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kv強化月間z

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備えあれば 憂いなし

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7.

カプセルハウスの丸い屋根がくっきりと青い空に照り映えて、気持ち良さそうに乾いた風を受けている。悪くない光景だが、本来室内から見えて良いものじゃなかった。
「…ベジータ、おめえ…」
カカロットはオレと引きちぎられた窓の破片とを交互に見比べて、眉をひそめた。
「オラに負けたのがそんなに悔しかったんか?だからって窓に八つ当たりすんなよ」
こいつは、また適当な事いいやがって!
「ちっ、違う!そんなんじゃねえ!!」「じゃあ何で窓が壊れたんだ」
問い詰める視線に、考えるより先に口が動いていた。
「そんな下らん理由では断じてないぞ!ついでに、オレはキサマがちっと戻ってこなくて、『寂しい』からムシャクシャしてつい窓をぶっ壊した訳でも、断じてないからな!」
「ええっ、そうだったんか?!」
意外な言葉に驚くカカロットの顔を見て、オレははっとして我に変える。…今オレは、何かマズイ事を言わなかったか?


「そうだったんか、ベジータ」
純粋にオレを心配する声がして、ふいにカカロットの太い腕に強く抱きしめられた。
「おめえに寂しい思いさせちまったんだな、すまねえ」
「お、おい!オレは『寂しい』なんて全く思っちゃ……ちょっと待て!!」
甘い声、思いがけない展開に、鼓動が跳ね上がる。コイツ、オレの事を気遣ってるのか…?くだらん思考だ、けれど我知らず顔が赤くなる。カカロットの胸に顔を押しつけさせられながら咄嗟に反応できないでいると、
「じゃ、早速続きすっか!」「ぎゃあっ!!」
――またしても状況は突然変化した。オレは満面笑顔のカカロットに、仰向けにひっくり返されガバっと大股を開かされた。結局こうなるのか?!ヤツの股間のモノを尻の狭間に押し付けられながら必死に相手を押し戻そうとするが、先程以上の馬鹿力で押さえつけられてびくともしねえ。
「ふざけるな、キサマがそんなヤツだから、オレはここをさっさと出ようとしたんだ!!」


途端に、オレのシャツの上を這いまわっていたカカロットの手が、止まった。
「…ベジータ、おめえ、こっから逃げ出そうとしてたんか…?」
甘い口調から一転、低く脅すようなヤツの声には迫力があった。
「にっ、逃げる、だと?!このオレがそんな無様な真似などするか!」
「何だ、おめえもしかして怖くなっちまったか」
オレの両腕が、抵抗できないように上から強い力で押さえつけられる。カカロットの口調はあくまで静かでゆったりとしていて、それが返って背筋を寒くする。オレを覗き込む黒い双眸に、ぴかりと光る緑が混じる。風に吹かれたヤツの前髪が、ざわつき逆立ちながら金色に変わる。その迫力に気押されながらも、オレは負けじと必死で声を張り上げた。
「ふざけるな、オレは誇り高きサイヤ人の王子だ、キサマのような下級戦士を恐れるものか!いくらでも相手をしてやる!」



「――そっか、じゃあ問題ねえよな!」「ぎゃああっ!」
またしても状況は急転した。低い威嚇するような声は、たちまち元の甘く上機嫌な声に戻り、カカロットはオレの両手首を片手でつかんだまま、うきうきと嬉しそうな様子でオレのズボンを一気に引き下ろす。剣呑な色をしていた髪も目も、元の黒に戻っている。
――ああ、くそっ!もういい加減にしろ!!
晴れたかと思えば突然の大嵐になり、オレを吹き飛ばすかと思えば次の瞬間にはもう晴れている。まるでオレは気まぐれな嵐に翻弄される木の葉だ。そしてコイツは…
「待ちやがれ、せめてベッドの上で…」
「そんなワガママ言うなよ、それより早く続きしてえんだろ」
ワガママはどっちだ!!コイツは、オレにとって天災そのものだ!以前オレはコイツの事を、『オレを上回る天才』だと認めたが、そうじゃねえ、『天才』じゃなくて『天災』だ!!


「ひゃ…あん…!」
カカロットの固い手が下着の中に突っ込まれ、とんでもない場所に触れてくるので思わず変な声を上げてしまう。くそっ、まずいぞ!このままではまたしても流されてしまう。ヤツの思う壺だ、これ以上ヤツの好きにされてたまるかってんだ!カカロットに両手を押さえつけられ、上からにこりと覗き込まれながら必死に策を巡らせた。今度こそこの状況を切り抜けてやる!激しく揺れる心臓をなんとかなだめつつ、オレは深呼吸してできるだけ冷静を装った。
「…おい、カカロット」「ん、何だ?」
下着をずり下ろされたオレの両足を肩に担ぎながら、ヤツが顔を上げる。
「…キサマ、電話がどうとか言っていたな」
「うん、言ったぞ」
ごそごそ動き回っていたヤツの手が止まった。よし、良いぞ!このまま何とか話題をすり替え、ヤツが隙をみせたらその時を狙って脱出だ!
「その、要件は済んだのか」
「ああ、終わったさ。えーっと、何て言ってたか……」
カカロットの予想外の行動に肩透かしを食らわされる事無く、自分の考えが上手くいった事をオレはひそかに喜んだ。まさか、次の瞬間にはその喜びが木端微塵に吹っ飛ぶとは思いもしなかった。
「あ、思いだした。『備えあれば 憂いなし』、なんだってさ」
「……は?」
ヤツの言葉の意味が分からず、オレは一瞬呆然とする。どこだで聞いた事のある言葉だ。そうだ、最近覚えた地球の訓示……
「ブルマにさ、言われてるんだ」
カカロットはオレの顔を真っ直ぐ覗きこみながら、満足そうな…何か、大きな仕事でも一つ成し遂げたかのように嬉しそうな笑顔でこう言ったのだ。





「『おめえとキモチイイ事する時は一言電話してくれ』ってさ」






「なっ…なんだとぉおおおおおっ?!?!」
これまでで最大の威力を持つ攻撃に、たちまち世界中の音がぶっ飛び、代わりにオレは世界がぶっ壊れる程の音量で叫んでいた。顔面がみるみる蒼白になるのを感じた。
「ブルマに言われてんだ。オラとおめえがキモチイイ事すると、すげえ地球が揺れるんだってさ。だからキモチイイ事する前にブルマに連絡しろって言われてるんだ」
「ぶっ、ブルマに言われた、だと?!ど、どうしてそんな事を…」
あからさまに焦りが露呈し、オレの声はみっともないほど裏返っていた。
「何でも、ブルマから地球の皆に情報発信するんだってさ。オラとおめえがこれからエッチするから、揺れに備えろって」
「ちょっとまて!それじゃあオレとキサマが、その、『こういう事』をしてるというのは…」
「ああ、地球の皆全員が知ってるぞ」
世界がくらりと一回転する。世間話でもするような気安さでとんでもない事を延々喋る目の前の男を見ながら、オレは自分の常識でコイツをどうにかしようと思った事がそもそもの間違いだったのだと気が付いた。
「言われたとおり、オラ、ブルマにさっき電話してきたんだ。そしたらさ、ブルマのヤツ『地球の皆を安全な場所に避難させてからにしろ』、だってさ」
「…………」
「安全な場所って言っても地球上じゃダメだって事だろ、だから地球上の皆をちょっとナメック星まで瞬間移動で送ってきたら、遅くなっちまったんだ」
「…………………」
「んじゃ、ベジータ続きすっか!」
屈託の無い笑顔でそう言われ…






「…………………できるかくそったれえええええええっ!!!」





――備えあれば 憂いなし。
日ごろから充分に備えていれば、不測の事態にも慌てる事は無いらしい。カカロットの襲撃に充分備えてトレーニングを積んでいたオレの力は、遂にここで遺憾なく発揮された。オレはカカロットを渾身の力で突き飛ばし、恥かしさと動揺で忘我の境地になり……ついでに、怒りにまかせて地球も大半吹っ飛ばしてしまった。
こうしてオレは、勝負には負けたが、カカロットに淫らな行為を一旦諦めさせる事に成功した。地球のくだらん訓示も、たまには役に立ったわけだ。その代わり、地球そのものが不測の事態に見舞われたわけだが、まあ大事の前の小事だ、已むを得ないだろう。いくら備えても、予想を超える事態というものは起こるものだからな。予想を超える事態と言えば、急遽ナメック星のドラゴンボールを集めて「3つの願い」を叶えなければならなかったのも、不測の事態と言えるだろうな(もちろん、カカロットのヤツにも手伝わせてやったぜ)。

  1. オレが吹っ飛ばした地球を元に戻してくれ
  2. オレが地球を吹っ飛ばす前後の地球人の記憶を消してくれ(直前は特に念入りに)
  3. オレとカカロットが中で暴れても、絶対揺れない丈夫な建物がほしい


フフフ、どうだ、オレの叶えた3つの願いは完璧だろう!これも、不測の事態に備えるためだ、オレ様の貴重な時間を割いただけの事はあるな!……何?「3」の用途、だと?決まってるだろう、オレとカカロットが……っ!な、何でも無え!もちろん『不測の事態』に備えるためだ、オレと、キサマら地球人のためにもな!!





- END -