タイトルの通り、これまでよく聞くものだけれど実物は見たことがない――そういった『ないもの』が、ここにはたくさん揃っています。
少しだけ、商品をご紹介いたしましょう。
「堪忍袋の緒」「口車」「地獄耳」「思う壺」「転ばぬ先の杖」「目から落ちたうろこ」「一筋縄」「冥土の土産」「大風呂敷」などなど……。
いかがですか? 誰しもが一度は見聞きしているこれらの「もの」が、ずらりと登場しています。
もちろん使用法も丁寧に説明されていますし、イラスト付きです。
これはもう必見です! 一見の価値あり!
私はこの紹介されている商品で、ほしいと思うものがいくつかありました。
「針千本」。イラストに記された千本の針、きちんと千本あるかどうか確かめようとして、目がしょぼしょぼしてしまいました。勿論、数えられませんでしたが(笑)
「助け船」。ぜひ乗ってみたい、そう思うことがしばしばあります。
「鬼に金棒」。イラストの鬼にぜひお会いしてみたいです。遠くから、こっそりと。
2001年に講談社出版文化賞・ブックデザイン賞を受賞した、クラフト・エヴィング商會の本ですから、装幀だってとっても凝っています。
内容もピリリと酸味が利いていたり、思わずにやりとしたり、ほほう成程と深く頷いたり。
有名な「もの」たちばかりを扱っているだけに、奥も深いのです。
赤瀬川原平氏の書き下ろしたエッセイ『とりあえずビールでいいのか』も収録されています。つまり「とりあえずビール」もあるということですね……にやり。
サービス満点の一冊。何度読んでも面白いです。わたくし、全力でお勧めします。
2004-06-01