臨床経絡
はじめに
十二の都市を持つ国の話
経穴ゲートスイッチ理論
気論
十二正経と奇経と経穴の関係 本論 代表的なスイッチ群 補瀉論
理論の実践
治療原則 刺鍼法 四診(望・文・問・切)
脈状診 比較脈診 症例
役立つ古典理論
陰陽五経 生理
脈状
病症 奇経 子午
附録;難経の読み下し文子午
臨床ひろば
異論な医論
十二の都市を持つ国の話

十二の都市を持つ国のイメージ


――――人体のメカニズムは一般によく小宇宙に例えられるが東洋医学的に具体的に理解を深めようとすれば、もっと小さな空間で例えを作った方が解りやすいかもしれない――――

特筆すべき条件としてはこの国の機能をコントロールしているのがKiという特殊な性質を持つ物質であるということだ。Kiはそれ自体がエネルギーを持ち国の機能に深く関わっている。しかし誰もその実体を見た者はいない。が、しかしそれはそもそもKiには実体が無いからだ。だからKiはその量を推し量ることはできるが数えることはできない。Kiは縦横に、だが規則に則って、留まることなく国中を駆けめぐっている。
またこの国は十二の都市から成り、それぞれが個々にまたは連関して重要な特別の機能を分担して全体の機能を成り立たせている。そしてそれぞれの都市は十二の運河で環のようになって結ばれている。また更に十二の運河はそれぞれを横に結ぶ十五の運河と八つのダムで連絡されている。八つのダムの内二つは特別重要でダムと運河の両方の役目を果たしている。すべての運河は常に決まった法則で都市を絶え間なく一定方向に流通しており、一時的にいくつかの運河の流通が停滞することはあってもすべての流通が途絶えることはない。仮に一つでも流通が全く途絶えることがあるとしたらそれは国の終わりの始まりを意味している。
この国では運河の流れを形作る特殊な液体のことを通常Ketuと呼んでいる。KetuはKiを元にして生成されるがKiと違い実体を持つ。またKetuはKiによって動かされていてKetu自体が単独で動くことはできないのでKiと違い運河やダムから外れて活動することはできない。
また国の機能の全てはKiによって動かされていて運河の流れを調整するゲートの開閉もKiによって通常はなされている。KiもKetuもそれ自体は有限で常に消耗されているので常に補われていかなければならない。補いは国外から供給されいくつかの都市の営みの連関によってKiもKetuも作り出される。したがってKiが十分な活力を得るためにはそれぞれの都市が円滑に機能する必要があるのだがそれらが円滑に機能するためにはまたKiが十分な力を備えていなければならないというメビウスの環のような関係がある。
Kiは自動的に国の営みが円滑に行われるように十二の都市からコントロールされているがKiの量が十分にないと国力は衰える。また時にKiにそれほど不足はないのに国の営みに支障が出ることがある。それは国の運営にしっかりしたビジョンがないのでそれぞれの都市がKiを旨くコントロールできなくなってしまったのだ。しっかりした方向性を持たせると国は見違えるように活気づいてくる。
またこの国は気候や季節によってもその機能がよく影響されるし時として他国との関係においてその機能に大きく影響されることもある。しかしそれも国内に何らかの影響されるための要因が必ずあってのことだ。国内が万全であれば簡単に影響されることはない。
都市の機能はKiとKetuが織りなす運河とダムの働きによって保証されているのでひとたび運河やダムに異変が起きるとすぐさま都市機能に影響する。また都市自体に何か異変が起こってもいずれそれは運河で結ばれた近隣の都市の機能にも影響してしまう。
例えばある都市に問題が生じたとしよう。それはすぐさままたはしばらくして、いずれにしてもいつかは運河を通じて近隣の都市に影響する。すぐさま影響が出る場合は縦横に活動できるKiによって災いが伝播された結果も多い。ひとつの都市の機能に不都合が生じるとそこから近隣の都市の機能に次第に影響が出てくるのは必至なのだ。
またあるときはKetuの量に問題が生じることがある。Ketuが減ると都市の活力は衰えてくる。しかし通常であれば心配することはない。それぞれを連絡する場所にはKetuの量を調整するゲートがあってその開閉によってKetuの量を適正に保っている。仮にそれでも十分でなければ更にダムを介してKetuの量を調整している。
ゲートの開閉は通常は自動的に行われる。その調節機能は国力に直接影響してくる。仮にゲートの開閉が適正に行われないときは国外から支援を得てその調整をすることができる。その方法のひとつにゲートのスイッチを他動的に操作する方法がある。スイッチは国中に沢山存在していて通常Tuboと呼ばれている。Tuboはゲートと同じ場所にある場合もあればそこから離れた場所にある場合もある。またTuboの性質によっては複数のゲートを同時に開閉できるものもある。
またこの国は運河の護岸が崩れて運河を塞いだり決壊したりした場合なども通常は自動的に修復する機能を持つのであるがその機能が十分に働かなくなるときがある。そのときは国外からの力を借りなければならなくなるがその方法の一つに修復機能を促すスイッチを探して修復する方法やその現場に赴いて直接的な修復作業を行う方法がある。一般的により安全で間違いが無いと言われるのは前者だが後者の方法が直接的であって著功を示す場合もある。しかし半面状況を更に悪化させてしまったり二次災害を起こすリスクも伴う。ここで使われるスイッチも実は先に述べたTuboがその役割を兼ねている。
KiやKetuの絶対量が極端に少なくなるといずれの方法でも国の機能の回復は望めないのでただひたすら絶対量を増やすことに専念しなければならず国外からの積極的な支援を待つしかない。
いずれにしても国の安定はKiとKetuの関わりに大きく左右されるので国を収めるものはKiとKetuの調和を図ることに腐心しなければならない。また国外から国の安定を図る時は有効なスイッチTuboを如何に用いる事ができるかにかかっている。

<ヒント>
Ki;気
Ketu;血
Tubo;経穴
運河;経絡
ダム;奇経
都市;臓腑