「自動カラクリお話玉手箱」を作り、音楽と語りを添えて届けてくれる、自動人形師です。
彼の手による初のCG作品集が、この『ムットーニ おはなしの小部屋』。
部屋の中におさめられたタロットカードたちがこの本の主役です。
カードたちは一人ひとり(1枚1枚、というべきかしら?)短いけれど壮大な「おはなし」を語ってくれます。
なんとも不思議な物語だったり、せつなかいお話だったり、「ああそうそう!」と頷きたくなったり、なぜか懐かしさを感じさせてくれたりと、実にバラエティに富んでいて、読んでいて飽きません。
それに、どのカードも暖かみのある表情で、とても魅力的。(私のお気に入りは「IV EMPEROR」)
何度読み返しても、どこから読みはじめても、それは読む人の自由です。
だって、この物語に「オチ」や「結末」なんてありませんから。
ページをめくるたびに、きっと心の琴線に触れるカードと出会えるはず。
月がきれいに見える夜、窓際に腰かけて、おいしいお茶と共に楽しむことができたら、最高のひとときが過ごせることでしょう。
「ちょっと異世界に迷ってみようかな」という時に読みたい、大人のための絵本です。
2003-10-29