『 迷惑な話 』

 

週刊誌女性セブン6月3日号の新聞広告が目に入る。曰く、卵が危ない!血便、高熱で死者も、大マスコミが報じない食中毒の猛威。

眉唾は承知で件の雑誌を買う。なんの事はない一昨年五月SAPIOの溝口敦氏の記事の焼き直しに近い。ご丁寧に、SEは鶏の輸卵管に存在すると挿絵まで入っている。警鐘を鳴らしてもらうのは結構だ。だが生産者も真剣に取り組んでいるとき、いたずらな珍説を基に、いいかげんな報道をされるのは迷惑である。

尤も甚だしい異説であっても、その人の真摯な研究の裏付けがあれば、こちらも真剣に対応したい。サルモネラとの現場での取り組みはもう40年以上になる。そんな経験からいえばSEはむしろ戦後我が国に一番多い食中毒をおこすサルモネラ菌だった。当時のと今のは型が違うといったって細菌が変化するのは当たり前だ。それらのことは同じホームページで私なりの考えを述べている。対策も怠っているつもりはない。

 さて迷惑な話といえば、97/12/5の食品衛生調査会の話し合いをもとにしたらしい食用不適卵を羅列した通達が我々のところにも来た。血斑卵、ミートスポット混入卵なども入っているが、こんなものは曲がったキュウリは食用不適だから食うなというに等しい。

あまつさえ恐らく過去日本人が食ったことのない孵化中止卵まで入っている。これなど孵卵器から早期に取り出した無精卵のつもりかなと善意に解釈しようとしたが議事録をみるとまぎれもない中止卵だ。これを発言した人はこんなものを食ったことがあるらしい。

 ついでにこれはおめでたい話だが、中国から贈られたトキの卵が無事発育しているという。その報道で、いわゆる専門家の飼育係が嘴打ちという伝統的な言葉を使いながら一方で有精卵と平気で云っている。

いまに人間の有精卵なんていうようになるのかなあ。


1999/5/20記



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