治療の流れ

良い治療を施すということは如何に正確に診断し、更に適切な処置ができるかという ことにかかっているのだと言うことは誰しも承知していることだろう。
ではどういうステップを踏めば確率高くそれが実現できるであろうかと言うことを 以下に考察してみたい。

<ステップ1;診察>

 診察にあたっては西医にも東医にも共通する部分が多いので 「よき臨床医をめざして」などで学習されたい。
 経絡治療と言うと総べて脉診によって診断しているように 受け取られがちだがそのようなことはない。 患者には脉診以外の様々の情報源がある訳であるからより正確な診断を下そうとしたら、 生理 五行 腹診 病症 などによって得られた情報を無視することはできない。 すべての情報がひとつの結論を導くように考察できるか否かが重要である。
以下の内容は東洋医学的な補足である。

望診

主に東洋医学的には皮膚の色(五色 によって弁別する)を診る。他は西医 と同じ。

聞診

声の潤いやかすれを聞き取ることは患者の体調の変化だけでなく毎回の施術の良否をはかるのにも有効。可能であれば五声の弁別 をする。必要な場合は聴診。

問診

いわゆる問診、病症の弁別の為にできるだけ詳しく聞き取る。

切診

まず脉診 を行う。腹診 では脉診によって得られた情報と比較して その整合性を考察する。またその他の得られた情報と比較検討して弁別する。切経し圧痛点の確認をする。

<ステップ2;診断>

次に四診によって得た情報の弁別する訳だが実際には望聞問切の過程において並行 して証の弁別を行っていき証の決定をする。この時適応側の決定も同時に考える。

<ステップ3;治療>

本治法

まず本治法を行う。本治法 では1鍼1鍼検脉し目的の脉状に近づいているかを 確認する。

標治法

本治法が終了後標治を行う。重要なのは標治によって本治で作り上げた 脉状を崩してしまわないこと。過度のドーゼや不適切な選穴、手法によって脉状は崩れてしまう ことがあるが標治が適切に行われれば本治直後の脉状よりも更に理想的な脉状になることが多い。
目的の標治が終われば検脉し終了する。

<補足:治療穴>

 本治法において採用される代表的な取穴の組み合わせ。以下に示す取穴の組み合わせ は臨床で良く使われる組み合わせであると言うことでこの組み合わせが絶対と言う訳 ではない。ただ臨床においてこれらの組み合わせをまずこなせる様になれば、そこそ この臨床成績は収められると思う。これらの組み合わせで良い結果を見出せない時 その原因が選穴に有りと思う時には陰陽五行を踏まえながら組み合わせを工夫してみ ると良い結果を導き出せるかもしれない。 取穴の項の五行穴・五要穴 の表を参考にすると良い。
()で囲まれた経穴は4経虚の場合の選穴、<>で囲まれた経穴は状況に応じて選穴しても良い経穴。

決定証

主証

副証

主な病症

取穴

手法

用鍼

肺虚

太淵

太白

 

 

一般的

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

経渠

商丘

 

 

喘咳寒熱

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

尺沢

陰陵泉

 

 

逆気而泄

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

肺虚肝実

太淵

太白

太衝

 

一般的

 

銀1〜2番

銀1〜2番

ステン1〜3番
(銀2〜4番)

 

経渠

商丘

中封

 

喘咳寒熱

 

銀1〜2番

銀1〜2番

ステン1〜3番
(銀2〜4番)

 

尺沢

陰陵泉

太衝
<曲泉>

 

逆気而泄

 

銀1〜2番

銀1〜2番

ステン1〜3番
(銀2〜4番)

 

肺虚肝虚

太淵

太白

太衝

(復溜)

一般的

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

経渠

商丘

太衝

(復溜)

喘咳寒熱

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

尺沢

陰陵泉

太衝
<曲泉>

(復溜)
(陰谷)

逆気而泄

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

脾虚

太白

太陵

 

 

一般的
(体重節痛)

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

商丘

太陵

 

 

喘咳寒熱

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

陰陵泉

太陵

 

 

逆気而泄

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

脾虚肝虚

太白

太陵

太衝

(太谿)

一般的
(体重節痛)

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

商丘

太陵

太衝

(復溜)

喘咳寒熱

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

陰陵泉

太陵

太衝
<曲泉>

(太谿)
(陰谷)

逆気而泄

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

脾虚肝実

太白

太陵

太衝

 

一般的
(体重節痛)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

ステン1〜3番
(銀2〜4番)

 

商丘

太陵

中封

 

喘咳寒熱

 

銀1〜2番

銀1〜2番

ステン1〜3番
(銀2〜4番)

 

陰陵泉

太陵

太衝
<曲泉>

 

逆気而泄

 

銀1〜2番

銀1〜2番

ステン1〜3番
(銀2〜4番)

 

脾虚腎虚

太白

太陵

太谿

(太淵)

一般的
(体重節痛)

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

商丘

太陵

復溜

(経渠)

喘咳寒熱

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

陰陵泉

太陵

陰谷

(尺沢)

逆気而泄

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

肝虚

曲泉

陰谷

 

 

一般的
(逆気而泄)

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

中封

復溜

 

 

喘咳寒熱

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

太衝

太谿

 

 

体重節痛

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

肝虚脾虚

曲泉

陰谷

陰陵泉

(太陵)

一般的
(逆気而泄)

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

中封

復溜

商丘
<太白>

(太陵)

喘咳寒熱

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

太衝

太谿

太白

(太陵)

体重節痛

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

肝虚脾実

曲泉

陰谷

豊隆
<陰陵泉>

 

一般的
(逆気而泄)

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

太衝

復溜

豊隆
<商丘>

 

喘咳寒熱

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

太衝

太谿

豊隆
<太白>

 

体重節痛

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

肝虚肺虚

曲泉

陰谷

尺沢
<太淵>

(陰陵泉)
(太白)

一般的
(逆気而泄)

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

太衝

復溜

経渠

(商丘)

喘咳寒熱

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

太衝

太谿

太淵

(太白)

体重節痛

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

肝虚肺実

曲泉

陰谷

偏歴
<尺沢>

 

一般的
(逆気而泄)

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

太衝

復溜

偏歴
<経渠> 

 

喘咳寒熱

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

太衝

太谿

偏歴
<太淵>

 

体重節痛

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

太衝

太谿

偏歴
<魚際>

 

身熱

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

腎虚

復溜

尺沢

 

 

一般的

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

復溜

経渠

 

 

喘咳寒熱

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

陰谷

尺沢

 

 

逆気而泄

 

 

銀1〜2番

銀1〜2番

 

 

腎虚脾虚

復溜

尺沢

陰陵泉

(太陵)

一般的

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

復溜

経渠

商丘

(太陵)

喘咳寒熱

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

陰谷

尺沢

陰陵泉

(太陵)

逆気而泄

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

腎虚脾実

復溜

尺沢

豊隆
<陰陵泉>

 

一般的

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

復溜

経渠

豊隆
<商丘>

 

喘咳寒熱

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

陰谷

尺沢

豊隆
<陰陵泉>

 

逆気而泄

補(瀉)

 

銀1〜2番

銀1〜2番

銀1〜2番

 

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新着情報
はじめに
コラム

(1)理論
1.1陰陽五行
1.2生理
1.3脉状
1.4病症
1.5六十九難
1.6奇経
1.7子午

(2)診察法
2.1脉診
2.2簡易脉診法
2.3腹診

(3)治療法
3.1プロセス
3.2上達のコツ

(4)実技研修
4.1取穴
4.2刺鍼法
4.3小里方式

(5)その他
5.1参考文献
5.2リンク
5.3Memo
5.4その他

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