過大な謙遜は高慢なり。 類義:卑下も自慢のうち。 堅い歯は折れても、柔(やわ)い舌は折れぬ。 解釈:堅い物は結構もろく折れやすいということ。 類義:柳に雪折れなし。 仇(かたき)の家でも口を濡(ぬ)らせ。 解釈:たとえ仇の家であったとしても、出された食事は遠慮せずに食べよ。 意地を張っていたのでは、損するということ。 類義:仇の家へ行っても、口を濡らさずに帰るな。 仇の金でも、あれば使う。 解釈:人間誰しも窮地に立たされると、後で災いの種になる金と知りつつも、 つい手をつけてしまうものである。 仇の前より借金の前。 解釈:仇よりも誰よりも、金を貸してくれた人の前では頭が上らない、とい うほどに、借金は辛いということ。 類義:仇の前は通れるが、借金の前は通れぬ。 難きを先にし、獲(う)るを後にす。(論語) 解釈:人情として、難しく骨が折れる仕事は後回しにするのが常であるが、 仁者(じんしゃ)は、利益を問題にせずに難儀な事をも引き受けるものである。 片口きいて、公事(くじ)をわくるな。 解釈:一方の言い分を聞いただけでは真相は掴めないものだから、訴訟の裁 きをするときは、原告と被告双方の主張をよく聞いた上で判定を下すべきであ る。 類義:一方聞いて下知をすな。片口聞いて下知をすな。片口聞いては理が知 れぬ。両方聞いて下知をなせ。 形は生めども、心は生まぬ。 解釈:子供の体は生んでも、心までは生めない。 類義:親は親、子は子。 反義:蛙の子は蛙。子は親に似る。 片手で錐(きり)は揉(も)まれぬ。 解釈:片手では錐を揉めないように、力を合わせなければ物事はできないと いうことのたとえ。 類義:片手で拍手(かしわで)は打てぬ。三人寄れば文殊(もんじゅ)の知 恵。 刀折れて、矢尽きる。 解釈:刀尽きて、戦う方法がなくなってしまうこと。 類義:弓折れ矢尽く。 刀は武士の魂、鏡は女の魂。 解釈:刀には武士の魂が宿っており、鏡には女の魂が宿っているものだから、 どちらも大切なものである。 類義:刀は男の魂。大小(二本の刀のこと)は武士の魂。 語るに落ちる。 解釈:話しているうちに、うっかり本当のことをしゃべってしまうこと。 火中(かちゅう)の栗を拾う。 解釈:自分の利益にもならないのに、他人のために危険な事を無理してする こと。また、揉め事に首を突っ込むお人好し。 類義:手を出して火傷(やけど)する。 鰹節と砥石の借入れはない。 解釈:鰹節も砥石も使えば減るものであるから、名目上は借りたにせよ、実 際は貰うことになる。 類義:鰹節と表紙はかくほど減る。鰹節と巻紙の借入れはない。 隔靴掻痒(かっかそうよう)。 解釈:履いている靴の上から、痒い所をいくら掻いても痒みは治まらないよ うに、物事が思うようにならず、非常にもどかしいことのたとえ。 脚気(かっけ)には朝露を踏め。 解釈:脚気を患っている人は。朝早起きをして、裸足(はだし)で露の上を 歩くとよくなるという。 脚気に麦飯。 解釈:脚気を患っている人は、麦飯に変えるとよくなるといわれる。 渇しても盗泉(とうせん)の水を飲まず。 解釈:中国の孔子(こうし)が旅の途中、喉が渇いたとき、傍に「盗泉」と いう泉があったが、たとえ名前だけでも身が汚れるとして、その水を飲まなか ったという。どんなに苦しくても不正をしないという意にも用いる。 類義:悪木(あくぼく)盗泉。鷹は飢えても穂をつまず。武士は食わねど高 楊枝(たかようじ)。 合縦連衡(がっしょうれんこう、合従連衡とも)。 解釈:中国の戦国時代に行われた二つの外交政策のこと。「合縦」とは、韓 (かん)・魏(ぎ)・趙(ちょう)・燕(えん)・斉(せい)・楚(そ)の六 つの国が南北に連合同盟して、西の秦(しん)に当たるという蘇秦(そしん) の政策である。「縦」と縦(たて)で、南北の意。「連衡」は、秦が六つの国 と別々に同盟するという張儀(ちょうぎ)の政策。また「衡には、東西の意味 をも含む。 類義:合縦連横(れんおう)。 勝った自慢は、負けての後悔。 解釈:勝ったときに自慢したいのが人間の情であるが、あまり自慢している と、負けたときに引っ込みがつかず、面目(めんぼく)がなくて後悔するもの である。 類義:勝って驕(おご)らず、負けて挫(くじ)けず。 がったり三両。 解釈:ガタンと音がして何かが壊れれば、すぐ金が要る。やたらこまめに動 くと損するという戒め。 類義:こっとり五百匁。触らぬ神に祟りなし。触り三百。 勝って兜の緒を締めよ。 解釈:戦いに勝ったと油断していると、不意に敵が現れて返り討ちに遭った りするものだ。用心深く事に当たることが大切という教訓。 類義:敵に勝ちて愈々戒む。 河童(かっぱ)に塩を誂(あつら)える。 解釈:川に棲む河童に、海の塩を注文するという意で、見当違いのこと。 類義:河童に塩頼む。川獺(かわうそ)に塩を誂える。 河童に水練(すいれん)。 類義:釈迦に経(きょう)。 河童の川流れ。 解釈:どんな達人や名人でも、河童が水に流されてしまうように、時には失 敗するものである。 類義:孔子(くじ)の倒れ。弘法(こうぼう)にも筆の誤り。猿も木から落 ちる。釈迦にも経(きょう)の読み違い。上手の手から水が漏る。 参考:The best swimmers are oftenest drowned.(よく泳ぐ者は、よく溺れ る) 河童の寒稽古。 解釈:苦しい目や痛い目に遭わせて、困らせようとしても、相手が何とも感 じないことのたとえ。 類義:餓鬼(がき)の断食(だんじき)。屁の河童。 河童も一度は川流れ。 解釈:泳ぎの達者な河童でさえ、うまなるまでには一度や二度は溺れること もある。何事も、最初は下手(へた)から始めるものである。 類義:天から和尚はいない。 刮目(かつもく)して之(これ)を視る。 解釈:目をこすって注意して見ること。今までとは違った見方で相手を見直 すことをいう。 類義:刮目して相待つ。 勝つも負けるも時の運。 類義:勝ち負けは決して実力だけで決まるものではなく、その時の運に左右 されることが多い。 類義:勝つも負けるも軍(いくさ)の習い。負けるも勝つも運次第。 褐を被(き)て玉を懐く。 解釈:みすぼらしい身なりをしていても、心は美しいこと。また、優れた才 能を世間に知らせないように隠していること。 勝てば官軍、負ければ賊軍。 解釈:道理に適わなくとも、勝ってしまえば正義となる。つまり、強い者が 正義となるのは世の習いである。 類義:小股(こまた)取っても勝つが本。力は正義なり。強い者勝ち。 我田引水(がでんいんすい)。 解釈:自分の都合のいいようにこじつけること。農夫が日照りのとき、自分 の田にだけ水を引くことで、自分が有利になるよう物事をもっていくこと。 類義:我が田へ水を引く。 瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず。 解釈:他人から疑いを受けるような行為はしない方がよいというたとえ。瓜 畑では、靴が脱げても屈んで履いたりしてはいけない。何故なら瓜を盗んでい るように見られるからだ。 類義:疑いは言葉で解けぬ。瓜田李下(りか)。嫌疑には遠ざかれ。李下に 冠を正(ただ)さず。 門松は冥途(めいど)の旅の一里塚。 解釈:本来、門松は正月を祝う目出度いものとされているが、立てる度に年 をとって冥途へ一歩ずつ近づいているようなものだ、という意。 家内喧嘩は貧乏の種蒔き。 解釈:家族の仲が悪いのは、その家が貧しくなる元である。 類義:家内の不和は貧乏神の定宿。夫婦喧嘩は貧乏の種蒔き。 鼎(かなえ)の軽重(けいちょう)を問う。 解釈:権力者の実力や権威を疑い、その地位から追い落とそうとすることに たとえる。中国の楚(そ)の荘(そう)王が天下を取ろうと野心を燃やして周 (しゅう)の都に迫ったとき、周の定(てい)王にその国の宝器である鼎(三 足の付いた金属製の器)の軽重を尋ねたという故事による。 即ち、定王の使者王孫満は荘王に答えた。「鼎の軽重が問題なのではない。 徳があるかないかこそが問題なのだ。鼎は常に徳のある所に移って来た。今、 周の徳は衰えたと言っても、今日まで鼎を伝えて来た事は、天の命ずる所であ り、天命が既に革まったとは思われない。従って鼎の軽重など尋ねられる謂れ はない」と。荘王は止む無く兵を引き上げることにした。 鼎の沸くが如し。 解釈:鼎の中で湯が煮え立つように、紛争が甚だしく、乱れる様子。 金轡(かなぐつわ)をはめる。 解釈:金品を与えて口止めしたり、余計な事をしゃべらないようにすること。 類義:金(かね)の轡を食(は)ます。 悲しき時は身一つ。 解釈:窮境に陥ったときに、他人は頼りにならないものだから、自分自身を 頼るしかない。落ちぶれると人は誰も寄りつかなくなる、という意もある。 類義:悲しい時は身一心。悲しければ身一心。苦しい時は身一つ。 叶わぬ時には親を出せ。 解釈:言い訳に詰まったときには、口実に何かと親のことを引き出すことが 多いものだ。 類義:苦しい時には親を出せ。 蟹の念仏。 解釈:蟹が泡を吹くように、口の中でぶつぶつ言うこと。 類義:亀の看経(かんきん)。 |