舞二年、太鼓三年、笛五年、鼓(つづみ)八年、謡(うたい)八年。
解釈:芸事(げいごと)を一通り習得するまでにかかる、凡その修業年数を
いった言葉。
参らぬ仏に罰は当たらぬ。
類義:触らぬ神に祟りなし。
前十両に、後ろ三両。
解釈:美人ではあるけれど、後ろ姿がよくない人のこと。
反義:後ろ千両、前一文。
前で追従(ついしょう)する者は、陰で謗る(そしる)。
解釈:媚(こ)び諂(へつら)い、おべっかを言う人は、必ず陰で悪口を言
うものである。
類義:お前、追従。
蒔かぬ種は生えぬ。
解釈:何もしなければ、よい結果は得られないというたとえ。
類義:打たねば鳴らぬ。ギブ・アンド・テイク。火の無い所に煙は立たぬ。
反義:開いた口へ牡丹餅。果報は寝て待て。鴨が葱(ねぎ)を背負ってくる。
参考:No autumn fruit without spring blossom.(春花開かざれば秋実ら
ず)
曲がらねば世が渡られぬ。
解釈:正義ばかりでは、この複雑な世の中を切り抜けることは難しいという
こと。
類義:商人(あきんど)と屏風は直ぐには立たぬ。
曲がるは折れるに勝る。
解釈:やり直しの効く失敗ならまだしも、やり直しの効かないものは困ると
いう意。
曲がれる枝には曲がれる影あり。
解釈:悪い事態に陥ったのは、全て悪い原因が作用しているということ。
蒔絵(まきえ)の重箱(じゅうばこ)に、牛の糞を盛る。
解釈:立派な容器に詰まらない物を入れること。外見と中味とが釣り合わな
いたとえ。
類義:錦の袋に糞を入れる。
枕を高くして眠る。
解釈:何の心配もなく、安心してぐっすり眠れる状態をいう。
負け惜しみの減らず口(ぐち)。
解釈:敗者が悔しがって、憎まれ口を叩くこと。
参考:イソップ物語「狐と葡萄」の中の Sour grapes.(酸っぱい葡萄)
負けるが勝ち。
解釈:相手に勝ちを譲って争わず、大局的に有利な結果になること。
類義:逃げるが勝ち。負けて勝つ。
参考:Yielding is sometimes the best way of succeeding.(譲歩も時に
は成功の最良の方法である)。To stoop to conquer.(征服のたもの屈服)
負けるも勝つも運次第。
解釈:勝敗は、時の運によって決まることが多いということ。
類義:勝つも負けるも運次第。勝つも負けるも時の運。
孫飼わんより、犬の子飼え。
解釈:幾ら孫を可愛がっても、孫からの孝養は期待できないということ。
類義:孫飼わんよりもえの子飼え。
馬子に温袍(おんぽう)。
解釈:馬方にはどてらが相応しい。その人に似つかわしいもののたとえ。
類義:馬子にわんぽ。
反義:女に裃、男に振袖。
馬子にも衣装。
解釈:どんな人でも、身形(みなり)を整えれば立派な人間に見えるという
たとえ。
類義:杭(いぐい)にも笠。きっこんぼうにも着物。切株にも衣装。木偶
(でく)も髪形(かみかたち)。人形にも衣装。麦藁(むぎわら)人形も装束
から。
反義:衣ばかりで和尚はできぬ。
参考:Fine feathers make fine birds.(美しい羽は鳥を美しくする)
孫の可愛いと向こう脛(ずね)の痛いのは、堪(こた)えられぬ。
解釈:孫はたとえようがないほど可愛いということ。
類義:孫は子より可愛い。孫は目の中に入れても痛くない。
孫は子より可愛い。
類義:子より孫が可愛い。
正宗(まさむね)も焼き落つれば、釘の価(あたい)。
解釈:衰えた者には、以前のような力がないということ。「正宗」は名刀の
こと。
交り絶ゆるも、悪声(あくせい)を出(いだ)さず。
解釈:疎遠になった相手でも、決して悪口を言い触らさない。君子の交わり。
不味い物の煮え太り。
類義:味無い物の煮え太り。
枡(ます)で量って箕(み)で零す(こぼす)。
解釈:収穫時には枡で厳密に量って入れた穀物を、箕で一遍に零してしまう。
今まで苦労して蓄めて来た物を、一時に無駄にしてしまうことのたとえ。また、
収入に比べ、支出が非常に多いこと。
類義:木(こ)っぱで集めて、材木で流す。爪で拾うて箕で零す。
鱒は三年の古疵(ふるきず)も呼び出す。
解釈:菜食生活に偏っていた時代、鱒は特別に精の強い物とされていたこと
から、鱒を食べると古傷が化膿するといわれた。
待たぬ月日は経ちやすい。
解釈:待ち焦がれている日は、中々やって来ないものだが、待っていないと、
あっという間に月日は過ぎ去ってしまうということ。
まだ早いが遅くなる。
解釈:油断は禁物ということ。あまり油断し過ぎると、結局は時間に間に合
わなくなってしまう。
類義:油断大敵。
待たるるとも、待つ身になるな。
解釈:待つ身というのは非常に苛立たしいものだから、人は待たせても自分
は待つ身にならない方がよいということ。
類義:待つ身は長い。
間違いは多く酒より起こる。
解釈:失敗は飲酒が元で起こることが多い。
類義:酒は諸悪の基。
待つうちが花。
類義:待つ間が花。
松毬(まつかさ)よりも年かさ。
類義:亀の甲より年の劫(こう)。
待つのが祭。
解釈:祭は、待つ間は楽しいものだが、いよいよ祭が始まれば、あっけなく
終わってしまうものであるということ。
類義:祭の日より前の日。
松の木柱も三年。
解釈:松は腐りやすいものだが、暫くの間ならば役に立つ。差し当たり、当
座の役には立つという意。
待つ間が花。
解釈:先の事を予想して待っているうちは楽しいものだが、いざ目的を達す
ると、それほどのものでもないということ。
類義:ならぬ中(うち)が楽しみ。待つうちが花。祭の日より前の日。見ぬ
が心憎し。
待つ身が長い。
類義:待たるるとも、待つ身になるな。
待つ身よりも、待たるる身。
解釈:人を待つのも待ち遠しいものだが、待たれる方もそれ以上に気が揉め
るということ。
類義:待たるるとも、待つ身になるな。
祭の渡った後のよう。
解釈:祭りのざわめきが過ぎ去った後のように、賑やかな状態から急にひっ
そりと静まり返った状態のことをいう。「祭」とは、京都の葵祭(あおいまつ
り)を指す。
類義:大風の吹いた後。大水の引いた後のよう。大水の引越。
待てば海路(かいろ)の日和あり。
解釈:焦らずじっくりと待っていれば、やがて好運が巡って来るということ。
類義:石の上にも三年。果報は寝て待て。急(せ)いては事を仕損ずる。待
てば甘露の日和あり。
参考:After a storm comes a calm.(嵐の後には凪(なぎ)が来る)
窓から槍。
類義:藪から棒。
的なき弓に矢声(やごえ)。
解釈:的がないのに、的に矢が当たった徴(しるし)の矢声(矢が命中した
ときに射手が発する声)を上げることで、何の目的も持たぬまま物事をするこ
とのたとえ。
類義:的なきに矢を放つ。
的矢(まとや)の如し
解釈:的と矢のように一対の密接な関係にある物のこと。
類義:影の形に従うが如し。
俎板(まないた)の魚(うお)
類義:俎上(そじょう)の魚。
学びて思わざれば、則ち罔し(くらし)。(論語)
解釈:ただ学説を丸覚えしただけでは、何の役にも立たず、自らそれを理解
して身に付けない限り、確かな知識とはいえないこと。
学ぶ門(かど)に書(ふみ)来る(きたる)。
解釈:読書好きな人の許には、自然と本が集まってくる。日常心掛けている
事には自然と機会が巡ってくるということ。
類義:花好きの畑に花集まる。
蝮(まむし)の子は蝮。
解釈:親が悪人であれば、その子供も悪人であるということ。
類義:親に似た亀の子。蛙の子は蛙。
まめ鉄砲を食った鳩のよう。
類義:鳩に豆鉄砲。
豆を煮るに、豆がらを焚く。
解釈:豆と豆がらは、元は同じ根から生じたものであることから、兄弟や仲
間同士が互いに傷付け合うことをいう。
類義:七歩(しちほ)の才。
守り手の隙(ひま)あれど、盗人の隙なし。
解釈:盗難に対する用心は忘れ勝ちなものだが、盗人は何時でも手段を考え
ているので、休む暇がないということ。
反義:盗人の隙はあれども、守り手の隙なし。
眉毛(まゆげ)に火が点く。
解釈:自分の身に危険が迫っていることのたとえ。
類義:お蔵に火が点く。焦眉(しょうび)の急。眉に火点く。爛頭(らんとう)。
眉(まゆ)に唾(つば)を付ける。
解釈:人に騙されないように用心すること。狐や狸に化かされないように、
眉毛に唾を付けるとよいという俗説による。
眉(まゆ)を読む。
解釈:眉毛の数を数える。相手の状態を観察したり、力量や価値を推量した
りすること。また、付け込む隙を探ること。
類義:睫(まつげ)を読む。眉毛を数える。
迷う者は、路(みち)を問わず。
解釈:道理が分からない者に限って、賢者に物を尋ねようとはしないという
意。
類義:迷わんよりは問え。
迷えば凡夫(ぼんぷ)、悟れば仏。
解釈:人間には善人・悪人の別は無いのだから、皆修行に励むべきだということ。
類義:仏も昔は凡夫。
迷わぬ者に悟りなし。
解釈:悩みがなければ悟ることもない。悩みがある者ほど悟るものだということ。
類義:大疑(たいぎ)は大悟(たいご)の基(もとい)。
丸い卵も切りようで四角。
解釈:同じ事でも伝え方次第で、よくも悪くも受け取られるということ。
活用⇒卵は、四角に切ることが出来る。The egg can be cut in the
square.
類義:物は言いよう。
丸くとも一角(ひとかど)あれや人心。(川柳)
解釈:性格が円満であるばかりでなく、しっかりとした面も持ちたいものだ
ということ。
類義:丸い物は転びやすい。
真綿で首を絞める。
解釈:ゆっくり、じわじわと相手を責め、動きが執れない状態に持っていく
こと。
類義:ねば綿で首を絞める。真綿で喉を絞める。綿にて首を絞むる如し。
真綿に針を包む。
解釈:外見は優しく振る舞っているが、底意地が悪いことをいう。
類義:笑みの中(うち)の刀。笑みの中に刀を砺ぐ(とぐ)。綿に針を包む。
回るは早道。
類義:急がば回れ。
真中馬糞(まくそ)、両端(りょうはし)殿様。
解釈:真ん中は縁起が悪いということ。三人で写真を撮るとき、真ん中に映
った人は死ぬという迷信もある。
万の倉より子は宝。
解釈:子に勝る宝はないということ。
類義:子に過ぎたる宝なし。子は人生最上の宝。千の倉より子は宝。
反義:子は三界の首枷(くびかせ)。子故に泣く。
満(まん)は損を招く。
類義:盈(み)つれば虧く(かく)。
満(まん)を持す(じす)。
解釈:弓を引き絞り構える様子。準備を十分に整え、機会を待つこと。また、
極点に達したまま持ち堪(こた)えること。
用例:満を持して反撃の機会を待つ。
|