「気」「血」の関係について

「気」「血」の概念、ことにお互いの係わりに関して理解をするのに苦労をする人も多いので以下に「気」「血」の関係の概念を例えを挙げて説明してみます。
「血」は脉管外を脉管に沿って自由に流れる「気」の運行によって促されて脉管内を流通しますがこの関係は軌道を宙に浮いて走る「リニアモーターカー」に例えると分かり易いと思います。つまり「リニアモーターカー」は「軌道」の周りに作られた「磁界」が動くことによって「軌道」上を進むので、「血」は「リニアモーターカー」、「脉管(血脉)」はその「軌道」、「気」は軌道上に作られる「磁界」と考えればその関係はよく似ています。以下に「気」「血」の関係の概念と対処法を「リニアモーターカー」に例えて解説してみます。

「血」の滞りがある時それをどうとらえどう処理していくか。つまり、「血」の滞りがあるというのは何らかの原因によって「リニアモーターカー」(血)が円滑に動かなくなった状態であると考えられますがその原因と対処法を考えてみると…

a)「リニアモーターカー」(血)と「軌道」(脉管)は正常であるが「磁界」(気)の供給や流れに障害がある場合。このケースはいわゆる「気」の調整のみによって復旧することができる例です。

b)「磁界」(気)と「軌道」(脉管)は正常だが「リニアモーターカー」(血)自体に不都合があって正常に運行しなくなっている状態。いわゆる「血」が「オ血」の状態に陥ってしまった場合にあたる。この場合ももとはと言えば「血」は「気」によって産生されたものですから総合的には「気」の調整によって「血」の働きは正常に復旧するはずです。しかし「血」の一部分だけが「オ血」として留まっている場合、言い換えれば一部の「リニアモーターカー」(血)が故障している場合は直接「リニアモーターカー」(血)を修理する(血脉へ刺鍼する)か廃棄処分にする(瀉血する)方が手っ取り早いこともあります。

c)「リニアモーターカー」(血)と「磁界」(気)の働きは正常であるが「軌道」(脉管)に障害があるため「リニアモーターカー」(血)が円滑に動くことができない状態。つまり「軌道」(脉管)に障害物があって「リニアモーターカー」(血)の運行に支障がある場合、いわゆる脉管の狭小や梗塞かそれに近い状態がある場合。この場合「磁界」(気)のパワーを上げること(充分に気を補うこと)で「リニアモーターカー」(血)は元のように動き出すかもしれない。しかし技術的には高度になるので術者の技術によっては直接血脉へ刺鍼するか瀉血した方が効果的な場合もあります。瀉血の場合は刺鍼技術よりもどこを瀉血するかを見つける技術の方が実は重要です。

d)「リニアモーターカー」(血)と「磁界」(気)の働きは正常であるが「軌道」(血脉)が壊れて「リニアモーターカー」(血)が脱線(漏血)している場合も考えられます。皮膚の表面近くに細絡が観られる場合がこれにあたります。一度漏れ出てしまった「血」を血脉に戻すことは意味を成さないので漏れ出てしまった「血」を処分しなければならないのですがこれまた「気」の調整だけで完全に細絡を取り除くのには高い技術が必要であるので必要であれば一般的には瀉血をします。

e)「リニアモーターカー」(血)、「磁界」(気)と「軌道」(血脉)すべてに支障をきたしている場合。「気」「血」双方へのアプローチが必要ですがこういう患者は全身的に虚している場合が多いので実際の治療ではまず「気」の調整に重きを置いて患者の体力の回復を診ながら必要に応じて段階的に「血」へのアプローチも加えていけばよいと思います。

まとめ

経絡治療は主に「気」の調整によって治療目的を達成するように毎回の治療を組み立てていきますが患者の病態や術者の技術の習熟度によっては「血」へのアプローチも考えていかなければなりません。それを間違いなく取捨選択することで術者の技術の差を埋めることができるはずです。いずれにしても鍼をするときはもしそれが標治法であってもその鍼が「気」へのアプローチなのか「血」へのものなのかを一本一本きちんと認識しながら行うことが大切です。
2002.5.22

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