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kv強化月間z

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備えあれば 憂いなし

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2.

片足穿き終えたブーツを良く見ると、つま先にホコリが付いている。部屋の隅にたまってたやつが、放り投げられた時に付いたに違いない。くそっ、ふざけやがって!イラつきながらホコリを床に擦りつけようとして、その時に立つであろう音を想像して慌てて止めた。そんな事、外に脱出してから存分にやれば良い。アイツの服が脱ぎ捨てられていないのが残念だぜ、見つけたらそれで汚れを拭きまくってやるのにな!
まったく例のくだらん訓示も含めて、何から何まで気に入らねえ事だらけだ、何が『備えあれば 憂いなし』だ!最近覚えたクソの役にも立たん地球の教えに、オレは思いきり毒を吐きたくなった。そんなものが役に立たない事は、今日すでに実証済みだ!


『フン、来るなら来やがれカカロット、今度こそキサマをぶっ殺してやる!』
――あの時かなり汗をかいていたから、時間は昼過ぎだったはずだ。
『いいぞ、トレーニングの成果は万全だ、カカロット、今度こそキサマを…』
その、備えあればナントカという言葉に同調した訳ではないが、カカロットとの再戦に備えて、重力室でオレはみっちりトレーニングを積んでいた。ヤツをぶちのめす日を思い描きながら、重力も強化して、これまで以上に過酷なトレーニングに耐え、いつカカロットに襲いかかられても良いように万全の備えをしていたんだ!けれど、
『よおベジータ、ちょっとオラの修行につきあってくれよ』
『ぎゃああああああっ!』
……まさか、暑さに耐えかねて、ほとんど…全裸になって汗を拭いていたその瞬間にヤツが現れるとは!




『キサマ、何しに来やがったこの変態野郎があああああっ!!』
『うわわわっ、何だよいきなり!』
それはこっちのセリフだ!オレの目の前に、例によってカカロットは突然現れた。誰もいないと思って油断していたオレは思いきり動転し、ムチャクチャに撃ちまくった気弾はすべてカカロットに避けられてしまった。
『「何しに来やがった」っておめえ、たった今「来るなら来やがれ」っつってたじゃねえか』
コイツ、どこから聞いてたんだ?!避けられた気弾は背後の壁や天井を貫通し、重力室は見事に穴だらけになった。青空を背景に破片がバラバラ落ちてくる。
『キサマのせいで、また重力室が壊れたぞくそったれっ!』
『壊したのおめえだろ?』
『キサマが避けたからだ!避けるんじゃねえ!』
『無茶言うなよ』
カカロットは困ったように首を傾げ、それから今度は怪訝そうな顔になって、反対側に首を傾げた。



『…おめえ、「スッパダカ」で修行するんか?』
『!きっ、キサマ見るなくそったれっ!!
もう一発気弾をみまってやろうとした瞬間、カカロットの指摘に思わず顔がカァッと熱くなって硬直する。動転するあまり、思わずカカロットの視線から逃れるように体を反転させてしまった(不覚だ、敵に背中を向けるとは)!
『キサマ何遍言ったら分かるんだ!突然オレの前に現れるんじゃねえっ!』
『ああ悪いな、おめえの姿が見当たらなかったから、気で探っちまった』
飄々と答える声を背後に聞きながら、自分の服を懸命に探すが見つからない。しまった、適当に脱いだから、どこに置いたか思い出せん!慌てるとますます思い出せなくなり、思い出せないからまた慌てるの悪循環だ。
『ベジータ、おめえ相変わらず小せえ尻だなあ』
腰とかも細いしさ。敵に背中を見せる屈辱的な状態で(しかも、し…尻、まで見られた…!!)、背後から聞こえる声に歯噛みする。からかっているのか本当に感嘆しているのか、この天然セクハラ野郎が(コイツの場合、恐らく後者だから余計始末が悪い)!!


結局、椅子の下にでも放り込んだか、それとも先程のエネルギー弾でうっかり燃やしちまったのか、オレの服は見当たらない。手にできたのは奇跡的に灰にならなかったタオル一枚だけだった。
『なあ、おめえ今日はずっとここに一人でこもりっきりなんだろ?だったらオラの修行につきあってくれよ』
『ふざけるな、オレはキサマを倒す男だ、キサマと一緒にトレーニングなんかできるか!』
いつまでも敵に背を向けている訳にもいかず、タオルを体に巻きつけながら急いで振り返ると、実に涼しい顔のカカロットと目が合った。分厚い胸の前で腕を組んで、ゆったりと立っている。けれど相変わらずこちらをじろじろ眺める視線は無遠慮で、慌ててタオルを深く掻き合わせ直す。くそっ、ドコ見てやがる!
『いいじゃねえかベジータ、どうせヒマなんだろ』
『何だと?!キサマと一緒にするな!』
ヤツの言葉に身を乗り出した瞬間体を覆うタオルが滑り落ちそうになって、また慌てる。肌が汗ばんで敏感になっているからだろうか、上質な繊維をより合わせた生地が肌の上を滑る感触は、普段なら心地良いはずなのに、その時はなぜか息を飲ませる生々しさがあった。


最近気がついた事だが、カカロットの不躾な視線には妙な効力がある。ヤツの目に見られると、なぜか体が火照ったように熱くなるのだ。
『オレは忙しいんだ、キサマなんかと付き合うヒマなんかあるか…』
今日は重力室の負荷を必要以上に上げてしまったせいだろうか、汗は拭ったはずなのにいつまでも引かず、体の中で熱は高まる一方だった。これ以上コイツの前で肌を晒すのは、とてつもなく良くない気がした。
『キサマが出ていかんのならオレが先に出るぞ。ブルマが喚きだす前にキサマもさっさと消えるんだな』
…多分、気のせいだ。なぜか体が熱くなるのは、カカロットに見られているせいじゃなく、空調の効きが悪いせいだ(天井に穴もあいちまったしな)。
もっと冷房を強くしなければ。内心の狼狽を隠し出来るだけ平静を装いながら、これ以上こいつと二人きりでいたくなくて、オレはその場を立ち去ろうとした。すると、腰に手を当て、反対の手で耳の後ろを掻いていたカカロットが、怪訝そうに口を開いた。
『なんだベジータ、おめえもしかして、怖くなっちまったのか?』