■郷土新聞連載中 「窓」 より
1. 明日を開く「出会い」
2.「すばる」との出会い
3.「造園」との出会い
4. 妻との出会い
5.「神様との出会い」
6. 蕎麦との出会い(1)
7. 蕎麦との出会い(2)
8. 不登校との出会い(1)
9. 不登校との出会い(2)
10. 不登校との出会い(3)
11. スローライフとの出会い
12. 掛川との出会い
6.蕎麦との出会い(1) 小松正明
 平成八年秋から、転勤で長野県松本市へ移り住んで公園作りの仕事をすることになった。信州人というのは割と取っつきにくい人が多くて、いわゆる「営業活動の難しい
ところ」ということになっているらしい。そんなところへ突然東京から若造が来たりすると、「あんた、誰だね?」ということなりがちなのだ。
 「この土地に早くとけ込みたいがどうしたら良いか」、と考えるうちに、この安曇野と呼ばれる地域に住む人たちが誇りに思うことを自分も理解して分かち合うことが良いのではないか、という考えに至った。そこでこの地域の人たちの自慢の種は何だろうかと考えるうちに、二つの自慢があるように思えた。一つは北アルプスの山並みの美しさ、そしてもう一つは蕎麦が美味しいことだった。なあるほど。
 山は名前を覚えてたまに登ることにしたが、蕎麦はまず食べ歩くことしかないだろうと思い、「在任中に県内の蕎麦屋を百軒回ろう」という志を立てた。あとは手当たり次第に食べまくった。松本、安曇野、長野、戸隠、佐久、上田、飯田…と巡りに巡ってついに最後は百五軒のお店を回ることが出来た。
 お蕎麦屋を回るうちに、不思議、最初はどのお店の蕎麦も美味しく思っていたのが、五十軒を過ぎる頃から自分の中でだんだんに好みに合って美味しい店と、案外そうでもない店の違いが分かってくるようになってきた。舌の眼力と呼べるものかもしれない。
 もうそうなると地元の人よりも蕎麦屋情報を持つようになり、安曇野への愛郷心がわくと同時に、次第に蕎麦好きとして一目置かれ地域にとけ込むことができたのだった。
 見事に当初の目的は果たされ、副産物として蕎麦好きになったのである。こうなると少しは蕎麦を打ってみたくなり、蕎麦道場に二度ほど行ってみたりもしたが、その時はまだ自分が蕎麦打ちにこんなにのめり込むとは思ってもいなかった。
 さて、その蕎麦に対する思いが変わった理由というのがあるのだが、それは…、うーん、文字数が尽きてしまった。以下次号に続く。
 
←Back Next→