飼犬に手を噛まれる。 解釈:日頃可愛がって面倒をみていた人や部下から、害を加えられたり、裏 切られたりすることのたとえ。 類義:愛犬に手を噛まれる。後足で砂をかける。恩を仇で返す。飼犬に手を 食われた。飼い飼う犬に手を噛まれる。飼い飼う虫に手を食われる。 反義:犬は三日飼えば、三年恩を忘れぬ。 貝殻で海を量る。 解釈:小さな貝殻で海の水を汲んで、海水の量を測ること。自分の狭い見聞 を元にして、大きな問題を議論することのたとえ。 類義:一斑(いっぱん)を見て全豹を卜す。貝殻で海を干す。管を以て天を 窺う。大海を貝殻でかえ干す。大海を耳掻(みみかき)で測る。針の穴から天 井覗く。針を以て地を制す。 会稽(かいけい)の恥。 解釈:人から受けた屈辱的な恥のこと。中国の春秋時代に、越(えつ)王の 勾践(こうせん)が呉(ご)王の夫差(ふさ)と戦って、会稽山で敗れて屈辱 的な講和を結んだが、多年辛苦の末に夫差を破って恥をすすいだという故事に よる。 骸骨を乞う(こう)。 解釈:辞職を願い出ること。君主に仕えるのは身体を捧げて仕えるものだか ら、老臣が職を辞めるときは、せめて死んだ身体の骨だけいただきたい、と願 い出るところから出た言葉。 解語(かいご)の花。 解釈:言葉の分る花。美人のたとえ。唐の玄宗(げんそう)皇帝が楊貴妃 (ようきひ)を指して言った言葉。 改竄(かいざん)。 解釈:文字や語句を改め直すこと。「竄」は改めること。今は文面を故意に 変えて悪用する場合をいうことが多い。 鎧袖一触(がいしゅういっしょく)。 解釈:相手を容易く屈伏させることのたとえ。鎧の袖で一寸触っただけで、 敵が倒れるという意。 外柔内剛(がいじゅうないごう)。 解釈:態度・見かけは穏やかだが、内面はしっかりと強い意志を持っている こと。柔和であるが、実際は芯が強いこと。 活用⇒見かけは優しいが、心持ちがしっかりしていること。Looks sweet, but it has a solid feeling. 下位上達(かいじょうたつ)。 解釈:下の者の意見や事情などを上位の者の耳に届くように伝えること。 活用⇒下位の意見を、上位に伝えること。Pass on the opinion of the subordinate position to the high rank. 反義:上意下達(じょういかたつ)。 蓋世(がいせい)の雄(ゆう)。 解釈:世の中を覆い隠すほどに心立てが大きく、優れた才能を持った人物。 海賊が山賊の罪を上げる。 解釈:同じ盗賊でも、利害関係があまり深くないものは、敵同士になるとい うたとえ。 類義:山賊の罪を海賊が上げる。 咳唾(がいだ)珠を成す。 解釈:何気なく発する言葉も、玉のように美しい名句となっている。詩文の 才能が極めて豊かであることのたとえ。 参考:「咳唾」は、せき・つばき。目上の人の言葉を敬っていう言葉。 書いた物が物を言う。 解釈:書類が動かぬ証拠として、後で役立つこと。とかく口約束は水かけ論 になりやすく、書類にしてあると言い逃れできない。 類義:証文が物言う。死んでも書いた物が物を言う。 快刀乱麻(かいとうらんま)を断つ。 解釈:よく切れる刀で、もつれた麻を断ち切る。もつれた物事を手際よく明 快に処理すること。 櫂(かい)は三年、櫓(ろ)は三月(みつき)。 解釈:櫓に比べると、櫂の使い方は難しく、一人前になるのに三年もかかる。 一角(ひとかど)になるのは容易ではないたとえ。 類義:顎(あご)振り三年。棹(さお)は三年、櫓は三月。 隗(かい)より始めよ。 解釈:遠大な事業を起こすためには、手近な事から始めるのがよいというこ と。また、何事をするにも、まず言い出した自分から始めよという意にも用い る。中国の戦国時代、郭隗(かくかい)の言葉。 類義:死馬(しにうま)の骨を買う。 偕老同穴(かいろうどうけつ)。 解釈:夫婦が仲よく共に長生きして、死後は同じ墓に葬られる。夫婦の契り が固いことのたとえ。 類義:お前百までわしゃ九十九まで。 参考:人生儀礼に関する祝詞。 回禄(かいろく)の災い。 解釈:「回禄」は火の神、火災のこと。 類義:祝融(しゅくゆう)の災い。 替義(かえぎ)なしの晴着なし。 解釈:何時も美服を着ているが、その一枚だけで着替えがないこと。着たき り雀。 類義:常上着の晴着なし。 カエサルの物はカエサルに。 解釈:公民としての法律上の義務を果たせ、という意。 参考:新約聖書に「カエサルの物はカエサルに、神の物は神に返しなさい」 とある。 返り花の多い年は大雪となる。 解釈:植物の返り咲きが多い年は、大雪が降ることが多い。日照りがひどか ったり、台風で枝や葉が傷められたりすると返り咲きが多いものである。 顧みて他を言う。 解釈:答えに窮して、左右を見回して他の事を言う。他所事(よそごと)に 紛らすこと。 類義:お茶を濁す。左右に託す。左右を顧みて他を言う。 蛙が地際で越年するときは、冬暖かい。 解釈:蛙が地面近くの浅い所で冬眠するときは、冬が暖かいことが多い。 蛙の願(がん)立て。 解釈:得することばかりを考えて、損することを考えない者、前ばかり見て、 後ろを見ない者のこと。蛙が人間のように立って歩けるようにと願を立てて、 清水寺(きよみずでら)にお参りしたが、望みは叶ったものの、目が後ろ向き なので歩けず、干しからびて死んだという話から。 類義:かえるの立願。 蛙の面(つら)に水。 解釈:どんな仕打ちに遭っても、何も感じず、平気でいる様。 類義:石に灸(きゅう)。牛に経文(きょうもん)。牛に対して琴を弾ず。 牛の角を蜂が刺す。馬の耳に風。馬の耳に念仏。鹿の角に蜂。 参考:Pouring water on a duck's back.(家鴨の背中に水を注ぐ) 蛙は口から呑まる。 解釈:黙っていればいいものを、無用な事を言って、災いを招くことのたと え。蛙は鳴いたために蛇に呑まれる。 類義:蛙は口から蛇に呑まれる。雉子(きじ)も鳴かずば射(う)たれまい。 顔に泥を塗る。 解釈:面目(めんぼく)を失わせ、恥をかかせること。 顔に似ぬ心。 解釈:顔と心とは、必ずしも一致しない。美しい人でも、心の醜い人は多い ものだ。 類義:顔と心は裏表。外面如菩薩(げめんにょぼさつ)内心如夜叉(ないし んにょやしゃ)。心は顔に似ぬもの。 河海(かかい)は細流を択(えら)ばず。 解釈:大人物は度量が広くて、どんな人でも選り好みせず受け入れる。黄河 (こうが。中国の川)や海がどんな小川の流れも差別無く受け入れるのにたと えたもの。 類義:紅海は細流に逆らわず、故に百川の長たり。大海は芥(あくた)を択 ばず。泰山(たいざん)は土壌を譲らず。 下学上達(かがくじょうたつ)(論語)。 解釈:手近なところから学んで、次第に高遠な学問へと進んでいくこと。 夏下冬上(かかとうじょう)。 解釈:炭火をおこすには、火種を夏は炭の下に、冬は炭の上に置くとよいと いう意。 踵(かかと)で頭痛を病む。 解釈:見当外れの心配をすること。 類義:頭痛を疝気(せんき)に病む。 屈(かが)み女に反り男。 解釈:女は俯(うつむ)いて前屈みにしているのがよく、男は胸を張って反 り返っているのが見栄えがしてよい。 類義:女の物思うにはうなだれ、男の物案ずるには仰ぐ。こごみ女に反り男。 鏡は女の魂。 解釈:鏡は、女の魂を打ち込むものである。「刀は武士の魂」と続く言葉。 類義:鏡が曇ると魂も曇る。鏡と操は女の持つもの。 懸かるも引くも折(おり)による。 解釈:何事も進退には時機があるということ。敵に攻めかかるのも退却する のも、よい時機を見てしなければいけない。 垣堅くして、犬入(い)らず。 解釈:家庭内が健全に治まっていると、外からこれを乱す者が入って来る隙 がない。 餓鬼(がき)に苧殻(おがら)。 解釈:頼りにならないこと。空腹のため力のない餓鬼が、苧殻のような弱い 棒を振り回しても、さっぱり役に立たない。 反義:鬼に鉄棒(かなぼう)。 鍵の穴から天を覗く。 解釈:狭い見識から大きなものを推し量ること。 類義:一斑(いっぱん)を見て、全豹(ぜんぴょう)を卜(ぼく)す。井に 座して天を観る。竹の管から天を覗く。針の穴から天上覗く。葦(よし)の髄 (ずい)から天井覗く。 柿の皮は乞食に剥かせ。 類義:魚は殿様に焼かせよ、餅は乞食に焼かせよ。 餓鬼の断食(だんじき)。 解釈:見えすいた偽善や、体裁をつくろって善行を殊更に言い立てるたとえ。 餓鬼は普段から物を食べないのだから、断食しても大して意味はない。 類義:餓鬼の断食、悪女の賢者ぶり。河童の寒稽古。乞食の断食、悪女の賢 者ぶり。 餓鬼の花争い。 解釈:貧乏人が空腹をそっちのけにして、無用な物好きをすること。 類義:餓鬼の花遊び。 餓鬼の目に、水見えず。 解釈:熱心になり過ぎるあまり、かえって求める物を見落とすことのたとえ。 餓鬼は何時も渇きに苦しんでいるので、焦って水が目に入らない。 類義:魚(うお)の目に水見えず。凝っては思案に能わず(あたわず)。凝 っては思案に余る。 餓鬼も人数。 解釈:つまらない者でも、居れば多少の効果はある。また、大勢集まれば、 侮りがたい力となる。 類義:餓鬼も千人。枯木も山の賑わい。子供でも数の中(うち)。とても人 数(にんじゅ)。 蝸牛(かぎゅう)角上(かくじょう)の争い。 解釈:取るに足らない争い。狭い世界でのつまらない争い。蝸牛(かたつむ り)の左の角に国のある触(しょく)氏と、右の角に国のある蛮(ばん)氏と が、領地問題で争ったという寓言(ぐうげん。中国のたとえ話)による。 火牛(かぎゅう)の計(けい)。 解釈:牛の角に刃物を付け、尾に葦の束を結んで火を点け、敵陣に放つ戦術。 中国斉(せい)の国の田単(でんたん)が千頭余りの牛を用いて、この戦術を 行い、燕軍(えんぐん)に大勝した。木曾義仲(きそよしなか)もこれによっ て平家(へいけ)の軍を破った。 学者の取った天下なし。 解釈:学者は政治や国家について論じるが、実際には疎いので、自ら政治を 行うことはできない。 学者の不身持ち(ふみもち)。 解釈:立派な事を言うが、口先だけで、実行しないことのたとえ。学問に通 じている人は、自分では案外実行しないものである。 類義:医者の不養生。学者不行儀。紺屋(こうや)の白袴。算術者の不身代。 神道者(しんとうしゃ)の不正直。坊主の不信心。 学者貧乏。 解釈:学者は理論を説くのは得意だが、金儲けには疎く、貧乏なものである。 類義:学者と役者は貧乏。軍者ひだるし、儒者寒し。肥たる仙人、富める道 士、あることなし。 隠すより現る。 解釈:何事も隠せばかえって人に知れやすいものである。 類義:かくしていよいよ現れる。隠す事千里。隠す事は顕る。隠す事は知れ 易し。隠すほど知れる。隠せばなお顕る。隠れたるより現るるはなし。 かくすれば、かくなるものと知りながら、やむにやまれぬ大和魂。 解釈:幕末の志士たちに多大な影響を与えた吉田松陰(よしだしょういん) の歌である。「このようなことをすれば、このような結果になることを十分承 知していながら、止むに止まれない気持ちから行動に踏み切った。これこそが 日本人の魂なのだ」 類義:大和魂(やまとだましい)。 学問に王道なし。 解釈:学問には、一足飛びに身につく特別な方法などというものはない。 「王道」とは、王様専用の近道のこと。 類義:学問に近道なし。 参考:ユークリッドの言葉。There is no royal rord to learning.の訳語。 楽屋から火を出す。 解釈:自分から災いを引き起こすこと。内部から騒動が起こること。 楽屋で声を嗄らす(からす)。 解釈:無駄に精力を費やすこと。努力が人に認められないこと。 類義:縁の下の力持ち。陰の舞の奉公。骨折り損のくたびれ儲け。 隠れたる信(しん)あれば、顕れての利生(りしょう)。 解釈:心の中に誠実さを持っていれば、自然に外に現れてわが身の幸せとな る。人に知られない善行にも、必ずよい報いがあるものだ。 類義:陰徳あれば陽報あり。隠れたる信あれば、顕れたる感あり。隠れての 信は顕れての徳。 隠れたるより見(あらわ)るるはなし。 解釈:秘密にしようとすると、かえって知られやすいという意。 学を好むは、知(ち)に近し。 解釈:学問を好むということは、それだけで既に知者に近づいたことである。 類義:驥(き)をねがう馬は、驥の乗。 |