<はじめに>

 もしあなたの治療室に患者がやってきて「今のところ健康でからだの具合はどこも 悪いところは無いが、歳も歳だしこれからさき大病しないように鍼治療で健康管理を したい。」と求められたときあなたはどんな対応ができますか。本人がいくら健康だ と言ってもそういう患者をすべて同じように治療していてうまく目的が達せられるも のでしょうか。

 実際、体質には個人差がありますし、同一個体でもいつも同じ状態とは限りません。 であればそれぞれの場合、治療の方針も治療穴も自ずから違ってきて当たり前です。
 そんな時、病症が無かったり病名のついていない対象に的確に鑑別診断のできる術をあなたは身につ けていますか。西医が行う種々の検査に代わる鑑別診断の技術を持っていますか。 漠然とどこか本で読んだような知識だけで施術していませんか。 あなたが採った方法を整然と理由づけて他に説明できますか。その根拠を提示できま すか。その必然性を主張できますか。

経絡治療家であればこれらのことは臨床で全く日常的に行っている事でそれほど特別 な事ではありません。

 理由づけに必要な情報は一般的な望聞問切の他に脉診をすることによって更にた くさんの情報を得ることができます。脉診は「不問診断法」と言われるように、患者 が自覚していない患者自身の体調の変化を術者が的確に捉える事ができ、また更に 「素難医学」の理論を根拠にして治療方針を確定する事ができます。従って経絡治療では 「病が無い(健康な状態)」「病名がついていない」「病名が判っている」の何れの 場合であっても適切な治療が現場の臨床家自らの判断でできる訳です。

「兎に角やってみた」「やってみたら何がなんだか説明はつかないが治った」「何はとも あれ治って良かった」のいわゆる「やった」「治った」「良かった」の「3た治療」 しか知らない臨床家は自分の責任と判断によって治療を施したとは言えません。 これでは臨床家自身の責任と判断において患者の病を取り除いたと言う自負や達成感 は得にくいものです。経絡治療家であれば病を治すのも治せないのも治療家自らの責 任に於いてであると言う自負があります。

さて、あなたも経絡治療家を目指してみませんか。道案内いたします。

ところで経絡治療は鍼灸術の中でも特殊な技術です。
しかし、特殊な才能を持った者だけに許された技術ではありません。

システマチックなトレーニングと研究の場があれば平凡な才能の持ち主でもこの特殊な技術を手に入れる ことができます。しかしながら、当たり前のことですが臨床家の個々の工夫と努力が絶対不可欠なの もこれまた事実です。

ここでは私の臨床経絡治療家としての私感と私が研究の場に選んでいる研究会の活動を報告 していくことで、これから開業鍼灸師を目指す学生諸君や鍼灸師に臨床経絡治療とは何か またどのようなトレーニングを積むことによって臨床に使える技術を手に入れることが出来 るかを出来るだけ簡単に紹介していきたいと思います。

ここ「臨床経絡」は理論の拠を難経に基づいています。またその解釈の多くは東洋はり医学会の理論に基づいています。 ただその八十一難をそのまま取り上げるつもりはありません。 予め以下に紹介する文献によって学習されていることを前提として、 それら文献の補足というかたちで解説を付けていきたいと思っていますので 詳しくは文献を参考にしてください。

参考文献

<おことわり>

ここで紹介する理論や技術は経絡治療にまだ取り組んだことの無い方々へわかりやすく経絡治療 を紹介することを主な目的としております。したがって既に研究を積み重ねておられる臨床家、 研究者にとっては多くの不備を指摘されることと思いますが、それを承知で「臨床家が経絡治療 を始める場合」の入り口のひとつとして捉えて頂ければ幸いです。

@臨床経絡テキスト版メニュー

新着情報
はじめに
コラム

(1)理論
1.1陰陽五行
1.2生理
1.3脉状
1.4病症
1.5六十九難
1.6奇経
1.7子午

(2)診察法
2.1脉診
2.2簡易脉診法
2.3腹診

(3)治療法
3.1プロセス
3.2上達のコツ

(4)実技研修
4.1取穴
4.2刺鍼法
4.3小里方式

(5)その他
5.1参考文献
5.2リンク
5.3Memo
5.4その他

E-mail