『サルモネラ対策としてのケージ養鶏について』



ケージ養鶏は、サルモネラ菌などの、糞や土それに媒介者である鼠や犬猫、それらによって汚染された仲間の鶏、更には交尾による雄雌間の感染を防ぐ最も有効な飼養環境だったのです。

今騒がれているサルモネラ中毒の原因菌サ・エンテリティディスもそれ自体新しい菌ではなく1950年代既に我が国の犬猫鼠などが広く汚染されていたと報告されています(坂崎ら)。

皆様もこれまでに一度や二度は子供の遊び場である砂場がサルモネラに汚染している話を間かれたことがあると思いますが、それこそがサ・エンテリティディスでありチフィムリュウムなのです。もともと鶏にいる菌だなどという戯れ言はともかく、日本になかったものが外国鶏に付いて入って来たとする厚生省などの説明は事実誤認も甚だしいと言うより、ご都合主義の、わざとらしさを感じます。

戦後の養鶏の歴史はサルモネラとの戦いにあったと云っても良いほど私達はこれに悩まされました。直接的には雛が全滅し種鶏検査の主目的のプロラムという種類でしたが同時にぴっかかるエンテリティディスも大問題でした。要するに種鶏のサルモネラ検査をして陽性鶏を除かなければ雛が糞付きと称して死んでしまう時代だったのです。サルモネラとコクシジューム、これは後にマレックやニューカッスルなどのウイルス病が流行りだすまで鶏にとって最大の疾病でした。そして雛を育てる段階での一番有効な手段は糞を隔離することと、土を踏ませないことだったのです。この目的にびったりだったのが高橋広治氏によってアメリカから輸入されたケージでありケージ養鶏でした。

以後20年間の、物価の優等生であり絶対安全だという卵の神話は実にこのケージとGPセンターの普及によってつくられたといっても過言でないと思います。そしてこの間というもの、卵はコレステロール間題など、いわれのない非難を浴びつつも、冷蔵庫の卵棚に安心して鎮座しつづけたのは周知の通りです。

実は此の20年間のケージ養鶏は、次の技術革新が完成するまでは総てにギリギリの動かせない線だったと思います。土壌の汚染を防ぎ、糞便を隔離し、卵と鼠の接触を無くし、罹病鶏の混在を許さず、安全と効率の面から、どう考えてもこれまでのところ唯一の落としどころでした。ケージ養鶏というのは知らない人が見ると動物愛護の面からその自由を束縛して搾取しているように写る、だからそれを地面に放てば鶏達は元気に良い卵を産むと考える、実はそこが危険な陥奔で過去のサルモネラ時代に逆戻りです。

昭和20年代に当時の農林省が農家の庭先養鶏の雄鶏を外すよう指導したことがあります。食卵として保存をよくずると同時に交配によるサルモネラの伝播を考えてのことだったと思います。お役所が言うとおり今のサルモネラ騒ぎのもとの一つが動物愛護のイギリス型とすれば、もう一つは技術革新ウインドウレス・ベルト集卵のアメリカ型です。鼠駆除が思うように出来ないうちは間題ですが、いずれ卵出口で有効なオゾン消毒などが出来るようになれば間題は解決するでしょう。

サルモネラを防ぐには、まず陽性鶏を出さないことですが、検査は自家で簡単にできます。その結果からも在来型ケージ養鶏の場合は安全だった過去20年間と全く変わりないことを断言出来るのです。

H10,6,1 篠原養鶏場  篠原一郎



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