塞翁(さいおう)が馬。 解釈:人生の禍福は予測できないものだから、その度に悲しんだり喜んだり することはないということ。昔、中国の辺境の塞(とりで)に住む老翁の飼っ ていた馬が逃げたが、数ヶ月後、駿馬(しゅんめ)を連れて帰ってきた。とこ ろが老翁の息子はその駿馬に乗って落馬して怪我をしてしまった。その後戦争 が起こり、若者達が大勢戦死したが、その息子は足の怪我のお蔭で徴兵を免れ 生き残ったという故事による。 類義:禍福は糾(あざな)える縄の如し。吉凶は糾える縄の如し。 細工は流々(りゅうりゅう)。仕上げを御覧(ごろう)じろ。 解釈:細工の方法については、それぞれ流儀があるから、方法に口を挟まず、 でき上がりを見て批判してくれということ。 類義:細工は流々、仕上げが肝腎(かんじん)。 細工貧乏、人宝(ひとだから)。 解釈:手先の器用な人は、とかく他人には重宝がられるが、物を究める姿勢 に欠けているため、大成しないということ。 類義:器用貧乏人宝。細工貧乏村宝。職人貧乏人宝。 歳月、人を待たず。 解釈:時は、人の都合に構わず過ぎていく。今という時は二度と来ないから、 寸時も惜しんで勉強せよということ。 類義:今日の後に今日なし。光陰矢の如し。歳月流るる如し。盛年(せいね ん)重ねて来(きた)らず。 最後に笑う者の笑いが最上。 解釈:十分確かめないで、気早に喜んではいけない。最後に勝利を勝ち取っ た者が会心の笑みを漏らすものである。 類義:最後に笑う者が最もよく笑う。 参考:He laughs best who laughs last.の訳語。 才子(さいし)、才に倒れる。 解釈:才能のある者は、自分の才を過信し過ぎて、かえって失敗し勝ちだ。 類義:才知は身の仇(あだ)。 才子多病(さいしたびょう)。 解釈:優れた才能のある人は、とかく病気勝ちであるということ。 類義:佳人薄命(かじんはくめい)。美人薄命。 才子短命、佳人薄命。 解釈:才能の優れた者や、美貌の持主の生命力の弱さをいった言葉。 最上は幸福の敵。 解釈:より大きな幸福を願い、そのために不満が生じて、現在の幸福を幸福 と感じなくなるようでは、どうしようもない。 類義:上を見れば方図(ほうず)が無い。大吉は凶に還る。陽極まって、陰 生ず。 才人(さいじん)、才に躓く(つまずく)。 類義:才子(さいし)、才に倒れる。 采薪(さいしん)の憂い。 解釈:自分の病気を謙(へりくだ)っていう言葉。薪(たきぎ)を採りに行 って、疲労した程度の病気。また、病気で薪拾いの労働にも耐えないという説 もある。 彩(さい)ずる仏の鼻を欠く。 解釈:念を入れ過ぎて、肝心な部分をぶち壊しにしてしまうことのたとえ。 類義:彩ずる仏、鼻を削ぐ。過ぎたるは猶及ばざるが如し。念の過ぐるは不 念。下手(へた)仏師の地蔵直し。 反義:念には念を入れ。 材(ざい)大(だい)なれば、用を為(な)し難し。 解釈:材木が大き過ぎると利用しにくい。人間もあまり優れていると、世に 用いられないものである。しかし、世に合わないのは偉大過ぎるためだから、 悲しむことはないということ。 類義:杓子(しゃくし)は耳掻きにならぬ。 反義:大は小を兼ねる。 災難なら畳の上でも死ぬ。 解釈:家の中の畳の上にいても、怪我や火事などの災難に遭って死ぬことが ある。災いはどこで遭うか分からないということ。 災難の先触れはない。 解釈:災難は何時訪れるか分からないから、平生の用意が大切であるという こと。 参考:寺田虎彦(てらだとらひこ)の「災害は忘れた頃にやって来る」も同 趣旨である。 賽(さい)は投げられたり。 解釈:事ここに至った上は、あれこれ悩まず断行するほかないという意。紀 元前49年、ポンペイウスとの決戦を決意してシーザーは、元老院令を犯してル ビコン川を渡る際、この言葉を残した。 財布が軽けりゃ、心が重い。 解釈:お金が無いと、気持が憂鬱になり、落ち込んでしまうという意。 類義:財少なければ、悲しみ少なし。財布重けりゃ、心が軽い。 参考:A light purse makes a heavy heart.の訳語。 財布の底と心の底は、人に見せるな。 解釈:他人に矢鱈と本心を語ってはいけない。また、お金についても警戒し なければならない。 財布の紐は、首に掛けるより心に掛けよ。 解釈:金を盗まれないように用心するより、浪費しないようにすることが大切だ。 棹(さお)三年に櫓(ろ)八町(はっちょう)。 解釈:同じように見える物でも、難易があるというたとえ。舟を操る棹を使 いこなすのには長い時間がかかるが、櫓を漕ぐ技術を習得するには短時間で済 む。 類義:棹は三年、櫓は三月。櫓三年に櫂(かい)一時。櫓三年に棹八年。 竿竹(さおだけ)で星を打つ。 解釈:不可能な事をする愚かさのたとえ。また、思う所に届かぬもどかしさ のこと。 類義:竿でせせるよう。竿の先で星を打つ。擂粉木(すりこぎ)で腹を切る。 竿の先に鈴。 解釈:お喋りな人間を形容した言葉。釣竿の先に鈴を付ければ、魚がかかる 度に鳴ってうるさくてしようがない。 棹(さお)は三年、櫓(ろ)は三月(みつき)。 類義:棹三年に櫓八町。 盃に孑孑(ぼうふら)が湧く。 解釈:早く飲むようにと酒を薦める言葉。酒を入れたまま何時までも置いて おくと、盃の中にボウフラが湧くという意。 類義:盃は畳の模様ではない。 魚は殿様に焼かせよ、餅は乞食に焼かせよ。 解釈:魚と餅の上手な焼き方を言ったもの。魚を焼くときは、何度もひっく り返すと身が崩れるから、鷹揚な人間が焼く方がよい。餅は絶えずひっくり返 して焦がさないようにするため、こせこせした人間の方が適任である。 類義:瓜の皮は大名に剥かせよ、柿の皮は乞食に剥かせよ。金持の子には魚 を焼かせろ、貧乏人の子には餅を焼かせろ。 坂に車。 解釈:車を引いて坂を登ること。油断をすると後へ戻ってしまうたとえ。 酒外れ(さかはずれ)はせぬもの。 解釈:酒の好きな人と一緒にいるときは、調子を合わせて少しでもいいから 飲むべきである。 類義:食い外れはするとも、酒外れはせぬもの。 酒屋へ三里、豆腐屋へ二里。 解釈:田舎の不便な土地のこと。 下がり蜘蛛(ぐも)があれば、人が来る。 解釈:天井や壁から蜘蛛が下りてくると、客があるという古来からの俗信。 類義:鳥影(とりかげ)が刺せば人が来る。左手の掌(てのひら)が痒(か ゆ)ければ、待ち人が来る。 先勝ちは糞勝ち。 解釈:勝負事で、最初に勝つのは当てにならないこと。勝負強い人ほど、後 半になって力を出してくるものである。 類義:先勝ちは馬鹿勝ち。初拳(しょけん)は拳(こぶし)に非ず(あら ず)。始めの勝ちは、糞勝ち。 先立つ物は金(かね)。 解釈:何をするにしても、まずお金が必要だということ。 先んずれば、人を制す。 解釈:人より先に事を行えば、有利な立場に立つことができる。 類義:機先を制する。先手が万手。早いが勝ち。 策士(さくし)、策に溺れる。 解釈:駆け引きの上手い人は、策を弄し過ぎてかえって失敗する。 類義:河童の川流れ。策士策に倒れ、才人才に破る。 桜折る馬鹿、柿折らぬ馬鹿。 解釈:桜は枝を折ると枯れやすいが、逆に柿は枝を折った方が翌年新しい枝 を伸ばし、よく実がなることをいう。 桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿。 解釈:桜は腐らないように枝葉切らず、梅の枝は花を咲かせるために切るの がよいという剪定(せんてい)の教え。 酒が酒を飲む。 解釈:酒飲みは酔うにつれて、その酔いの勢いで更に酒を飲むものである。 類義:酒が酒を呼ぶ。 酒買って尻切られる。 解釈:人に酒をご馳走したのに、尻を切られるような乱暴をされる。好意で したのに、かえって仇(あだ)で返されるたとえ。 類義:恩を仇で返される。酒買うて臂(ひじ。肱)切らるる。酒盛って尻踏 まれる。 酒極まって乱となる。 解釈:楽しく飲み始めた酒の宴(うたげ)も、酒量が度を越すと喧嘩が始ま る。 類義:礼に始まり乱に終わる。 酒と朝寝は貧乏の近道。 解釈:大酒を飲んだり、朝寝をしたりして仕事を怠けていれば、どんな人で も忽ち貧乏になる。 酒と産(さん)には懲りた者がない。 解釈:大酒を飲んだ後の苦しみや、お産の辛さは大変なものなのに、もう止 めたと言う者はいない。 酒と煙草は飲んで通る。 解釈:酒と煙草は無駄なものではあるが、飲んだために貧乏する者はないし、 飲まない者がその分貯金をして金持になることもない。短い一生のこと、酒も 煙草も飲むだけ得というものだ、という酒飲みや喫煙者の言訳。 類義:御神酒(おみき)上らぬ神はなし。下戸(げこ)の建てた蔵はない。 酒なくて何の己が桜かな。 解釈:花見には酒が付き物だ。酒のない花見など、一向に面白くない。 類義:花より団子。 酒に呑まれる。 解釈:酒に酔い潰れて本心を失う。 類義:酒に回される。酒、人を飲む。 酒に別腸(べつちょう)あり。 解釈:酒には酒の入る別の腸がある。酒量の多少は体格の大小に関係しない こと。 酒の燗(かん)は人肌(ひとはだ)。 解釈:酒の燗は熱過ぎても温過ぎてもいけない。人の体温くらいがよい。 酒飲みの尻切れ襦袢(じゅばん)。 解釈:酒飲みは酒にお金を使うので、服装にかまうゆとりがないこと。 酒の酔い、本性違(たが)わず。 解釈:どんなに酒に酔っていても、本来の性質は失われることはない。 類義:酒飲み本性違わず。上戸(じょうご)本性違わず。 酒は憂いの玉箒。 解釈:酒は悩み事や心配事を忘れさせてくれる美しい箒である。酒を賛美し ていう言葉。 酒は燗、肴は刺身、酌はたぼ。 解釈:酒は燗の具合が肝心であり、肴は刺身が一番で、お酌は美人に限ると いうこと。 酒は気付け薬。 解釈:酒は衰えた気力を回復させるために効果がある。 類義:酒は天の美禄(びろく)。酒は百薬の長。 反義:酒は悪魔の血。酒は諸悪の基。酒は百毒の長。 酒は古酒(こしゅ)、女は年増(としま)。 解釈:酒は新酒よりも古酒の方が味に深みがあり、女は娘よりも爛熟(らん じゅく)した年増の方が情愛が細やかである。 酒は三献(さんこん)に限る。 解釈:酒は飲み過ぎると乱れるので、三献を限りにして止めるのがよい。 「三献」とは、昔の公家(くげ)の接客の礼法で、膳を出して杯に三杯勧めて 膳を引くことを一献として、それを三度繰り返すことをいう。 酒は諸悪の基。 解釈:世の中の悪事はほとんど酒が原因となっていることをいう。 類義:酒に三十五の失有り。酒に三十六種の罪あり。 酒は天の美禄(びろく)。 解釈:酒は天からの素晴らしい賜物(たまもの)だ。 酒は飲むとも、飲まるるな。 解釈:酒を飲むのは差し支えないが、そのために理性を失うような飲み方を してはいけない。 類義:酒は飲むべし、飲むべからず。人酒を飲む、酒酒を飲む、酒人を飲む。 酒は飲むべし、飲むべからず。 類義:酒は飲むとも飲まるるな。 酒は飲んでも、煙草は止められぬ。 解釈:酒も煙草も止めることができないという意。 酒は百毒の長。 解釈:百害といわれるものの中で、酒はその最たるものであるということ。 反義:酒は百薬の長。 酒は百薬の長。 解釈:酒は適度の量ならば、どんな薬よりも体によいということ。 類義:酒は憂いの玉箒。酒は天の美禄。 反義:酒は諸悪の基。酒は百毒の長。 酒は本心を現す。 解釈:酒の酔いは普段隠れている本性を曝(さら)け出す。 類義:酔って本性を現す。 酒は止めても、酔いざめ の水は止められぬ。 解釈:酔い覚めの水の旨さは酒以上であるということ。 類義:酔い覚めの水、下戸(げこ)知らず。 叫び声は泥棒をくびる。 解釈:「泥棒、泥棒」と叫べば、周囲の人が泥棒を捕まえるのに協力してく れる。黙っているより騒ぎ立てた方がよいということ。 酒酔い、本性違(たが)わず、 類義:酒の酔い、本性違わず。 |