11月23日 ハッスルは強制でないことが望ましい
「猪木が小川批判「ハッスルは下品だ!」」
(Yahooスポーツ-日刊スポーツ)
http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=sports&d=20041123&a=20041123-00000027-nks-spo
とくにプロレスファンというわけではないのですが、今週末のジャパンカップ開催日に東京競馬場で小川直也がこの「ハッスル!ハッスル!」パフォーマンスを行うそうなので注目してみました。
小川直也は柔道家時代にJRA所属でオリンピックに出場していました。柔道に専念できる環境でしたが、たまには競馬場で警備の仕事もしていたようで、当時のJRAは競馬場でゴネた人に対して召還獣「小川直也」を使えたわけです。そんな縁で、小川直也はサンスポにG1予想コラムの連載ももっている(とはいってもゴーストライターの筆であること丸分かりですが)など、ファン層がプロレスと近接領域にある競馬との関わりをもっています。そんなわけで、JRAが創立50周年のメインイベントとして盛りあげに必死なジャパンカップデーのスペシャルゲストに選出されました。
今年は外国馬に大物がおらず、JCダートはアドマイヤドンの一強、JCは天皇賞馬ゼンノロブロイ対コスモバルクら3歳と日本馬の内部抗争で、普通のG1としてもいささか面白みに欠けるので、派手なイベントでもして盛り上げないと格好がつかないということなのか、小川直也と和田アキ子の力強いコンビが呼ばれました。JCダートの直前に小川直也のハッスルパフォーマンス、JCの直前に和田アキ子が国家独唱が企画されているそうです。JCと並ぶ国際レースにするとして創設されたJCダートですが、国歌斉唱のかわりに「ハッスル」では格式もなにもあったものではないです。ただ、見方によっては「ハッスル」と国歌斉唱が並列して行なわれることになり、それはそれで面白そうな出来事です。
個人的にはいかにも子どもが真似しそうなパフォーマンスでギャグとしては完成度が高いと思っている「ハッスル」ですが、最初に紹介した記事にあるように「正統派」のアントニオ猪木率いる新日本プロレスは「ハッスル」に批判的なようで、プロレス界ではおのおのの団体のスタイルやアイデンティティにかかわる問題として「ハッスル」への賛否がとりざたされているようです。
「ハッスル」にまつわるそんな論争をみていると、どことなく日の丸・君が代の議論に似ているようにも思えます。もちろん思想的にも歴史的にもレベルが違いすぎるのは承知の上ですが、同じ日本人のなかの言い争いなので、まったく異質であっても「喧嘩の仕方」のような部分では共通点がありそうです。
学校現場での日の丸掲揚と君が代斉唱が論争の的になっていますが、サッカーのナショナルチームの試合など国際的なスポーツイベントでは見慣れた光景になっています。競馬でもジャパンCやダービーでの国歌斉唱は恒例になっており、過去には北島三郎ら有名歌手を迎えたりしています。主義主張を持った論者の集中する現場では論争が巻き起こっていても、大衆化したイベントでは比較的受容されています。
新日本プロレスの大阪ドーム大会では勝った小川直也が「ハッスル」ポーズをしようとするのを実力阻止する攻防がくり広げられましたが、競馬場ではそんなプロレス界の出来事とは別の次元で、数万人の競馬ファンが興味本位でパフォーマンスに参加するのではないでしょうか。
高尚な議論をあえて矮小化・戯画化してエンターテイメントに仕立てるのもプロレスの面白さのひとつですし、競馬もプロレスも大衆的な興行という点では同じ枠内にあります。
G1の日の競馬場は老若男女取り混ぜて、割合多様な層の人々が訪れる場となるので、そんなところで「ハッスル」と国歌斉唱が行なわれ、どんな反応があるのか(もしくは反応がないのか)を見るのはレースよりも興味をそそります。あとは、数万人が「ハッスル」する異様な光景を見た外国の競馬関係者やマスコミがどんな感想を持つのかも是非追ってみたいです。数年前のジャパンCではデットーリ騎手がテイエムオペラオーを「クレイジー・ストロング」と評しましたが、今回は出走馬ではなく小川直也がそう呼ばれるかもしれません。
追記:
ペリエ騎手なら勝利騎手インタビューで「ハッスル」とやってくれそうなので、ジャパンCはゼンノロブロイから。
きょうの一枚:『ハッスル注入DVD』