風評に惑わされない卵の知識

【卵は生鮮食品?】
昔は当然のように卵は乾物屋で売っていました。なぜ当然かといえばもともと卵は保存食品だったのです。種としての卵は受精してから孵化するまでの一、二カ月間で腐ってしまっては困るから当然腐りにくくできています。それが卵の表面を覆っているクチクラであり白身に含まれているリゾチウムなのです。洗った卵やヒビのあるものは日保ちはしません。卵は「殻の中では保存食。殻を割ったら生鮮食」なのです。勿論、当場の卵は産卵日に出荷されていますのでゆっくりとご賞味ください。
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【卵を食べるとコレステロールがたまる?】
この話は学者がウサギに卵を与え、その結果コレステロール値が上がったということが発端でした。草食動物であるウサギに無理やり卵を食べさせれば血中コレステロールが上昇するのは当然です。今では卵を食べるとコレステロールが上がるなどというお医者さんはほとんど居なくなり、むしろ卵はコレステロールを調整する働きがあることが分かりました。そして老人のコレステロール値と死亡率の関係では、コレステロール値がやや高めの方が良いという結果も出ています。
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【中年以降は卵はあまり食べないほうが良い?】
最近ではお年寄りや若い女性の低栄養が問題になっています。食事を制限したり、お年寄りの粗食に伴う弊害で、貧血を起こしたり、筋力が衰え免疫作用が弱まり病気にかかりやすくなってしまうのです。これは血液中の血清アルブミンというたんぱく質の数値が低くなることによって起こります。特にお年寄りの方は良質の蛋白源である卵を積極的に摂取したほうが良いのです。元慶応義塾大学教授の三石巌先生も著書「健康の自主管理と食品の常識」の中で『100歳以上の老人がひとりの例外もなく、毎日ひとつかふたつの鶏卵を食べている』と記しています。卵は健康で長生きするためにも必要なものなのです。
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【箸で持ち上がったり楊枝が多く刺さる卵は良い卵?】
卵黄は薄い膜で覆われています。綿実粕、コプラミール、木酢酸とそれを使った添加物などを飼料に加えるとこの膜が厚くなります。よく卵の鮮度の目安として黄身だけをつまんで見せたりしますがかえって誤魔化されてしまいます。そういう卵は目玉焼きにすると黄身がちぢんで食感が変わってしまい、昔は”スポンジ卵”として嫌われたものです。木酢酸などは同時に脱臭作用があるために、餌の原料にどんなにこだわろうが、その旨みを全て消してしまいます。外見でなく真の美味しさを追求する場合は絶対避けなければならないことの一つです。
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【黄身の色の濃いのは着色してある?】
卵の味と色は与える飼料によって決まります。卵黄色は、味をよくする原料にともなってついて来るもので、色だけ抜き出して考える人がいるとすれば本末転倒も甚しいと云わねばなりません。現在の多くの餌のように、とうもろこしと大豆粕主体で緑餌もやらないのであればそのような色になり、昔の味に戻そうとするならば天然の原料による多くのカロチン、カロチノイドが含まれ味とともに卵黄の色も濃く素晴らしいものになります。どちらが本物かは味わってみればすぐ分かる事なのですけれど…。
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【白身に張りがないのは古い卵?】
卵の味と見栄えは季節によって微妙に変化します。12月から3月位までは寒いため暑い時期よりも鶏は水を飲む量が少なくなります。食欲も人間と同じく旺盛になります。しかし昼間の時間が短いためにあまり卵を産みません。したがって自然に中身の濃い卵となります。春になると生き物には心地よい季節になり、産卵率もぐっとあがります。この時期と冬と比べると当然内容は変わります。昔から寒の卵は3ヶ月、夏の卵は1ヶ月保つと言われますのでやはり差が出てしまいます。白身に張りが無いといっても比較する時期にもよりますので一概に古い卵とは言えません。鶏も人間と同じく生き物ですから季節の変化には敏感です。
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【有精卵のほうが栄養がある?】
卵は大きく種卵と食卵に分けられ、更に種卵は受精卵と無精卵に分けられます。受精卵は温度が高くなると発育をはじめ、夜になると死んでしまい、すぐ腐ります。しかも栄養価は全く変わりません。過去に農林省が食用に不適だからと農家の庭先養鶏から雄を離すように指導したほどです。卵の分類法だけでなく本質まで忘れてしまいかねません。
当サイト関連ページ…『卵の常識 (その誤解を解く)』『迷惑な話』

【地卵は放し飼いの鶏の卵?】
地卵という言葉も最近では普通に使われるようになりました。古くから養鶏業者間で言われる「旅物(=他県からの卵)」「地玉(=地元で採れた卵)」から当場で二十数年以前より地玉を地卵にかえて用いているものです。意味も使われ方も違ってしまったようです。

【放し飼いの鶏の卵がうまいと聞くが?】
卵の味は鶏の餌でほとんど決まり、あとはいやな臭いをつけないために水と空気を清浄に保つことです。放し飼いでもアメリカ型の餌をやり、坪二十羽以上も鶏を入れて糞とほこりの中で飼うやりかたではうまい卵のできる道理がないと考えます。
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【穀類や緑餌だけを与えると卵が生臭くない?】
戦前、大豆のしぼり粕を鶏に大量に与えたら「あそこの卵は生ぐさい」と言われたとか、戦後は餌がなくなって魚のアラばかりを与えたので「日本の卵は魚臭い」と駐留軍に言われたとか、原料の片よりは卵の味に大きく影響してきました。今、養鶏も大きな産業となりコストを追求していくあまり原料の80%をトーモロコシ・大豆等に頼る味の面からは片寄ったものになってしまいました。穀類だけに頼ると逆に生臭さの原因となってしまうのです。

【卵の保存は尖った方を下にすると長持ちする?】
卵の鋭端を下にするのは一番殻が厚く強度があるためで流通に適しているからです。保存には関係ありません。

【表面を消毒液で洗った卵は長持ちする?】
卵の表面は自然の保護膜であるクチクラに覆われています。このために雑菌が卵の中に入りにくくなっているのです。消毒液で洗浄してしまうとたまごは長持ちしません。

【「抗生物質は与えていません」と謳っている卵以外にはそれが含まれている?】
これまで鶏に対して抗菌剤、抗生物質の類いは薬事法の厳しい規制もあって特に採卵鶏では一切使用せず専ら許可された範囲のワクチネーションによってのみ、鶏の抵抗力を高め感染症を防ぎ、安全な生産物を消費者に提供しています。このような表示はかえって他のものには含まれているような誤解を招きやすくなります。
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【鳥インフルエンザについて】
インフルエンザは人・豚・馬・鶏などに共通する病気です。その型は大きく分けて135種類もあります。心配するのは動物から人への感染です。動物がインフルエンザを発症した時が人への感染を促しやすくなります。そのため豚や馬には発症しないようにワクチンを接種し制圧に成功しています。ワクチンは抗生物質や抗菌剤などの薬品とは違い、自然の抵抗力を高めるものですから、その安全性は確立されています。しかし、現在のところ一部の学者の偏見により鶏だけは全て殺処分の方法がとられています。「命」と「食」の安全の為に早急に豚や馬並みの対策を施して欲しいものです。
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