■郷土新聞連載中 「窓」 より
1. 明日を開く「出会い」
2.「すばる」との出会い
3.「造園」との出会い
4. 妻との出会い
5.「神様との出会い」
6. 蕎麦との出会い(1)
7. 蕎麦との出会い(2)
8. 不登校との出会い(1)
9. 不登校との出会い(2)
10. 不登校との出会い(3)
11. スローライフとの出会い
12. 掛川との出会い
11.スローライフとの出会い 小松正明
 掛川へ赴任した最初の四月のある日市長に呼ばれて、「助役さん、特にお願いしたい特命事項があるのですよ」と言われた。「それはなんですか?」「スローライフです」
  「スローライフってなんですか?」 「それはこれから考えましょう」「え…?」というのがスローライフとの最初の出会いだった。
 やがて「助役さん、どんなスローがあるかを一緒に考えよう」と市長から言われて、市長室で二人きりで夜遅くまで相談をした。「『和』の付くものはスローに近いですよ」と言って、広辞苑を持ち出して「わ」のところを一生懸命調べたのもつい昨日のことのようだ。「和食は『スローフード』だな…」と言いながらカリカリとレジメを作り次第にスローライフのレジメができあがっていった。
 スローライフ月間を十一月と定めて七月に実行委員会を作ったものの、作業は遅れに遅れて胃が痛かった。
 イベントの柱の一つとして市民からイベントを募集しよう、という企画が持ち上がったときには、募集期間も短かったので「集まらなければ知り合いに仕込んでもらわなくては」と心配したのだが、あっという間に三十本以上もの応募があった。掛川と言うところは市民の反応力が高いなあ、と驚いたものだ。
 もう日がないというのに「市民イベント募集に応募をしてきた人から話を聞こう」と言ったのは東京から応援をしてくれていた川島正英さんだった。いらいらしながら応募者に連絡をして土日の二日間で多くの人たちと面談をしたが、結局はそこでの出会いが掛川で仕事をする上で大変な財産になったのだった。
 スローライフを通じては実に多くの人との出会いがあったし、たまに「スローライフのお話を聞かせてください」という要請もあったりして、「掛川のスローライフを始めた一人」として鼻が高い。そういえば友達も知人も一朝一夕にはできないし、その関係を維持するのも結構大変だ。友達がいると言うこともスローライフなんだな、きっと。


 
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