家ケイを厭(いと)い、野雉(やち)を愛す。
解釈:よい物を嫌って、逆に悪い物を大事にすることのたとえ。家の鶏を疎
んじ、野の雉(きじ)を珍しがるということで、珍しいとばかりに珍重する愚
かさの戒め。
参考:遠きは花の香。耳を貴び、目を賎しむ。
駆け馬に鞭。
解釈:強い者に力を添えて、更に強くすること。走っている馬に鞭を打って
猶も駆けさせる意。
類義:虎に翼。火に油を注ぐ。吠える犬にけしかける。薪に油を添える。
駆けつけ三杯。
解釈:酒の席に遅れて来た者に、罰として酒を続けざまに三杯飲ませること。
類義:遅れ三杯。
陰では殿の事も言う。
解釈:どんな人でも、人から陰口を言われるのは避けられない。だから、陰
口は気にしない方がいいということ。
類義:陰では御所内裏(ごしょだいり)の事も言う。陰は御門(みかど)の
上。人の口に戸は立てられぬ。
陰にいて枝を折る。
解釈:恩を受けてお返しにひどい仕打ちをすること。木陰で暑さをよけてい
た者が、その木の枝を折る意からいう。
類義:恩を仇(あだ)で返す。情(なさけ)が仇。
陰弁慶。
解釈:陰では威張っているが、人前に出ると小さくなってしまう人のこと。
類義:内(うち)弁慶。
影もないのに、犬は吠えぬ。
解釈:噂が立つのは何か根拠があるからである。犬は何もないのに吠えたり
はしないものである。
類義:火の無い所に煙は立たぬ。
影を畏れ迹(あと)を悪(にく)む。
解釈:静かに内省(ないせい)修養することをせず、やたらに他の物事に心
を煩わされることのたとえ。
嘉肴(かこう)ありと雖も、食わずんば其の旨きを知らず。
解釈:ご馳走も、食べなければ美味しさが分らないとの意から、聖人の立派
な道も、学ばなければよさが分らない。また大人物といわれている人も、使っ
て(登用して)みなければ、その器量が分らないものだ。
類義:旨酒嘉コウ(ししゅかこう)有りと雖も、嘗めざれば其の旨きを知ら
ず。
籠で水を汲む。
解釈:いくら骨を折っても効果のないこと。無駄な骨折りのたとえ。
類義:籠釣瓶で水を汲む。笊(ざる)で水を汲む。笊に水。味噌漉しで水を
掬う(すくう)。
駕籠(かご)に乗る人舁(かつ)ぐ人。
解釈:同じ人間でも職業や階級・貧富の差などによって、境遇は様々である。
また、様々な職業や階級の人々が助け合って、社会が成り立っていることをい
う。
類義:車に乗る人乗せる人、そのまた草鞋(わらじ)を作る人。
参考:後に続けて「そのまた草鞋を作る人」という。
籠の鳥、雲を慕う。
解釈:捉われの身の人が自由な境遇を羨むこと。また、故郷を恋慕うこと。
類義:籠鳥(ろうちょう)雲を恋う。
火事あとの釘拾い。
解釈:大きな無駄遣いをしてから、少しばかり倹約しても、何の役にも立た
ないこと。
火事あとの火の用心。
解釈:時期に遅れて間に合わないことのたとえ。
類義:生まれた後の早め薬。喧嘩過ぎての棒乳切(ぼうちぎり)。葬礼済ん
での医者話。盗られた後の戸締り。
貸借(かしかり)は他人。
解釈:たとえ親子の間でも、金の貸し借りは他人と同様であるべきだ。
類義:親子の中でも金銭は他人。金(かね)は他人。
賢い人には友がない。
解釈:賢すぎる人には、仲間ができないものだ。
類義:水清ければ魚棲まず。
貸した物は忘れぬが、借りた物は忘れる。
解釈:誰でも物事を自分の都合のよいように考えるものである。
類義:貸し物覚えの、借り物忘れ。
貸家栄えて母屋倒るる。
類義:庇(ひさし)を貸して、母屋(もや)を取られる。
鍛冶屋の明晩(みょうばん)。
類義:紺屋(こうや)の明後日(あさって)。
華胥(かしょ)の国に遊ぶ。
解釈:よい気持で昼寝をすること。中国の黄帝(こうてい)がある時昼寝を
していて、夢の中で「華胥の国」という理想郷へ遊びに行ったという。そこに
は、地位や名誉に生きることなく、欲望も愛憎もない自然の姿で生活する人々
がいた。それまで天下が治まらないことで苦悩の日々が続いていた黄帝は、夢
で見たことに倣って治めたところ、国が自然に治まったという故事による。
類義:華胥の夢。
頭(かしら)が動かねば、尾が動かぬ。
解釈:上に立つ者が率先して働かなければ、下の者は付いていこうとしない
こと。
類義:頭が動けば、尾も動く。頭が回らにゃ、尾も回らぬ。
臥薪嘗胆(がしんしょうたん)。
解釈:中国の春秋時代、呉(ご)王の夫差(ふさ)は、越(えつ)王に敗れ
た父の仇(あだ)を討つために、朝晩痛い薪(たきぎ)の上に臥し、その目的
を達した。恥を受けた越王勾践(こうせん)は許されて国へ戻ると、苦い肝
(きも)を嘗めては恥辱を忘れず、苦心の末に、呉王を滅ぼしたといしう故事
による。常に自分を苦境に立たせ、仇討ちのために苦労することをいう。また、
成功するために、いろいろと難儀をする意にも用いられる。
歌人(かじん)は居ながらにして名所を知る。
解釈:歌人は古歌や歌枕の研究によって、わざわざ名所を訪ねなくとも、そ
の場所についてよく知っている。
佳人薄命(かじんはくめい)。
解釈:美しい人というものは、生まれつき体が弱かったり、美しさゆえ複雑
な運命にもてあそばされたり、不幸な人が多いということ。
類義:才子多病。美人薄命。瑠璃(るり)は脆(もろ)し。
参考:Those that God loves do not live long.(神の愛する人々は、長生
きしない)
鎹(かすがい)思案。
解釈:二つの事をどちらも悪く思われまいとし、工夫すること。
類義:鎹分別。
数を言うまい羽織の紐。
解釈:あまりのおしゃべりは失敗の基であるから、おしゃべりは無用という
戒め。
類義:数を言えば屑(くず)を言う。口は禍(わざわい)の門(もん)。
苛政(かせい)は虎より猛し。
解釈:虎に食べられて死ぬ苦しみよりも、悪政の下に虐げられる人民の苦し
みの方が大きい。
河清(かせい)を埃(ま)つ。
解釈:黄河(こうが)の水は濁っていて、澄んだ水になることはあり得ない
ところから、何時まで待っても当てのないことをいう。
類義:百年河清を埃つ。
稼がばお江戸。
解釈:商売をして一儲けしようと思うなら江戸が一番、ということ。
風が吹けば桶屋が儲かる。
解釈:大風が吹くと砂や埃が舞い上がって目に入り、目が見えなくなる人が
増える。その人たちは三味線を弾いて門付け(かどづけ)などするので、三味
線が足りなくなる。三味線を作るために猫の皮が必要になって猫を取り尽す。
すると、大敵のいなくなった鼠がはびこり、食物を入れてある桶をかじる。だ
から桶屋が儲かる。といった具合に、物事の因果関係が、巡り巡って意外な結
末になることのたとえ。
稼ぎ男に、くり女。
解釈:男は外で一生懸命働いて一家の収入を得、女はそれをうまく遣り繰り
して生計を立てる、それが夫婦のというものである。
稼ぐに負い付く貧乏なし。
解釈:一生懸命働けば、貧乏で苦しむことはない。
類義:稼げば身立つ。鍬(くわ)をかたげた乞食は来ない。辛抱に負い付く
貧乏なし。精出せば凍る間もなし水車。
反義:稼ぐに追い抜く貧乏神。
稼ぐに追い抜く貧乏神。
解釈:どんなに働いても、貧乏から抜けきれないということ。
類義:稼ぐに追い付く貧乏神。
反義:稼ぐに追い付く貧乏なし。
風に櫛(くしけず)の、雨に沐(かみあら)う。
類義:櫛風沐雨(しっぷうもくう)。
風に順(したが)いて呼ぶ。
解釈:風に逆らって声を発しても流されてしまうが、風向きに従って呼べば、
よく聞こえるように、他の力を借りて事を行うことのたとえ。また、勢いに乗
ずることのたとえ。
類義:得手(えて)に帆を上げる。
風邪の神は、膳の下へ隠れている。
解釈:風邪をひくと食欲がなくなるものだが、そういうときにこそ沢山食べ
た方がよいということ。
風邪は百病の元。
解釈:ただの風邪と思って油断してはいけない。風邪はあらゆる病気の元に
なるという教え。
類義:風邪は万病の元。
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