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kv強化月間z

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備えあれば 憂いなし

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5.


「…………………」
肩幅の広い後ろ姿が大股で扉の向こうに消えて行くのを、寝台の上に身を起こして茫然と見送った。
バタン。
戸が閉まると、室内は先程までの熱が嘘のような沈黙に包まれた。中途半端に脱がされかけたシャツが、胸の上あたりからずるりと落ちる。
「………~~~~~~~!!!!」



――く…くそったれぇめえええええっ!!!
『オラが勝ったぞ、約束通りオラの言う事何でも聞いてくれるんだよな!』
何が『何でも言う事』だ!突然押し掛けてきてオレのトレーニングを邪魔するだけでなく、人を押し倒した挙句散々煽っておいて、イキナリ放り出しやがった!最低だ、アイツは最低のクソヤロウだ(知ってたけどな!)!
拾い上げたブーツを履き終えてから、ここまで思い返してまたムカムカ腹が立ってきた。ヤツの嬉しそうな声、開けっぴろげな笑顔、それから、そんなものにほだされかけたオレ自身。全てに腹が立って、思わずそこら中のものを手当たり次第投げ飛ばしたくなった。
落ちつけ、冷静になれ自分。めくりあげられたシャツをきっちり下ろし終えたところで頭を振る。お陰で助かったじゃねえか、あやうく流されちまうところで冷静になれたのだからな。これ以上アイツの気まぐれに振り回されて、オレ様の貴重な時間を無駄にされてたまるか!さっさとこんな場所から脱出してやる!!


オレの腰から上あたりに付けられた窓際に降り立つと、窓の向こうに先程よりやや日の傾いた空と、一面の荒野、それからまばらな下草が目に入る。
――それから。今度はちらりと下を向き、かあっと顔が熱くなった。カカロットに煽られまくったオレの体が、すっかり欲望をきざしてしまい…胸元で二つの突起がアンダーシャツ越しにポチリと目立ってしまっている事も、さらに下半身の一部がカタチを変え始めている事も、どちらも目に入ってしまったからだ。くそっ、みっともねえ!
『キモチイイ事するのに場所なんかどこだっていいだろ?』
邪気の無い声でとんでもない事を口にするカカロットの姿が甦る。あんなヤツに反応してしまって、しかもみっともない声まで上げるなんて、トレーニングが足りなかったか。カカロット相手にもっと実戦トレーニングを詰まねばならんな……いや、いやいや、違うぞそうじゃねえ!!オレはどうかしてるぜ!!カカロットのヤツめ、オレをこんな目にあわせやがってゆるさんぞ!オレはキサマに触られて、嬉しい、なんてこれっぽっちも思わなかったんだからな、ただ、生理的欲求に従ったまでだ!口の中でブツブツと呟きながら、もう一度きっちりと衣服の乱れを直した。


スゥ、ハァ。スゥ、ハァ。窓際に手をついて、中途半端に煽られた体を落ちつかせるために、できるだけ深い呼吸をする。このままではみっともなくて外にも出られんからな。今のオレに余分な事を考えている暇は無いんだ、カカロットが戻って来る前に早くここから脱出せねばならんのだ。
ヤツのあの、期待に満ちた目、オレに触れてくる大きな手、『ベジータ…』オレの名を呼ぶいつもよりも数段低い声。意外なほど繊細に動く指、その指がオレの肌の上をゆるやかになぞる感触を思い出すと期待に胸が震え……っ……いや、いやいやいや、違う、違うぞそうじゃねえっ!!身震いする、の間違いだっ!!脳が揺れ動くほどの勢いで頭をブンブン振る。ここにいたらオレは本当におかしくなっちまう、さっさと脱出してやるぜ!!
カカロット、キサマが戻ってきたところでベッドはもぬけの空だ、ざまあみやがれ!言っておくが、これは「逃げる」わけではないぞ、体勢を立て直すために「一時退避」だからな。今日のところは許してやるが、次にあったら今回の事も含めて十倍にして借りを返してやる、覚えてろよ!!


……また余分な事を考えちまった……。今のオレには時間が無いんだ、よし、さっさとここを出るぞ!窓際に降り立ち慎重に鍵を外す。本当ならば窓をぶち破って外に出たいくらいだが、カカロットのヤツに気がつかれては面倒だからな。用心せねばならん。窓を開ける前に一旦扉の向こうに意識を集中させ、カカロットの気を探る。……ん?
そこでオレは、妙な事に気がついた。どういう事だ、何の気配も感じねえ。あいつ、電話(たしか、機械に向かって話す地球の通信手段だ)がどうのと言っていたが、事実先程まではたしかにカカロットが誰かと会話をする声が聞こえていた。けれどどういう事だ、今は妙に静まり返っている。気を消しているというよりは無人に近い静けさだった。
カカロットがいない?一体どういうことだ?脳裏にカカロットの声が甦る。
『いけねえ、忘れるところだった!』
…まさかアイツめ、電話とやらに意識を奪われて、ついでに電話の向こうの相手との会話に夢中になって、このオレの事をすっかり忘れて置き去りにしたまま、どこかに行っちまった、なんて事は…。あのヤロウならあり得るじゃねえか、電話の向こうの誰かの元へ瞬間移動して、薄情にもオレの事なんかすっかり忘れて……


…と、ここまで考えて、窓枠に掛けていたオレの手が無意識に握りこぶしをつくってた事に気が付いて、はっとする。カカロットがここに居ないかもしれない?オレを置いてどこかへ行った?それがどうした、むしろ好都合じゃねえか。これで堂々と帰れるってもんだぜ、オレは何とも思っていないからな!アイツがいなかろうと、『寂しい』、なんてバカな事はこれっぽっちも思わねえんだからな!!
そうと分かれば、もうコソコソする必要は無い。オレを除いて無人になったカプセルハウスから堂々と出ていけば良いわけだ。視界は良好、空は快晴、カプセルハウスは荒野のただ中にある。オレの視界を遮るものは何もない。邪魔者もいない。…カカロットもいない。
「…くそったれめ!!」
いらいらしながら窓を勢いよく開けると、窓枠が派手な音を立てて引きちぎれ、ガラスが粉々に砕けた。…カカロットのヤツ、突然オレの前に現れて、散々好き勝手した挙句突然消えちまいやがっただと?!ふざけるな、いいかカカロット、次に会った時がキサマの最後だ、今度こそ確実に殺してやるからな!言っておくが、オレはキサマにウロつかれると目ざわりだからイラついているんだからな、断じてキサマがいなくて『寂しい』なんて、本当にこれっぽっちも思わねえからな!!


窓の無くなった室内に、熱く乾いた風が吹き込んでくるのを受けながら、オレは今度こそ本当に出ていくため、地面を踏みきろうとした。その瞬間、視界の隅に動くものが目に入る。…ん?なんだ?あの草、動いてやが…
「ぎ…」
(ぎゃああああああっ!!!)
ニョロニョロ、オレの大っキライなニョロニョロが!!無様に叫び声を上げかけた口を、慌てて両手で塞いだ。窓の下で草がもぞもぞ動いたかと思ったら、根元から一匹の小さなヘビがのたくりながら這い出てきた。ヘビは三角の頭を持ち上げながらオレを見て(目があったような気がしたんだ!)、二股に分かれた舌をチロチロと出した。
「ぎ……」
それを目にした途端、全身から力が抜けて、その場にへなへなと尻もちをつく。オレはニョロニュロしたものが大・キライ・なんだあああっ!!今度こそ耐えきれずにオレが叫び声を上げようとしたその時――


突然、違うものに叫ばされた。座り込んでいたオレの上に、ドサリと何かが降ってきたのだ。
「ぎゃあああああああっ!」