工場で作られたクマくんは、出来上がった時、他の兄弟たちよりも目の位置が少しずれて、自惚れ屋な表情になってしまいました。テディベアの性格は表情で決まるので、この物語のクマくんは自惚れ屋となりました。
そんなクマくんの門出はとても普通のテディベアと同じではありませんでした。
出荷の際の検品にひっかかり、不合格の籠に入れられてしまったのです。
でも、クマくんは落ち込むどころか「検品をした人はなんてバカなんだろう」とすら思うのです。
クマくんは知りませんでした。この先に、波乱万丈の運命が待ちかまえているだなんて。
このクマくんの自惚れ屋な性格には、はじめ少し取っつきにくいかもしれません。
けれど、どこか愛らしくて憎めないのです。少なからずクマくんに親近感が持ててしまうから不思議です。
「私は自惚れ屋である」だなんて自覚している人はそうはいないと思いますけれど、強がったりするクマくんと自分が……「どうも似ているな」と感じる瞬間があるのです。
もしかしたら、クマくんの置かれた状況と似た場面に私たちも出くわしていて、クマくんのように感じたことがあるのかもしれません。とても身につまされたり、ああ自分もちらっとそういうことを思ったこともあったな、なんて思ったりするのかも。もちろんクマくんに対して憤慨したりする場面もありますけれど。
そうこうするうちに、気がつくと、クマくんの未来を案じて次々にページを繰っている……。
もちろん物語のラストはハッピーエンドです。
でも、果たしてこの自惚れ屋クマくんにとっての「ハッピーエンド」ってどんな形なのでしょうね?
気になる方は、ぜひ一度、この本を手に取ってみてください。
大人も子供も楽しめて、ジーンとも出来る……そんな物語です。
2004-03-13