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kv強化月間z

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備えあれば 憂いなし

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3.


重力室を出ようとした足が思わず止まった。
『そうだよな、この頃おめえ修行サボってるのかオラとの力の差が開いてきてるもんなあ』
びきっ!!自分の青筋が立つ音が聞こえた気がする。…分かっているぞ、これは作戦だ。ヤツの安い挑発だ…分かっちゃいるが…
『…なんだと!?キサマ、もう一度言ってみろ!』
…オレの誇り高き王子の血が放ってはおかんのだクソッタレ!!売られた戦闘は全て買うのがオレの流儀だ、勢いよく振り返ると、耳を掻くついでに首筋のストレッチをするカカロットの姿が目に入った。
『オレはキサマをぶちのめすために、毎日血のにじむようなトレーニングを続けているんだ!キサマのぬるいトレーニングなんか比べ物にならん程のものをな!そのオレが、キサマが怖いなどという事があるか!』
『そうなのか?オラ、おめえがあまり戦いたく無さそうだから、てっきり怖くなって逃げ出そうとしてるのかと思ったぞ』
『なっ…なんだとキサマ、このオレに向かって…!』
…びきびきびきっ!!先程よりも大きく青筋の立つ音がする。
『まあ、無理にとは言わないさ、ベジータ、邪魔して悪かったな』
久々にウーブの稽古でも付けてやっか。平然とそう言って、カカロットは天井の穴を見上げてさっさと飛び去ろうとした。
『待ちやがれカカロット!』『ん?』
オレが片足を踏みだすのと、地面を踏みきろうとしたカカロットが振り返ったのは、ほぼ同時だった。
『いいだろう、キサマ、そこまで言うならキサマの挑発に乗ってやるぜ!このベジータ様のトレーニングの成果をキサマにたっぷりと味わわせてやる!!』
『うーん、オラはもう別に…』
『どうした、オレがあまりに自信に満ち溢れているからって急に怖気づいたか』
ヤツの視線に触れると、やはりオレは熱くなりすぎて自制を失うらしい。いつの間にか、戦いを挑む者と挑まれる者が逆になっている。
『そうだ、もしこのオレがキサマとの勝負に負けたら、何だってキサマの言う事を聞いてやるぞ、どうだ』
『ちえっ、しょうがねえ奴だなあ。そこまで言うなら相手してやっか』
「仕方ない」などと口にしながら、ヤツの目は「してやったり」とでも言いたげにニンマリ笑っていた。そらみろ、やっぱりコイツの挑発だ。そんな事は百も承知だ、けどよ、今さら引き下がれるかよってんだ。
『その代わりオレが勝ったらキサマの命の保証は無いものと思え!!』
オレを怒らせた事を後悔しやがれ!大きく足幅を開くと、すっかり興奮したオレはカカロットの顔に向かって指を突き付けた。その途端。



…ぱさり。



体を覆っていたタオルが、乾いた音を立てて床に落ちた。
『ぎ……』
『お?』
身を隠すものを無くしたオレが指を突き出したまま硬直し、カカロットが目を見開いてオレの顔と体を交互に見比べたのも、ほぼ同時だった。
『ぎゃあああああああああっ!!!見るんじゃねえええええええっ!!』
風穴の空いた天井から、部品が再びバラバラ降り注いだ。


見事、ヤツの思惑通りオレは安い挑発に乗せられてしまった(カカロットは普段何も考えていないような顔をしているが、実は戦術的思考はかなり優れている。認めたくは無いが)。慌ただしく戦闘服を身に纏い、宣言通りオレはカカロットと存分に戦った。戦ってその結果……ああ、くそっ!その結果オレは今の状況にあるというわけだ!ちくしょう、あの時オレがヤツの蹴りを左に避けていさえいれば、オレが勝ったハズなんだ!!
『もしオレが負けたら、何だってキサマの言う事を聞いてやる』……カカロットを前に宣言した自分の言葉が耳に甦る。ヤツとの再戦に存分に備えたオレは(トレーニング中の不意打ちは食らったが)、今日こそカカロットに絶対勝てる自信があったから、オレはついあんな事を言っちまったんだ。まさかそのせいで、バトルが終わった直後から散々な目に遭う事になるとは想像もしていなかったんだ!