変わるようで、もっとも少ない5000ロールでは1ロールあたり73円からということです。最低で36万5千円するわけで、個人ではなかなか大変ですが、三連単で1000万馬券を獲ったときには僕も記念に的中馬券をプリントしたロールを頼んでみたいです。5000ロールあれば一生分くらいは持ちそうで、トイレに入るたびに1000万馬券の余韻に浸れるなら安いものかもしれません。生涯のうちに1000万馬券を獲る機会があるかどうかは置いておくとして。


きょうの一冊:『建築する身体』 著/荒川修作、マドリン・ギンズ

建築する身体―人間を超えていくために

 

 

3月13日 宇宙旅行

 

「元ライブドア取締役、宇宙旅行へ…邦人初、代金20億」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050313i301.htm

「宇宙旅行を手がける米スペースアドベンチャーズ社は12日、元ライブドア取締役の榎本大輔さん(33)が今年10月、ロシアのソユーズ宇宙船で国際宇宙ステーションに行き、1週間滞在する見通しであることを明らかにした。」

 1週間で20億は高いです。20億あればエアグルーヴの仔どもを5頭ほど買えます。日本屈指の名血が5頭いればダービー優勝もけっこうな可能性がありますから、ダービーオーナーか宇宙旅行かの選択なら僕はダービーオーナーを取ります。すでにダービーオーナーであるフサイチの関口オーナーなんて宇宙旅行のような派手なパフォーマンスが好きそうですが、応募しなかったのでしょうか。まあ、あの人は外見から想像するに宇宙へ行けるほど健全な肉体ではなさそうですが。

 ところでこの榎本大輔というのはどんな人かと個人blogをのぞいてみて気になったことがひとつ。blogでニッポン放送のことを「日本放送」と表記しているのですが、ライブドアとフジテレビが綱引きをしているニッポン放送はカタカナでニッポンが正式な社名なのに、なぜなのでしょう? 「日本放送」だと、字面で日本テレビや日本放送協会(NHK)と誤読してしまいそうになります。宇宙に行くことと元ライブドア以外にはこの人のことを何も知りませんが、おそらくは自身も少しは関与しているであろう買収先の企業名を誤記しているのは、企業家としてどうかと思います。ホリエモンが公の場でネクタイを締めないことを社会人として常識がないととやかく言う人がいますが、僕にはこういうことのほうが気になります。

 榎本大輔という人にそれ以上の興味はないですが、やはり宇宙旅行はうらやましいものです。今回の旅行権はスペースアドベンチャーズ社が今後打ち上げられるロシアのソユーズ宇宙船の4席分の権利のうちのひとつです。これまでに民間人で宇宙旅行を経験した2人(アメリカ人の富豪デニス・チトー、南アフリカの実業家マイク・シャトルワース)も同社を通じての参加でした。ロシアは宇宙開発の資金がないから宇宙に行きたい世界の金持ちに旅行を売り出しているわけですが、アメリカはいい顔をしていません。それでも民間人が宇宙にいけるのは、アメリカのスペースシャトルが2003年のコロンビア号事故以来、打ち上げを延期されており、ISS(国際宇宙ステーション)を維持するのにロシアの存在が不可欠なためです。それでもアメリカは極力民間人を宇宙に行かせたくないので有形無形の妨害をしています。そんな宇宙ステーションへ行っても全員には心から歓迎されないなかで大金をはたいて行くのはまさに物好き以外の何者でもないですが、そんなことを気にしていたら金持ちにはなれないのでしょう。

 読売の記事では3人目の旅行者ということですが、もうひとり先約があるはず(アメリカ人の技術者グレッグ・オルセン)なので、榎本大輔という人は4人目になるはずです。それでも世界で4人目の民間宇宙旅行者、宇宙へ行った日本人としては6人目、すべての宇宙へ行った人類でも450人ほどですから(参考:JAXA「Q.これまでに宇宙に行った人は何人いるのですか」)貴重な体験には違いありません。

「榎本さんは「宇宙ステーションでは好きなプラモデルを作るなどして、個人旅行者として楽しみたい」と抱負を述べている」 ということですが、やはり持っていくのはガンプラなのでしょうか。ガンダムやシャア専用○○などのありきたりなチョイスをせずに、アニメの設定では地上用の機体であるグフをあえて宇宙で作ったりしてほしいです。細かいパーツでもなくすとデブリになってしまう可能性があるので、組み立てには細心の注意が必要でしょうが、空中に浮くので着色するのは楽そうです。


きょうの一冊:『図解雑学 宇宙旅行

図解雑学 宇宙旅行

 

 

3月12日 広告漫画

 

「漫画の主人公とミズノが契約 野球用具を独占提供」(朝日)
http://www.asahi.com/culture/update/0311/003.html

「野球漫画「MAJOR(メジャー)」の主人公、茂野吾郎投手が使うグラブやバットはすべてミズノ製――。架空のスポーツ選手に対する独占的な用具提供契約を、スポーツ用品最大手のミズノが出版元の小学館と結んだ。」

 漫画の主人公を商品に描いたキャラクター商品は数多くありますが、逆に漫画のなかに企業の製品を折り込むというのは新鮮です。漫画が広告媒体として認知されつつあるのでしょうか。たしかに、漫画の主人公はスポンサーに断りなく事件・事故を起こしたり、闇社会と関わりを持ったり、喫煙をしたりしませんから、企業も安心してイメージキャラクターにできます。その上、本業の方でも現実にはありえる使う用具を変えたから成績が下がったなんてこともありえないわけです。障害があるとすれば、読者がバットやグローブに描かれるであろうミズノのロゴに違和感をもたないかということでしょう。あからさまな広告に見えてしまっては漫画への感情移入に水を差しますから、ある意味漫画家の腕が試される企画です。 

 企業と提携したわけではありませんが、特定の商品が漫画で描かれることはこれまでもありました。有名なところでは『キン肉マン』での吉野家の牛丼、『ろくでなしBLUES』で主人公が吸っているラッキーストライク、『ドラえもん』のどらやきや『オバケのQ太郎』で小池さんが食べるラーメン、『まじかるタルルートくん』のたこやきなんかも広い意味では商品でしょう。これらは漫画のキャラクターを特徴付ける小道具として登場しますから、そのキャラクターに魅力があればあるほど商品のイメージも高まります。企業にすれば頼んでもないのに勝手に宣伝してくれているわけで、キャラクターの人気に便乗してイメージアップするのであれば願ったり叶ったりです。ただしその反面、企業の側に主導権がないため、商品に勝手なイメージを植えつけられてしまう可能性もありますが。

 その逆に、商品を宣伝することが目的の漫画も存在します。もっとも知名度が高いのは『日ペンの美子ちゃん』でしょうか。『コロコロコミック』等に載っているおもちゃで遊ぶ子どもが主人公の漫画なんかもこれに近いです。商品の魅力を雑誌の読者という細分化された特定の層に漫画でわかりやすく(漫画だと何もかもが分かりやすくなると考えるのは間違いですが)伝えることができます。しかし、これらは商品の宣伝が主目的であるために漫画単独での人気を獲得しにくい面があります。

 今回のようなもともとは直接関係のない漫画に、商品のほうがキャラクターに擦り寄ったともとれる登場の仕方でキャラクターと商品の相乗効果が発揮できるのかはなんともいえません。世界最高レベルの漫画リテラシーを誇る日本の漫画読者にこうした手法がどこまで通用するか、興味を持って見守りたいです。


きょうの一冊:『あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度』 著/岡崎いずみ

あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度

 

 

3月11日 引退

 

「「悔いなし」岡部騎手、晴れやかに笑顔で引退会見」(サンスポ) 
http://www.sanspo.com/keiba/top/ke200503/ke2005031101.html 

「岡部幸雄騎手(56)が10日、東京・港区のJRA六本木事務所で引退会見を開いた。今年2月の競馬で「自分のイメージしていた騎乗ができなかった」のが理由で、38年の騎手生活には「悔いはありません」と晴れやかな表情で語った。」 

 岡部騎手が岡部元騎手になる日がついにやってきました。騎手という職業は、他のプロスポーツ選手にくらべれば現役でいられる期間が長いものの、身体が資本のアスリートであることにはかわりなく、体力の衰えには勝てません。多くは引退後に調教師や調教助手へと転身し、裏方として競馬に携わるのですが、岡部騎手は特別でした。一次試験が免除されるため実質的な調教師の資格取得条件である1000勝を軽く越えているのにその進路を歩むことなく現役騎手にこだわり、同期のライバルがすべて引退しているにもかかわらず第一線で活躍を続けました。 

 僕が競馬をはじめた1997年には、当時すでに49歳の高齢にもかかわらず年間124勝を挙げ、武豊騎手に次ぐ騎手リーディング二位でした。武豊騎手はいわば別格ですから、岡部騎手は五十路を間近にして中央競馬の騎手の最高峰に居座っていました。実際、関東の騎手界には岡部ラインという暗黙の序列が存在し、もっとも強い馬に岡部騎手が乗り、岡部騎手が乗った馬には無理に競りかけないことになっていました。それについて、マスコミやファンは骨のある騎手がいなくなったということはあっても、岡部騎手そのものを批判することはありませんでした。岡部騎手が神聖で侵すべからざる存在であるからというよりも、岡部騎手こそが日本の競馬、とくに古き良き日本競馬を体現する存在だからです。我々の愛する競馬には岡部騎手が欠かせず、岡部騎手のいない競馬なんて想像できなかったのです。 

 そんなわけで、少なくない数の競馬ファンが岡部は一生騎手をやっていると信じていたし、願っていました。二年ほど前に岡部騎手は一年以上の長期休養を余儀なくされましたが、そのときも多くのファンはそのうち岡部騎手が競馬場に戻ってくることを疑いませんでした。復帰したその日にダンスインザムードで勝利したときには、めったに感情を表に出さない岡部騎手がインタビューで見せた涙に涙し、カムバックを祝いましたが、その次の週からは何事もなかったかのように日常の競馬に岡部騎手が存在していました。 

 2月最終週の騎乗をキャンセルしたときにも、しばらく休むとしても当然また戻ってくるものと思っていました。今年は3勝しかしていないといっても、たまたま馬の巡り合わせが悪かったり、一時的な不調なのだろうとみなしていました。休む直前の週の成績も、勝ち星こそなくとも馬の人気に見合った着順でしたし。ですから、突然の引退発表には驚きました。しかし、心のどこかではこの日が来ることを受け入れいていたところもあり、むしろ今年いっぱいで引退とかダービーを区切りに引退などというよりも、ひとときの休みがそのまま鞭を置くことにつながるこのような形こそが岡部騎手にふさわしいようにも思えます。 

 9日に東スポが第一報をスクープし、翌10日の引退会見はグリーンチャンネルで緊急放送されました。あわせて引退セレモニーの概要も発表されていることから、JRAには休養した直後に引退の意思を伝えていたようで、会見での岡部騎手は心の準備を十分にして晴れやかな顔でした。多くを語らない人柄ですから、質疑はどことなくちぐはぐでしたが、それも含めて岡部騎手らしいものです。NHKからは有働アナウンサーが出席しており、他の競馬マスコミ中心の質疑の流れではやや浮いた素人くさい質問をしていましたが、当日のNHK『ニュース10』では岡部騎手のこれまでの歩みの紹介とあわせてうまく編集されており、結果的にはこれが効果的でした。しかも、一般ニュース枠でCBSのダン・ラザー引退と香港の董建華行政長官辞任の間に取りあげており、地味でも味のある題材をこういう形で扱えるNHKは流石です。 

 「JRA関係者によると、新人を育成する重要なポストへの就任を打診したが、「1年ぐらいゆっくりしたい」と固辞した」とのことで、引退後はしばらくゆっくりするという岡部騎手ですが、その合間にはマスコミで岡部騎手の視点で過去・現在のレースを語る番組や記事なんかにも顔を出して欲しいものです。武豊騎手も来月からCSで自らの騎乗を振り返る番組をはじめますし、常人の目線では分からない競馬の魅力が伝えれれることは停滞する競馬産業にも低迷する僕の馬券術にも有益なことでしょう。


きょうの一枚:『20世紀の名勝負100 Vol.3 記録編

20世紀の名勝負100 Vol.3 記録編

 

 

3月10日 アンティーク・ヒロポン

 

「「ヒロポン」を店に陳列 雑貨店経営者を書類送検」(産経) 
http://www.sankei.co.jp/news/050310/sha075.htm 

「横浜水上署は10日、戦中から戦後にかけて市販された覚せい剤「ヒロポン」を店に陳列したとして覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで、川崎市幸区の雑貨店経営の男(56)を書類送検した。調べでは、男は1月28日、横浜市中区にある自分の店の棚にヒロポンと明示した瓶ケース(47錠入り)を陳列した疑い。1946年製とみられ、県警の鑑定で覚せい剤成分が確認された。男は50年代の雑貨などを販売しているが、ヒロポンについて「約10年前、東京都内の骨董(こっとう)市で買った。客寄せのため置いていた」と話しているという。同署によると、ヒロポンは戦後の混乱期に流行し、社会問題化した。(共同)」 

 東京大空襲から60年の日にわざわざ書類送検したのは、その方が話題になるからでしょうか。「ヒロポン」は大日本製薬の商標で、成分はメタンフェタミン。戦中には「疲労の防止」、「頭脳の明晰化」の効能を広告して堂々と販売されており、薬局に行けば誰でも購入することができました。戦後は軍事用の備蓄が大量に市中へ放出され、中毒患者が続出し社会問題となります。1948(昭和23)年には薬事法の劇薬に指定されて販売が制限され、1951(昭和26)年の覚せい剤取締法によって取扱いが厳しく規制されました。 

 現在販売されている「ヒロポン」には使用期限や有効期限がないようですが、これは期限が3年をこえるために表示しなくてもよいということで、さすがに60年ものとなると保存状態がよほどよくない限り変質している可能性が高いでしょう。 

 「ヒロポン」といえばアーティスト村上隆の作品に同名(ただし、アルファベットで「HIROPON」)のものがあります。巨乳のアニメ系美少女が乳から出た縄跳びしている立像で、2002年にはニューヨークのクリスティーズ・オークションで約4,890万円にて落札されました。オタク文化が世界の現代美術界で認められつつあるというあやしげな主張の根拠としてよく引き合いに出されます。雑貨店の人も客寄せならこっちのヒロポンを展示しておけば、アキバ系の集客を見込めたかもしれません。


きょうの一冊:『薬局通』 著/唐沢俊一

薬局通―目からウロコが落ちる薬の本

 

 

3月9日 馬は馬主に似る

 

「競走馬ホリエモンも「8」が好き?」(朝日) 
http://www.asahi.com/sports/update/0308/129.html 

「ホリエモンはやはり「8」に縁が深かった。ライブドア・堀江貴文社長が所有する競走馬ホリエモンが8日、東京・大井競馬の第8レースに出走し、8着になった。 オーナーである堀江社長はニッポン放送株をめぐり、フジテレビと攻防戦を演じている。関東地区でフジテレビのチャンネルは「8」だ。 デビュー以来、すべて2けた着順だったホリエモンが、初めての地方競馬遠征で順位を上げた。手綱を取った高野和馬騎手は「走り方がよくなった」。念願の初勝利に少しずつ近づいている。 (03/08 22:09) 」 

 馬のホリエモンがまた負けました。馬主はフジテレビとのニッポン放送株獲得競争で形勢不利となっていて、仕事がうまく行ってないときは競馬でもいいことがないものです。 

 ホリエモンはデビューから10着、14着、10着、10着ときて今回は8着ですから、字づら上は少しマシになったように見えますが、地方競馬への遠征ですからこれまで戦ってきた中央では勝負にならない馬たちの吹き溜まりのようなところでのことです。しかも、大井競馬は地方でもJRAへの対抗意識が強く、中央との交流戦では地元馬の方が強くなるようなクラス設定でレースを組んでいるため、中央馬は下のほうの着順になりがちです。このレースも4着までを地元馬が独占し、6、13、5番人気で決まった三連単は225万馬券の大波乱でした。 

 朝日は「念願の初勝利に少しずつ近づいている」としていますが、この成績では中央ではとても通用せず、日本最弱の高知競馬の最底辺のクラスでハルウララたちと競ってなんとか1勝できるかというところでしょう。この世代の最強馬ディープインパクトとおなじサラブレッドとはとても思えません。堀江社長は大企業を買収するほどの資金があるのに、よくもまあこんな弱い馬を選んだものです。 

 朝日の記事では8チャンネルと8着をかけるにとどまっていますが、フジサンケイグループのサンケイスポーツは、「【競馬】ホリエモン失速、後半伸びきれず8着−大井競馬」とモロに馬主とダブらせた見出しです。たしかに、人気先行で、8に執着し、後半伸び切れないのは馬主に似ていなくもないです。「高野和馬騎手は「リラックスしてレース経験を積めば強い馬になると思う」と振り返る」(サンスポ)というのも馬主への世間の評価とダブります。どうせなら、来週末の皐月賞トライアル・フジテレビ賞スプリングSにでも格上挑戦すればさらに注目されるはずです。未勝利馬でもフルゲートに満たなければ出走することは可能ですから、フジテレビの番組『スーパー競馬』に持ち馬を出演させ、アナウンサーにホリエモンと実況させることで少しは憂さ晴らしができます。馬主ですからレース後の馬や騎手が行き交う検量室前へ立ち入ることもでき、あわよくばフジテレビのカメラに姿を撮られて『平成教育予備校』降板以来の出演がかなうかもしれません。


きょうの一冊:『儲け方入門〜100億稼ぐ思考法』 著/堀江貴文

儲け方入門〜100億稼ぐ思考法

 

 

3月8日 見つけにくいもの

 

「H2A補助ロケットの捜索中止…現場海域のマグロ漁で」(読売) 
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050307it11.htm 

「宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7日、2月26日に種子島宇宙センターから打ち上げたH2Aロケット7号機から分離され、鹿児島県南東沖の海に落下したロケットブースターの捜索を中止した。今の時期は、マグロ漁が行われているため捜索が難しいことを、考慮に入れずに計画を立てていたためだ。」 

 大多数の日本人はロケットよりマグロが大事ですから、いたしかたない判断です。補助ロケットの回収は打ち上げそのものとは別ですが、大枠ではひとくくりの計画ですから、そんな実際にやってみようとしてはじめて困難に気づいたというような浅はかさで、よくロケットが無事に上ったものです。 

 というか、落ちてから探すくらいなので、どこに落下するか分からない補助ロケットが運悪くマグロ漁船を直撃する可能性もあったわけで、それも考慮には入ってなかったのでしょうか。実際にはものすごく低い確率かもしれませんが、ゼロではないのでちょっとは危険を認識しておいた方がよかったように思います。隕石が民家を直撃というニュースはちょくちょく聞きますし、老夫婦の畑にロボット兵が落下しなければラピュタの存在は誰も信じなかったのです。 

 JAXAは「詰めが甘かった。あきらめたわけではない」(広報部)とあきらめの悪いことを言っていますが、「音響ビーコンの寿命は3か月。「よこすか」も航海スケジュールが詰まっていて使えないため、捜索の再開は難しい」 そうです。ドラゴンボールのドラゴンレーダーみたいに世界中のどこに落ちても場所を割り出せる装置なんていうのは現実には難しいのでしょう。 

「打ち上げ成功で、政府内に「失敗原因を究明するわけでもないのに、数千万円をかけてまで探す必要があるのか」 という雰囲気が強まったことも、捜索断念の流れを後押しした。」ということで、政府のお役人は宝探しの魅力にはあまり引かれないようです。というか、探すだけで数千万円かかるなら、補助ロケットに一千万円相当の金塊とか宝石とかを付けておいて、最初に発見した人にあげることにすれば、マグロ漁船の人たちが漁の合間にでも探し出してくれるのではないでしょうか。そうなれば、大漁旗を掲げて帰ってきた漁船に、マグロのかわりにロケットが積まれている光景が見られるかもしれません。


きょうの一曲:『夢の中へ』 井上陽水

夢の中へ ― ベストアルバム

 

 

3月6日 ギネスに挑戦

 

「巨大寒天、ギネスに届かず 大阪の高校生ら挑戦」(産経) 
http://www.sankei.co.jp/news/050306/sha068.htm 

 こういうのはギネス記録を十分達成できる見込みがあって挑戦するものと思っていましたが、向こう見ずに勢いで突っ走るところはさすが大阪です。 

 土曜日の朝から丸一日徹夜で寒天づくりに励んだそうで、さぞ大変だったことと思われます。その上、原料のテングサはネット通販で50gが300円で販売されていますから、今回用意された120kgだと単純計算では72万円にもなります。大量購入でいくらか安く仕入れているとしても数十万円はします。寒天にここまでの手間と資金をつぎ込んだ情熱はどこから来たのでしょうか? 

 翌月曜にようやく型をはずして寒天は完成するということで、昼食は先生も生徒も寒天になるわけです。育ちざかりの高校生たちが寄ってたかれば一日で完食でしょうが、寒天は0kcalなのでいくら食べてもカロリーゼロ、多い日も安心です。 

 この巨大寒天づくりに挑んだ府立佐野工業高校ですが、公式サイトを見ていると、トップページに「佐野工高に質問があるときのみMailしてください」と一風変わった記述があります。わざわざそんなことを書くのは、質問もないのにMailする人が多いからでしょうか。謎です。また、Englishをクリックすると「校長挨拶」は「Message from the headmaster」、「全日制」は「Day course」と変わるのに「事務室」が「事務室」なのはどういうわけでしょうか。どちらの「事務室」をクリックしても日本語で「もうしばらくお待ちください」なのもどうかと思います。さらに校長挨拶には「開校以来、先週地域の繊維産業を支える技術者の育成から、最先端の工業教育を実践してきました。」とあって、なかなかユニークな土地柄です。先週地域。


きょうの一冊:『ギネス世界記録 (2005)

ギネス世界記録 (2005)

 

 

 

 

きょうのもう一冊:『大好き!寒天のおかず

大好き!寒天のおかず―健康&ダイエット

 

 

3月4日 ポケモン月へ行く

 

「ポケモン、NASAに協力…幼小向けネット教材に」(読売) 
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050303i405.htm 

「米航空宇宙局(NASA)は2日、任天堂の米国関連子会社と共同で、ポケモンを使ったインターネット教材開発などの教育事業を開始すると発表した。」 

 NASAと任天堂のコラボレーションです。「NASAラングレー研究センターが開設したサイトでは、DNA(デオキシリボ核酸)にちなんだ名前の“幻のポケモン”「デオキシス」が説明役となり、ゲーム形式で遺伝子やオゾン層、地球外生命などをわかりやすく教える」 ということで、NASAのニュースリリースから辿ると、すでにこのサイトはアップされていました。 

ラングレー研究センターKids Science News Network (KSNN)Webサイト:Pokemon

 特にゲーム形式のところはなく、文章の説明がメインでポケモンはタイトルバーにイラストで登場しているだけです。これなら、日本の警視庁がサイトで掲載している「ドキドキまあちゃんゲーム」の方がよほどインタラクティブです。 

 ところで、NASAが案内役に抜擢したデオキシスですが、2004年夏に公開された『劇場版ポケットモンスターアドバンスジェネレーション 裂空の訪問者デオキシス』という長い長いタイトルの映画に登場したポケモンです。この映画の前売券を買うと、ゲームの方でもデオキシスをゲットできる特典が付くため、ポケモン好きの子どもたちにせがまれた親が前売券を買いに劇場へと足を運んだのですが、これがとてつもなくややこしい手順を踏まないとデオキシスにたどり着かなかったのです。 

以下に手順を簡略化してみると、 

@劇場窓口かセブンイレブンで「オーロラチケット引換券」を入手 
  ↓ 
A「オーロラチケット引換券」、ゲームボーイアドバンス本体、ワイヤレスアダプタ、ゲームソフト(ポケモンファイアレッドかリーフグリーン)を持って、引換え場所(トイザラス、イトーヨーカドー、ジャスコ、サティ、ダイエー、ポケモンセンター等)に行く 
  ↓ 
B任天堂のサイトの説明のとおりにゲームをプレイして「ふしぎなおくりもの」の準備をする 
  ↓ 
C引換え場所で「ふしぎなカード」を受け取る 
  ↓ 
Dゲーム内で「オーロラチケット」を入手 
  ↓ 
Eゲーム内で「オーロラチケット」を使用して「たんじょうのしま」に行く 
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Fポケモンオフィシャルサイトの説明を参考にデオキシスを捕まえる 

 一読しただけでは、どこまでがリアル世界でどこからがゲーム世界なのかさえ分かりません。日本地図で「たんじょうのしま」を探したり、ゲーム内でジャスコに行こうとしたりすると壁にぶち当たってしまいます。ポケモンの予備知識がない親にとってはまさに苦行です。まだ子どもの夏休みの宿題を肩代わりする方が楽かもしれません。ポケモン世代の子どもを持つ親はファミコンで育ったゲーム第一世代ですから、昔とった杵柄でまだなんとかなるのですが、孫のためにと爺さん婆さんがゲットしようとしたらもうお手上げです。残念ながら、日本の高齢化社会も『コンピューターおばあちゃん』にまで進化するには至っていませんから。 

 NASAもどうせコラボレーションするなら、日本のゲーム会社と映画会社のようにユーザーの家族すら巻き込んで奔走させる大掛かりな企画を考え出して欲しいものです。なにせNASAによればポケモンのカードゲームは世界で130億枚が流通しているメガブランドなのですから。人類は1人当たり平均2枚のポケモンカードを持っていて、すべてのポケモンカードをつなげれば月まで届くのです。NASAが無人探査機を使って月面にポケモンの超レアカードを置いて、「ご自由にお取り下さい Please Take One」と書いておけば、カード欲しさに月まで有人飛行する金持ちが現れるかもしれません。そうすれば人類の宇宙開発のスピードも加速するはずです。月の次は火星、そして木星、さらに土星と遠くへ遠くへポケモンカードを送り出せば、それを取りに人類は地球を飛び出して行くはずです。ボールを追いかける犬と大差ありませんが、冒険に挑む動機なんて所詮はそんなものです。宇宙進出はそもそもが地球では限られた資源を探すトレジャーハントですから、地球にないポケモンカードを求めることだって立派な大義名分になります。数十年後のお父さんは子どものために火星までポケモンを取りに行っているかもしれません。


きょうの一冊:『農協月へ行く』 著/筒井康隆

 

 

 

3月3日 名もなき衛星

 

「ひまわり?MTSAT?気象庁と国交省命名で“衝突”」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050302i206.htm

「H2Aロケット7号機で先月26日に打ち上げられた運輸多目的衛星(MTSAT)新1号の愛称をめぐり、気象庁と国土交通省のさや当てが激しくなっている。」

 気象庁がこれまでの気象衛星に付けられていたひまわりを、国土交通省航空局が衛星の正式名称であるMTSATを主張しています。今回の人口衛星はH2Aロケット7号機によって打ち上げられたのですが、国産ロケットはひとつ前のH2A6号機は2003年11月の打ち上げに失敗しています。前型のH2のようにニ連続で失敗してしまえば、日本の国産ロケットの歴史が終わってしまうかもしれないという、失敗が許されない状況下での打ち上げでした。そんな責任と重圧と緊張のなかで打ち上げに挑んだJAXAや三菱重工の人たちはお役所の縄張り意識にとらわれたこの命名争いをどう思っているのでしょう。

 MTSATは「気象観測機能と、航空管制や航空機と地上設備の通信を行う測位・通信機能を併せ持つ初の衛星」 のため、気象庁と国土交通省がともに管轄しています。打ち上げる前に調整しておけばいいものですが、このMTSATは最初は1999年に打ち上げられる予定で、その際に愛称を公募して「みらい」と決まっていました。「みらい」では、天気予報で「さて、みらいの画像を見てみますと・・・」と説明されるため、現在なのに未来の画像と勘違いしてしまいそうなのであまりいいネーミングではないように思いますが、そんな運用開始後の心配をする以前に不幸にもH2二度目の打ち上げ失敗で「みらい」は幻となりました。

「すれ違う両者だが、過去に選定された「みらい」は「縁起が悪いからダメ」という点では一致している」 そうで、そういう非科学的な面では気が合うようです。他の名前も決めなかったのは、事前に公募するのも、名前について話すのも縁起が悪いからでしょうか。試合の際は赤いパンツを欠かさない野球の野村監督並みに縁起を担ぐ人たちのようです。この分だと、人口衛星にお守りでも付けていそうです。それも気象庁は安産、国土交通省は交通安全を主張して争っていたりするかもしれません。

 個人的には無機質なMTSATよりも馴染んでいてしかもセンスを感じるひまわりがいいように思うのですが、結局は両方を立てて「MTSATひまわり」になるのではないでしょうか。

 

3月8日追記:

 結局、愛称は「ひまわり6号」に決まったそうです。国土交通省が単独で発表したのは、顔を立てる意味でのことなのでしょうか。

(参考:「多目的衛星、愛称は「ひまわり6号」に」(読売)


きょうの一冊:『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』 著/松浦晋也

国産ロケットはなぜ墜ちるのか