(ジャンルはミステリーなので、未見の方のためにもネタバレ発言はいたしません)
この本は全部で3部構成。上下巻にわたる長編です。
物語の核となる事件は「連続殺人事件」。犯人は非常に目立ちたがりで狡猾。すべて計算ずくの犯行。
展開はドラマチックで、最後まで飽きることなく、文字通り目が離せません。
私は3日間かけてこの作品を読破しました。
見事なくらいに緻密に組み立てられたプロット、巧みで豊かな心情表現にただただ圧倒されるばかりでした。
読みながら何度「はぁ〜」と息をついたことか(それは安堵だったり、感心だったり、ため息だったりするわけですけれども。)
この作品が提示しているテーマは、非常に深く、またたくさんあるので一言で「これ」と言うことは私にはできません。
「すごい」「さすが」の言葉に尽きます。
ただ、私のオススメ印は「星3つ」としました。これには理由があります。
・読んでいて、気がめいってくる
あまりに心情表現がリアルなため、読んでいて身につまされたり、切なくなってきたり、と・・・。
ある意味、長所だとも言えますが、私にはちょっとキツすぎたかな・・・。
・ちょっぴり強引な展開
他の部分が際立って緻密なだけに、強引な部分が際立って見えてしまうのです。
どことは具体的には書きませんけど。
・感想を一言で言うなら「感動」ではなく「安堵」
ああ、やっとこれで一段落・・・という思いに尽きました。
・とにかく長過ぎる
息のつまる展開が上下巻(2段組みで、700ページちょっと)も続くというのが、ちょっと・・・。
そもそも、ミステリーというジャンル、それも殺人事件を扱うものって、底抜けに明るいハッピーエンドにはなり得ないわけです。
どうしたって後味の悪さはつきまとってきます。
でも、どれもこれも人間というものの「弱さ」「脆さ」「危うさ」を描いている。
誰しもが避けることのできないこと、目を反らすことはできないことを、提示している。
この作品を読んで、そのことをひしひしと感じてしまうのでした。
「長編のミステリーが読みたい!読みたくて読みたくてしかたない!」という方向けの作品です。
2004-08-21