3月3日 名もなき衛星
「ひまわり?MTSAT?気象庁と国交省命名で“衝突”」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20050302i206.htm
「H2Aロケット7号機で先月26日に打ち上げられた運輸多目的衛星(MTSAT)新1号の愛称をめぐり、気象庁と国土交通省のさや当てが激しくなっている。」
気象庁がこれまでの気象衛星に付けられていたひまわりを、国土交通省航空局が衛星の正式名称であるMTSATを主張しています。今回の人口衛星はH2Aロケット7号機によって打ち上げられたのですが、国産ロケットはひとつ前のH2A6号機は2003年11月の打ち上げに失敗しています。前型のH2のようにニ連続で失敗してしまえば、日本の国産ロケットの歴史が終わってしまうかもしれないという、失敗が許されない状況下での打ち上げでした。そんな責任と重圧と緊張のなかで打ち上げに挑んだJAXAや三菱重工の人たちはお役所の縄張り意識にとらわれたこの命名争いをどう思っているのでしょう。
MTSATは「気象観測機能と、航空管制や航空機と地上設備の通信を行う測位・通信機能を併せ持つ初の衛星」
のため、気象庁と国土交通省がともに管轄しています。打ち上げる前に調整しておけばいいものですが、このMTSATは最初は1999年に打ち上げられる予定で、その際に愛称を公募して「みらい」と決まっていました。「みらい」では、天気予報で「さて、みらいの画像を見てみますと・・・」と説明されるため、現在なのに未来の画像と勘違いしてしまいそうなのであまりいいネーミングではないように思いますが、そんな運用開始後の心配をする以前に不幸にもH2二度目の打ち上げ失敗で「みらい」は幻となりました。
「すれ違う両者だが、過去に選定された「みらい」は「縁起が悪いからダメ」という点では一致している」
そうで、そういう非科学的な面では気が合うようです。他の名前も決めなかったのは、事前に公募するのも、名前について話すのも縁起が悪いからでしょうか。試合の際は赤いパンツを欠かさない野球の野村監督並みに縁起を担ぐ人たちのようです。この分だと、人口衛星にお守りでも付けていそうです。それも気象庁は安産、国土交通省は交通安全を主張して争っていたりするかもしれません。
個人的には無機質なMTSATよりも馴染んでいてしかもセンスを感じるひまわりがいいように思うのですが、結局は両方を立てて「MTSATひまわり」になるのではないでしょうか。
3月8日追記:
結局、愛称は「ひまわり6号」に決まったそうです。国土交通省が単独で発表したのは、顔を立てる意味でのことなのでしょうか。
(参考:「多目的衛星、愛称は「ひまわり6号」に」(読売))
きょうの一冊:『国産ロケットはなぜ墜ちるのか』 著/松浦晋也