今月の一枚
  8月の着物・壱
  8月の着物写真
 暑い日々が続いています。見た目だけでも涼しくしたい。そこで夏結城です。薄い緑のグラデーションがかかった、これは訪問着。かげろうの羽根のように透けて、涼しげでしょ?結城の織り元で購入しました。写真ではよくわからないけれど、この“ぼかし”は後染めではなく先染めなので微妙に段がついていて、そこにモダンな感じが出ているのが好き。

 実は購入2年前に、一目惚れした着物があったのです。やはり薄い緑地に蜜柑色の小さな千鳥模様、細い銀の線で波が入った訪問着。でもその時私は、本多先生に縞結城をお願いしたばかり。続けて2枚買うのは気が引けて。しかも夏の訪問着なんて、着る機会がありません。買っても箪笥の肥やしのなるのではいや。それで泣く泣く諦めました。ようやく2年後に選んだのは、心に残った薄緑。藤色のぼかしもあったのだけど縞結城と似てしまうし、ドレッシーな感じがして気軽に着たい私としてはちょっと違うなと思いました。

 帯は麻の染め。先月ご紹介した絽の着物にもう1本と思い探していて、珍しく店員さんに相談したら、彼女が持ってきてくれました。一目で気に入って、正価で購入。これも伏線があって、同じデパートでやっていた友禅学院の作品展で“雪月花”と“紅葉”二種類の染め帯が目に留まりました。その2本とも模様が円形に描かれていたのです。欲しかったけれど「夏帯を探しに来たのだから」と諦めて。で、その流れから同じように麦が円形になったこの帯にひかれて。

 緑というのは暖かくもあり涼しくもある不思議な色です。華やかにしたいときは朱鷺色の帯揚げに、同色の入った帯締めを、すっきりと見せたいときは赤みを押さえた組み合わせに。夏の初めは涼しげに、秋が近づけばわびしさが出ないようこっくりと。先月ご紹介した朝顔模様の帯も合います。また、この帯の前面の模様は、「7月の着物」をご覧ください。

 今年は“絹芭蕉”というのに挑戦です。来年はぜひ麻を手に入れたい。気力もお手入れも必要だけど、一気にではなく毎年少しずつ、夏の着物を自分のものにしていけたらいいですね。

 
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